Archive for category ケーブル

Date: 7月 18th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その2)

ビクターのスーパースピーカーケーブルが登場したころ、
インピーダンス表記をしていたスピーカーケーブルは他にあっただろうか。

1970年代も終りのころになると、
オーディオニックス、ソニーからも、インピーダンス表記をしたスピーカーケーブルが登場した。

オーディオニックスのケーブルは、
ビクターのスーパースピーカーケーブルに構造的に近い、というか同じといっていい。
0.18mmの6本撚りの十二芯構造で、インピーダンスは9.15Ωと発表されている。

ソニーのスピーカーケーブルは、
リッツ線を芯線とする同軸ケーブルを二連にした構造で、インピーダンスは8.5Ω。

私が知っている範囲ではこれだけだが、他にもあったのだろうか。
カタログにはインピーダンス表記はないが、
メルコのスピーカーケーブルの構造は、
0.18mmの12本撚りの二十四芯なので、ビクター、オーディオニックスと近い値のはず。

これらのスピーカーケーブルのどれも聴いていない。
周りに使っていた人もいない。
実際のところ、音はどうだったのか。

インピーダンスだけでケーブルの音が決定的になるわけではないが、
興味としてはあるし、現在の高価なスピーカーケーブルで、
インピーダンスを発表しているところはあるのだろうか。
これも気になっている。

Date: 7月 17th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その1)

BTS(放送技術規格)にもスピーカーケーブルの項目はある。
一芯あたり0.18mm径の30本撚りの、二芯平行ケーブルとなっている。

つまり赤黒の一般的なケーブルが、これにあたる。
このケーブルの場合、インピーダンスは110Ωくらいになる。

スピーカーシステムのインピーダンスは、4Ωから16Ωくらいである。
その意味ではインピータンスマッチングはとれていない。
それにもともと駆動源であるパワーアンプの出力インピーダンスは、
トランジスターアンプであれば、0.1Ωを切るほどに低い。

ここにインピーダンスマッチングの考えは、ないともいえるのだが、
スピーカーケーブルのインピーダンスがスピーカーのインピーダンスよりもかなり高いということは、
ケーブルでの減衰が発生することになる。

1970年代にビクターが発売していたスーパースピーカーコード(JC1100シリーズ)というのがある。
0.18mm径の7本撚りを十六芯平行ケーブルにしたもので、
このスピーカーケーブルのインピーダンスは13Ω程度とかなり低くなっていた。

ではこのスーパースピーカーコードは、理想に近いといえたのか。
少なくとも一般的なケーブルよりもインピーダンス的にはそういえなくもないが、
ビクターのこのケーブルだと、アンプが発振する場合もある、と聞いている。

プロ用機器のラインレベルでは、インピーダンスマッチングについて、
昔の機器であれば重要であったことは確かだ。

MC型カートリッジの昇圧トランスにおいても、
場合によってはインピーダンスマッチングがかなり有効なこともある。

ならばスピーカーにおいても──、
とつい考えたくなるが、ここにおいてはまだ答を出せずにいる。

Date: 7月 8th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(Aleph 3の場合)

7月のaudio wednesdayでは、
別項で書いているようにパワーアンプはPASSのAleph 3。

このアンプを使われている方ならば、
リアパネルを見たことのある人ならば、スピーカーケーブルの接続が、
難しい、やっかいとまではいかないものの、
少し面倒なことは確かなのはわかっているはず。

ヒートシンクで囲まれている筐体のどこに、
入出力端子、電源スイッチ、ACインレットがあるかというと、
ヒートシンクとヒートシンクの、わずかな隙間に垂直方向に配置されている。

この隙間の幅が広ければ何の問題もないのだが、狭い。
しかもスピーカー端子の取り付け方向から、ケーブルは上下から差し込むのではなく、
左右から差し込まなければならない。

スピーカー端子とヒートシンクの間は、それこそほんのわずかであり、
被覆を剥いたスピーカーケーブルの先端は直角に曲げなければ、
スピーカー端子の穴に入れることはできない。

つまり太いスピーカーケーブルは物理的に無理な端子の配置である。
末端処理をYラグでやったとしても、そのYラグを直角に曲げなければならないし、
それでも太いケーブルはかなり難儀するはずだ。

もちろんバナナプラグを使えば、ある程度の太いケーブルまでは楽に接続できる。
でも、私はバナナプラグ、
それも太いケーブルに対応した見た目が立派すぎるバナナプラグを、
決していいとは思っていない。

往々にしてキャラクターの強い音が、それらのバナナプラグを使うと乗ってしまうからだ。
それを、音が鮮明になった、と喜べる人はそれでいいと思う。

とにかく太いスピーカーケーブルだと面倒なことはわかっていたので、
最初から細いスピーカーケーブルを買ってきた。

オーディオテクニカのAT365Sという、細いスピーカーケーブルだ。
ここまで細くなくともいいが、細いケーブルでいいと思う。

Aleph 3の出力は8Ω負荷で30Wである。
このくらいの出力なのだから、このくらいの細さのスピーカーケーブルで十分だよ、
設計者のネルソン・パスがそういいたげなAleph 3の入出力端子の配置である。

Date: 2月 17th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・余談その2)

スピーカー端子もコイズミ無線で購入したもので、
いわゆる普及タイプのもので、特に凝った造りの端子ではない。

ファストン端子も含め、端子はそこに使われている材質、構造が音に影響する。
端子が介在することによる音への影響を積極的に利用するという手もあるが、
今回銀線を選択したこともあって、できるだけ端子に起因する音の影響を排除したかった。

いろんなケースで検証したわけではないが、銀線の音の印象を良くしていくには、
できるかぎり端子による音への影響を排除していくのがいいように感じている。

もっとも銅線でも同じなのだが、特に銀線はその傾向が強いのではないだろうか。

今回のスピーカーでは、内部配線の銀線をスピーカー端子に取り付けているわけではない。
エンクロージュアの外まで銀線をひっぱり出して、
アンプから来ているスピーカーケーブルとともに、スピーカー端子の穴に通している。

つまりスピーカーケーブルと銀線が直に接触している。
そのためのスピーカー端子、つまり固定用としての端子の使い方だ。

もちろん内部配線に使っている銀線をさらに長くして、
アンプの出力端子までもってくるという手もあるが、今回は上記のやり方をとった。

こまかなことではあるが、この手の配慮は確実に音に効いてくる。
トゥイーターを追加しているが、もちろんトゥイーターへの配線も銀線を使い、
スピーカー端子のところで、三本の線を接触させている。

普及クラスのユニット、普及クラスのエンクロージュア、
普及クラスの端子などを使っているが、
普及クラスだから、配慮をしなくていいわけではない。

普及クラスだからこそ、意を尽くしたい。

Date: 2月 16th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・余談その1)

別項「オーディオの楽しみ方(つくる)」で書いているスピーカーの内部配線材は、
銀線、それも単線のかなり細いものを使っている。

しかもかなり余裕をもたせた長さにしている。
ファストン端子は使っていない。
ユニットの端子に銀線をハンダ付けしている。

スピーカーケーブルの末端処理をする。
どんな端子、高価で立派そうに見える端子であっても、
むしろそういう端子のほうが、キャラクターの強い音にしてしまう傾向がある。

そんな傾向がのるのをわかったうえでやっているのであれば、
それはそれでひとつのやり方ではあると思うが、
私はできるだけ、こんなところで強いキャラクターをのせたいとは考えない。

ファストン端子は便利ではある。
でも、ファストン端子を使うのと使わないのとでは、音の差が生じる。
わずかな違いだろう、といわれても、使わない音を一度でも耳にしていれば、使いたくない。

今回使ったエンクロージュアは完成されたモノだから、
フロントバッフルも裏板も接着されていて外せないから、
最初の組立て後に、いろいろやっていこうと考えていたから、内部配線材は長めにした。

それに長めにすることで積極的に銀線の音を活かしたいという気持もある。
それがどのくらい効いているのかは、短くした状態の音を聴いていないので、
なんともいえないが、少なくとも最短距離にしてピンと張ってしまうよりは、
余裕をもたせた状態のほうが好ましい結果が得られることは、
ケーブルの種類に関係なくいえることだ。

ファストン端子を使わないことを徹底する意味でも、
スピーカー端子のところも一工夫している。

Date: 12月 30th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その21)

送り出し側が600Ω負荷でも問題としなければ、
600Ωラインが音がいい、とは昔からいわれていることである。

もっとも600Ωにするために送り出し側にトランスを入れることを問題視する人もいるが、
トランスなしでも600Ωラインは可能であり、600Ω出しの600Ω受けはひとつのスタンダードだった。

600Ω負荷では、ラインケーブルに流れる電流は、ハイインピーダンス受けよりも電流が多く流れる。
つまり電流密度が高くなる状態だ。

そのことが600Ωラインの音の良さ、と説明する人は昔からいた。
600Ωラインにすれば、ケーブル、接点の影響も受けにくくなる、ということもいわれていた。

たしかにそう感じることはある。
けれど一方で、受け側のインピーダンスを、SUMOのThe Goldのように1MΩまで高くすると、
当然ラインケーブルに流れる電流密度はぐんと低くなる。

ならばケーブルや接点の影響を受けやすくなるかというと、
理屈ではそうではない。

たとえば接点。
接点のもつ接触抵抗の影響を受けにくくするには、電流を小さくすることはひとつの手である。
接触抵抗に電流をかけあわせた値、つまり電圧が発生して悪影響を与える。

接触抵抗が同じであれば電流が小さいほど、発生する電圧も低くなる。
これはケーブルのもつ直流抵抗に関しても、同じことがいえる。

The Goldを使っていたとき、最初はバランス入力で鳴らしていた。
しばらくしてGASのThaedraで鳴らすようになった。
アンバランスで、1MΩ受けとなる。

Thaedraのラインアンプは、小型スピーカーならばパワーアンプなしに鳴らせるくらいに、
終段のトランジスターにたっぷりと電流を流している設計で、
コントロールアンプとは思えぬほどシャーシーは熱くなる。

そうThaedraにとっては、受け側のインピーダンスの低さは問題にならないはずである。
けれどThaedraで鳴らしたThe Goldの音は、いろいろと考えさせるほどに見事な音だった。

Date: 12月 28th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その20)

Record’s Bible(1977年度版)で、
ケーブルにおける電流密度について考える上で興味深いことを井上先生が書かれている。
     *
 スピーカーコードで音質が変化する好例としては、米ARのAR3−aシステムがある。このタイプは、出力音圧レベルが低く、アンプのパワーを要求する。まして、インピーダンスが約4Ωと低いため、普通の電源コードなどで結んで使うと、いわゆるモワッとしてスッキリしない音になりやすい。ところが、極めて太いコードを使い最短距離で結ぶと、見違えるほどクリアーになり広い部屋でパワーを入れて使うと、驚くほどクリアーで抜けがよく、スケールの大きな音を得ることができる。細いコードでは、せっかくのアンプのパワーがコードに食われてしまい、スピーカーに送り込まれず、スピーカーはDFの悪いアンプでドライブされていることになる。
 スピーカーコードの問題は、損失とDFだけの問題ではなく、多くの要素が含まれいてるが、各メーカーからの専用コードを使用してみると、確かに音質の改善に効果があるのは事実である。
     *
DFとは、いうまでもなくダンピングファクターのことだ。
別項「muscle audio Boot Camp(その13)」でも書いているように実効ダンピングファクターで捉えると、
スピーカーケーブルの太さの違いによる直流抵抗値の違いは、
スピーカーユニットからすれば、それほどの差となってあらわれるわけではない。

もちろんスピーカーシステムからすれば、
スピーカーケーブルを含めたダンピングファクターは数値的には大きな違いとなるが、
私は実効ダンピングファクターで捉えるべきだ、と考える。

私はARのスピーカーを鳴らした経験がない。
ARのスピーカーシステムの音も、ほんのちょっと聴いたことがあるだけで、
井上先生が書かれているような音の変化を体験しているわけではない。

井上先生が書かれている《極めて太いコード》とは、どのくらいの太さなのだろうか。
1977年当時の一般的なケーブルよりも、かなり太いという意味であろう。

AR3aを細いケーブルと太いケーブルで鳴らす。
太いケーブルは最短距離で接続しているわけだから、短い。
細いケーブルは、一般的な長さ、というところか。

具体的な長さについては書かれていないが、
太いケーブルの長さは長くても1m程度だろう。
細いケーブルは3m以上、5m程度だろうか。

太いケーブルと細いケーブルでのAR3aの音の違いは、音量は同じに設定してのことのはず。
そう仮定して、井上先生の文章を電流密度という観点から読めば、
細いケーブルの場合は電流密度は高く、
太いケーブルの場合は電流密度は低い、ということになる。

Date: 11月 26th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(エレクトロルーブ)

ケーブルについて書いているところで、
エレクトロルーブといえば接点復活材を思い出す人の方が大半だろうが、
私が最初に使ったエレクトロルーブの製品は、接点復活材ではなく、
コンデックという製品だった。

1980年ごろに出ていた。
S104(クリーニング用ソルベント)とH104(導電性塗料)、
塗布用ブラシ二本がセットとなっていた。

まずケーブルの外皮をS104でクリーニング(脱脂)した後に、H104を塗布。
乾燥すれば作業は終了である。

導電性塗料からもわかるように帯電防止の製品である。

スピーカーケーブルに塗った。
高校生のころで、ケーブルの長さは2mくらいだったか。

S104で脱脂してH104を塗る。
難しい作業ではなかったが、時間はけっこうかかった。
H104はカーボン系のようで、黒かった。

エレクトロルーブの接点復活材は、
そのころ欧米のオーディオメーカーで使われている、と広告で謳われていた。
たしか米軍でも使われている、と広告に書いてあったと記憶している。

なのでいかがわしいものではないと信じていた。
効果は、確かにあった。

ケーブルの外皮が、特に帯電しているという感じはなかったけれど、
それでもH104を塗ったことによる変化は大きかった。

となれば、それだけケーブルの外皮は帯電していたことになり、
帯電が音に少なからぬ影響を与えるものだ、とそのころ認識した。

なので、帯電しやすい材質を使っているケーブルは、疑ってかかる。

Date: 11月 15th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その17)

1980年代後半は、MC型カートリッジの光悦が、
幻の存在のように扱われはじめた時期である。

1970年代のHI-FI STEREO GUIDEに、光悦は掲載されている。
当時は、会社名は武蔵野音響研究所で、光悦が型番だった。

特別に高価なカートリッジではなかった。
1970年代は32,000円だった。
1981年には50,000円と80,000円とがあった。

その光悦が、いつのころからか、高価なカートリッジとなっていった。
光悦そのものについて、ここで書くつもりはない。

ただそのころ光悦は発電コイルに銀クラッド線を採用していた。
銀メッキではない。

光悦のカートリッジもまたラジオ技術で取り上げられることが多かった。
たいてい五十嵐一郎氏が新製品として紹介記事を書かれていた。

そのころのラジオ技術は手元に一冊もないので記憶に頼るしかないが、
銀クラッドの光悦の、五十嵐一郎氏の評価はなかなか良かったはずだ。

銀線と銀クラッド線は違うのはわかっている。
銀クラッド線のケーブルは聴いたことがない。
銀クラッドの光悦も聴いたことがない。

ただ五十嵐一郎氏の文章を読んでいると、
銀線の音を好まれていたるのかも……、と思ったことが何度もある。

実際のところ、どうだったのだろうか。

Date: 11月 14th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その16)

1980年代の後半になってからだったと記憶しているが、
ラジオ技術にアルミニウム線のことが記事になるようになった。
五十嵐一郎氏が度々書かれていた。

たしかオヤイデが純度の高いアルミの単線を扱うようになったからである。

五十嵐一郎氏の記事、
といってもアルミ線そのものの試聴記事というよりも、
新製品の試聴記事の中で、アルミ線について触れられていたのが主だった、と記憶している。

読みながら、アルミ線の音は、銀線の音にどこか共通するような印象を受けることが、
何度かあった。

ここでの銀線の音というのは、あくまでも私の中だけのものであって、
銀線ほど人によって印象は大きく違っているようだから、
銀線とアルミ線の音に共通するような因子がある感じる人もいれば、
そんなことはないという人もいるだろう。

そのくらい銀線の音の印象は違うのは、
当時銀線と謳われて市場に出廻っていたものは、それこそ千差万別だだったようである。
表面だけ銀という、なかばマガイモノの銀線もあったときいている。

それに銀線の純度もさまざまだったらしい。
もっとも純度が高いから、いい音がするとは思っていないけれど、
銀固有の音は、やはり純度が高いほど出てくるのだろうか。

とにかく五十嵐一郎氏のアルミ線の印象が、
少なくとも私の中では銀線の印象と重なっているところがあり、
そのことが銀線とアルミ線は、色が似ている、ということにつながっていった。

Date: 10月 25th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その11の補足)

巻線に銀を使った昇圧トランスは、過去にいくつかあった。
ラックスの8020(ハイインピーダンス用)、8030(ローインピーダンス用)は、
一次巻線に銀を使っている。二次巻線はリッツ線ということだから、おそらく銅であろう。

ダイナベクターDV6Aは、一次、二次巻線ともに銀線のはずだ。
しかもDV6Aの一次巻線には中点タップがあり、上部スイッチにより中点接地が可能。
つまりバランス入力に対応していた。

これらの製品が登場した1970年代後半は、
いまふりかえっても銀線ブームのはじまりだった、といえよう。

Date: 10月 16th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その15)

セレッションのSL6のトゥイーターのダイアフラムは銅だった。
それまでのイギリスのスピーカーのトゥイーター、スコーカーに使われるドーム型は、
たいていがソフトドームだった。

金属ダイアフラムのハードドームは、イギリスのスピーカーとしては珍しかった。
しかも銅である。
たいていはアルミ。SL6クラスの価格帯のスピーカーであれば、アルミが大半といえた。

セレッションはSL6の開発にあたり、レーザーを使い振動板の振動モードの、
それも動的な解析を行った、と聞いている。
ということは、動的な解析の結果の銅だと考えていい。

SL6はSL600に進化し、
SL6Sに改良されている。
SL6Sでは銅からアルミになっている。

SL6とSL6Sの違いは、トゥイーターのダイアフラムの違いだけなのだろうか。
ネットワークも少しは変更しているのだろうか。
どうだったろうか。

音は違う。
SL6Sの方が改良モデルといわれれば、納得するような音の違いがあった、と記憶している。
やはり銅は、アルミよりも重たいのか、と思うところが、音にあった。
反面、銅のほうが、ある種の粘り的な要素を感じさせるところもあり、
鳴らし込んでいくのであれば、銅の方が面白いかな、と思わせる。

この時だった。
ある人と銀線の話になった。
銅線と銀線の音の違いに何に由来するものなのか、とたずねられた。

「色が違うから」と答えた。
その人は、私が冗談をいっていると思ったようだったが、
私としては、真面目に答えていた。

銅のダイアフラムとアルミのダイアフラムの音の違い、
銅線と銀線の音の違いに、どこか共通するところを感じたから、
「色が違うから」と答えたわけだ。

アルミと銀の色は、銅とははっきりと違う。

Date: 10月 14th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その14)

銀をスピーカーシステム内の信号経路のほとんどに使ったからといって、
ただそれだけで素晴らしいスピーカーシステムができあがるわけではないことは、
承知している──、それでも……、といいたくなるところが銀の魅力かもしれない。

YL音響にDG18000Yというトゥイーターがあった。
同社のドライバーの型番はDのあとに数字が並ぶ。
DG18000Yのシリーズには、D18000Yもあった。

Gがつくかつかないのかの違いは、ダイアフラムにある。
DG18000Yは、18mmφの純銀箔のダイアフラムである。
ボイスコイルも当然銀線である。

コンプレッションドライバーのダイアフラムの材質は、
金属系ではアルミが古くから一般的で、チタンやベリリウムなどが使われる。

銀をダイアフラムにしたユニット(ドライバーに限らず)は、あっただろうか。
銀は導体抵抗は低くても、チタンやベリリウムと比較すれば重い金属である。

軽くて剛性の高い材質が使われるのに、
YL音響はあえて、やや重い銀を使っている。
YL音響によれば、銀にした場合、他の材質に比べて約1.5dB程度の感度の低下が生じる、とのこと。

それでもYL音響は、銀を採用している。
DG18000Yは1990年代後半、一本250,000円だった。
D18000Yは175,000円だった。

ダイアフラムを銀にするメリットは、どのあたりにあるのだろうか。
答はDG18000YとD18000Yをじっくり聴いてみれば、ある程度はつかめるだろうが、
もうそんな機会はやってこない。

思うに、銀にはそれだけのオーディオ的魅力がある、ということなのだろう。
DG18000Yの開発者も、そのひとりなのだろう。
銀の魅力にとらわれてしまったのかもしれない。

もしかすると市販するつもりはなく、
ダイアフラムを銀にしたドライバーを試作したのかもしれない。
音を聴いて、製品化しただけなのかも……、という想像もできる。

Date: 10月 14th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その13)

Silver Signature 25は、どんな音だったのか。
私は聴く機会がなかった。

ステレオサウンドには、
108号で柳沢功力氏が新製品紹介の記事を書かれている。

109号、Components of the year賞に選ばれている。
ここでの山中先生の発言が、個人的にはもっとも興味深いし、
音の片鱗のようなものが伝わってくる。
     *
山中 このスピーカーを聴いたときに、とても驚きました。
 どこにも空白がないというくらい、物凄く密度の濃い音で、中身が非常に詰まっている。しかも、ダイレクトラジエーターのスピーカーで、音圧レベルがかなり高くとれるんですね。
 とくに中高域で、人の声を張り上げるところなど、非常に厳しいソースを鳴らしても、いままで考えられないようなクリアーさで鳴ってしまう。
     *
厳しいソースを、いままで考えられないようなクリアーさで鳴らしてくれるのは、
徹底した銀を使ったことのメリットなのだろうか。
そうとも読めるし、まったく関係ないことともいえるかもしれないが、
私は、銀の徹底使用のメリットだ、と思って読む。

さらに山中先生は、こう発言されている。
     *
山中 とにかく、このスピーカーはコンパクトサイズでありながら、音はビッグスピーカーのそれですよ。ワーグナーがちゃんと聴けるんですから。
     *
《ワーグナーがちゃんと聴ける》、
このひとことだけで、Silver Signature 25が欲しくなってしまう。

Date: 10月 13th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その12)

B&Wは、Silver Signature 25の開発時、アンプはどうしていたのだろうか。
銀線使用のアンプで鳴らしていたのか、
それともそんなことは関係なく、
Silver Signature 25以外のスピーカーの開発に使われるアンプだったのか。

Silver Signature 25のころ、日本の輸入元はマランツになっていた。
B&Wの輸入元は、1970年代はラックスだった。
1980年ごろ今井商事にかわり、1983年ごろにナカミチ、その後がマランツである。

1983年に出たステレオサウンド別冊THE BRITISH SOUNDをみても、
当時のB&Wがどんなアンプを使っていたのかは載っていない。
ちなみに当時のKEFはナカミチのセパレートアンプで、
プレーヤーはテクニクスのSP10MK2である。

おそらく銀線使用のアンプではなさそうである。
ならば、なぜB&Wは銀線の徹底使用を実現しようとしたのだろうか。

無線と実験2017年6月号の柴崎功氏の記事には、
《結婚25周年の銀婚にちなんで、創立25周年記念モデルとして開発された銀づくし》とある。

一方CDジャーナル別冊「オーディオ名機読本」で小原由夫氏は、次のように書かれている。
     *
 テクノロジーや新材料の発展に対して常にアンテナを張っていたバウワースが、後に全力を傾けて取り組んだのが『銀』である。
(中略)
 銀は、地球上のすべての金属の中で、もっとも電気抵抗が低い。つまり、もっとも電気が通りやすい金属である。バウワースにそこに目をつけた。ただし、オーディオに銀を持ち込んだのは、何もバウワースが史上初というわけではない。それこそオーディオの草創期から、銀は電気を伝える導体として様々な形で応用されてきた。しかし、銀が主流となり得ないのは、コストや耐久性、実用性などの点で、とても銅にかなわないからである。さらに、銀固有の音質的クセがあると一部は指摘されていた。
 バウワースは、ここでも意地と信念、こだわりを大いに発揮する。オーディオの先達が決して十全に使いこなしたとは言い難い銀を徹底的に分析し、それをスピーカーを構成するあらゆる伝送路に使ってみよう、と……。バウワースは、寝食を忘れ、夢中になって銀の可能性に取り組んだ。
 しかしバウワースは、自身の手でその思いを全うすることはできなかった。1988年1月、志半ばにして、その65年の生涯に静かに幕を降ろしてしまったのである。
 彼の意地と信念とこだわりは、成就することなくそこで途絶えてしまうかのように見えたが、B&Wの後継者たちによって、彼のイズムは後に見事に花開くことになる。
     *
B&Wは1966年に創立されている。
創立25年は1991年。その三年前にバウワースは亡くなっているわけだ。

バウワースは、いつごろから銀の可能性に取り組みはじめたのかは、
小原由夫氏の文章のどこにも書いてない。

志し半ば、とまで書いてあるから、一年程度はないように思える。
少なくとも数年間は取り組んでいたのだろうか。