程々の音(その19)
スチューダーのA68は、
私がコーネッタの存在を知るきっかけとなった「コンポーネントステレオの世界 ’77」に登場している。
瀬川先生の組合せにおいてである。
室内楽を静謐な、しかも求心的な音で聴きたい、というレコード愛好家のための組合せで、
スピーカーはタンノイのアーデン、
これを鳴らすためにA68、それにコントロールアンプはマークレビンソンのLNP2である。
このころの瀬川先生はLNP2にはSAEのパワーアンプ、Mark2500を組み合わせることが常だった。
だから、この組合せの記事でも、なぜMark2500ではなくA68なのか、について語られている。
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マーク・レビンソンのLNP2に組合せるパワーアンプとして、ぼくが好きなSAEのマーク2500をあえて使わなかった理由は、次の二点です。
第一は、鳴らす音そのものの質の問題ですが、音の表現力の深さとか幅という点ではSAEのほうがやや優れているとおもうけれど、弦楽器がA68とくらべると僅かに無機質な感じになる。たとえばヴァイオリンに、楽器が鳴っているというよりも人間が歌っているといった感じを求めたり、チェロやヴァイオリンに、しっとりした味わいの、情感のただようといった感じの音を求めたりすると、スチューダーのA68のほうが、SAEよりも、そうした音をよく出してくれるんですね。
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いうまでもなくアーデンもタンノイだ。
コーネッタもタンノイだ。
タンノイのスピーカーに、どういう音を求めるのかが、アンプ選びに関わってくる。
コーネッタで、どういう音楽をどう聴きたいのかまでは、
コーネッタを知ったばかりのころは深くは考えていなかったけれど、
それでもコーネッタでは聴かない音楽、コーネッタに求めない音はなんとなくわかっていたように思う。
だからコーネッタにはA68を組み合わせたい、と、
コーネッタについて知りはじめたころから、そう思うようになっていた。