Archive for category ケーブル

Date: 12月 28th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その20)

Record’s Bible(1977年度版)で、
ケーブルにおける電流密度について考える上で興味深いことを井上先生が書かれている。
     *
 スピーカーコードで音質が変化する好例としては、米ARのAR3−aシステムがある。このタイプは、出力音圧レベルが低く、アンプのパワーを要求する。まして、インピーダンスが約4Ωと低いため、普通の電源コードなどで結んで使うと、いわゆるモワッとしてスッキリしない音になりやすい。ところが、極めて太いコードを使い最短距離で結ぶと、見違えるほどクリアーになり広い部屋でパワーを入れて使うと、驚くほどクリアーで抜けがよく、スケールの大きな音を得ることができる。細いコードでは、せっかくのアンプのパワーがコードに食われてしまい、スピーカーに送り込まれず、スピーカーはDFの悪いアンプでドライブされていることになる。
 スピーカーコードの問題は、損失とDFだけの問題ではなく、多くの要素が含まれいてるが、各メーカーからの専用コードを使用してみると、確かに音質の改善に効果があるのは事実である。
     *
DFとは、いうまでもなくダンピングファクターのことだ。
別項「muscle audio Boot Camp(その13)」でも書いているように実効ダンピングファクターで捉えると、
スピーカーケーブルの太さの違いによる直流抵抗値の違いは、
スピーカーユニットからすれば、それほどの差となってあらわれるわけではない。

もちろんスピーカーシステムからすれば、
スピーカーケーブルを含めたダンピングファクターは数値的には大きな違いとなるが、
私は実効ダンピングファクターで捉えるべきだ、と考える。

私はARのスピーカーを鳴らした経験がない。
ARのスピーカーシステムの音も、ほんのちょっと聴いたことがあるだけで、
井上先生が書かれているような音の変化を体験しているわけではない。

井上先生が書かれている《極めて太いコード》とは、どのくらいの太さなのだろうか。
1977年当時の一般的なケーブルよりも、かなり太いという意味であろう。

AR3aを細いケーブルと太いケーブルで鳴らす。
太いケーブルは最短距離で接続しているわけだから、短い。
細いケーブルは、一般的な長さ、というところか。

具体的な長さについては書かれていないが、
太いケーブルの長さは長くても1m程度だろう。
細いケーブルは3m以上、5m程度だろうか。

太いケーブルと細いケーブルでのAR3aの音の違いは、音量は同じに設定してのことのはず。
そう仮定して、井上先生の文章を電流密度という観点から読めば、
細いケーブルの場合は電流密度は高く、
太いケーブルの場合は電流密度は低い、ということになる。

Date: 11月 26th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(エレクトロルーブ)

ケーブルについて書いているところで、
エレクトロルーブといえば接点復活材を思い出す人の方が大半だろうが、
私が最初に使ったエレクトロルーブの製品は、接点復活材ではなく、
コンデックという製品だった。

1980年ごろに出ていた。
S104(クリーニング用ソルベント)とH104(導電性塗料)、
塗布用ブラシ二本がセットとなっていた。

まずケーブルの外皮をS104でクリーニング(脱脂)した後に、H104を塗布。
乾燥すれば作業は終了である。

導電性塗料からもわかるように帯電防止の製品である。

スピーカーケーブルに塗った。
高校生のころで、ケーブルの長さは2mくらいだったか。

S104で脱脂してH104を塗る。
難しい作業ではなかったが、時間はけっこうかかった。
H104はカーボン系のようで、黒かった。

エレクトロルーブの接点復活材は、
そのころ欧米のオーディオメーカーで使われている、と広告で謳われていた。
たしか米軍でも使われている、と広告に書いてあったと記憶している。

なのでいかがわしいものではないと信じていた。
効果は、確かにあった。

ケーブルの外皮が、特に帯電しているという感じはなかったけれど、
それでもH104を塗ったことによる変化は大きかった。

となれば、それだけケーブルの外皮は帯電していたことになり、
帯電が音に少なからぬ影響を与えるものだ、とそのころ認識した。

なので、帯電しやすい材質を使っているケーブルは、疑ってかかる。

Date: 11月 15th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その17)

1980年代後半は、MC型カートリッジの光悦が、
幻の存在のように扱われはじめた時期である。

1970年代のHI-FI STEREO GUIDEに、光悦は掲載されている。
当時は、会社名は武蔵野音響研究所で、光悦が型番だった。

特別に高価なカートリッジではなかった。
1970年代は32,000円だった。
1981年には50,000円と80,000円とがあった。

その光悦が、いつのころからか、高価なカートリッジとなっていった。
光悦そのものについて、ここで書くつもりはない。

ただそのころ光悦は発電コイルに銀クラッド線を採用していた。
銀メッキではない。

光悦のカートリッジもまたラジオ技術で取り上げられることが多かった。
たいてい五十嵐一郎氏が新製品として紹介記事を書かれていた。

そのころのラジオ技術は手元に一冊もないので記憶に頼るしかないが、
銀クラッドの光悦の、五十嵐一郎氏の評価はなかなか良かったはずだ。

銀線と銀クラッド線は違うのはわかっている。
銀クラッド線のケーブルは聴いたことがない。
銀クラッドの光悦も聴いたことがない。

ただ五十嵐一郎氏の文章を読んでいると、
銀線の音を好まれていたるのかも……、と思ったことが何度もある。

実際のところ、どうだったのだろうか。

Date: 11月 14th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その16)

1980年代の後半になってからだったと記憶しているが、
ラジオ技術にアルミニウム線のことが記事になるようになった。
五十嵐一郎氏が度々書かれていた。

たしかオヤイデが純度の高いアルミの単線を扱うようになったからである。

五十嵐一郎氏の記事、
といってもアルミ線そのものの試聴記事というよりも、
新製品の試聴記事の中で、アルミ線について触れられていたのが主だった、と記憶している。

読みながら、アルミ線の音は、銀線の音にどこか共通するような印象を受けることが、
何度かあった。

ここでの銀線の音というのは、あくまでも私の中だけのものであって、
銀線ほど人によって印象は大きく違っているようだから、
銀線とアルミ線の音に共通するような因子がある感じる人もいれば、
そんなことはないという人もいるだろう。

そのくらい銀線の音の印象は違うのは、
当時銀線と謳われて市場に出廻っていたものは、それこそ千差万別だだったようである。
表面だけ銀という、なかばマガイモノの銀線もあったときいている。

それに銀線の純度もさまざまだったらしい。
もっとも純度が高いから、いい音がするとは思っていないけれど、
銀固有の音は、やはり純度が高いほど出てくるのだろうか。

とにかく五十嵐一郎氏のアルミ線の印象が、
少なくとも私の中では銀線の印象と重なっているところがあり、
そのことが銀線とアルミ線は、色が似ている、ということにつながっていった。

Date: 10月 25th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その11の補足)

巻線に銀を使った昇圧トランスは、過去にいくつかあった。
ラックスの8020(ハイインピーダンス用)、8030(ローインピーダンス用)は、
一次巻線に銀を使っている。二次巻線はリッツ線ということだから、おそらく銅であろう。

ダイナベクターDV6Aは、一次、二次巻線ともに銀線のはずだ。
しかもDV6Aの一次巻線には中点タップがあり、上部スイッチにより中点接地が可能。
つまりバランス入力に対応していた。

これらの製品が登場した1970年代後半は、
いまふりかえっても銀線ブームのはじまりだった、といえよう。

Date: 10月 16th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その15)

セレッションのSL6のトゥイーターのダイアフラムは銅だった。
それまでのイギリスのスピーカーのトゥイーター、スコーカーに使われるドーム型は、
たいていがソフトドームだった。

金属ダイアフラムのハードドームは、イギリスのスピーカーとしては珍しかった。
しかも銅である。
たいていはアルミ。SL6クラスの価格帯のスピーカーであれば、アルミが大半といえた。

セレッションはSL6の開発にあたり、レーザーを使い振動板の振動モードの、
それも動的な解析を行った、と聞いている。
ということは、動的な解析の結果の銅だと考えていい。

SL6はSL600に進化し、
SL6Sに改良されている。
SL6Sでは銅からアルミになっている。

SL6とSL6Sの違いは、トゥイーターのダイアフラムの違いだけなのだろうか。
ネットワークも少しは変更しているのだろうか。
どうだったろうか。

音は違う。
SL6Sの方が改良モデルといわれれば、納得するような音の違いがあった、と記憶している。
やはり銅は、アルミよりも重たいのか、と思うところが、音にあった。
反面、銅のほうが、ある種の粘り的な要素を感じさせるところもあり、
鳴らし込んでいくのであれば、銅の方が面白いかな、と思わせる。

この時だった。
ある人と銀線の話になった。
銅線と銀線の音の違いに何に由来するものなのか、とたずねられた。

「色が違うから」と答えた。
その人は、私が冗談をいっていると思ったようだったが、
私としては、真面目に答えていた。

銅のダイアフラムとアルミのダイアフラムの音の違い、
銅線と銀線の音の違いに、どこか共通するところを感じたから、
「色が違うから」と答えたわけだ。

アルミと銀の色は、銅とははっきりと違う。

Date: 10月 14th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その14)

銀をスピーカーシステム内の信号経路のほとんどに使ったからといって、
ただそれだけで素晴らしいスピーカーシステムができあがるわけではないことは、
承知している──、それでも……、といいたくなるところが銀の魅力かもしれない。

YL音響にDG18000Yというトゥイーターがあった。
同社のドライバーの型番はDのあとに数字が並ぶ。
DG18000Yのシリーズには、D18000Yもあった。

Gがつくかつかないのかの違いは、ダイアフラムにある。
DG18000Yは、18mmφの純銀箔のダイアフラムである。
ボイスコイルも当然銀線である。

コンプレッションドライバーのダイアフラムの材質は、
金属系ではアルミが古くから一般的で、チタンやベリリウムなどが使われる。

銀をダイアフラムにしたユニット(ドライバーに限らず)は、あっただろうか。
銀は導体抵抗は低くても、チタンやベリリウムと比較すれば重い金属である。

軽くて剛性の高い材質が使われるのに、
YL音響はあえて、やや重い銀を使っている。
YL音響によれば、銀にした場合、他の材質に比べて約1.5dB程度の感度の低下が生じる、とのこと。

それでもYL音響は、銀を採用している。
DG18000Yは1990年代後半、一本250,000円だった。
D18000Yは175,000円だった。

ダイアフラムを銀にするメリットは、どのあたりにあるのだろうか。
答はDG18000YとD18000Yをじっくり聴いてみれば、ある程度はつかめるだろうが、
もうそんな機会はやってこない。

思うに、銀にはそれだけのオーディオ的魅力がある、ということなのだろう。
DG18000Yの開発者も、そのひとりなのだろう。
銀の魅力にとらわれてしまったのかもしれない。

もしかすると市販するつもりはなく、
ダイアフラムを銀にしたドライバーを試作したのかもしれない。
音を聴いて、製品化しただけなのかも……、という想像もできる。

Date: 10月 14th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その13)

Silver Signature 25は、どんな音だったのか。
私は聴く機会がなかった。

ステレオサウンドには、
108号で柳沢功力氏が新製品紹介の記事を書かれている。

109号、Components of the year賞に選ばれている。
ここでの山中先生の発言が、個人的にはもっとも興味深いし、
音の片鱗のようなものが伝わってくる。
     *
山中 このスピーカーを聴いたときに、とても驚きました。
 どこにも空白がないというくらい、物凄く密度の濃い音で、中身が非常に詰まっている。しかも、ダイレクトラジエーターのスピーカーで、音圧レベルがかなり高くとれるんですね。
 とくに中高域で、人の声を張り上げるところなど、非常に厳しいソースを鳴らしても、いままで考えられないようなクリアーさで鳴ってしまう。
     *
厳しいソースを、いままで考えられないようなクリアーさで鳴らしてくれるのは、
徹底した銀を使ったことのメリットなのだろうか。
そうとも読めるし、まったく関係ないことともいえるかもしれないが、
私は、銀の徹底使用のメリットだ、と思って読む。

さらに山中先生は、こう発言されている。
     *
山中 とにかく、このスピーカーはコンパクトサイズでありながら、音はビッグスピーカーのそれですよ。ワーグナーがちゃんと聴けるんですから。
     *
《ワーグナーがちゃんと聴ける》、
このひとことだけで、Silver Signature 25が欲しくなってしまう。

Date: 10月 13th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その12)

B&Wは、Silver Signature 25の開発時、アンプはどうしていたのだろうか。
銀線使用のアンプで鳴らしていたのか、
それともそんなことは関係なく、
Silver Signature 25以外のスピーカーの開発に使われるアンプだったのか。

Silver Signature 25のころ、日本の輸入元はマランツになっていた。
B&Wの輸入元は、1970年代はラックスだった。
1980年ごろ今井商事にかわり、1983年ごろにナカミチ、その後がマランツである。

1983年に出たステレオサウンド別冊THE BRITISH SOUNDをみても、
当時のB&Wがどんなアンプを使っていたのかは載っていない。
ちなみに当時のKEFはナカミチのセパレートアンプで、
プレーヤーはテクニクスのSP10MK2である。

おそらく銀線使用のアンプではなさそうである。
ならば、なぜB&Wは銀線の徹底使用を実現しようとしたのだろうか。

無線と実験2017年6月号の柴崎功氏の記事には、
《結婚25周年の銀婚にちなんで、創立25周年記念モデルとして開発された銀づくし》とある。

一方CDジャーナル別冊「オーディオ名機読本」で小原由夫氏は、次のように書かれている。
     *
 テクノロジーや新材料の発展に対して常にアンテナを張っていたバウワースが、後に全力を傾けて取り組んだのが『銀』である。
(中略)
 銀は、地球上のすべての金属の中で、もっとも電気抵抗が低い。つまり、もっとも電気が通りやすい金属である。バウワースにそこに目をつけた。ただし、オーディオに銀を持ち込んだのは、何もバウワースが史上初というわけではない。それこそオーディオの草創期から、銀は電気を伝える導体として様々な形で応用されてきた。しかし、銀が主流となり得ないのは、コストや耐久性、実用性などの点で、とても銅にかなわないからである。さらに、銀固有の音質的クセがあると一部は指摘されていた。
 バウワースは、ここでも意地と信念、こだわりを大いに発揮する。オーディオの先達が決して十全に使いこなしたとは言い難い銀を徹底的に分析し、それをスピーカーを構成するあらゆる伝送路に使ってみよう、と……。バウワースは、寝食を忘れ、夢中になって銀の可能性に取り組んだ。
 しかしバウワースは、自身の手でその思いを全うすることはできなかった。1988年1月、志半ばにして、その65年の生涯に静かに幕を降ろしてしまったのである。
 彼の意地と信念とこだわりは、成就することなくそこで途絶えてしまうかのように見えたが、B&Wの後継者たちによって、彼のイズムは後に見事に花開くことになる。
     *
B&Wは1966年に創立されている。
創立25年は1991年。その三年前にバウワースは亡くなっているわけだ。

バウワースは、いつごろから銀の可能性に取り組みはじめたのかは、
小原由夫氏の文章のどこにも書いてない。

志し半ば、とまで書いてあるから、一年程度はないように思える。
少なくとも数年間は取り組んでいたのだろうか。

Date: 10月 11th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その11)

マークレビンソンML6のように内部配線をすべて銀線にしたところで、
アンプを構成する部品全体からすれば、それは一部にすぎない。

それでも銀線の音は、アンプの音として反映されるとはいえ、
Silver Signature 25ほどの徹底した銀使用とはいえない。

アンプも抵抗、コンデンサー、トランジスターを銀リードにしたものを部品メーカーに発注する、
電源トランスの巻線を銀線にする、
どれだけのお金がかかるかは検討がつかないが、
ここまでは可能だとしても、プリント基板のパターンを銀にするとなると、
さらに大変なことになろう。

部品点数の極端に少ないアンプ、
具体例としてはFirst WattのSIT1、SIT2ならば、
信号経路を徹底して銀線化していくことはできなくもないだろうが、
一般的な部品点数のアンプでは、まず無理といってもいい。

だから考えるのは、パワーアンプを真空管式として、
出力トランスの二次側コイルを銀線にする、ということだ。

両端に銀によるコイルを持つ閉じた回路(ループ)内は、
スピーカーがSilver Signature 25ならば、ほぼ銀線といえる。

同様にアナログプレーヤーならば、昇圧トランスの一次側巻線を銀線にする。
そうすれば、こちらも両端に銀によるコイルをもつ閉じた回路ができる。

つまり音の入口と出口に、それぞれ閉じた回路をもつシステム、
それもどちらの閉じた回路も銀線によって構成されている。

システムの銀線化は、このあたりが現実的といえる。

Date: 10月 11th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その10)

瀬川先生がステレオサウンド 52号に書かれたマークレビンソンのML6の音のこと。
     *
 ともかくML6の音は、いままで聴きえたどのプリアンプよりも自然な感じで、それだけに一聴したときの第一印象は、プログラムソースによってはどこか頼りないほど柔らかく聴こえることさえある。ML6からLNPに戻すと、LNPの音にはけっこう硬さのあったことがわかる。よく言えば輪郭鮮明。しかしそれだけに音の中味よりも輪郭のほうが目立ってしまうような傾向もいくらか持っている。
     *
《どこか頼りないほど柔らかく》、
当時の私にとって、この音の表現が、銀線のイメージとすぐさま結びついてしまった。
なにかの広告で読んだのだと記憶しているが、
銀線の音のイメージとして、ML6の《どこか頼りないほど柔らかく》というのが、
ほとんどそのままあったからだ。

当時、高校生だったし、銀線の音は聴いたこともなかった。
文字と銀という金属の色からのイメージだけで、なんとなく銀線の音を想像していた時期であった。

それはどこか女性的な音のイメージでもあった。
銀線の音のイメージがそうであったから、
銅線の音は対照的に、私のなかでは男性的な音のイメージを、なんとなく持っていた。

もちろん、銅線、銀線の音は、そう単純なものではないのだが、
それでもどこか銀には、優雅というイメージがついてくるし、
それだけでなくいぶし銀という音の表現からは、
決して前へ前へ、と出しゃばってこない音のイメージとも結びついていた。

Silver Signature 25は、どんな音なのだろうか。
Silver Signature 25も単体で音が鳴るわけではない。

アンプ、プレーヤーと組み合わせなければ音は鳴ってこない。
アナログプレーヤーならば、発電コイルが銀線のモノはあるし、
トーンアームのパイプ内配線も銀線のモノがあるだろうし、
銀線に交換することもできないわけではない。
出力ケーブルも銀線で揃えられる。

音の入口と出口は、銀線で固められる。
けれどアンプとなると、そう簡単にはいかない。

Date: 10月 11th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その9)

Silver Signature 25は2ウェイのスピーカーシステムで、
砲弾型のトゥイーターがエンクロージュアの上に乗っかるスタイルだ。

このスタイルのB&Wのスピーカーシステムは、
ユニットはインライン配置になっているが、Silver Signature 25はトゥイーターがオフセットしている。

このことはトゥイーターの逆相接続とも関係しているように思える。
銀リードのコンデンサーの容量が3.3μFだけということで、
ネットワークの設計にそうとうに苦労していることが、
トゥイーターのオフセットとも関係しているのではないだろうか。

他の値の容量の銀リードのコンデンサーが用意できていれば、
ネットワークの定数も違ってきたはずだし、
トゥイーターも正相接続で、インライン配置になっていたであろう。

そこまでして銀の使用に徹底的にこだわっているのがSilver Signature 25であり、
銀は導体抵抗の低い金属であるが、そのことだけが、
ここまで銀にこだわらせた理由ではないはずだ。

音的にあきらかなメリットを感じていたからこそ、の、
Silver Signature 25の誕生であったはずである。
(ハンダもやはり銀入りなのだろう)

銀銭の音については、メリットもデメリットもいわれてきている。
それが事実なのかどうかは、ケーブルの音は、それ単体で評できるわけでもなく、
はっきりとしたことは誰にもいえないのだが、
一部否定的な意見としては、本来あるべき音の力がわずかとはいえ損われる──、
そんなふうにいわれている。

もっともこのことさえも、
当時から、銀の純度があまり高くないからだ、という説もあったし、
銅があたりまえのシステムに銀をわずかに持ち込むからであって、
銀線化を徹底していけば、そういう面もなくなる──、
そんなこともいわれていた。

Date: 10月 10th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その8)

久しぶりに買っていた無線と実験の6月号に、
B&Wのスピーカーシステムの記事(柴崎功氏による連載)が載っていたことに気づいた。
Silver Signature 25のネットワークの回路図も載っていたはず、と、
ひっぱり出して開いてみると、載っていた。

ネットワークを構成する部品は、
コンデンサーが三個、コイルが二個、抵抗が一個である。
コンデンサーは三個とも3.3μFである。

これは銀線リードのポリプロピレンコンデンサーが高価なため、
3.3μF一種類しか確保できなかったため、と記事にはある。

そのためネットワークの設計には苦労があったようだ。

ウーファーは28mHのコイルが直列に入るだけの、スロープ特性6dBの構成、
ウーファーに対し、1Ωの抵抗と3.3μFのコンデンサーを直列にしたものが並列に接続されている。

記事には抵抗については触れられていないが、
抵抗は並列接続されていること、
ローパスフィルターを形成しているわけでなく、
ダンピング抵抗として作用することもあってだろう、
どうも銀線リードではないようにも受け取れる。

Silver Signature 25のカタログのスペック欄にも、純銀ワイヤー・インダクター、
純銀リードポリプロピレン・キャパシターとはあるが、
純銀リード・レジスターの記載はない。

トゥイーター用のハイパスフィルターは、
3.3μFのコンデンサーが二個直列に挿入されている。
ふたつのコンデンサーの中点に0.12mHのコイルが並列に接続されている。

トゥイーターは逆相接続となっている。

Date: 10月 9th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その7)

(その6)で書いているように、
オルトフォンのSPU-Gold、SMEの3012-R Proを組み合わせて、
出力ケーブルも3012-R Pro付属のモノを使えば、
カートリッジの発電コイルからトーンアーム内配線、出力ケーブルまで、
すべて銀線ということになる。

マークレビンソンのML6は、銀線使用ということでも話題になったが、
それはあくまでも内部配線材だけであって、プリント基板のパターンまで銀になっていたわけではない。

マークレビンソンのラインケーブルも銀線のモノもあった。
それらを使ったとしても銀以外の金属が存在しているし、
銀以外の金属の方が割合としても多い。

徹底的に銀を採用したオーディオ機器といえば、
B&Wの創立25周年記念モデルとして登場したSilver Signature 25がある。
(Silver Signature 25も、KEFのModel 107と同じで25周年モデルなのか、と思う)

スピーカーシステムで銀線使用と謳われていれば、
せいぜいが内部配線材が銀線になったくらいだと思いがちだ。
もう少し徹底した場合であれば、ボイスコイルも銀線にするかもしれない。

それ以上となると、かなり実現は困難といえよう。
スピーカーシステムを構成する部品で、信号が通過するところうすべて銀にするには、
接点を含めて、コンデンサーや抵抗のリード線までも銀線とする必要がある。
B&WはSilver Signature 25において、それを実現している(はずである)。

少し曖昧な書き方になったのは、
実物を見たことはあるけれど、その内部まで見たわけではないからだ。
それでも、これ以上、銀ということに徹底したオーディオ機器は、いまのところないはずだ。

Date: 9月 20th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(KEF 107の場合)

KEFのModel 107の取り扱い説明書とカタログも、手元にある。
どちらも英文である。

107の取り扱い説明書(INSTALLATION MANUAL)に、
SPEAKER CONNECTIONSという項目がある。

そこには、次のように書いてある。
     *
The choice of cable to use with Model 107 is less critical than with most other loudspeakers owing to the resistive nature of load it presents to the amplifier. The total resistance, however, should not 0.2 ohms.
     *
107は、他のスピーカーほどケーブルについてクリティカルではないが、
スピーカーケーブルの直流抵抗が0.2Ω以下であるように、と書いてある。

そして表があり、ケーブルの太さと、1m当りの直流抵抗、
それから0.2Ωとなる長さが記載されている。

この表によれば、AWG18の太さであれば、4.7mまで使える。
AWG8となると太くなる分、48.8mで0.2Ωとなる。

これを厳密に守らなければならないわけではないが、
こうやってひとつの指針を示しているのは、
KEFらしい、というか、レイモンド・クックらしい、というべきか、
それとイギリスのメーカーらしい、と感じる。

最近のKEFの取り扱い説明書は、どうなのだろうか。
こういう項目は、すでにないのか。
それともまだあるのか。
あるとすれば、どんなことが書かれているのか。