Date: 7月 30th, 2022
Cate: 「オーディオ」考
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時代の軽量化(その19)

太った豚より痩せた狼であれ。
一時期、よくいわれていたものだ。

はっきりとは憶えていないし、
検索してみても、いつごろから、誰が言い始めたことなのかはっきりとしない。

私が十代の終りごろからハタチすぎくらいまでに、
よく見聞きしたように思う。

私の周りにも、真顔で「太った豚より痩せた狼であれ」という男がいた。
豚、狼というのが精神的な分類であることはわかったうえで、
ややひねくれたところのある私は、
豚なのか狼なのかは、本人には選べないし、
選べるのは太っているか、痩せているか──、ではないのか。

それを真顔でいう人に向って返したことはないけれど、
いま彼らは、どう思っているのだろうか。

(その18)で引用した菅野先生の文章は1975年のものだが、
まだそのころは私は「五味オーディオ教室」にであっていない。

なので「世界のオーディオ」のラックス号を読んだのは、
ステレオサウンドで働くようになってからである。

《肥った馬はやせていき、やせた馬は死んでいき、肥った豚が増えてくる。ついには、やせた豚と肥った豚だけの世の中になってしまう》、
ゆえに、ここのところではうんうんと頷いていた。

やせた豚と肥った豚だけの世の中。
そうなりつつある。

ひさしぶりに読みなおして、五十年近く前に書かれたこととは、
わかっていても、予言めいていると思うし、
ここで私は「時代の軽量化」をテーマにしているけれど、
それは近年のことではなく、ずっと以前から悪循環の輪なのかもしれない。

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