ワイドレンジ考(その28)
アルテックの6041にはモデルというか、前例がある。
1977年に日本に登場したUREIの813だ。
アルテックの604-8Gのマルチセルラホーンを、UREI独自のホーンに交換し、
さらに604-8Gのウーファーとトゥイーターの振動板の位置ズレをネットワークで補正、
サブウーファーを加えることで、アルテックの620Aよりもワイドレンジになっている。
同軸ユニットを中心にして、サブウーファーとトゥイーターを追加してワイドレンジ化を図る手法は、
指向性の問題を考慮すると、意外と有効なのだろう。
1980年にはパイオニアから同軸4ウェイユニットによるS-F1が登場している。
平面振動板のメリットを活かして、振動板の位置を揃えることに成功している。
ただしボイスコイルの位置は、揃っていなかったと記憶している。
ボイスコイルの位置を揃えた同軸型ユニットは、KEFのUniQが最初のはずだ。
S-F1搭載の4ウェイ同軸型ユニットは、
世の中にないものを生み出してやろうという技術者の意地を感じさせる意欲作だが、
製造はかなり困難だったように想像する。
カバッセのラ・スフィアのように、
3ウェイ同軸型ユニット+ウーファーという構成が(価格のことは置いておいて)現実的なのかもしれない。
KEFは、1999年にThe Maidstone で、UniQ搭載のフラッグシップモデルを開発している。
システム構成は5ウェイで、UniQユニットは400Hzから12kHzまで受け持つ。
タンノイからも、その3年前にキングダムを発表している。
同軸型ユニットが受け持つ帯域は、100Hzから15kHz(キングダム12のみ16kHz)。
ドイツのELACも、X-JET COAXという独自の同軸型ユニットを開発し、400Hz以上を受け持たせている。
これから先、同軸型ユニットを中心にまとめあげたシステムが増えてくるのかどうかはなんともいえないが、
すくなくとも水平・垂直両方向の指向性の問題に対する解答のひとつであるのは確かである。