Archive for category アナログディスク再生

Date: 5月 15th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その2)

最初にいっておきたいのは、オーディオのプロフェッショナルではないのだから、
すべてのアナログプレーヤーを使いこせるようになる必要はない、ということ。

自分の使っているアナログプレーヤー、
それは愛着がもてて信頼できるプレーヤーを見つけて手に入れて、
そのアナログプレーヤー、ただ一機種の使いこなしに長けていればいい。

ターンテーブルの駆動が、
ベルドドライヴ、リム(アイドラー)ドライヴ、ダイレクトドライヴ、どの方式でもあってもいい、
トーンアームもダイナミック型なのかスタティック型なのか、軸受けはどの方式なのか、
これもきちんとしたモノであれば、それでいい、
カートリッジも同じである。MC型でなければならないとか、そんなことはここでは関係ない。

とにかくこれが自分のアナログプレーヤーだといえるモノを見つけ出すことである。
それを手に入れる。

このアナログプレーヤーだけを使いこなせるようになれば、それでいい。

Date: 5月 14th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その1)

このブログで、アナログプレーヤーの設置・調整に関することは書く必要はない──、
と最初のころは思っていた。
それが2008年のころ。

その後SNS(twitter、facebookなど)が日本でも急速に広まっていった。
どちらもやっている。
audio sharingというサイト、このaudio identity (designing)というブログをやっている関係から、
私がフォローする人、私をフォローする人は、オーディオに関心のある人が多い。

そうすればその人たちがSNSに書きこむものを毎日目にする。
そこにはオーディオ以外の話題のほうが多いのだが、オーディオのこともやはりある。
そしてアナログディスク、アナログプレーヤーに関するものも目にする。

これらを目にして思うのは、アナログプレーヤーの設置・調整に関して、
このブログで基本的なことを含めて、こまかなことにまで書いていく必要があるのかもしれない、と感じている。

世代によってはCDが身近な存在であり、
アナログディスク(LP)というものを後から知ったという人もいる。
私よりずっと長いアナログディスク歴の人もいる。

長いからすごい、というわけでもないし、短いから未熟ともいえない。
これは以前から感じていたことだが、SNSの普及でますますそれは強くなっている。

これはもう書いていく必要がある──、
そんなことを知っているよ、という人に対して、実のところ書いていく必要がある、と思っている。

Noise Control/Noise Designという手法(45回転LPのこと・その3)

私がアナログディスク固有のノイズに注目したのは、
CDが登場したばかりのとき、サンプリング周波数が44.1kHzだから、20kHz以上はまったく再生できない。
だからアナログディスクよりも音が悪い。
人間の耳の可聴帯域は20kHzまでといわれているけれど、実はもっと上の周波数まで感知できる。

とにかく、そんなことがいわれていた。

確かにサンプリング周波数が44.1kHzであれば、
アナログフィルターの遮断特性をふくめて考えれば20kHzまでとなる。
それで十分なのか、となれば、サンプリング周波数はもっと高い方がいい。

だからといって、サンプリング周波数が44.1kHzで20kHzまでだから……、というのは、
オーディオのことがよくわかっていない人がいうのならともかくも、
少なくとも音の美を追求してきた(している)と自認する人が、
こんなにも安易に音の美と周波数特性を結びつけてしまうことはないはずである。

FM放送のことを考えてみてほしい。
FM放送でライヴ中継を聴いたことが一度でもある人ならば、
その音の良さ、美しさを知っているはずだ。

この体験がある人はFMの原理、チューナーの仕組みを大ざっぱでいいから調べてみてほしい。
FM放送の周波数特性はCDよりも狭いのだから。

それでもライヴ中継の音の良さには、陶然となることがある。

Noise Control/Noise Designという手法(45回転LPのこと・その2)

そのコメントには、こんなことが書いてあった。

クラブミュージック(ダンスミュージック)で、DJがテクノやハウスといわれる種類の音楽をかける。
従来は当然のことながらアナログディスクだったのが、
時代の流れにでCD、さらにはMP3に変っていった。

となると音も変る。
その違いが小さいものであったなら、問題となることもなかったけれど、
あまりにも違いが大きすぎるということで、
DJはあれこれ試行錯誤をした結果、アナログディスク特有のノイズを、
CD、MP3で音楽を鳴らす時にミックスすることにしたそうだ。

ここでのアナログディスク特有のノイズとは、プチッ、パッといったパルス性のノイズではない。
音溝をダイアモンドの針先が擦ることによって生ずる音(ノイズ)のことである。

何も録音されていない無音溝のレコードを、そのために製作して、
そのアナログディスクを再生して得られるノイズが、ここでいうアナログディスク特有のノイズのことである。

このノイズを加えることにより、アナログディスクをかけている感じに近づけることができた、とあった。

私自身は、これを試したことはないけれど、
私が5月7日に話したことも、基本的にはこれと同じことである。
だから、この話にはそのとおりだ、と思っている。

Noise Control/Noise Designという手法(45回転LPのこと・その1)

毎月第一水曜日に四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記で行っているaudio sharing例会

夜7時からなのだが、時間が許せば一時間くらい前に喫茶茶会記に着くようにしている。
何もその日のテーマについてじっくり考えておきたいから、ではなく、
店主の福地さんとの話を楽しんだり、
常連のお客さんがいるときに福地さんが紹介してくれて、その方と話がはずむこともある。

先日(5月7日)もそうだった。
18時40分ごろだったか、フルート奏者のMiyaさんという方が来られた。
Miyaさんはそれまでオーディオを介して音楽を聴くことにはあまり関心がなかったけれど、
少し前にステレオサウンドの試聴室において、いわゆるハイレゾ音源を聴く機会があって、
そこからオーディオに目覚めてきた、ということだった。

そういうことで話が弾んだ。
audio sharing例会の19時までは20分ほどだから、あれもこれもというわけにはいかなかったけれど、
CD(デジタル)とLP(アナログ)の音の違いについてきかれた。

この日話したことのひとつだけを書けば、ノイズが関係している、ということについて説明した。
それもaudio sharing例会の開始時間が迫っていたので、充分な説明はできなかった。

翌日、このブログで、ホールのバックグラウンドノイズについて書いた。
ブログにはコメントをなかったけれど、facebookにはコメントがあった。
そこにはアナログディスクのノイズについてのものがあった。

Date: 4月 21st, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その30)

空気の力でターンテーブルプラッターを一定速度で回転させるには難しい面があるのは容易に想像できる。
それに空気の力でスムーズに回転させられるようになったとしても、
起動時の問題が残るはずだ。

軽量のターンテーブルプラッターであれば少ない力でも静止状態から動き出すけれど、
テクダスのAir Force 1や、これまで音が良いとされてきたプレーヤーのターンテーブルプラッターは、
たいていが重量級である。

重量級のターンテーブルプラッターを静止状態から動かすには、けっこう大きな力を必要とする。
おそらく空気の力でそれを実現するのはさらに困難なことだろうと想像がつく。

でもいいじゃないか、とも思う。
いまアナログディスク再生に、これだけのプレーヤーを手に入れようとする人ならば、
これまでどのプレーヤーでも鳴らすことができなかった音の領域を提示してくれるのであれば、
起動時に使い手が手動で勢いをつければ、問題は簡単に解決する。

この一手間を面倒だと感じる人は、そもそも今の時代にアナログディスク再生にこれほどの情熱をかけたりはしない。
もっと普及価格帯のプレーヤーであれば、
どんな人が使っても常に一定性能が発揮できることが重要になるけれど、
数百万円もするアナログプレーヤーは、そういうことを無視しようと思えばできる位置に、いまはある。

Air Force 1という型番は、それほどいい型番とは思えない。
それでもどういうプレーヤーであるのかを表しているから不足のない型番とはいえる。
型番を変えたほうがいい、とはいわない。

いいたいのは、製品の内容から型番がつけられる。
今度はその型番の意味をもう一度考え直すことで、
その型番がつけられた製品の目指す方向が見えてくるのではないか、ということ。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その29)

マイクロRX5000+RY5500の二連ドライヴの記事を憶えている人、
実際にその音を聴いたことのある人、
さらに自分のモノとして二連ドライヴでレコードを鳴らされていた経験のある人、
そういった人の中で、経済力のある人ならば、
テクダスのAir Force 1を二台購入して二連ドライヴを実行するかもしれない。

そんな経済力のない私でも、Air Force 1の二連ドライヴは、いったいどんな音がするのか、と考える。
できれば今年のインターナショナルオーディオショウのステラのブースにおいてデモをやってほしいところだが、
こんな大がかりのプレーヤーでも、モーターを外すことはできない。

モーターとターンテーブルプラッターの間にもうひとつターンテーブルプラッターをいれることで、
モーターの影響を低減できることはできても、モーターの追放とはならない。

となると少しでもモーターの影響から逃げるために、
二連で音がよくなるならば、さらにもう一台追加して三連、四連……、
とますます非現実的なことになってしまう。

レコードを回転させなければアナログディスク再生は成り立たない。
ということはモーターからはいつまでたっても解放されないのだろうか。

このところにエアフォースを利用することはできないのか。
つまりモーターではなく、空気の力でターンテーブルプラッターを廻すことはできないのだろうか。
そうすればモーターから、アナログディスク再生が解放されることになる。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その28)

ステレオサウンド 55号のアナログプレーヤーの試聴で、
瀬川先生はAir Forceの原点ともいえるマイクロの糸ドライヴ、RX5000+RY5500で、
二連ドライヴということをやられている。

RX5000+RY5500という型番は、
RX5000というターンテーブルユニットとRY5500というモーターユニットからなる。
二連ドライヴとはRX5000を二台用意して、レコードを載せる(実際の再生に使う)RX5000とRY5500のあいだに、
もう一台のRX5000を介在させるというものである。

モーターからターンテーブルプラッター、
ターンテーブルプラッターからもうひとつのターンテーブルプラッターへ、と回転は伝えられる。

なんと無駄なことを……、と思う人もいるけれど、
これは少しでも回転を滑らかにするための手段である。
お世辞にもスマートな手段とはいえない。

RX5000+RY5500は、それでなくとも使い手の技倆に頼っているところの多い製品であり、
いいかげんな使いこなし・調整ではいい結果は得られない。
そういうアナログプレーヤーであるRX5000+RY5500に、さらに調整箇所を増やすわけである。

置き場所の確保も二連にすれば大変になる。
それでも二連ドライヴにする価値はあるのだろうか。

瀬川先生はRX5000+RY5500の試聴記に書かれている。
     *
二連駆動で、AC4000MCをAX7G型アームベースにとりつけて、調整を追い込んだときの音は、どう言ったらいいのか、ディスクレコードにこんなに情報量が刻み込まれていたのか! という驚きである。音の坐りがよく、しかも鮮度高く、おそろしくリアルでありながら聴き手を心底くつろがせる安定感。マニアならトライする価値がある。
     *
通常の使用方法では決して得られない音の領域が姿を現してくる。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その27)

テクダスのアナログプレーヤーの型番、Air Forceは、
空気の力を利用してターンテーブルプラッターを浮上させたり、ディスクをターンテーブルプラッターに吸着、
外部振動を遮断するためのエアーサスペンションといったことを表すものであることは、
すぐにわかることである。

確かに空気の力を利用したアナログプレーヤーである。
そのことには異論はない。

そのAir Force 1でもターンテーブルプラッターを廻すにはモーターの力を借りている。
この部分にエアフォースは使われていない。

ターンテーブルプラッターをいかに滑らかに回転させるか。
そのためにはターンテーブルプラッターに回転エネルギーを与えるための手段を、
モーター以外にないものか、ということにもなる。

以前書いたようにリンのLP12を井上先生が手で廻されたときの音は、ほんとうに澄んだ音だった。
あの音をいまも思い出すと、モーター以外の手段はほんとうにないのか、と考えることになる。

これもすでに書いているが、昔から、手廻しの音の良さは一部のマニアでは知られており、
深い井戸を掘って……、ということを考えたくなる。
だがこれは非現実過ぎる。

Date: 11月 13th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その14)

アナログディスク再生に対して確固たるものを持っていない人の書いたものは、
読んでいて、すぐにそうだとわかる。

確固たるものが自分の確固たるものと同じでなくてもいい。
さらにいえば確固たるものが正しいのかどうかも、極端な話どうでもいい。

とにかく確固たるものを持った上での評価をしているのかどうか、
それは確固たるものを持っている読み手であれば、
それがどの人のことを指しているのかはすぐにわかるはずだから、
ここではその人の名前を出すことはしないし、ここでは個人攻撃はしたくはない。

それでもおかしなものを高く評価していたり、
その反対のことをやっていたりするのをみかけると、ついあれこれ思ってしまうし、言いたくなってしまう。

そんなことをやっている人が、私よりもずっと若い人で、
オーディオに関心を持ち始めた時はすでにCDが主流で、アナログディスクとの出合いはその後だった、
というのならば、仕方ないかもな、とは思いはするければ、
私よりも上の年齢の人で、いまもそういう人が野放しになっているのは、
どこに、誰に責任があるのだろうか……。

Date: 11月 12th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その13)

どんな人にでも、いわゆる粋がっていた時代はあるのではないか。
それがいつなのか、どのくらいだったのかは人によって違ってくるだろうし、
いまも粋がっていたいという人だっている。

そんな粋がっていた時には、定番のモノよりも、
エキセントリックだったり、エキゾティシズムのモノにより惹かれることがある。

私のように若いころからEMTの930stを欲しい、と思ってきた者は、
さしずめ定番のモノを使って、人よりもいい音を……、と考えているのだろう。
それでも定番とは対極に位置するモノに魅力を感じてこなかったわけではない。

むしろ定番の良さをしっかりと認識することで、
その対極にあるモノの魅力もよりはっきりとみえてくることだってある。
つまり定番を頭から拒否している人は、
エキゾティシズム、エキセントリックなモノに騙されてしまうこともあるような印象をもっている。

いま市場に出廻っているアナログディスク再生に関するオーディオ機器を眺めていると、
素晴らしいモノといっしょにどうにもこうにもおかしなモノがある。

そんなモノを高く評価する一部の人が、またいる。
そんな人の書く、アナログディスク再生に関するものを読むと、
この人にはアナログディスク再生に対しての、その人なりの基準がないように感じられる。

アナログディスク再生は、昨日今日のものではない。
長年続いてきているものであり、
私と同世代、そして私よりも上の世代の人はそれだけの時間、
アナログディスク再生に時間を割いてきているわけだ。

人はその中で、その人なりのアナログディスク再生とはこうあるべき、という考えを構築形成してきたはず。
そうやってつくられた基準によって、アナログディスク再生に必要なオーディオ機器を評価判断する。

それは人によって違ってくるところがあるし、ひとりの人の中でもこれだけ、というわけではない。
少なくともオーディオ雑誌で不特定多数の人にアナログディスク再生に関する文章を書く人ならば、
そういう基準をしっかりと持った上で評価判断してほしい、と思っている。

だが実際には一部の人は、あきらかにそれが感じられない。
おそらくないのだと思う。
だから、あきらかにおかしなモノを高く評価したりする。

Date: 11月 12th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その12)

オルトフォンのSPU-GとSMEの3012-Rの組合せは、定番中の定番といえたかもしれない。
オルトフォンのRMG309よりも、SMEのロングアームの方がSPUと組み合わされることは多かったかもしれない。

SPUのように針圧が3g前後のカートリッジにはダイナミックバランス型のトーンアームが向く。
そういう思い込みにとらわれている人にとっては、
SMEの3012-Rはスタティックバランスということで関心を持たないかもしれない。

でもこの組合せは、ステレオサウンドの試聴室で何度聴いたのかは忘れてしまったほど聴いている。
私がいたころのステレオサウンドの試聴室にあったのは、SPU-Goldだった。

ほとんどのレコードを難なくトレースしてくれた。
トレースに不安を感じて調整をしなおした、ということは一度もない。
安心してさまざまなレコードをかけられる組合せだった。

定番同士の組合せだから、といえるだろうし、
そういうモノだから定番と呼ばれている、ともいえる。
定番と呼ばれているモノは、その多くがこういう良さを有している。

モノマニア的なところがないオーディオマニアはいないのかもしれない。
だから、人とは違うモノに魅力を感じてしまうのかもしれない。

誰もが使っている定番はできれば使いたくない。
そういう視線で目新しいモノを選んでしまうと、それは時としてエキセントリックだったり、
エキゾティシズムの魅力のモノだったりすることがある。

オーディオ機器には、昔からそういうモノが存在しているし、いまも存在している。
特に一部のアナログ関係のモノ、スピーカーシステムに見られる。

それらすべてがそうゆうわけではないが、中には以前書いているように欠陥スピーカーといいたくなるモノがある。

Date: 11月 12th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その11)

どのようなモノにも定番と呼べる存在がある。
オーディオにもある。

定番とは辞書には、
流行にかかわりなく,毎年一定の需要が保たれている基本型の商品。白のワイシャツ・白のブラウスなど、
とある。
だからこの意味通りの使い方からはズレてしまうのはわかっているが、
オーディオのジャンルでいえば、
トーンアームはSMEの3012や3009、
カートリッジではシュアーのV15シリーズ、オルトフォンのSPUなどがすぐにあげられる。
そういう意味での、ここでの定番という使い方である。

オーディオに関心のある人ならばほとんどすべての人が少なくともブランド、型番は知っている。
使っている(持っている)人も多い。
持っていなくとも、オーディオ店やオーディオ仲間のリスニングルームで聴いたことがある。
そういうモノが、他にもいくつもある。

こういう定番のオーディオ機器は、すでに評価が定まっている、ともいえる。
だから、そんなモノは使いたくない、と思う人もいることは知っている。
人と同じモノは使いたくない。
しかも定番と呼ばれるモノは、多くの人が使っているのだから、
そういう気持をもっている人にとっては、なおさら自分のモノにはしたくない、という気持も生まれるだろう。

この気持は、誰しも持っていることだろう。
私だって持っている。
以前に比べればそういう気持はほとんどなくなってしまっているともいえるけれど、
それでもまったくなくなってしまったわけでもない。

そういう気持は、オーディオには必要な要素かもしれない。
でも、だからといって定番のモノに対し、まったく見向きもしないということはやらない。

Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その10)

カンターテ・ドミノも聴いた、グールドのゴールドベルグ変奏曲も聴いた。
それにノイズの出方も充分にチェックできた。
これでテクダスのAir Force Oneの実力は、すべてとはもちろんいえないけれど、
相当はっきりと掴めた、といえる。

となると、そのあとに架けられたレコードを聴いている時は、
私の頭の半分ほどは妄想に使われていた。

たとえばワーグナーのパルジファル。
クナッパーツブッシュのバイロイト祝祭劇場でのライヴ、
カラヤンのスタジオ録音。
どちらがより名盤か、ということではなく、
クナッパーツブッシュのパルジファルをかけるアナログプレーヤーとしては、
私はなんら迷いなくEMTの927Dstを選ぶ。

927Dstで聴くクナッパーツブッシュのパルジファルは、
バイロイトに行ったことのない者にさえ、
バイロイト劇場の音とは、きっとこの感じそのままなんだろう、と思わせるだけの強い説得力がある。
そこで行われたクナッパーツブッシュのパルジファルにふさわしい、と迷いもなく思わせるのは、
927Dstの、このプレーヤーでしか聴けない音のみである。

だがカラヤンのパルジファルとなると、そのへんの事情は違ってきて当然である。
カラヤンの演奏の精妙さを、927Dstは十全に再現してくれるかは、
いくら927Dstに惚れ込んでいる私でも、そうはいえないところがあるのは認める。

カラヤンのパルジファルをかけるプレーヤーとしては、圧倒的にAir Force Oneだろう。
グールドのゴールドベルグ変奏曲でのアリアのハミングを、
ああも自然に、しかも特に耳を欹てなくとも容易に聴きとれるのは、
しかもそれがうなり声ではなくハミングだといえるAir Force Oneの音を聴いていて、
これでカラヤンのパルジファルを鳴らしたら……、
そう思えるほどのAir Force Oneの精妙さであり、
大編成のものを再生するに不可欠の安定性でもあった。

パルジファルのレコードは、クナッパーツブッシュのだけ、とか、
カラヤンのだけ、とか、どちらかひとつに決めなくてもいい。
どちらも持っていればいい。
他の指揮者のパルジファルも併せ持つこともできる。

だが、927DstとAir Force Oneの両方をもつことのできる人は、
世の中は広いからいることにはいるだろうが、
どちらかひとつでも自分のモノとできるだけでもすごいことである。

どちらを選ぶかは、パルジファルにおいてどちらを選ぶか、でもある。

Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その9)

Air Force Oneと927Dstの音を同じ基準で評価することは果して可能なのだろうか。
そんな気もする。

927Dstで聴ける、圧倒的と、誰もがいいたくなるであろう、あの音を聴いたあと、
そして927Dstの音を、仮に正しいとするならば、Air Force Oneの音は物足りなさを憶えるだろう。

Air Force Oneの音を正しいとするならば、927Dstの音はなにかが過剰な音と感じても不思議ではないし、
日常的に聴く音ではない、と思われるかもしれない。

インターナショナルオーディオショウの最終日、
ステラのブースで、カンターテ・ドミノのレコードの数枚後にグールドのゴールドベルグ変奏曲がかけられた。
1981年録音の方だ。
このレコードも、CDとアナログディスクで、いくどとなく聴いている。
ステレオサウンドの試聴室で聴いた回数はカンターテ・ドミノの方が多いが、
自分のオーディオで聴いた回数はグールドの方が多い。

アリアが鳴る。
Air Force Oneで聴くと、アリアのところでのハミングが、
これまで聴いたどのアナログプレーヤーよりも聴きとりやすい。
そこで鳴っているピアノも、ヤマハのグランドピアノというイメージがしっかりとある。

数年前に聴いた、非常に高価なスピーカーシステムによるアップライトピアノのような音ではない。

第一変奏曲が鳴る。
ここでアリアのときとピアノの音像の大きさが変化しているのもはっきりと出す。
お見事、と思いながら、
Air Force Oneと927Dstの違いについて考えてもいた。

いま別項で書いているカラヤンのパルジファルのことを思っていた。