オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(真空管アンプのレイアウト・その6)
伊藤アンプでは出力管の周囲に小穴が開けられていることは書いた通りであり、
この小穴がなければ、伊藤アンプの印象はずいぶんと違ってたものになる。
ずいぶん以前、ラジオ技術から真空管アンプに関する別冊が出た。
そのなかで、ある人が伊藤アンプ、それも300Bシングルに似せた写真を載せていた。
誰が見てもそれは明らかなように伊藤アンプを真似ている。
けれど、そのアンプには放熱用の小穴がなかった。
その他にもこまかな寸法の違いもあったのかもしれないが、
小穴のある無しで、ここまで印象が変ってくるのか、を実感できた。
真似をするのであれば徹底的に真似をすればいいのに、
肝心なところを真似ていないというか、手を抜いているとでもいおうか、
とにかくのっぺりとした印象がそこには感じられた。
伊藤アンプではアルミの上にトランスや真空管などがレイアウトされているのは、
いわば街並の1ブロックをきりとったジオラマのようにも感じる。
そういう目で見ると、真空管が立ち並ぶ位置は、街における広場のようにも見えてくる。
トランスを建物だとすれば、真空管は木に見えなくもない。
木は地中に根を張っている。
伊藤アンプではアルミの下部が、地中にあたる。
真空管ソケットがアルミに取り付けられ、
その端子にはワイヤーや抵抗、コンデンサーなどのリード線がハンダ付けされている。