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Date: 12月 7th, 2008
Cate: ベートーヴェン

ベートーヴェンの「第九」(その3)

フルトヴェングラーの「第九」といえば、1年前のちょうどいまごろ、
キングレコードからフィギュアつきで発売されたのが、
ベルリン・フィルを指揮した1942年のライヴ録音である。価格は2万8千円ほどだった。

レーザー光線でアナログディスクの溝を読み取るエルプのプレーヤーによる復刻CDなので、
多少高く見積もってCD一枚の値段は3千円くらいだろう。
ということはフィギュアの値段は2万5千円ほどとなるわけだ。

高さ30cmの、比較的大きなフィギュアとはいえ、2万超えのモノは市場にはあまりない。
それだけの値段だけあって、実物を見ると、丁寧なつくりだ。

けれど、このフィギュアの造型師は、
フィギュア(figure)と人形(doll)の違いを明確に把握していないような気がしてならない。

フィギュアも人形もミニチュアライズの趣味のもので、ミニカーも同じ世界である。
フィギュア、人形、ミニカーをグループ分けすると、人形とミニカーは同じといえ、
フィギュアだけ異る性格をもつ。

Date: 12月 7th, 2008
Cate: ベートーヴェン

ベートーヴェンの「第九」(その2)

そのころ売られていたライナーの「第九」のCDは廉価盤のみで、
なんら関係のない蝶のイラストが描かれたジャケットで、かなり安かった。

不当に高いのは困るが、あまりに安すぎるのも、大切な音楽が収められているCDがそうだったりすると、
こんな扱いでいいんだろうかという疑問と寂しさに似たものも感じるのは、
音楽好きの方ならわかってくださるだろう。

このころは、イギリスのレコード店からちょくちょくLPを購入していた。
>当時のレコード芸術誌に広告を出していた店で、申し込むと、毎月リストが郵送される。
欲しいモノがあると、申込書に記入して郵送する。
まだ売れていなかったら予約が成立し、入金の案内が送られてくる。
レコードが手もとに到着するまで、けっこうな時間がかかる、のんびりしたやりとりだった。

そのリストの中にライナーの「第九」もあった。イギリスでの評価は高いようで、
記憶では2万円近かった、そんな値がつけられていた。

アメリカからの輸入CDは千円ほど、日本でもそれほど評価は高くなかったと感じていた。
国によって、こんなにも評価が異る。

そういえばエリザベート・シュヴァルツコップが、無人島に持っていきたいレコードに、
ライナー指揮のウィンナ・ワルツ集をあげていたのは、けっこう有名な話である。

Date: 12月 6th, 2008
Cate: ディスク/ブック

富田嘉和氏推薦の本2冊

「GROUNDING AND SHIELDING TECHNIQUES IN INSTRUMENTATION」と
「NOISE REDUCTION TECHNIQUES IN ELECTRONIC SYSTEMS」。

一冊目の著者は Ralph Morrison、二冊目は Henry W. Ott。
タイトルが示すとおり、ノイズ対策として有効なアースとシールドについて書かれた本だ。

私が持っているのは「GROUNDING」のほうが1986年の第3版、
「NOISE」のほうが1988年の第2版。
この本を紹介していたのは、富田嘉和氏。ラジオ技術の記事で知った。

富田氏の名前をはじめて見たのは、
ステレオサウンドの38号「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」での、
瀬川先生のページにおいてである。

マークレビンソンのLNP2の上にシルバーパネルの、自作アンプが置いてある。
このアンプの製作者が富田氏だ。

聴取位置左側の壁には、JBLのSG520が2台、マランツの#7が収められている。
LNP2と富田氏のプリアンプは、聴取位置のすぐ前、手の届くところに置かれている。
これはSG520、#7よりもLNP2と富田氏のアンプを常用されていたわけだ。

この時から富田氏への興味ははじまった。
その富田氏が、80年代おわりから90年代はじめにかけてラジオ技術で書かれた記事は、
いま読んでも示唆に富んでいると思っている。
記事中で推薦されていたのが、上記の2冊である。

記事を読んで、日本橋の丸善に注文を出し手に入れた。どちらも1万円前後の本だった。

アースやシールドについて知りたければ、そして語りたければ、一読しておきたい内容の本だ。

さきほどAmazon.comで検索してみたら、驚いた。
「GROUNDING」は第4版になっていたが、見間違いかと思う値段がついているのだ。

Date: 12月 6th, 2008
Cate: ベートーヴェン

ベートーヴェンの「第九」(その1)

1989年の映画「いまを生きる」(原題はDead Poet Society)の中盤あたり、
学生たちのラグビーのシーンがある。ここで使われていたのが、ベートーヴェンの「第九」。

バックグラウンドミュージックという扱いというより、
この演奏を聴かせたいがために、監督が、このシーンを撮ったのでは? と勘ぐりたくなるくらい、
そこで聴こえてきた「第九」に胸打たれた。

明晰でしなやかで、素晴らしい演奏。
フルトヴェングラーのバイロイトの「第九」をはじめ、いくつもの「第九」を聴いてきていたが、
そのどれでもない。はじめて聴く演奏による「第九」だった。

エンディングのクレジットが、このときほど長いと感じたこともなかった。
最後の方にやっと出てきた。

フリッツ・ライナー/シカゴSOの演奏だった。
映画館を出て、そのままレコード店へ直行した。

Date: 12月 5th, 2008
Cate: よもやま

妄想演出

20数年前ステレオサウンドが、メトロポリタンオペラのポスターを販売していたことがある。

そのなかの一枚に、メトロポリタン劇場の透視図があった。
ステージがあって、客席があり、それを取り囲むように、舞台装置を組立てている部屋、
衣装部屋、出演スタッフの待機部屋などが描かれたもので、
じっくりと細かいところまで見ていく楽しみのあるポスターだった。

このポスターを見ながら、これそのままモデル(立体)化してくれたらいいのに、そんなことを思っていた。
それから数年後、Macを使いはじめてからは、
あのポスターを3D化したらおもしろいだろうな、と思うようになってきた。
当時流行った言葉でいえば、メトロポリタン劇場をヴァーチャルツアーしたいからである。

はじめて使ったMacはClassic IIだから、3Dソフトに必要なコプロセッサーを搭載してなかったし、
モノクロ2値の9インチのディスプレイで、モデリングをやる気はまったく起きなかったので、
あくまで頭の中だけで思っていただけだった。

3Dソフトもハードウェアも進歩して、人物も自然風景の描写も、以前と較べると、その労力は少なくてすむ。
ハードウェアのスペックも、個人で楽しむ分には十分だと思う。

となると妄想だけは膨らむ。

オペラの演出家になれるわけだ。
ワーグナーの「ニーベルングの指環」の舞台こそ、挑戦しがいのあるものの筆頭だろう。
神話の世界を、現実の舞台のではあり得ない演出、照明でつくり出せる。

10年くらい前から、そんなことを考えてはいるものの、まったく手をつけていない。

Date: 12月 4th, 2008
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その4)

4343とLS5/8、同じモニタースピーカーといっても、
使われ方、求められる性能の項目が違うことがあらためてわかる。

JBLのスタジオモニターは、性能ぎりぎりのところで使いつづけても破綻をきたさないよう設計されている。
BBCモニターはモニタースピーカーといっても、大音量で使われることはまずないと聞く。
1970年代にはQUADのESLが、ヨーロッパのレーベル(たしかデッカ)のスタジオモニターとして使われていた。
旧型の ESLがスタジオモニターと通用するくらい、イギリスを含めてヨーロッパのスタジオの試聴音量は、
かなり低いということを書かれた文章を何度か目にしている。

たとえば磁気回路を見ても、BBCモニターはそれほど物量投入の設計ではない。
スピーカーユニットを開発・設計する機会のないわれわれは、
スピーカーの磁気回路の磁束密度は高いほどいいと思いがちだが、
メーカーの技術者に話をきくと、必ずしもそうではなく、
振動板の口径や重さなどとの絡みもあるが、聴いて音の良いポイントがある、といっている。
具体的な数値は教えてくれなかったが、10000ガウスよりも低いところで、ひとついいポイントがあるとのこと。

たしかにKEFのLS5/1A搭載のグッドマンのウーファーの磁束密度は、9000ガウスだ。
たまたまなのかもしれないし、他のBBCモニターの使用ユニットの磁束密度は不明だが、
ユニットそのもののつくりを見る限りそれほど高い値とは思えない。

LS5/8、PM510のウーファーの振動板ポリプロピレンも、スピーカーの振動板に求められる性能──
高剛性、適度な内部損失、内部音速の速さ、軽さの点から見ると、
お世辞にも高剛性といえないし、内部音速がそれほど速い素材でもない。
満たしているのは、適度な内部損失と軽さだけだろう。

もっもとすべての諸条件をすべて高い次元で満たしている素材はないので、
どの項目を優先するかは技術者次第なのだろう。

BBCモニターの設計、つくり方を見て思うのは、ぎりぎりの性能を実現することよりも、
バラツキのないものをつくることを優先しているように思う。
ウーファーの振動板を紙からベクストレン、そしてポリプロピレンに変更していったのも、
性能向上とともに、バラツキのないものをつくれるメリットがあることも大きい。

BBCモニターを、どれでも実際に購入したことのある人ならば、
リアバッフルにシリアルナンバーが手書きで書いてあり、
同じシリアルナンバーで末尾にAがつくものと、Bがつくものとがペアになっているか、
シリアルナンバーが連番になっていることをご存じのはずだ。

4343時代のJBLは、同じ製造ロットのものが入荷してくるのだが、
シリアルナンバーが連番ということはまずなかった。
4341、4343のユニットレイアウトもそうだが、左右対称にはなっていない。
4343はトゥイーターの2405を購入者がつけ換えれば左右対称になるけれど、出荷時点ではそうなっていない。

BBCモニターのライセンスは、要請があれば、公共機関ということもあり、原則として与えるそうだが、
その審査はひじょうに厳しいものらしい。
BBCの仕様に基づいてつくられた製品に対して、サンプルは勿論、
量産品のクォリティコントロールまでチェックした上で与えられるそうだ。

これは言い換えると、ステレオ用スピーカーとして、
左右両スピーカーの性能が揃っていることを重視している、そう言っていいだろう。

Date: 12月 4th, 2008
Cate: 瀬川冬樹
2 msgs

語り尽くすまで

このブログで、たびたび瀬川先生のことを書いている。
オーディオ好きの友人と話をするときも、瀬川先生の話題になることが、やはりある。

書いていて、話をしていて思うのは、まだまだ「瀬川冬樹」を語り尽くしていない、ということだ。
語り尽くすまで、語り尽くすために、人と会い、聞く、話す。そして書いていこう。

Date: 12月 4th, 2008
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その3)

スピーカーの面構えやユニット構成、それまでのブランドイメージからから判断すると、
ロジャースのPM510よりもJBLの4343のほうが出力音圧レベルは高いように思われるだろうが、
先に書いたようにカタログ上の値では、PM510のほうが0.5dB高い。

スペンドールのBCIIの値は発表されていないが、聴いた感じでは80数dBぐらいだろう。
KEFの105.2が、たしか85dBだった。

LS5/8、PM510以前のBBCモニターのウーファーの振動板の材質はベクストレンで、
この材質の固有の音が、1.5kHzから2kHzで発生するため、
ダンピングのためのプラスティフレックスを塗布しなければならない。
そのせいで振動板質量が重くなり、能率の低下につながっていた。

PM510のウーファー振動板の材質、ポリプロピレンは表面にダンプ材を塗布する必要がない。
このためばかりではないと思うが、能率があきらかに向上している。
ただしエッジとの接着がひじょうにむずかしく、この部分も特許になっているらしい。

LS5/8の最大出力音圧レベルは、116dBである。JBLの4345が120dBということを考えると、
イギリスのスピーカーとしては、かなり驚異的な値といえるだろう。
ちなみにLS3/5Aは95dB/1.5mである。

ただしJBLのスピーカーが、長い時間でも、最大出力音圧レベルぎりぎりの音を出せるのに対して、
LS5/8はそれほど長い時間耐えられるわけではない。

ボイスコイルの発熱をどう逃がすか、そしてコーンアッセンブリー全体が熱にどのまで耐えられるかも、
どこまで耐えられるかの重要な要素である。

スイングジャーナル編集部に在籍したことのある友人Kさんから聞いた話だが、
山中先生が取材でLS5/8を鳴らされたとき、いい感じで鳴ったので、
ついついボリュームをあげて聴いていたら、ボイスコイルの熱によってポリプロピレンが融けてしまったそうだ。
こんなことは、JBLのスピーカーでは絶対に起こり得ない。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その28)

アルテックの6041にはモデルというか、前例がある。
1977年に日本に登場したUREIの813だ。

アルテックの604-8Gのマルチセルラホーンを、UREI独自のホーンに交換し、
さらに604-8Gのウーファーとトゥイーターの振動板の位置ズレをネットワークで補正、
サブウーファーを加えることで、アルテックの620Aよりもワイドレンジになっている。

同軸ユニットを中心にして、サブウーファーとトゥイーターを追加してワイドレンジ化を図る手法は、
指向性の問題を考慮すると、意外と有効なのだろう。

1980年にはパイオニアから同軸4ウェイユニットによるS-F1が登場している。
平面振動板のメリットを活かして、振動板の位置を揃えることに成功している。
ただしボイスコイルの位置は、揃っていなかったと記憶している。
ボイスコイルの位置を揃えた同軸型ユニットは、KEFのUniQが最初のはずだ。

S-F1搭載の4ウェイ同軸型ユニットは、
世の中にないものを生み出してやろうという技術者の意地を感じさせる意欲作だが、
製造はかなり困難だったように想像する。

カバッセのラ・スフィアのように、
3ウェイ同軸型ユニット+ウーファーという構成が(価格のことは置いておいて)現実的なのかもしれない。

KEFは、1999年にThe Maidstone で、UniQ搭載のフラッグシップモデルを開発している。
システム構成は5ウェイで、UniQユニットは400Hzから12kHzまで受け持つ。

タンノイからも、その3年前にキングダムを発表している。
同軸型ユニットが受け持つ帯域は、100Hzから15kHz(キングダム12のみ16kHz)。

ドイツのELACも、X-JET COAXという独自の同軸型ユニットを開発し、400Hz以上を受け持たせている。

これから先、同軸型ユニットを中心にまとめあげたシステムが増えてくるのかどうかはなんともいえないが、
すくなくとも水平・垂直両方向の指向性の問題に対する解答のひとつであるのは確かである。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 4343, 4350, Celestion, JBL, SL6
4 msgs

4343と4350(補足)

ボイスコイル径で思い出したことがあるので補足しておく。

セレッションのSL6(SL600)は、グラハム・バンクがユニットを、
サイズにとらわれることなく一から設計したことは「サイズ考」に書いたが、
SL6のユニットも、ウーファーとトゥイーターのボイスコイル径は等しい。

推測にしかすぎないが、おそらくいくつもの口径のユニットとともに、
ボイスコイル径もいくつも試作した結果だろう。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 4343, 4350, JBL
2 msgs

4343と4350(その2)

4350の大きな特長は、ダブルウーファー構成よりも、
ウーファー2231A、ミッドバス2202A、ミッドハイ2440、
これら3つのユニットのボイスコイル径が4インチで、同じだというところだ。

オーディオに興味をもちはじめたばかりの頃、2ウェイのホーン型システムが、
高域のドライバーに4インチ・ダイヤフラム、2インチ・スロートが多いのを疑問に思ったことがある。
2ウェイで、高域を伸ばすなら、4インチ・ダイヤフラムよりも2インチのほうだろう、と考えていたわけだ。
なぜ4インチなのか。その理由はしばらくしないとわからなかった。

4インチ・ダイヤフラムのコンプレッションドライバー採用のシステムは、
ほぼすべて15インチ(38cm)口径のウーファーを搭載している。

ユニットを組み合わせて、自作スピーカーを構築している人には当り前の事実だろうが、
JBLやガウスの15インチ・ウーファーのボイスコイル径は4インチとなっている。
ガウスはJBLを離れたバート・ロカンシーを中心として興されたメーカーだけに、
HF4000(ドライバー)のボイスコイル径は4インチ、
ウーファーはいくつものモデルがあるが15インチ口径のユニットのボイスコイルは同じく4インチ、
12インチ口径のウーファーも4インチになっている。

アルテックには515、416などのウーファーは3インチのボイスコイル径だが、
コンプレッションドライバーの288のボイスコイル径もまた3インチである。

ボイスコイル径を揃えることが、技術的にどういうメリットがあるのかは説明できないが、
音の上では、コーン型と、コンプレッションドライバー+ホーン型という異るユニットを
うまくまとめるノウハウなのだろう。

4343、4341のミッドバス2121のボイスコイル径は、発表されていないが、おそらく3インチのはず。
ウーファー2231Aは4インチ、ミッドハイの2420ドライバーは2インチと、すべて異る値だ。

これだけですべてが語れるわけではないことは承知しているが、
4350Aが、ぴたりとうまく鳴ったときのエネルギー感の統一感のある凄まじさ、
その音と較べると、4343が、どうしても中低域のエネルギーがやや不足気味なのは、
ボイスコイル径と無関係ではないと思う。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その27)

アルテックの6041のユニット構成は、604-8H同軸ユニットに、
サブウーファーとして416-8BSW(低f0の416-8B)に、トゥイーター6041STを組み合わせている。

瀬川先生も指摘されていたが、トゥイーターの質感に、やや残念なところがある。
詳しくは書かないが、6041STはアルテック純正のトゥイーターではなく、他社製のOEMである。

6041はその後、フェライト化された604-8KSと416-8CSWに変更された6041IIになるが、
JBLの4343が、4350をリファレンスとして、4341から確実な改良を施されて、
システムとしての完成度を高めているのから見ると、
6041はそのものが急拵えの感を拭えず、しかも地道な改良が施されたわけでもない。

同軸型ユニットにこだわりつづけているタンノイが、キングダムで高い完成度を実現したのを見ると、
もしアルテックが6041に本腰をいれていたら……、と思わずにいられない。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その26)

アルテック、はじめてのワイドレンジ設計のModel19について、瀬川先生はこう書かれている。
     ※
604Eをオリジナルの612Aエンクロージュアごと(あの銀色のメタリックのハンマートーン塗装は素敵だ)入手して聴いていたこともあるが、私にはアルテックの決して広いとはいえない周波数レンジや、独特の張りのある音質などが、どうも体質的に合わなかったと思う。私の昔からのワイドレンジ指向と、どちらかといえばスリムでクールな音の好きな体質が、アルテックのファットでウォームなナロウレンジを次第に嫌うようになってしまった。
しかし最近、モデル19を相当長時間聴く機会があって、周波数レンジが私としてもどうやら許容できる範囲まで広がってきたことを感じたが、それよりも、久々に聴く音の中に、暖かさに充ちた聴き手にやすらぎをおぼえさせる優しさを聴きとって、あ、俺の音にはいつのまにかこの暖かさが薄れていたのだな、と気がついた。確信に満ちた暖かさというのか、角を矯めるのでない厳しさの中の優しさ。そういう音から、私はほんの少し遠のいていて、しかし、それが私のいまとても欲しい音でもある。おもしろいことにJBLが4343になってから、そういう感じを少しずつ鳴らしはじめた。私が、4341よりも4343の方を好ましく思いはじめたのも、たぶんそのためだろう。もっと齢をとったら、もしかして私もアルテックの懐に飛び込めるのだろうか。それともやはり、私はいつまでも新しい音を追ってゆくのだろうか。
(ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ ALTEC」号より)
     ※
いま読むと、ひじょうに興味深いことを書かれている。
その瀬川先生が、6041をどう評価されていたかは、ステレオサウンド 53号をお読みいただきたい。
手元にその号がないので、引用したいところだが残念ながら無理。

記憶では、レベルコントロールを大胆にいじることが前提だが、かなり高い評価だったはず。

アルテックはModel19、マルチセルラホーンからマンタレーホーンになった604-8Hから、
2ウェイ構成ながら3ウェイ的なレベルコントロールが可能なネットワークになっている。
604-8Hを搭載した620Bに関しても、瀬川先生は、レベルコントロールを積極的にいじることで、
ご自身の音に仕上げられる可能性を感じた、という趣旨の記事を書かれている。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その25)

マルチウェイ化にともなう水平・垂直両方向の指向性の不整合に対する解答のひとつが、
同軸ユニットだと私は捉えている。
そして同軸ユニットをうまく使うことが、4ウェイのシステムへの、解答のひとつでもあろう。

4343が日本で爆発的に売れていた時期に、アルテックから6041が登場した。
型番から推測できるように、アルテックの代表的なユニット604を中心にまとめあげた、
同社としては初のワイドレンジ指向のスピーカーである。

JBLが積極的にユニットを開発し、それらを組み合わせて3ウェイ、4ウェイと、
多マルチウェイ・システムを構築しワイドレンジを実現していくのに対して、
アルテックは、小改良をユニットに施すことで、少しずつではあるが確実にレンジを広げてきた。

6041の数年前に登場したアルテックのコンシュマーモデルのModel19とModel15は、
やはりアルテック伝統の2ウェイ構成である。
どちらも、高域用ドライバーに、断面がミカンを輪切りにしたような形を持つフェイズプラグを採用、
さらにネットワークによる周波数コントロールも併せることで、
従来のアルテックの2ウェイ・システムがなだらかに高域が落ちていくのに対して、
20kHzまでほぼフラットを実現するとともに、アルテックならではの高能率もほとんど犠牲にしていない。

厳密に言えば、ネットワークで周波数コントロールを行なっている分、
同様のユニット構成のA7と比較すると、やはり能率は、少しだが下がっている。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: BBCモニター, PM510, Rogers

BBCモニター考(その2)

4343で感じられなかった音の粗さが、なぜPM510では感じとれたのか。

スピーカーには初動感度というのがある。基本的には能率が同じならば初動感度も同じと考えていい。
ただし聴感上の初動感度は必ずしも、音圧レベルと一致するとは言えない面も持つ。

たとえば重たい振動板を強力な磁気回路を用意して動かすのと、
軽い振動板をほどほどの磁気回路で動かすとして、出力音圧レベル(能率)が同じなら、
初動感度は同じということになる。

だが実際に聴いた印象では、軽い振動板の方が、敏捷だと感じることがある。

4343とPM510の使用ユニットに投じられている物量は、4343のほうがあきらかに上である。
フレームも磁気回路もしっかりとつくってある。
オーディオマニア心をくすぐるのは、4343である。

イギリスは、4343のようなスピーカーを、この時代はつくらなくなっていた。
それ以前はタンノイのオートグラフ、ヴァイタヴォックスのCN191など、
JBLのパラゴン、ハーツフィールド、エレクトロボイスのパトリシアン・シリーズと並ぶ
大型で本格的なつくりのスピーカーがつくられていたが、
いつのまにか家庭用スピーカーとしての範囲をこえないものになっていった。

いかにもイギリス的といえるが、やはりオーディオマニアとってはさびしい面もある。
PM510もLS5/8も、そういう意味では、コストを惜しまず技術の粋を集めて、
やれるところまでやってつくられたというスピーカーではない。

けれど……、と私は思う。