49号が一回目だったステート・オブ・ジ・アート(STATE OF THE ART)賞。
ここから、いまも続くステレオサウンドの賞の企画は始まった。
賞だから、選考委員がいる。
そして選考委員長がいる。
岡先生が、選考委員長だった。
誰もが納得する選考委員長といえた。
選考委員の誰もが、岡先生が選考委員長であれば納得したし、
岡先生以外に選考委員長として、まとめ役ができる人はいない、とも思えた。
ステレオサウンドの編集部の人たちも、
読者も、岡先生以外の選考委員長を思い浮べることはできなかったはずだ。
ステート・オブ・ジ・アートがコンポーネンツ・オブ・ザ・イヤーに、
名称が変更になっても、岡先生が選考委員長だった。
岡先生が亡くなられて、菅野先生が選考委員長になられた。
この時も、菅野先生以外、誰が選考委員長にふさわしいだろうか、という議論は起こらなかっただろう。
菅野先生がオーディオ評論の第一線から退かれて、
選考委員長は柳沢功力氏になった。
柳沢功力氏の選考委員長に、異を唱えたいわけでなはいが、
岡先生、菅野先生のときとは、ちょっと違うものを感じてしまう。
柳沢功力氏に失礼かもしれないが、いわば消去法で選ばれた選考委員長のような気がする。
他に誰もいないのだから……、そんな感じがしてしまうのは、私だけだろうか。
そう感じた人は、私と同じくらい、私よりも長くステレオサウンドを読んできた人のなかには、
すくなからずいた、ように思う。
こんなことを書いているけれど、
柳沢功力氏のほかに誰がいる、と問われれば、誰もいないのである。
そんなことはわかっているから、このことはこれまで書かずにいた。
にもかかわず、ここにきて書いているのは、
そろそろ選考委員長が変ってもおかしくない、と感じ始めたからだ。
柳沢功力氏は1938年1月生れだから、82歳と高齢である。
まだまだ元気な様子ではある。
それでも、ステレオサウンド編集部としては、次を考えているのではないだろうか。
人の寿命はわからない。
柳沢功力氏より若い人が先に亡くなることも珍しいことではない。
それでも、次の選考委員長について、何も考えていない、とは思えない。
それは編集者だけではないだろう。
ステレオサウンド・グランプリの選考委員になっているオーディオ評論家たちも、
次の選考委員長が誰になるのか、
まったく考えていないとは、思えない(私がそう勘ぐっているだけ、だろうか)。