ワイドレンジ考(その26)
アルテック、はじめてのワイドレンジ設計のModel19について、瀬川先生はこう書かれている。
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604Eをオリジナルの612Aエンクロージュアごと(あの銀色のメタリックのハンマートーン塗装は素敵だ)入手して聴いていたこともあるが、私にはアルテックの決して広いとはいえない周波数レンジや、独特の張りのある音質などが、どうも体質的に合わなかったと思う。私の昔からのワイドレンジ指向と、どちらかといえばスリムでクールな音の好きな体質が、アルテックのファットでウォームなナロウレンジを次第に嫌うようになってしまった。
しかし最近、モデル19を相当長時間聴く機会があって、周波数レンジが私としてもどうやら許容できる範囲まで広がってきたことを感じたが、それよりも、久々に聴く音の中に、暖かさに充ちた聴き手にやすらぎをおぼえさせる優しさを聴きとって、あ、俺の音にはいつのまにかこの暖かさが薄れていたのだな、と気がついた。確信に満ちた暖かさというのか、角を矯めるのでない厳しさの中の優しさ。そういう音から、私はほんの少し遠のいていて、しかし、それが私のいまとても欲しい音でもある。おもしろいことにJBLが4343になってから、そういう感じを少しずつ鳴らしはじめた。私が、4341よりも4343の方を好ましく思いはじめたのも、たぶんそのためだろう。もっと齢をとったら、もしかして私もアルテックの懐に飛び込めるのだろうか。それともやはり、私はいつまでも新しい音を追ってゆくのだろうか。
(ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ ALTEC」号より)
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いま読むと、ひじょうに興味深いことを書かれている。
その瀬川先生が、6041をどう評価されていたかは、ステレオサウンド 53号をお読みいただきたい。
手元にその号がないので、引用したいところだが残念ながら無理。
記憶では、レベルコントロールを大胆にいじることが前提だが、かなり高い評価だったはず。
アルテックはModel19、マルチセルラホーンからマンタレーホーンになった604-8Hから、
2ウェイ構成ながら3ウェイ的なレベルコントロールが可能なネットワークになっている。
604-8Hを搭載した620Bに関しても、瀬川先生は、レベルコントロールを積極的にいじることで、
ご自身の音に仕上げられる可能性を感じた、という趣旨の記事を書かれている。