ウーファーの条件(その2)
スピーカーのボイスコイルは、数Ωという直流抵抗を持つ。
この直流抵抗によって、ボイスコイルは熱を持つことになる。
熱を持てば、金属の性質上、直流抵抗の値は高くなる。
高くなれば、その分さらにパワーのロスが生じる。
ということは、そこでまた熱が発生する。
そうやってボイスコイルの温度がさらに上れば、直流抵抗はさらに高くなる……。
悪循環を招き、リニアリティの低下となる。
JBLの4343から4344へのモデルチェンジにおいて、
ウーファーが2231から2235へと変更されている。
JBLの発表によれば、
約30Hzの低音での1W入力時と100W入力時の出力音圧レベルは、
ボイスコイルの温度上昇とそれによる直流抵抗の増加、
それ以外にもダンパーなどのサスペンションの影響により、
2231では100Wの入力に対してリニアに音圧レベルが上昇するわけでなく、
3〜4dB程度の低下が見られる。
2235での低下分は約1dB程度に抑えられている。
2235は確かボイスコイルボビンがアルミ製になっている。
ボビンの強度が増すとともに、放熱効果もある程度は良くなっているはずだ。
このことが、100W入力時の音圧の低下を抑えている、といえよう。
1970年代後半に登場したガウスのユニットは、
磁気回路のカバーがヒートシンク状になっていた。
これは放熱効果を高めるためであるが、ボイスコイルを直接冷やしているわけではない。
あくまでも間接的放熱である。
ボイスコイルの温度上昇を抑えるには、効率的な放熱対策が必要となる。
ボイスコイルが巻かれているボビンを熱伝導率の高いモノにする。
ボイスコイルからボイスコイルボビンに伝わった熱を、どう放熱するのが効率的かといえば、
振動板を熱伝導率の高い素材にすることだ。
アコースティックエナジーのAE1、AE2のウーファーはアルミの振動板を採用。さらにボイスコイルボビンから伝わってくる熱を、
アルミの振動板に伝えるために接着剤も熱伝導率を重視している。
とにかくボイスコイルが発する熱を、できるだけ振動板に伝え、放熱させる設計であり、だからこそのエキスパンドされたのような鳴り方を実現している、と見ている。