ワイドレンジ考(その42)
一般的なスピーカー(アリソンの試作品)の無響室での周波数特性は、約50Hzまではほぼフラットで、
それより下はなだらかに下降し、20Hzでは−20dBのレスポンス。
このスピーカーをコーナーに設置すると、その影響が、1kHz近くにまで現われている。
250Hzぐらいに数dBのディップができ、小さなやま(ピーク)、それより上の帯域で2つできている。
低域特性は、というと、250Hzのディップ以降、レスポンスは上昇し、100Hzあたりで3dBほど、
50Hzあたりが上昇のピークで、約7〜8dBほど上昇している。
50Hz以下の周波数ではレスポンスは下降し、30Hzでほぼ0dB、20Hzでは−5dBと、
それでも無響室での特性と比較するとあきらかに低域のレスポンスは拡大しているのがわかる。
製品化されたアリソンのスピーカーシステムは、無響室での特性は、300Hzあたりからなだらかに下降、
150Hzあたりで下降カーブはすこし平らになり、50Hzより下の帯域でまた下降しはじめる、という周波数特性。
これがコーナーに設置することで、50Hzまでほぼフラットで、それから下の帯域は下降するもの、
20Hzでのレスポンスは−11〜12dBと、無響室での特性より8dBほど上昇している。
またコーナー設置の影響も、それほど上の帯域には出ておらず、130Hzあたりにわずかな凹みがみられる程度なのは、
最初からコーナーに置くことを考慮した設計だからだろう。
井上先生が、ステレオサウンド 37、38、39号で製作された、
タンノイ・コーネッタの周波数特性──無響室、コーナー設置──が、38号に載っている。
コーナー効果による低域のレスポンス上昇は、最大で10dBを超えている。