妄想演出
20数年前ステレオサウンドが、メトロポリタンオペラのポスターを販売していたことがある。
そのなかの一枚に、メトロポリタン劇場の透視図があった。
ステージがあって、客席があり、それを取り囲むように、舞台装置を組立てている部屋、
衣装部屋、出演スタッフの待機部屋などが描かれたもので、
じっくりと細かいところまで見ていく楽しみのあるポスターだった。
このポスターを見ながら、これそのままモデル(立体)化してくれたらいいのに、そんなことを思っていた。
それから数年後、Macを使いはじめてからは、
あのポスターを3D化したらおもしろいだろうな、と思うようになってきた。
当時流行った言葉でいえば、メトロポリタン劇場をヴァーチャルツアーしたいからである。
はじめて使ったMacはClassic IIだから、3Dソフトに必要なコプロセッサーを搭載してなかったし、
モノクロ2値の9インチのディスプレイで、モデリングをやる気はまったく起きなかったので、
あくまで頭の中だけで思っていただけだった。
3Dソフトもハードウェアも進歩して、人物も自然風景の描写も、以前と較べると、その労力は少なくてすむ。
ハードウェアのスペックも、個人で楽しむ分には十分だと思う。
となると妄想だけは膨らむ。
オペラの演出家になれるわけだ。
ワーグナーの「ニーベルングの指環」の舞台こそ、挑戦しがいのあるものの筆頭だろう。
神話の世界を、現実の舞台のではあり得ない演出、照明でつくり出せる。
10年くらい前から、そんなことを考えてはいるものの、まったく手をつけていない。