ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その21)
送り出し側が600Ω負荷でも問題としなければ、
600Ωラインが音がいい、とは昔からいわれていることである。
もっとも600Ωにするために送り出し側にトランスを入れることを問題視する人もいるが、
トランスなしでも600Ωラインは可能であり、600Ω出しの600Ω受けはひとつのスタンダードだった。
600Ω負荷では、ラインケーブルに流れる電流は、ハイインピーダンス受けよりも電流が多く流れる。
つまり電流密度が高くなる状態だ。
そのことが600Ωラインの音の良さ、と説明する人は昔からいた。
600Ωラインにすれば、ケーブル、接点の影響も受けにくくなる、ということもいわれていた。
たしかにそう感じることはある。
けれど一方で、受け側のインピーダンスを、SUMOのThe Goldのように1MΩまで高くすると、
当然ラインケーブルに流れる電流密度はぐんと低くなる。
ならばケーブルや接点の影響を受けやすくなるかというと、
理屈ではそうではない。
たとえば接点。
接点のもつ接触抵抗の影響を受けにくくするには、電流を小さくすることはひとつの手である。
接触抵抗に電流をかけあわせた値、つまり電圧が発生して悪影響を与える。
接触抵抗が同じであれば電流が小さいほど、発生する電圧も低くなる。
これはケーブルのもつ直流抵抗に関しても、同じことがいえる。
The Goldを使っていたとき、最初はバランス入力で鳴らしていた。
しばらくしてGASのThaedraで鳴らすようになった。
アンバランスで、1MΩ受けとなる。
Thaedraのラインアンプは、小型スピーカーならばパワーアンプなしに鳴らせるくらいに、
終段のトランジスターにたっぷりと電流を流している設計で、
コントロールアンプとは思えぬほどシャーシーは熱くなる。
そうThaedraにとっては、受け側のインピーダンスの低さは問題にならないはずである。
けれどThaedraで鳴らしたThe Goldの音は、いろいろと考えさせるほどに見事な音だった。