Archive for category 程々の音

Date: 1月 15th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(余談)

この項で書いているコーネッタはフロントショートホーン付のエンクロージュアである。

ホーンがついているからホーンロードがユニットにかかる。
そのためエッジを傷める──、
今回、この項を書いていて、そういう説が世の中にあることを知った。

これと同じことで思い出したことがある。

遠くの人を呼ぶ時に両手を口の周りにもってきてメガホンのようにする。
こうするとホーンロードが喉に負担を与えて、こうやって話しつづけると喉が痛くなるでしょう、
というものがある。

いかにももっともそうな理屈で、意外にもこれに納得している人がいるようだが、
ほんとうにそうなのだろうか。

遠くの人を呼ぶ時には両手でメガホンをつくるだけでなく、大きな声をだしている。
喉を痛めるのは、ホーンロードによる喉の負担が増して、ではなく、大きな声を出しているからではないのか。

手でメガホンをつくって、ふつうの大きさの声で話す、としよう。
メガホンがあることで音(声)が周囲に広がってしまうのはなくなる分だけ、
聞き手に届く声は大きくなっている。
相手に同じ音の大きさで声を届けるのであれば、メガホンなしよりも小さな声ですむ。

これはホーンがついているスピーカーでも同じことである。

Date: 1月 10th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(その22)

こんなふうにコーネッタのことを書いていくのは、思っていた以上に楽しい。
そしてタンノイが、いまコーネッタを作ってくれないかな、とも思ったりする。

アルニコ磁石の10インチの同軸型ユニットを搭載して、
いまの時代コーナー型というだけで拒否反応が出るかもしれないから、
オートグラフがウェストミンスターになり、
コーナー型からレクタンギュラー型に変更されたように、
コーネッタもレクタンギュラー型になってもいいと思う。

ただしフロントショートホーンだけは絶対に譲れないけれど。

あと鍵付のサランネットは無しにしてほしい。

でもタンノイがコーネッタを作ってくれることは、可能性としてはまったくゼロに近い。
ならば以前のようにスピーカーユニットを単売してくれないだろうか。

ユニットが手に入れば、コーネッタを現代に甦らせることはそれほど大変なことではない。

こんなことも夢想しながら、なぜこんなにもコーネッタのことが、いまも気になっているのだろうか。
その理由も書きながら考えていた。

Date: 1月 9th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(その21)

何もコーネッタとほぼ同時代のアンプにこだわっているわけではない。
いいアンプであれば時代は問わない。
にも関わらず、私の中ではコーネッタを鳴らすアンプとして、
トランジスターならスチューダーのA68、真空管ならマイケルソン&オースチンのTVA1が、まずある。

ではコントロールアンプはなんなのか。
スチューダーは業務用ということもあってコントロールアンプはない。
TVA1には一応あることにあるけれど、クォリティ的にTVA1と合わない。

瀬川先生は「コンポーネントステレオの世界 ’77」ではマークレビンソンのLNP2を、
A68と組み合わされているわけだし、LNP2とA68、確かにいい組合せとも思う。

TVA1には瀬川先生はアキュフェーズのC240をもってこられている。
これもいい組合せだし、どちらがいい組合せということも決めるようなものではない。

ただLNP2は、ここでの組合せにはやや高すぎる。
A68の、ほぼ倍の価格である。
となると、C240とA68の組合せはどうだろうか。
合うような、うまくいかなそうな、なんともいえないけれど、候補としては残しておきたい。

LNP2が高すぎるから、といって候補から外しておきながら、
コーネッタの価格からすれば、C240とTVA1、C240とA68にしても、
アンプにシステム全体からすれば重きをおきすぎている。

このふたつのアンプの組合せを高すぎるとしたら、
いっそのことプリメインアンプでまとめたほうがいい気もする。

──こんなふうにコーネッタの組合せを、頭の中で組み立てている。
人はどうなのかわからないけれど、私は組合せをあれこれ考えていくのを楽しみとしている。

オーディオ機器の中には、こうやってこちら側の想像を逞しくしてくれるモノが、
いつの時代にも存在している。

Date: 1月 5th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(その20)

瀬川先生がSAEではなくスチューダーにされた第二の理由は、ファンの有無である。

Mark2500には冷却用のファンがついていた。
当時の輸入元であったRFエンタープライゼスでは、
より静かなファンに置き換えていたようだが、それでもファンが廻れば無音というわけにはいかない。

しかも室内楽を大音量で聴く人はまずいない。
室内楽を静謐な、求心的な音で聴く場合、その音量はおのずと決ってくる。

それにA68はMark2500よりも小さい。
Mark2500はW48.3×H17.8×D40.0cm、A68はW48.3×H13.3×D33.5cmである。

だいたいイギリスのスピーカーに、あまり大きなパワーアンプは似合わないし、
組み合わせたいとも思わない。

そんなもろもろのことを考えても、
1980年以前において、コーネッタにA68ほどふさわしいパワーアンプはなかった、と思う。

いまもしコーネッタを鳴らすことがあったら、A68を外すことはない。
そして、もうひとつA68とともにいまでもコーネッタを鳴らしてみたいアンプの筆頭は、
マイケルソン&オースチンのTVA1である。

Date: 1月 5th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(その19)

スチューダーのA68は、
私がコーネッタの存在を知るきっかけとなった「コンポーネントステレオの世界 ’77」に登場している。
瀬川先生の組合せにおいてである。

室内楽を静謐な、しかも求心的な音で聴きたい、というレコード愛好家のための組合せで、
スピーカーはタンノイのアーデン、
これを鳴らすためにA68、それにコントロールアンプはマークレビンソンのLNP2である。

このころの瀬川先生はLNP2にはSAEのパワーアンプ、Mark2500を組み合わせることが常だった。
だから、この組合せの記事でも、なぜMark2500ではなくA68なのか、について語られている。
     *
マーク・レビンソンのLNP2に組合せるパワーアンプとして、ぼくが好きなSAEのマーク2500をあえて使わなかった理由は、次の二点です。
第一は、鳴らす音そのものの質の問題ですが、音の表現力の深さとか幅という点ではSAEのほうがやや優れているとおもうけれど、弦楽器がA68とくらべると僅かに無機質な感じになる。たとえばヴァイオリンに、楽器が鳴っているというよりも人間が歌っているといった感じを求めたり、チェロやヴァイオリンに、しっとりした味わいの、情感のただようといった感じの音を求めたりすると、スチューダーのA68のほうが、SAEよりも、そうした音をよく出してくれるんですね。
      *
いうまでもなくアーデンもタンノイだ。
コーネッタもタンノイだ。

タンノイのスピーカーに、どういう音を求めるのかが、アンプ選びに関わってくる。
コーネッタで、どういう音楽をどう聴きたいのかまでは、
コーネッタを知ったばかりのころは深くは考えていなかったけれど、
それでもコーネッタでは聴かない音楽、コーネッタに求めない音はなんとなくわかっていたように思う。

だからコーネッタにはA68を組み合わせたい、と、
コーネッタについて知りはじめたころから、そう思うようになっていた。

Date: 1月 4th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(その18)

真空管アンプではなく、トランジスターアンプならば、なにをもってきたいか。

価格的にも国的にも、誰もがぱっと候補にあげるのはQUADの405のはず。
コーネッタが登場したころ、405も登場している。

HPD295Aを搭載したコーネッタならば、405ももってこいのアンプかもしれない。
405はそのころ145000円だった。
コントロールアンプは、405が登場した時には44はまだだった。

33では405につり合わない、とまではいわないまでも、
33を使うのであれば、パワーアンプは303、もしくは50Eという選択にしたい。

となるとAGIの511か。
雑誌の組合せと違い、個人の組合せでは、少し待つ、という選択肢がある。
だからQUADから44が出るまで待って、という組合せもあっていい。

QUADの44と405、それにコーネッタ。
プレーヤーはリンのLP12かトーレンスのTD125あたりであれば、
うまくまとまってくれるであろう。

でもタンノイのIIILZ、その後のイートン(Eaton)であれば、
このへんで、と満足できるのに、
コーネッタというエンクロージュアに同じ10インチの同軸型ユニットがおさまっているだけで、
欲が深くかきたてられたりもする。

価格的なバランスを無視したくなるわけだ。
スチューダーのパワーアンプ、A68で鳴らしてみたら、どうなるんだろうか、と。

Date: 1月 3rd, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(その17)

JBLの4343への想いとは別に、コーネッタへの想いもつのっていった。
いつかは4343と夢見ていた──、けれど現実には10代の学生には手が届くモノではない。
なんとか手が届く範囲での憧れとしてコーネッタを見ていたわけだが、
けっしてそればかりともいえない。

コーネッタを買ったら、アンプは何にしようか、とHI-FI STEREO GUIDEのページをめくりながら、
組合せを考えていた。

コーネッタの価格はエンクロージュアとユニットを含めて16万円(一本)だから、
価格的バランスを重視するなら、アンプはプリメインアンプとなる。
となると第一候補はラックスのLX38がくる。

五味先生のオーディオ巡礼に登場された鷲見氏は、
IIILZにラックスのSQ38Fを組み合わされていたから、
第一候補としてLX38を外すわけにはいかない。

これでもきっと充分に満足のいく音が鳴ってくれるとは思っている。
それでもオーディオマニアとしての欲を捨て切れずにいる(まだ10代だったのだから)、
となるとセパレートアンプにしたい、という気持が同時にあった。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」の「くつろぎの城」の主は、
コーネッタをラックスのCL30、ダイナコのMarkIIIの組合せで鳴らされている。

タンノイだから真空管アンプ、
ということを優先してアンプを選んでいくと、さらに価格的バランスも考慮すると、
この時代では、たしかにラックスとダイナコの組合せは順当といえよう。

ダイナコの真空管アンプをアメリカ的ととらえている人もおられるだろうが、
実際にダイナコのアンプを使ったことがある人ならば、
真空管の選択を注意することで、意外にもアメリカ的な音が色濃くでるわけでもない。

Date: 12月 30th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その16)

コーネッタ(SSL1)の価格は、前に書いたように95000円(1本)。
コーネッタのキットが登場した時、
タンノイの10インチの同軸型ユニットの現行品はHPD295Aで、価格は65000円(1本)。

コーネッタの価格は160000円、ということになる。
このときのタンノイのスピーカーシステムで同価格となると、
バークレー(Berkeley)が、165000円。

バークレーは12インチ同軸型、HPD315Aがついている。
エンクロージュアはバスレフ型。

どちらが使いやすいか、といえば、おそらくバークレーのほうだろう。
コーネッタはコーナー型だし、フロントショートホーン付ということもあって、
セッティングの制約がいくつか出てくる。

それにエンクロージュアはキットだから、組み立ての手間もかかる。
それでも私はコーネッタが、いい。

同じ金額を支払うのなら、
どちらをとるかは違ってくるだろう。
扱いやすく、ユニットの口径も大きいバークレーをとる人もいれば、
私のようにためらうことなくコーネッタ、という人もいよう。

「コンポーネントステレオの世界」に登場したコーネッタの置かれた部屋で、
アンプはラックスとダイナコの組合せとQUADのペアだった。

五味先生はステレオサウンドの試聴室では、
コントロールアンプがGASのThaedra、パワーアンプはマランツの510Mという組合せだった。

Date: 12月 29th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その15)

五味先生がコーネッタで鳴らされたピアノのレコードは、
ラフマニノフ自演の「前奏曲」。

マランツ・ファーイーストがスーパースコープのシリーズとして出したもので、
ラフマニノフの生きていた時代には録音機はなかったわけで、
ピアノロールによる記録であり、それを鳴らしての録音である。

「よせばよかったのであろう。」と書かれている。
ラフマニノフの「前奏曲」は4343で、コーネッタの前に聴かれている。
     *
 さてト短調の『前奏曲』が鳴り出した。唖然とし、私は耳を疑った。狼狽しました。何たる下らん「前奏曲』か。極言すれば、もうラフマニノフではないのである。
     *
五味先生の文章はこの後も続いている。
そしてオーディオが抱える再生ということの難しさへの重要な問いかけともなることを書かれている。

コーネッタはいいスピーカーではある。
けれども、世の中にひとつとして完璧なスピーカーシステムが存在しないことは、
このコーネッタの音についての五味先生の文章が語っている。

それでもコーネッタは充分に優れたスピーカーだ、と私は五味先生の文章から感じていた。
クラシックを聴いていくのであれば、そうである、と。

「IIILZと〝オートグラフ〟では低音の伸びに格段の差はあるが、鳴り方そのものの質は変らぬ」
とも書かれている。

オートグラフとコーネッタとではエンクロージュアの構造も違い、サイズも大きく違う。
ユニットのサイズも15インチと10インチという差がある。
「低音の伸びに格段の差」があって当然で、
それをコーネッタに求めたところで、それは聴き手の無理な要求ということになる。

Date: 12月 28th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その14)

五味先生の書かれたものを、少し長くなるけれど書き写しておく。
     *
 JBLのうしろに、タンノイIIILZをステレオ・サウンド社特製の箱におさめたエンクロージァがあった。設計の行き届いたこのエンクロージァは、IIILZのオリジナルより遙かに音域のゆたかな美音を聴かせることを、以前、拙宅に持ち込まれたのを聴いて私は知っていた。(このことは昨年述べた。)JBLが総じて打楽器──ピアノも一種の打楽器である──の再生に卓抜な性能を発揮するのは以前からわかっていることで、但し〝パラゴン〟にせよ〝オリンパス〟にせよ、弦音となると、馬の尻尾ではなく鋼線で弦をこするような、冷たく即物的な音しか出さない。高域が鳴っているというだけで、松やにの粉が飛ぶあの擦音──何提ものヴァイオリン、ヴィオラが一斉に弓を動かせて響かすあのユニゾンの得も言えぬ多様で微妙な統一美──ハーモニイは、まるで鳴って来ないのである。人声も同様だ、咽チンコに鋼鉄の振動板でも付いているようなソプラノで、寒い時、吐く息が白くなるあの肉声ではない。その点、拙宅の〝オートグラフ〟をはじめタンノイのスピーカーから出る人の声はあたたかく、ユニゾンは何提もの弦楽器の奏でる美しさを聴かせてくれる(チェロがどうかするとコントラバスの胴みたいに響くきらいはあるが)。〝4343〟は、同じJBLでも最近評判のいい製品で、ピアノを聴いた感じも従来の〝パラゴン〟あたりより数等、倍音が抜けきり──妙な言い方だが──いい余韻を響かせていた。それで、一丁、オペラを聴いてやろうか、という気になった。試聴室のレコード棚に倖い『パルジファル』(ショルティ盤)があったので、掛けてもらったわけである。
 大変これがよかったのである。ソプラノも、合唱も咽チンコにハガネの振動板のない、つまり人工的でない自然な声にきこえる。オーケストラも弦音の即物的冷たさは矢っ張りあるが、高域が歪なく抜けきっているから耳に快い。ナマのウィーン・フィルは、もっと艶っぽいユニゾンを聴かせるゾ、といった拘泥さえしなければ、拙宅で聴くクナッパーツブッシュの『パルジファル』(バイロイト盤)より左右のチャンネル・セパレーションも良く、はるかにいい音である。私は感心した。トランジスター・アンプだから、音が飽和するとき空間に無数の鉄片(微粒子のような)が充満し、楽器の余韻は、空気中から伝わってきこえるのではなくて、それら微粒子が鋭敏に楽器に感応して音を出す、といったトランジスター特有の欠点──真に静謐な空間を持たぬ不自然さ──を別にすれば、思い切って私もこの装置にかえようかとさえ思った程である。でも、待て待てと、IIILZのエンクロージァで念のため『パルジファル』を聴き直してみた。前奏曲が鳴り出した途端、恍惚とも称すべき精神状態に私はいたことを告白する。何といういい音であろうか。これこそウィーン・フィルの演奏だ。しかも静謐感をともなった何という音場の拡がり……念のために、第三幕後半、聖杯守護の騎士と衛士と少年たちが神を賛美する感謝の合唱を聴くにいたって、このエンクロージァを褒めた自分が正しかったのを切実に知った。これがクラシック音楽の聴き方である。JBL〝4343〟は二基で百五十万円近くするそうだが、糞くらえ。
     *
これを読めばコーネッタが欲しくなる、というものだ。
絶賛に近いではないか、と五味先生の文章をそう受けとめる人もいよう。
このあとに、五味先生はピアノのレコードを鳴らされている。

Date: 12月 26th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その13)

つまりはコーネッタの本当の音、と呼べる音を出しているのは、
ステレオサウンドの記事に載っているコーネッタ、それだけということになる。
ダイヤトーンが製作したモノだけ、ということになる。

だからといって、そのダイヤトーン製作のコーネッタだけが素晴らしい音で、
コーネッタ(SSL1)を購入し組み立てた人による音が、それよりも劣る、とは限らない。

私は耳にすることはなかったけれど、
ダイヤトーン製作のコーネッタよりもいい音を奏でているコーネッタは、きっとあると信じている。
スピーカーとは、そういうところがあるものだからだ。

コーネッタにはSSL1の他にも、いくつか出ている。
コーネッタの評判が良かったためであろう。

あるエンクロージュア・メーカーからは、15インチ同軸型ユニットように、
サイズを大型化したモノが出ていたし、
コーネッタと同じ寸法ながら、外観をオートグラフに似せたモノもあった。

それではコーネッタの音とは、いったいどんな音なのか。
ダイヤトーン製作のコーネッタの試聴記はステレオサウンドの記事に載っている。
これ以外に私がくり返し読んだコーネッタの音に関する文章は、
五味先生の「ピアニスト」である(新潮社「人間の死にざま」所収)。

Date: 12月 26th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その12)

エンクロージュアの組み立てには、接着剤を使用することが多い。
この接着剤に何を使うのか、
そしてどの程度の量を使うのか、
さらには接着面、たとえば底板と側板、側板とフロントバッフル、天板と側板など、
いくつもの接着面があるわけで、それぞれの接着面に応じて接着剤の量を同じにするのか、
それとも変えていくのか。
そして、その塗り方……。

接着剤ひとつをとってみても、そこには多くの違いが作り手の違いによって生じる。

さらには接着剤が乾燥するまでの時間、
それぞれの板に対して、どの程度の圧をかけるのか、もしくはほとんどかけないのか。

ひとつひとつ書いていけばキリがないほど、多くのパラメータがあって、
ひとつひとつは小さな影響であっても、エンクロージュアはそれらの集合体でもあるから、
作り手の組み立て技術は、同じく裁断された板を使用しても、当然音の差となってあらわれる。

しかもこれらの完全なる管理は、非常に困難であり、
だからこそメーカーの熟練した職人であっても、
まったく同じ音のするエンクロージュアを作るのは、ほぼ無理だということになる。

四角い箱ですらそうであるのだから、
コーナー型でホーン付のエンクロージュアともなると、
作り手の技術の差はさらに大きく音となって出てくることになる。

Date: 12月 25th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その11)

コーネッタは、コーナー型、フロントローディングホーン付という構造のため、
記事を読んだ人が作ろうと思い立っても、そう簡単に作れる代物ではない。
だからステレオサウンドでは、キットとして販売していた。

1978年ごろのステレオサウンド別冊 HI-FI STEREO GUIDEのキットのページに、
このコーネッタも載っている。

ブランドはSSLで、型番はSSL-1。
SSLはStereo Sound Laboratoryの略である。

コーネッタ(SSL1)はスペックは次の通り。
板厚18mmの樺桜合板。
適合ユニットはHPD295A、Monitor295HPD、IIILZ。
外形寸法はW85.0×H105.0×D55.0cm、重量は50kg。
価格は95000円(一本)。

キットだから購入者が組み立てることになる。
板の裁断はされているから、組み立ては簡単、──なわけではない。

これは井上先生からきいたことでもあるし、
ステレオサウンドにも書かれている事でもあるから記憶されている方もおられるだろう。

エンクロージュアというものは、
メーカーの熟練の職人でも、まったく同じ音のするモノを作る事は非常に難しい。

Date: 12月 25th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その10)

松波濤氏がどういう人なのかについても、実は書きたいのだが、
まだ書くわけにはいかない事情がある(いずれ書く事になろう)。

ステレオサウンドがつくり上げたコーネッタは、
コーナー型でフロントローディングホーン付という、
タンノイ・アメリカのコーネッタとはエンクロージュアの形も型式も違うものとなっている。

それでもいい、と私はおもう。
アメリカ・タンノイのコーネッタを再現することが、ステレオサウンドの企画の意図ではなく、
あくまでもタンノイの10インチ同軸型ユニットを良く鳴らしたい、
ということがベースにあっての記事なのだから。

タンノイ・アメリカのコーネッタにしろ、
ステレオサウンドのコーネッタにしろ、
実際にその音を聴いている人はそう多くはない、と思う。

私も一度だけあるところで聴いているだけで、
それをもってコーネッタの音、とはいえない理由もある。

コーネッタの記事は井上先生によるものだ。
井上先生にコーネッタについて、もちろんきいている。

「いい音だった」とうれしそうに語られた。

Date: 12月 25th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その9)

タンノイ・コーネッタについて、少し触れておきたい。

この項でのタンノイ・コーネッタとは、以前簡単にふれているように、
ステレオサウンドが企画したエンクロージュアと、
タンノイの10インチ同軸型ユニットの組合せのことである。

コーネッタ(Cornetta)は、
タンノイ・アメリカの実際のスピーカーシステムで、
10インチ同軸型ユニットをバックローディングホーン型エンクロージュアにおさめたもの。

コーネッタという名前からコーナー型を想像しまいそうになるが、
レクタンギュラー型である。

ステレオサウンドのコーネッタに関する記事は、
37号から39号にわたって載っている。
1975年冬から1976年夏にかけてのことである。

いまでこそ、「TANNOY Cornetta」で検索すれば、
コーネッタがどういうスピーカーシステムであったのかはすぐにわかる。
けれど、1976年ごろはそうはいかなかった。

タンノイにコーネッタと呼ばれるシステムがある。
いったいどんなスピーカーシステムなのだろうか、
どんな音がするスピーカーなのか……。

そんなおもいをいだいた松波濤氏という人の手紙から、
コーネッタの企画は始まっている。