Archive for category デザイン

Date: 11月 20th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その8)

真空管アンプの場合、それもパワーアンプの場合、
どういう真空管が何本使われているのか、トランスの数などから、おおよその回路は想像がつく。

まずモノーラルなのかステレオなのか、
出力管は一本なのか二本なのか、それとももっと多いのか。
電圧増幅管にはどの真空管が何本使われているか。

こういったことから、よほど変った独創的な回路やトランジスターとのハイブリッドでもないかぎり、
回路の推測が大きく外れることはあまりない。

そうなると真空管、トランスのレイアウトから、アンプ内部の配線はこんなふうになっているのではないか、
という想像ができる。

この想像が当ることもあればそうでないこともある。
プリント基板を使ったモノだと想像は外れる。
フックアップワイアーを使ったモノだと、うまく当るものもあればそうでないアンプもある。

この想像も、私の場合はあくまでも伊藤アンプがベースになっている。
だが人にはそれぞれ流儀のようなものがあり、
真空管アンプに関してもそうであり、フックアップワイアーによる配線であっても、
伊藤先生の配線の仕方とは異る流儀があって、
その流儀によってつくられているアンプだと想像が大きく外れてしまうのではなく、
そういう流儀の違いはあっても、アンプ配線の基本となるものがしっかりしているのであれば、
ディテールの違いはいくつもあったとしても、大きく外れはしない。

大きく外れてしまうのは、配線のベースとなる基本が異るアンプであり、
そういう異る基本をもつ人ということになる。

Date: 11月 16th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その7)

街が機能するには、電気が必要であり、そのための電線が敷設される。
電力の供給だけでなく、上下水道もガスも電話線(いまでは光ファイバーか)も必要であり、
日本では電線、電話線は電柱を立てて地上に露出しているけれど、
地下にすべてを埋設もできる。

真空管アンプの内部、つまりワイアリングもそれらと同じである。
真空管のプレートにかかる高電圧の電源供給ライン、
ヒーター用の定電圧の電源供給ライン(交流であったり直流であったりする)、
それから信号ライン、アースラインなどワイアリングされている。

いつのころからか真空管アンプにもプリント基板が使われるようになり、
こういった見方をすることの無理なアンプも市販品には多い。
ワイアリングの巧拙、枝ぶりの美しさ、といったことをあれこれいう楽しみも、
いまどきの真空管アンプにはなくなりつつある。

伊藤先生のアンプには、あたりまえすぎることを書くが、
プリント基板はいっさい使われていない。
すべてベルデンのフックアップワイアーを使われている。
ラグ、ターミナルストリップを適所に配置して、部品を固定しながらひとつひとつワイアリングされている。

Date: 11月 15th, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その9)

この項の(その6)で、バラコンについて書いた。
シスコン(システムコンポーネント)に対する言葉として、ある時期使われていた。

シスコンも決していい言葉ではないけれど、バラコンはシスコンよりもひどい。
こんな言葉は誰も使わないのがいい。
けれど、われわれわオーディオマニアがついやってしまっていることは、
フランケンシュタインが理想の人間をつくろうとして陥ってしまったのと、
ほぼ同じ立ち位置にいる、ともいえる。

バラコンという言葉は使いたくないけれど、
ほとんどのオーディオマニアが組合せにおいてやっていることは、
フランケンシュタイン・コンポーネントといえることである。

なぜフランケンシュタインは理想の人間をつくろうとして、怪物を生み出してしまったのか。
そんなことを考えていると、
今年のインターナショナルオーディオショウで見たあるメーカーの、あるオーディオ機器のことが浮んでくる。

このオーディオ機器がなんであるのか、その型番について書くのを少しためらっている。

このオーディオ機器が発表になった時、
インターネットに公開されていた写真を見た時、そのデザインにびっくりした。
いい意味でのびっくりではなかった。
だから、型番を書いていこう、とその時は思った。

ただ一応実物をきちんと見てからにしようと思い、
インターナショナルオーディオショウまで待っていた。

初日に見てきた。
写真で見るよりも、ずっと凝った細工がなされていて、仕上げも丁寧である。
なのに、なぜこんなデザインにしたのか、と考えてしまう。
この時までは、型番を書こう、と思っていた。

だがフランケンシュタインのことが思い出されて、躊躇うようになってしまった。

Date: 11月 15th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その6)

伊藤アンプでは出力管の周囲に小穴が開けられていることは書いた通りであり、
この小穴がなければ、伊藤アンプの印象はずいぶんと違ってたものになる。

ずいぶん以前、ラジオ技術から真空管アンプに関する別冊が出た。
そのなかで、ある人が伊藤アンプ、それも300Bシングルに似せた写真を載せていた。
誰が見てもそれは明らかなように伊藤アンプを真似ている。
けれど、そのアンプには放熱用の小穴がなかった。

その他にもこまかな寸法の違いもあったのかもしれないが、
小穴のある無しで、ここまで印象が変ってくるのか、を実感できた。

真似をするのであれば徹底的に真似をすればいいのに、
肝心なところを真似ていないというか、手を抜いているとでもいおうか、
とにかくのっぺりとした印象がそこには感じられた。

伊藤アンプではアルミの上にトランスや真空管などがレイアウトされているのは、
いわば街並の1ブロックをきりとったジオラマのようにも感じる。
そういう目で見ると、真空管が立ち並ぶ位置は、街における広場のようにも見えてくる。

トランスを建物だとすれば、真空管は木に見えなくもない。
木は地中に根を張っている。
伊藤アンプではアルミの下部が、地中にあたる。

真空管ソケットがアルミに取り付けられ、
その端子にはワイヤーや抵抗、コンデンサーなどのリード線がハンダ付けされている。

Date: 11月 14th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その5)

伊藤アンプのシャーシーの厚みは5cm。
この5cmの鉄製のフレームの上にアルミの板がのり、
アルミに真空管、トランス、コンデンサーなどが取り付けられる。
アンプによっては入出力端子も、このアルミに取り付けられることがある。

トランス類は基本的に後方に、
トランスを背にして真空管が配置される。
出力管の周囲には放熱用のための小穴が開けられている。

ステレオアンプでは出力管の手前に電圧増幅管が配置される。
モノーラルアンプでは向って左側から電圧増幅管、出力管、整流管と並ぶ。

こうやって言葉にしてしまうと、他の人が作るアンプとそんなに大差ないようになってしまうが、
できあがったアンプの佇まいには大きな違いが生れてくる。

伊藤アンプにおけるトランスは、いわばビルといえる。
背の高いトランスは高いビル、低いトランスは低層のビル、
真空管はビルというイメージよりも、違うものの感じがする。

トランスとトランスのあいだはそれほど離されていない。
隙間はそれほどない。
だから、その隙間はビルとビルとの間を走る道路であり、
道路を後方から前方に向って走ってくれば、ぱっと目の前が開けてくる。

そこには真空管が立ち並んでいる。

Date: 11月 13th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その4)

なにをもって「まともな」真空管アンプとするのか。

私の答は、伊藤先生のアンプということになる。

それではまったく何も説明していないのと同じじゃないか、といわれるだろうが、
それでも、これ以上こまかいことを書いていこうとは思っていない。

この私の答に納得がいかない人は、
とにかく伊藤先生のアンプの写真をじっくり見てほしい。
納得がいくまで見てほしい。

できれば実物を見てほしいところだが、
メーカーによって大量生産されたアンプではなく、伊藤先生ひとりの手によるアンプだから、
つくられたアンプの数もメーカー製と比べればずっと少ない。
けれど写真はインターネットの普及によって、以前と比較すればずっと多く見ることができる。

できればプロのカメラマンによる写真を見てほしい。
サウンドボーイに発表された伊藤アンプの写真は、由利賢次氏の撮影だった。
オーディオ雑誌に掲載された伊藤アンプの写真の中では、
由利氏による写真が圧倒的によい。

とにかく見る。
じーっと見る。それこそくたくたになるまで見ていれば、伊藤アンプが「まともな」理由が、
理屈としてではなく感覚的に感じられるはずだ。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(LINN EXAKT)

インターナショナルオーディオショウに最終日にも行ってきたのは、
VOXATIVのAmpeggio Signatureをもう一度聴きたかったのがまず第一にあり、
初日に聴き忘れていたLINNの新システムEXAKT(イグザクト)を聴いておきたかったのも理由のひとつである。

EXKATの詳細についてはLINNのサイトを参照していただくとして、
この新システムを構成するコンポーネントは一組のスピーカーシステムKLIMAX EXAKT 350と、
入力機器にあたるEXAKT DSMだけである。
コントロールアンプもパワーアンプも要らない。

パワーアンプはスピーカーエンクロージュア内にフローティングされて搭載されている。
実にシンプルな構成のシステムである。
実際にはハードディスクも必要となるが、
EXKAT DSMを含めてこれらは目につかないところに隠して置くこともできる。

そうなると聴き手の視覚にはいってくるのはスピーカーシステムのKLIMAX EXAKT 350だけとなる。
他の仕上げがあるのかどうかは知らないが、LINNのブースにあったKLIMAX EXAKT 350は黒仕上げだった。
存在を目立たせないように黒を選んだようにも思えた。

LINNはシステムを消し去りたいのかもしれない──、
そんなことも思ってしまった。

LINNのEXAKTシステムで聴き手が操作のために触れるのは、
専用アプリをインストールしたiPadになる。
そうなると専用アプリのインターフェースのデザインこそが、
EXAKTシステムのデザインの中心となるのだろうか。

この項を書き進めていくにあたり、
このことを踏まえて考え直さなければならないかもしれない──、
そんなことを考えていた。

Date: 11月 3rd, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その8)

フランケンシュタインは理想の人間をつくろうとする。
そのために墓を暴き死体を掘り起し、それらの死体をパーツとしてつなぎ合わせて「理想の人間」をつくる。

だが「理想の人間」は容貌が醜かった。
醜かったから「理想の人間」ではなく怪物と呼ばれるようになった。

フランケンシュタインがやろうとしたこと、やったことは、
いまわれわれがオーディオでやっていることと同じではないのか。

フランケンシュタインのように墓を暴くという犯罪行為こそしないものの、
理想の音を求めて、それを実現するため、少しでも近づこうとするために、
あらゆるパーツを組み合わせて、ひとつのシステムをつくり上げる。

カートリッジはA社のこれ、トーンアームはB社のこれ、ターンテーブルはC社……、
こんなふうにケーブルにいたるまで、いくつものパーツを試して(試聴して)、組み合わせていく。
フランケンシュタインがやっていたこととまったく同じではないか。

Date: 11月 3rd, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その7)

いまのQUAD、いまのマッキントッシュの、
それもアンプのデザインは決していいとはいえない。

好き嫌いは別として、以前のマッキントッシュのアンプのデザインには説得力のようなものがあった。
明るいところで電源が入っていない状態でしか見たことのない人もいるだろう。
マッキントッシュのアンプは、一度でいいからどこかのリスニングルームに置かれ、
少し暗くした状態で電源を入れた時に映える。

いまのマッキントッシュのアンプ、
特にコントロールアンプは安っぽくなった、という印象を拭えない。
アンプそのものが軽く感じられてしまう。

QUADに関しても創業者のピーター・ウォーカーがいなくなってからは、
デザインの統一感に関しては魅力的でなくなってきている。

マッキントッシュも、ゴードン・ガウがいなくなって久しい。
これは仕方のないことなのかもしれない。

オーディオというシステムにおけるデザインについて考えていると、
フランケンシュタインのことが浮んでくる。

フランケンシュタインについては説明は不要なような気もするが、
日本では人の体をつなぎ合せてつくられた怪物の名前がフランケンシュタインだと勘違いされることもある。
いうまでもなくフランケンシュタインは怪物の名前ではなく、
この怪物をつくりあげたスイス人の青年の名前が、フランケンシュタインであり、
怪物には名前はない。

Date: 11月 1st, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その3)

1990年ごろだったと記憶している。
サンスイの、西新宿にあったショールームがトントンクラブと改称していたころの話だ。
伊藤先生、その他にふたりのゲストによるシンク値浮かんアンプについての鼎談が行われた。

この鼎談は無線と実験で記事になっているので、くわしく知りたい方はそさちを参照しされたし。

このとき伊藤先生がいわれたことが、いまもはっきりと思い出せる。

いま、世の中にあるメーカー製、自作を含めて、まともな真空管アンプはひとつもありません。
私のつくるアンプを除いては。

こんなことを、実にさらりと発言された。
ほかのどの人であろうと、
この鼎談に出席していない人であろうと、
この伊藤先生の発言に反論できる人がどれだけいるだろうか。

自作だけではない、メーカーのアンプも含めて、
完成度ということで、伊藤アンプと肩を並べる真空管アンプはなかった。

音だけということで見れば、
伊藤先生のアンプよりもいいものは存在する、といってもいい。
音が良ければ、それでいい。
そう思える人には、伊藤先生の発言は、
またく納得できないことであろうが、
私は納得した側の人間である。

伊藤先生は「まとなも」という表現を使われた。
自分のつくるアンプよりも音のいいアンプがひとつもない、と言われたわけではない。

Date: 10月 31st, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その2)

何度か話すことがあった。
N(Jr.)さんとふたりで話すこともあった。

たしか記憶ではNさんがいったことなのだが、
真空管アンプ、それもパワーアンプの場合、シャーシー上に配置される種々のパーツ、
電圧増幅用の真空管、出力管、出力トランス、電源トランス、チョークコイル、平滑用のコンデンサー、
場合によってはインターステージトランス、インプットトランス、
これらはひとつひとつが、いわば建造物であり、
シャーシーの上にレイアウトしていくことは、街並をレイアウトするのと似ている、
同じような感覚なのではないか──、
そういうことだった。

管球式のパワーアンプでも、マランツのModel 9のようにフロントパネルをもつモデルもあるし、
外観からはソリッドステートアンプなのか真空管アンプなのかわかりにくいつくりのモデルもある。

だからすべての管球式パワーアンプについて、いま書いたことがあてはまるわけではなく、
あくまでも伊藤先生のパワーアンプに限定して、いえることである。

これまでにラジオギジュ、無線と実験、管球王国など、さまざまな技術系のオーディオ雑誌で、
真空管アンプの製作記事を読んできた。

読み物としておもしろかったり、興味深いもの、
技術的にそそられるものはあっても、
そこで発表されている真空管アンプをそのまま自分の「もの」としたい──、
この「もの」とはそのものを自分のアンプとして手に入れたい、という気持だけでなく、
同じアンプをつくれるようになりたい気持をあわせての、自分の「もの」としたい、である。

Date: 10月 30th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その1)

ここでいう真空管アンプとは、パワーアンプのことである。

HiVi(サウンドボーイ)編集長だったOさんは、伊藤先生の一番弟子だった。
伊藤先生の弟子を名乗っている人は少なくないようだが、
Oさんの技倆は見事だった。
岡先生のマランツのModel 1のメンテナンスはOさんである。

勤務時間内に作業されていたから、つぶさに見ることができた。
Oさんに頼まれて、いくつかの店にパーツを買いにも行った。

こうやってアンプの修理はするもんだなぁ、と思いながら、その作業を見ていた。
伊藤先生の一番弟子だけあるな、とも思っていた。

私も、以前書いているように、
伊藤先生のシーメンスEdのプッシュプルアンプ(無線と実験発表)に憧れた。
ステレオサウンド編集部のN(Jr.)さんは、Oさんの知り合いのところで、
ウェスターン・エレクトリックの350Bのプッシュプルの音を聴いて、
350Bのアンプづくりの計画をたてていた人である。
Nさんも、また伊藤先生のアンプのことうタブローといい、
伊藤先生のスタイルの350Bのプッシュプルアンプの完成を目指していた。

そういう環境にいたから、
伊藤アンプの、それもパワーアンプの造形について話すことが何度かあった。

Date: 10月 26th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヒンジパネルのこと・その5)

JBLのコントロールアンプ、SG520のヒンジパネルのサブパネルは黒色であり、
フロントパネルとツートーンを形成している。

ツートーンといえば、デンオンのコントロールアンプ、PRA2000は、
サブパネルはフロントパネルと同じ仕上げで、
境目のところ、フロントパネルの中央を横切るようにラインが設けられているし、
ヒンジパネルを開けると、引っ込んだところはフロントパネル、サブパネルとは違った仕上げになっている。

たいていがサブパネルはフロントパネルと同じ仕上げで、
ヒンジパネル内もフロントパネルと同じ仕上げのものが多いこと。
だからこそSG520、PRA2000のように、ちょっとした何かがあると、
アンプの表情の変化が、同じ仕上げのアンプよりもなんとなく好印象となる。

ヒンジパネル内には使用頻度の低い機能に関するスイッチや端子がおさめられている。
SG520の場合は、左からフューズホルダー、マイクロフォン用ピンジャック、ランブルフィルタースイッチ、
AUXジャック、スクラッチフィルタースイッチ、テストトーンスイッチ、テープモニタースイッチ、
RECアウトピンジャック、PHONO1のレベルバランス調整、アウトプットレベル調整、ヘッドフォンジャックで、
サブパネルを閉じると、テープモニタースイッチは自動的にOFFになる。

日本のコントロールアンプの場合、トーンコントロールやフィルターを含めて、
ヒンジパネル内におさめてサブパネルを閉じた状態で、
シンプルなフロントパネルにしているが、
SG520はトーンコントロール、ラウドネススイッチ、モードセレクターはフロントパネルにある。

そしてSG520はサブパネルの裏側に、それぞれの端子、スイッチの配置のイラストと文字表示がある。
ヒンジパネル内にツマミや端子を収納するのはいいけれど、
使用頻度の低いものだけに、たまに使おうとすると、
どれがどのツマミなのかを、ヒンジパネルをのぞきこむようにして確認しなければならない。

SG520では、そういうことへの配慮がなされていた。

Date: 10月 14th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヒンジパネルのこと・その4)

ヒンジパネルのオーディオ機器というと、
資料も何もみずに記憶だけに頼ると、思い出すのは日本のオーディオ機器が大半である。

ヒンジパネルを採用したオーディオ機器は、どれが最初なのかについてはきちんと調べていない。
なのであくまでも私の記憶にあるものだけという条件がついてのことになってしまうが、
JBLのコントロールアンプ、SG520は、早い時期からヒンジパネルを採り入れたデザインであった。

SG520以前に登場したオーディオ機器で、ヒンジパネルのモノはあるのだろうか。

SG520は1964年に登場している。
私はまだ一歳だったから、SG520の登場が与えた衝撃については、文字の上だけで知っているだけである。
瀬川先生も書かれているし、菅野先生も書かれている。

菅野先生がステレオサウンド 50号に書かれた文章を引用しよう。
     *
JBLは、元来一般家庭用の最高級機器のメーカーであって、その卓抜のデザイン感覚によるハイグレイドなテクノロジーの製品化に鮮やかな手腕を見せてくれてきた。このSG520というコントロールアンプは、そうしたJBLの特質を代表する製品の一つで、アンプの歴史の上でも重要な意味を持つ製品だろう。このアンプが作られたのは一九六四年、もう15年も前である。ソリッドステート・コントロールアンプならではの明解・繊細なサウンドは、管球式アンプの多くがまだ現役で活躍していたときに、大きな衝撃を与えたものだ。それまでのソリッドステートアンプは、管球式に対して常に欠点を指摘され続けていた時代であったように思う。おそらく当時、その新鮮なサウンドを、違和感なく魅力として受けとめられた石のコントロールアンプは、このSG520とマランツの7Tぐらいのものだったであろう。そして、その音は現在も決して色あせない。事実、私個人の常用アンプとして、音質面でもSN比の面でさえも、最新のアンプに席をあけ渡さないで頑張っているのである。当時のアンプとしては画期的といえる斬新なデザインは、パネル面に丸形のツマミをツマミを一切持たず、すべて直線的なデザインだ。コンピューターエイジの感覚を先取りした現代センス溢れるものだけに、今でも古さは全く感じさせない。
     *
SG520の衝撃は、音とともにデザインでの斬新さ・新鮮さにあったことが読みとれる。

Date: 10月 14th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヒンジパネルのこと・その3)

ヒンジパネルには、その形状、大きさ、配置によって、
大きくふたつに分けられるわけだが、
このふたつにはもうひとつの違いがある。

開けた時のサブパネルの扱いの違いである。

一般的にオーディオ機器に多いシヒンジパネルのタイプは、
フロントパネルの下部に横幅いっぱいのタイプである。

このタイプでは開いた状態で、サブパネルは、いわば垂れ下ったままである。
垂れ下った、という表現は使っていて、あまりいいとは感じていないけれど、
だらしなく斜め下に向っている状態は、
口を開けた状態にも似ているし、何かが垂れ下っている感じにも似ていて、好ましいとは思わない。

これに対して、ヤマハのCT7000、オーレックスSY77に採用されているタイプは、
サブパネルが本体内部に収納される。
完全に収納されてしまうと閉じる時に面倒になるから、
閉じる際につかみやすい(指でおしやすい)ように収納される。
とにかくサブパネルがだらしなく垂れ下っているわけではない。

この開いた状態のサブパネルの扱いの違いは、ささいなことかもしれないが、
デザインの面からみれば、デザイナーの美意識の違いともいえる、と思っている。