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Date: 8月 20th, 2009
Cate: ワイドレンジ, 瀬川冬樹

ワイドレンジ考(その46)

瀬川先生は、ヴァイタヴォックスCN191について、
「二台のスピーカーの置かれる壁面は少なくとも4・5メートル、できれば5メートル以上あって、左右の広がりが十分とれること」と、
「続コンポーネントのステレオのすすめ」のなか、22項で書かれている。

残念ながら、紙面の都合だろうが、その理由については書かれていないが、おそらくコーナーホーン型であること、
壁をホーンの延長として使うこと、そして実際に音を聴かれた経験から、そう書かれただろう。

「残念乍ら」は、1980年、81年の瀬川先生の文章に、なんども登場する。
与えられた枚数が、瀬川先生が書きたいと思われているもに対して少なすぎて、
十分な説明がかけないままのとき、「残念乍ら」を使われている。

当時、この「残念乍ら」の部分を、いつか読めるものだと思って、
毎号ステレオサウンドの発売日を楽しみに待っていた。

けれど、「残念乍ら」の部分を書かれることなく、亡くなられた。

どれだけの「残念乍ら」があったのだろうか。
もし、あの時代にインターネットが、いまの時代のように存在していたら、
ページ数という物理的な制約のせいで書けなかったことを、
ブログやウェブサイトで公開されていたかもしれない、そう思うのだが……。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ
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ワイドレンジ考(その45)

オートグラフを、五味先生はどのくらい間隔で設置しておられたのか。

「西方の音」所収の「タンノイについて」で、
「私はタンノイ二基を dual concentricunit として、約五メートル間隔で壁側においている。壁にはカーテンを垂らしている。ワルキューレやジークフリートはこの五メートル幅の空間をステージに登場するのである。」
と書かれている。

やはり5mの間隔を確保されている。

そういえば、いま五味先生のオートグラフ他、オーディオ機器のすべては練馬区役所で保管され、
これらの機材を使ってのレコードコンサートが、ほぼ定期的に行なわれている。

私も一度行ったが、そのとき、区役所の担当者の説明では、この部屋を選んだ理由は、
「五味先生がオートグラフの設置されていた間隔が、ちょうどこのぐらいだったからです」と。

だが、あきらかに狭い。5mはどうみてもない。
五味先生と親しかった方が、「このくらいの間隔」だと指示したとことだ。
なぜ、五味先生本人が書かれている5mよりも、短くなるのだろうか。
不思議な話もあるものだ。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その44)

オートグラフは、しかもコーナーホーン型スピーカーシステムである。
コーナーに設置し、壁を、低音ホーンの延長として利用する。

ホーン型スピーカーは、ホーンが長いほど低音再生能力は、下の帯域まで伸びる。
つまり壁、床が堅固で、響きのいい材質でつくられていても、左右のスピーカーの間隔が狭ければ、
終に真価は発揮し得ない(はずだ)。

ほんとうは断言したいところだが、オートグラフ、もしくは他のコーナーホーン型スピーカー、
ヴァイタヴォックスのCN191やエレクトロボイスのパトリシアン・シリーズを、
私が理想的と考える部屋で鳴らされているのを聴いた経験がないし、
さらに狭い部屋、広い部屋でどのように低域のレスポンスが変化するのか、その測定結果も見たことがないから、
推測で述べるしかないのだが……。

おそらくコーナーホーン型スピーカーは、左右のスピーカーの間隔が3m程度では、
おそらく設計者の意図した低域レスポンスは望めないだろう。

5mくらいは、低域の波長の長さからすると、最低でも必要とするであろう。
それだけの広さと、それに見合うだけの天井高さも求められる。
そして、くり返すが、良質の材質による堅固な造りの部屋でなければならない。
コーナーホーン型スピーカーシステムは、なんと贅沢なものなのかと思う。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その43)

適切に設計されたコーナー型スピーカーシステムであれば、
しっかりした壁と床を確保できれば、低域のレスポンスを改善できるといえる。

たとえレスポンスの上昇が6dBだとしても、これを電気的に補整するためには、
パワーアンプにそれだけの負担がかかる。6dBアップだと、4倍の出力が求められる。
そして、当然ウーファーには、それだけのストロークが求められる。

いまのように数100Wの出力のあたりまえになり、ウーファーのストロークも充分にとれるのであれば、
電気的な補整も実用になるが、タンノイのオートグラフが登場した時代は、
真空管アンプで、出力は大きいもので数10W。
ユニットのほうも同じようなもので、モニターシルバーの最大許容入力は25Wだ。

だから、低域のレスポンスを伸ばすには、コーナー効果の助けを必要とした。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その42)

一般的なスピーカー(アリソンの試作品)の無響室での周波数特性は、約50Hzまではほぼフラットで、
それより下はなだらかに下降し、20Hzでは−20dBのレスポンス。
このスピーカーをコーナーに設置すると、その影響が、1kHz近くにまで現われている。
250Hzぐらいに数dBのディップができ、小さなやま(ピーク)、それより上の帯域で2つできている。

低域特性は、というと、250Hzのディップ以降、レスポンスは上昇し、100Hzあたりで3dBほど、
50Hzあたりが上昇のピークで、約7〜8dBほど上昇している。
50Hz以下の周波数ではレスポンスは下降し、30Hzでほぼ0dB、20Hzでは−5dBと、
それでも無響室での特性と比較するとあきらかに低域のレスポンスは拡大しているのがわかる。

製品化されたアリソンのスピーカーシステムは、無響室での特性は、300Hzあたりからなだらかに下降、
150Hzあたりで下降カーブはすこし平らになり、50Hzより下の帯域でまた下降しはじめる、という周波数特性。
これがコーナーに設置することで、50Hzまでほぼフラットで、それから下の帯域は下降するもの、
20Hzでのレスポンスは−11〜12dBと、無響室での特性より8dBほど上昇している。
またコーナー設置の影響も、それほど上の帯域には出ておらず、130Hzあたりにわずかな凹みがみられる程度なのは、
最初からコーナーに置くことを考慮した設計だからだろう。

井上先生が、ステレオサウンド 37、38、39号で製作された、
タンノイ・コーネッタの周波数特性──無響室、コーナー設置──が、38号に載っている。
コーナー効果による低域のレスポンス上昇は、最大で10dBを超えている。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その41)

スピーカーシステムを、床に直置きし、ウーファーと床とできるだけ近づける置き方では、
低域のレスポンスは理論的には2倍になる。
さらにこの状態で、壁が1面加われば、さらに2倍に、もう一面加われば、もう2倍と、
デシベルで示せば、無響室での測定結果よりも18dB上昇することになる。

床と2面の壁が交差するところが部屋のコーナーである。
18dBものレスポンスの上昇が得られるコーナー効果は、あくまでも壁と床が理想的な状態であれば、の話であり、
実際の部屋では、良好な部屋で最大で12dB程度だといわれている。
一般的な部屋では6〜8dB程度ときいている。
つまりコーナー型スピーカーは、このレスポンスの上昇分を見込んで、無響室での周波数特性は、
低域がなだらかに下降させるが望ましいわけだ。

1980年ごろのステレオサウンドの広告に、アリソンのスピーカーの周波数特性が載っていた。
一般的なスピーカーの無響室での周波数特性とコーナーに設置したときのそれ、
さらにアリソンのスピーカーの、ふたつの条件で周波数特性、
計4つの周波数特性グラフが載っている。

Date: 8月 19th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その40)

蓄音器の音に通じる音の響きをもつタンノイの中にあって、
オートグラフは、その意味でまさしく頂点にふさわしい構造と音と響きをもつ。

その現代版といわれるウェストミンスターを、だから井上先生はスピーカーではなく、
「ラッパ」と呼ぶにふさわしいと判断されたのだろう。

以前、オートグラフをベートーヴェン、ウェストミンスターをブラームスにたとえもしたが、
このふたつのスピーカーは、構造的、設計面で、ひとつ大きく違う点がある。

コーナー型であるかどうかである。

オートグラフはコーナー型、それもコーナーホーン型である。
ウェストミンスターは、リア型を90度の角度を持たせることなく、
通常のスピーカー同様、フラットにした、タンノイ的にいえばレクタンギュラー型で、
コーナーに置くようには設計されていない。

Date: 8月 18th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その26)

抵抗やコンデンサーが、同じ方向を向き、行儀良く整然と並んでいる、そんな印象を受ける。
キレイなパーツの並び方だと思う人もいるだろうが、私は、この種のパーツに配列には、異和感を感じる方で、
なにかコンピューターか何か、そういった類のものようなモノに近いといったらいいか……、
とにかくオーディオのアンプという感じを、あまり受けない。

こういう部品配置が音質的にどうなのかは、
自分でアンプを実際に組んだうえで音を聴いてからでないと、
ほんとうはもっともなことはいえないのだが、
それでも、この種のアンプの音に共通の、不思議なもどかしさを感じる傾向が、私にはある。

音を聴く前に、天板を外し、中を見るわけではない。
あくまでも、音を聴いたあとに、中を見るわけだが、
スレッショルドのSL10(そのあとに出たFETシリーズもふくめて)と、
クレルのPAM2以降の数機種のコントロールアンプは、この部品配置がなんとなく似ている。

アンプの音は、部品配置だけで決るものでもないし、
部品配置がアンプの音をどれだけ支配するかということについても、
誰も正確なところは言えないだろう。

それでも感覚的なところで、この種の部品配置のアンプからは、
荒々しさとか、ざっくりとした質感といったらいいのだろうか、
そういった表現で表わしたくなる性質のものが、薄らぐ傾向にある、と言いたくなるのだが……。

もしくはこういう部品を配置する人は、そういう音を好む、ともいえるのかもしれない。

Date: 8月 18th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その25)

PAM2と同じコンストラクションのコントロールアンプは、クレルからも、そのあと登場していない。
PAM2のプリント基板は、正方形に近かったと思う。
これ一枚に片チャンネル分のフォノイコライザーとラインアンプを構成する部品が取り付けてられている。
おそらく基板の左側、リアパネルからフロントパネルに向かって、フォノイコライザーアンプが、
そして基板右側、今度はフロントパネルからリアパネルに向かって、ラインアンプ、というふうになっているはずだ。

フォノ入力の信号は、基板上でUの字のような経路を通る。
ライン入力の信号は、リアパネル端子からフロントパネルの入力セレクターのスイッチまでくるわけだから、
やはりUの字のような経路を通っている。

これが、KRSシリーズのコントロールアンプ、PAM3になると、フロントパネル右側から左に向かって、
一直線に信号は向かう。もちろん入出力端子へ接続では折れ曲がるものの、
信号経路の、大きく表わすと直線といっていい。

こういう違いのためか、それとも、パーツ配置への考え方が変化したのか、
プリント基板を見た印象が、PAM2と、それ以降のコントロールアンプでは、
おもにコンデンサー、抵抗などの受動素子の配列に、違いがあるように感じられる。

Date: 8月 17th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×九 補足)

ML6の場合、アンプ本体の上側を左チャンネル、下側を右チャンネルとして、
外部電源の左チャンネル用を上の口のコンセントから、右チャンネル用を下の口からとるのが、ひとつ。
そしてアンプはそのままで、電源の取り方を左右で逆にする。右チャンネルを上、左チャンネルを下へ、と。

次はアンプの上側を右チャンネルに、下側を左チャンネルで、電源の取り方も、上記のように2通りあるわけで、
合計で4通りの組合せができ、それぞれに微妙に音は異なるわけだから、
部屋の状況、スピーカーなど状況に応じて、柔軟に使いわけた方がいい。

つけ加えれば、電源コードに手を加えるのであれば、前に書いたように、
ひとつのACプラグに左右両チャンネル、2本の電源コードをまとめれば、5通りの音が得られる。

グラフィックイコライザーをどんなに駆使して、微調整をくり返しても、
周波数特性のコントロールだけでは、補整できない音のキャラクターの微妙な違いには、
こういう地味な工夫が、意外と効果的だったりすることもある。

Date: 8月 16th, 2009
Cate: 基本

「基本」(その5)

ヤルヴィのベートーヴェンを聴いたあとに、
フルトヴェングラー、バーンスタイン、ジュリーニのベートーヴェンを聴く。

ヤルヴィの演奏をきいた耳で聴くと、聴きなれていたディスクに、再発見がある。
己の、聴き手としての未熟さに気づかされるわけだが、それもまたいい。
未熟さに気づかずに、これから先ずっと聴いていってたとしたら、
なにかとりかえしのつかないことをしでかした気持になるというものだろう。

だから、ヤルヴィのベートーヴェンは、ちょっとしたひとつの事件だった。

そして、私にとっての基本は、正三角形の頂点で聴くことだけではない。
わずか数人だが、信じている人がいる。
その人の言うことならば、とにかく、すべて信じることにしている。
黒田先生がそうだし、川崎先生も、私にとってはそうだ。

このことが、私にとっての、いちばんの基本である。
すべての人を疑ってかかるのも、その人なりの生き方だろうし、
私が信じている人を信じないのも、人それぞれだろう。

信じられる人がいるということは大事なことだし、
信じられる人がいないということは、哀しいことではないか。

Date: 8月 16th, 2009
Cate: 基本

「基本」(その4)

パーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンは、9月に「第九」が発売になり、全集が完成する。

黒田先生の、サライの記事を読むまで、まったくヤルヴィへの関心はなかった。
ベートーヴェンを録音していることも、知らなかった。
今回、サライを読んでなかったら、聴く機会はずっと後になっただろうし、
最悪、聴かずじまいだったかもしれない。

レコード店で、実際手にしてみて、SACDだということに驚いた。
六番、二番のカップリングのディスクだけでなく、他のディスクもSACDである。

RCAレーベルとはいえ、SACDに対して、そっけない態度をとっているソニーに吸収されているのに、
よくぞ出してくれた、とうれしくなる。

しかもベーレンライター版を使っての、演奏でもある。
これらのことが関係しているのか、1980年代の後半に、
フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラによるベートーヴェンを聴いたときの新鮮さを、
もちろん性格の違う新鮮さであるが、ふたたび感じられた。

黒田先生も書かれているように「ベートーヴェンを再発見できる」。

Date: 8月 16th, 2009
Cate: 基本

「基本」(その3)

微調整のあと、もういちどパーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンの「田園」交響曲の第4楽章をかける。
微調整の時にかけていたディスクの音の変化から、こんな感じで鳴ってくれるだろうと予測の範疇を超え、
アグレッシヴで、力に富んだ鳴り方に、黒田先生の言葉をまた引用すれば、
「描写音楽の迫力にあらためて圧倒されないではいられない」。

ただ精緻さにおいては、以前のセッティングにくらべて、やや後退したものの、どちらをとるかといえば、
しばらくは、このセッティングのまま、細部を追い込んでいこうと思う。

不思議なことに、他のディスクでは、正三角形のセッティングのほうが精緻さでもまさる。
優秀録音と云われるものほど、いかに緻密な録音を行なっているかが、はっきりと示される。

もちろん、あらゆる条件において、正三角形のセッティングが最良の結果を得られるわけではない。
それでも、スピーカーのセッティングに迷ってしまったら、いちど試してみる価値はある。

Date: 8月 16th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×八 補足)

人が作り出すものである以上、どれほど厳格に品質管理されていようと、若干のバラツキまでは排除できない。

技術がこれから先飛躍的に向上し、アンプに代表される電子機器のバラツキが完全になくなったとしても、
スピーカーがこれまでの形態の延長線上にあるかぎり、バラツキがなくなるとは思えない。

そしてそのスピーカーが設置される部屋が、完全に左右条件が同じであること、
左右チャンネルの音がまったく同じであることは、まずあり得ない話である。
だから現実と折り合いをうまく見つけ出すのも、大事なポイントとなってくる。

マークレビンソンのML6を2段重ねで使う際、
たいていは上のML6を左チャンネル、下の方を右チャンネルとしがちだが、
なにもこれはこだわることはなく、左チャンネルを下のML6にしてもいい。

ML6の場合、外部電源も左右チャンネルで独立しているため、
左右チャンネルのどちらを、電源コンセントの上の口からとるかということを含めると、4通りの接続が試せる。

Date: 8月 16th, 2009
Cate: 基本

「基本」(その2)

とは言うものの、それほど大がかりなことをやったわけではなく、スピーカーのセッティングを、
ステレオ再生の基本、というより約束事である正三角形の頂点で聴く、ということを実践しただけである。

左右のスピーカーの間隔を一辺とする正三角形のそれぞれの頂点を、
左右のスピーカーとリスニングポイントとする。
スピーカーの振りも、正三角形だから、ちょうど60度にする。

いままでのセッティングでは、スピーカーとリスニングポイントの距離よりも、
スピーカーの間隔が多少広く、二等辺三角形になっていた。

左右のスピーカーの間隔を、約20cmほど縮め、後に数cm移動する。
そしてスピーカーの振りを、きっちり60度にする。
あとは音を聴きながら、微調整したわけだが、別項で、「使いこなしに定石はない」と書いているし、
たしかにそうなのだが、それでも基本(約束事)をまず最初に実践してみるべきであると、
いまさらながら思ってしまった。