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Date: 8月 12th, 2018
Cate: ワーグナー

ワグナーとオーディオ(マランツかマッキントッシュか・その1)

五味先生のタンノイ・オートグラフにつながれていたのは、
主にマッキントッシュのC22とMC275のペアである。
「人間の死にざま」を読むと、カンノアンプの300Bシングルに、
交換しても聴かれていたことがわかる。

コントロールアンプはマランツのModel 7とマークレビンソンのJC2もお持ちだった。
その他にデッカ・デコラのアンプも所有されていた。

マランツのパワーアンプはどうだったのか。
Model 2かModel 5、Model 8Bのどれかは所有されていたとしてもおかしくない。

所有されていないアンプも多数聴かれている。
その結果のC22とMC275である、とみている。

中学生だったころ、
マッキントッシュとマランツの真空管アンプを見較べて、マランツの方がよさそうに思えた。
そのころ、マッキントッシュ、マランツの真空管アンプを聴ける店は、熊本にはなかった。
周りにオーディオマニアが誰もいなかったから、
個人でどちらかを持っている人を探そうとは思わなかった。

ステレオサウンド 51号のオーディオ巡礼に、
ヴァイタヴォックスCN191を鳴らされているH氏が登場されている。

アンプはマッキントッシュからマランツのModel 7とModel 9のペアに交換した、とあった。
このときもまだどちらも聴いたことはなかったし、写真でだけ知っているだけでしかなかった。

それでも、そうだろう、と思いながら、オーディオ巡礼を読んでいた。
アンプとして、どちらが高性能かといえば、マランツに軍配をあげる──、
そういう見方を10代の私はしていた。

なので、五味先生はなぜマッキントッシュなのか、という疑問がなかったわけではない。
正確にいえば、マランツを選ばれなかった理由はなんのか、を知りたいと思っていた。

結局、それはワグナーを聴かれるから、というのが、私がたどりついた答である。

Date: 8月 12th, 2018
Cate: ジャーナリズム

ステレオ時代 vol.12

ステレオ時代 vol.12が書店に並んでいる。

特集は「デジタルとアナログの間で ステレオ時代的 PCMプロセッサー特集」であり、
表紙にはソニーのPCM-F1が取り上げられている。

その下に「追悼特集第二弾 ありがとう中島平太郎先生」とある。
今回も、これが目に留った。

前号が第一弾で、今号が第二弾。
第一弾が好評だったから──、という安易な気持でつくられた記事ではない。
それにステレオ時代 vol.12を手にとればわかるが、
誰の目にも第一特集は「ありがとう中島平太郎先生」なのは明らかである。

しかも前号よりも力の入った記事だ。
編集者のおもいがしっかりと伝わってくる。

「ありがとう中島平太郎先生」、
こういう記事は、広告にはほとんど、というかまったく結びつかない。

売れていない雑誌だからやれる記事──、
そんな言い方をする人はいるだろうが、ほんとうにそうだろうか。

売れている雑誌にはやれない記事なのか。
売れている雑誌(そんなオーディオ雑誌があるのか?)こそ、やるべき記事ではないのか。

Date: 8月 12th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その10)

ステレオサウンド 3号のQUADのページの下段には、解説がある。
この解説は誰による文章なのかはわからないが、8号の特集からわかるのは、
瀬川先生が書かれていた、ということ。

QUAD IIについては、こう書かれている。
     *
 公称出力15Wというのは少ないように思われるが、これは歪率0.1%のときの出力で、カタログ特性で、〝OVERLOAD〟とある部分をみると、ふつうのアンプなら25Wぐらいに表示するところを、あえて控えめに公称しているあたり、イギリス人の面目躍如としている。コムパクトなシャーシ・コンストラクションと、手工芸的な配線テクニックは、実に信頼感を抱かせる。
 イギリスでは公的な研究機関や音響メーカーで標準アンプとして数多く採用されていることは有名で、技術誌のテストリポートやスピーカーの試聴記などに、よく「QUAD22のトーン目盛のBASSを+1、TREBLEを−1にして聴くと云々」といった表現が使われる。
     *
岡先生もステレオサウンド 50号で、
《長年に亘ってBBCをはじめ、イギリスの標準アンプとして使われていただけのことはある傑作といえる。》
と書かれている。

その意味でQUAD IIは、業務(プロフェッショナル)用アンプといえる。
けれどQUAD IIはプロフェッショナル用を意図して設計されたアンプではないはず。

結果として、そう使われるようになったと考える。

同じ意味ではマッキントッシュのMC275もそうといえよう。
マッキントッシュにはA116というプロフェッショナル用として開発され使われたアンプもあるが、
MC275はコンシューマー用としてのアンプである。

それがCBSコロムビアのカッティングルームでのモニター用アンプとして、
それから1970年代初頭、コンサートでのアンプには、
トランジスターの、もっと出力の大きなアンプではなくMC275がよく使われていた、とも聞いている。

MC275もQUAD IIと、だから同じといえ、
それがマランツの真空管アンプとは、わずかとはいえはっきり違う点でもある。

Date: 8月 11th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その9)

オーディオ機器にもロングラン、ロングセラーモデルと呼ばれるものはある。
数多くあるとはいえないが、あまりないわけでもない。
スピーカーやカートリッジには、多かった。

けれどアンプは極端に少なかった。
ラックスのSQ38にしても、初代モデルからの変遷をたどっていくと、
何を基準にしてロングラン、ロングセラーモデルというのか考えてしまう。

そんななかにあって、QUAD IIはまさにそういえるアンプである。
1953年から1970年まで、改良モデルが出たわけでなく、
おそらく変更などなく製造が続けられていた。

ペアとなるステレオ仕様のコントロールアンプ22の登場は1959年で、
1967年に、33と入れ代るように製造中止になっている。

22とQUAD IIのペアは、ステレオサウンド 3号(1967年夏)の特集に登場している。
     *
 素直ではったりのない、ごく正統的な音質であった。
 わたくしが家でタンノイを鳴らすとき、殆んどアンプにはQUADを選んでいる。つまりタンノイと結びついた形で、QUADの音質が頭にあった。切換比較で他のオーソドックスな音質のアンプと同じ音で鳴った時、実は少々びっくりした。びっくりしたのは、しかしわたくしの日常のそういう体験にほかならないだろう。
 タンノイは、自社のスピーカーを駆動するアンプにQUADを推賞しているそうだ。しかしこのアンプに固有の音色というものが特に無いとすれば、その理由は負荷インピーダンスの変動に強いという点かもしれない。これはおおかたのアンプの持っていない特徴である。
 10数年前にすでにこのアンプがあったというのは驚異的なことだろう。
     *
瀬川先生が、こう書かれている。
ここで「選んでいる」とあるのは、QUAD IIのことのはず。

ただし52号の特集の巻頭「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」では、
こうも書かれている。
     *
 マランツ7にはこうして多くの人々がびっくりしたが、パワーアンプのQUAD/II型の音のほうは、実のところ別におどろくような違いではなかった。この水準の音質なら、腕の立つアマチュアの自作のアンプが、けっこう鳴らしていた。そんないきさつから、わたくしはますます、プリアンプの重要性に興味を傾ける結果になった。
     *
実を言うと、これを読んでいたから、QUAD IIにさほど興味をもてなかった。

Date: 8月 11th, 2018
Cate: きく

音を聴くということ(グルジェフの言葉・その5)

いま一冊の本(マンガ)を借りている。
北北西に曇と往け」というマンガである。

北アイルランドを舞台としている。
第一巻の最後のほうに、主人公・御山慧にリリヤという音楽をやっている女性が話しかける。

 あの子が話すと
 汚れた音がして
 気持悪い

 日本語だから何 話してるかわからないけど
 嘘ついている

 聞かないほうがいい

そういうセリフがある。
嘘を言っている日本語は、意味はわからなくとも気持が悪い。

あからさまな嘘ならば、すぐに見抜けることがある。
けれどわかっているつもりで、結果として嘘をいってしまう人がいる。
わかったつもりなのだから、嘘を言っている本人にしてみれば、嘘ではない。

わかったつもりは思い込みや刷り込みによるものだったりする。

いろんな嘘がある。
すぐには見抜けない嘘もある。

けれど嘘は常に汚れた音なのかもしれない。
怒りもなければ、愛もないのが嘘なのか。

Date: 8月 11th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その8)

1983年に会社名も変更になり、ブランド名として使われてきたQUADに統一されたが、
QUADが創立された当初はThe Acoustical Manufacturing Company Ltd.だった。

QUADとは、Quality Unit Amplifier Domesticの頭文字をとってつけられた。
DomesticとついていてもQUADのアンプは、BBCで使われていた、と聞いている。

BBCでは、真空管アンプ時代はリーク製、ラドフォード製が使われていた。
QUADもそうなのだろう。
このあたりを細かく調べていないのではっきりとはいえないが、
それでもBBCでQUAD IIが採用されていたということは、
QUAD初のソリッドステートアンプ50Eの寸法から伺える。

QUAD IIの外形寸法はW32.1×H16.2×D11.9cmで、
50EはW12.0×H15.9×D32.4cmとほぼ同じである。

それまでQUAD IIが設置されていた場所に50Eはそのまま置けるサイズに仕上げられている。
50Eは、BBCからの要請で開発されたものである。

しかも50Eの回路はトランジスターアンプというより、
真空管アンプ的といえ、真空管をそのままトランジスターに置き換えたもので、
当然出力トランスを搭載している。

50Eの登場した1965年、JBLには、SG520、SE400S、SA600があった。
トランジスターアンプの回路設計が新しい時代を迎えた同時期に、QUADは50Eである。

こう書いてしまうと、なんとも古くさいアンプだと50Eを捉えがちになるが、
決してそうではないことは二年後の303との比較、
それからトラジスターアンプでも、
トランス(正確にはオートフォーマー)を搭載したマッキントッシュとの比較からもいえる。
これについて別項でいずれ書いていくかもしれない。

とにかくQUAD IIと置き換えるためのアンプといえる50Eは1965年に登場したわけだが、
QUAD IIは1970年まで製造が続けられている。
QUAD IIはモノーラル時代のアンプで、1953年生れである。

Date: 8月 11th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その7)

QUAD IIの存在に目を向けるようになって気づいたことがある。
ここでは現代真空管アンプとしている。
最新真空管アンプではない。

書き始めのときは、現代と最新について、まったく考えていなかった。
現代真空管アンプというタイトルが浮んだから書き始めたわけで、
QUAD IIのことを思い出すまで、現代と最新の違いについて考えることもしなかった。

最新とは、字が示すとおり、最も新しいものである。
現行製品の中でも、最も新しいアンプは、そこにおける最新アンプとなるし、
最も新しい真空管アンプは、そこにおける最新真空管アンプといえる。

では、この「最も新しい」とは、何を示すのか。
単に発売時期なのか。
それも「最も新しい」とはいえるが、アンプならば最新の技術という意味も含まれる。

半導体アンプならば、最新のトランジスターを採用していれば、
ある意味、最新アンプといえるところもある。
けれど真空管アンプは、もうそういうモノではない。

いくつかの新しい真空管がないわけではないが、
それらの真空管を使ったからといって、最新真空管アンプといえるだろうか。

最新アンプは当然ながら、時期が来れば古くなる。
常に最新アンプなわけではない。
いつしか、当時の最新アンプ、というふうに語られるようになる。

そういった最新アンプは、ここで考える現代アンプとは同じではない。

Date: 8月 10th, 2018
Cate: アナログディスク再生

リマスターSACDを聴いていて(その1)

先日、あるSACDを聴いた。
CDで以前出ていて、そのころよく聴いていた。

今回のリマスターSACDは、丁寧な仕事がなされている、と感じる出来だ。
CDと直接比較はしなかったが、少なくとも悪くない、という消極的な評価ではなく、
かなりいいんじゃないか、と感じていた。

聴いている途中で、
そして聴き終ってから、そのSACDの音は、
良質のMM型カートリッジでの再生音に通ずるような鳴り方だったことに気づいた。

MM型カートリッジといって、
アナログディスク全盛時代は各社からいろんなグレードで数多く発売されていたし、
ひとつとして同じ音のカートリッジはなかったわけだから、
MM型カートリッジの音という括りは乱暴で危険なこととはわかっていても、
それでもMC型カートリッジの良質なモデルの音を聴いた直後では、
どんなに優れたMM型カートリッジでも、忘れてきている何かがある、と感じる。

音はすべて出ているように感じる。
今回のSACDもそうだった。
ケチをつけるところは、特にない。
でも、そう感じていた。

これまでもリマスターSACDは何枚も聴いてきている。
こんなふうに感じたのは初めてだった。

Date: 8月 10th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その6)

QUAD IIの出力は15Wである。
高能率のスピーカーならば、これでも十分ではあっても、
95dB以下ともなると、15Wは、さすがにしんどくなることも、
新しい録音を鳴らすのであれば出てくるはずだ。

実際には25W以上楽に出る感じの音ではあったそうだが、それでも出力に余裕があるとはいえない。
QUAD IIはKT66のプッシュプルアンプである。
出力管がKT88だったら……、と思った人はいると思う。

私もKT66プッシュプルアンプとしての姿は見事だと思いながらも、
もしいまQUAD IIを使うことになったら、KT88もいいように思えてくる。

実際、QUADはQUAD IIを復刻した際、
EF86、KT66とオリジナルのQUAD IIと同じ真空管構成にしたQUAD II Classicと、
EF86を6SH7、KT66をKT88に変更したQUAD II fortyも出している。

QUAD II Classicはオリジナルと同じ15Wに対し、
QUAD II fortyは型番が示すように40Wにアップしている。

QUADが往年の真空管アンプを復刻したとき、QUADもか、と思った一人であり、
内部の写真をみて、関心をもつことはなくなった。
それにシャーシーのサイズも多少大きくなっていて、
オリジナルのQUAD IIのコンストラクションの魅力ははっきりと薄れている。

ならば基本レイアウトはそのままで、
トランスカバーの形状を含めて細部の詰めをしっかりとしてくれれば、
外観の印象はずっと良くなる可能性はあるのに──、と思う。

QUAD II fortyはオリジナルのQUAD IIと同じ回路なのだろう。
位相補正は、やはりやっていないのか。

現代真空管アンプを考えるうえで、いまごろになってQUAD II fortyが気になってきている。
QUAD II fortyはどういう音を聴かせるのか。

QUADのESLだけでなく、
複雑な構成のネットワークゆえ容量性負荷になりがちなスピーカーシステムでも、
音量に配慮すれば不安定になることなくうまく鳴らしてくれるのか。

Date: 8月 9th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その5)

容量性負荷で低能率のスピーカーといえば、コンデンサー型がまさにそうである。
QUADのESLがそうである。

QUADはESL用のアンプとして真空管アンプ時代には、
KT66プッシュプルのQUAD IIを用意していた。

私はQUAD IIでESLを鳴らした音は聴いたことがないが、
ESL(容量性負荷)を接続してQUAD IIが不安定になったという話も聞いていない。

QUAD IIを構成する真空管は整流管を除けば四本。
電圧増幅に五極管のEF86を二本使い、これが初段であり位相反転回路でもある。
次段はもう出力管である。

マランツやマッキントッシュの真空管アンプの回路図を見た直後では、
QUAD IIの回路は部品点数が半分以下くらいにおもえるし、
ものたりなさを憶える人もいるくらいの簡潔さである。

NFBは19dBということだが、これもQUAD IIの大きな特徴なのが、位相補正なしということ。
NFBの抵抗にもコンデンサーは並列に接続されていない。

出力トランスにカソード巻線を設けているのはマッキントッシュと同じで、
時代的には両社ともほほ同時期のようである。

同じカソード巻線といっても、マッキントッシュはバイファイラー巻きで、
QUADは分割巻きという違いはある。
それにマッキントッシュのカソード巻線はバイファイラーからトライファイラーに発展し、
最終的にはMC3500ではペンタファイラーとなっている。

マランツの真空管アンプにはカソード巻線はない。
マランツのModel 8BのNFB量はオーバーオールで20dBとなっている。
QUAD IIとほぼ同じである。

Model 8BとQUADのESLの動作的な相性はどうだったのか。
容量性負荷になりがちな多素子のネットワークのシステムで大変になるということは、
ESLでもそうなる可能性は高い。

マランツとQUADではNFB量は同じでも、
それだけかけるのにマランツは徹底した位相補正を回路の各所で行っている。
QUAD IIは前述したように位相補正はやっていない。

マッキントッシュだと、MC240、MC275は聴く機会は、
ステレオサウンドを辞めた後もけっこうある。
マランツもマッキントッシュよりも少ないけれどある。

QUADの真空管アンプは、めったにない。
もう二十年以上聴いていない。
前回聴いた時には、現代真空管アンプという視点は持っていなかった。
いま聴いたら、どうなのだろうか。

MC275同様、フレキシビリティの高さを感じるような予感がある。

Date: 8月 9th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その4)

いまヒーターの点火方法について書いているところで、
この項はそんな細部から書いていくことが多くなると思うが、
それだけで現代真空管アンプを考えていくことになるとは考えていない。

現代真空管アンプは、どんなスピーカーを、鳴らす対象とするのか、
そういったことも考えていく必要がある。

現代真空管アンプで、真空管アンプ全盛時代のスピーカーシステムを鳴らすのか。
それとも現代真空管アンプなのだから、現代のスピーカーシステムを鳴らしてこそ、なのか。

時代が50年ほど違うスピーカーシステムは、とにかく能率が大きく違ってきている。
100dB/W/m前後の出力音圧レベルのスピーカーと、
90dBを切り、モノによっては80dBちょっとのスピーカーシステムとでは、
求められる出力も大きく違ってくる。

そしてそれだけでないのが、アンプの安定性である。
ここ数年のスピーカーシステムがどうなっているのか、
ステレオサウンドを見ても、ネットワークの写真も掲載されてなかったりするので、
なんともいえないが、十年以上くらい前のスピーカーシステムは、
ネットワークを構成する部品点数が、非常に多いモノが珍しくなかった。

6dBスロープのネットワークのはずなのに、
写真を見ると、どうしてこんなに部品が多いのか、理解に苦しむ製品もあった。
いったいどういう設計をすれば、6dBのネットワークで、ここまで多素子にできるのか。

しかもそういうスピーカーは決って低能率である。
この種のネットワークは、パワーアンプにとって容量負荷となりやすく、
パワーアンプの動作を不安定にしがちでもあった。

井上先生から聞いた話なのだが、
そのころマランツが再生産したModel 8B、Model 9は、
そういうスピーカーが負荷となると、かなり大変だったらしい。

現代真空管アンプならば、その類のスピーカーシステムであっても、
安定動作が求められることになり、そうなると、往年の真空管アンプでは、
マランツよりもマッキントッシュのMC275のほうがフレキシビリティが高い──、
そのこともつけ加えられていた。

Date: 8月 9th, 2018
Cate: 異相の木

「異相の木」(岩崎千明氏のこと)

三日前の「はっきりと書いておく」を書いていて、
岩崎先生はオーディオ評論における異相の木だったのではないか。
そんなことを考えていた。

私は瀬川先生にとってライバルは岩崎先生だった、と認識している。
それは岩崎先生にとってのライバルもまた瀬川先生ということである。

同相の木として、そして異相の木として、そうだった。

Date: 8月 9th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その3)

オーディオに興味をもち、真空管アンプに、
そして真空管アンプの自作に興味をもつようになったばかりのころ、
ヒーターの点火は、ノイズが少なくインピーダンスが十分に低い定電圧回路を採用すれば、
それでほぼ問題解決ではないか,ぐらいに考えていた。

三端子レギュレーターはともかくとして、ディスクリート構成の定電圧回路、
発振せず安定な動作をする回路であれば、それ以上何が要求されるのかはわかっていなかった。

そのころから交流点火のほうが音はいい、と主張があるのは知っていた。
そもそも初期の真空管は直流、つまり電池で点火していた歴史がある。

ならば交流点火よりも直流点火のはず。
それなのに……、という疑問はあった。

ステレオサウンド 56号のスーパーマニアに、小川辰之氏が登場されている。
日本歯科大学教授で、アルテックのA5、9844Aを自作の真空管アンプで鳴らされている。

そこにこんな話が出てきたことを憶えている。
     *
 固定バイアスにしていても、そんなにゲインを上げなければ、最大振幅にならなくて、あまり寿命を心配しなくてもいいと思ってね、やっている。ただ今の人はね、セルフバイアスをやる人はそうなのかもしれないが、やたらバイアス電圧ばかり気にしているけれど、本来は電流値であわせるべきなんですよ。昔からやっている者にとっては、常識的なことですけどね。
     *
電圧ではなく電流なのか。
忘れないでおこう、と思った。
けれど、ヒーターの点火に関して、電圧ではなく電流と考えるようになるには、もう少し時間がかかった。

Date: 8月 9th, 2018
Cate: 真空管アンプ

現代真空管アンプ考(その2)

現代真空管アンプで、絶対に外せないことがまだある。
真空管のヒーターの点火方法である。

交流点火と直流点火とがある。
物理的なS/N比の高さが求められるコントロールアンプでは、直流点火が多い。
パワーアンプでは交流点火が多いが、
シングルアンプともなると、直流点火も増えてくる。

交流点火といっても、すべてが同じなわけではない。
例えば出力管の場合、一本一本にヒーター用巻線を用意することもあれば、
電流容量が足りていれば出力管のヒーターを並列接続して、という場合もあるし、
直列接続するという手もある。

ヒーター用配線の引き回しも音にもS/N比にも影響してくる。

直流点火だと非安定化か安定化とがある。
定電圧回路を使って安定化をはかるのか、
それとも交流を整流・平滑して直流にする非安定化なのか。

電源のノイズ、インピーダンスの面では安定化にメリットはあるが、
ではどういう回路で安定化するのかが、問題になってくる。

三端子レギュレーターを使えば、そう難しくなく安定化できる。
それで十分という人もいるし、三端子レギュレーターを使うくらいならば、
安定化しない方がいい、という人も、昔からいる。

ここでの直流点火は、電圧に着目してであって、
ヒーターによって重要なパラメータは電圧なのか、電流なのか。
そこに遡って考えれば、定電流点火こそ、現代真空管アンプらしい点火方法といえる。

Date: 8月 9th, 2018
Cate: 複雑な幼稚性

「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(理解についての実感・その14)

ステレオサウンド 207号の試聴で、
YGアコースティクスのHailey 1.2がどのレベルで鳴っていたのかは部外者にはわからないが、
ひどい音で鳴っていたわけではないはずだ。

柳沢功力氏といっしょに試聴している小野寺弘滋氏の試聴記からも、それは読みとれる。
少なくともHailey 1.2らしい音で鳴っていたのだろう。

その音を他の人が聴いたとしよう。
柳沢功力氏の試聴記に、まったく同感、と頷く人もいれば、
それほど金属的な音には感じない、という人もいるだろうし、
小野寺弘滋氏とほほ同じ感想、という人もいよう。

YGアコースティクスの、どこが金属質なのだ、という人だっているかもしれない。

金属質な音だけに関しても、聴く人それぞれの閾値がある、ということだ。
自分と違う閾値の意見(試聴記)に腹を立てたところで、どうなるというのか。

いまはSNSがあるから、そこでそう発言することで、同意する人も現れよう。
そこで二人(もしくは数人)で、頷き合っていても、何かの理解に発展していくわけではない。

avcat氏の一連のツイートを、私は特に批判しない。
くり返しになるが、avcat氏はアマチュアなのだから、
そのアマチュアに、あれこれ理解を求める方が愚かである。

これもくり返し書いているが、問題なのは、avcat氏にステレオサウンドの染谷一編集長が、
《ステサンとして本位でなかった旨》を伝え、
さらに《これからこのようなことがないように対策します》と謝罪していることである。

染谷一氏は、ステレオサウンドの編集長である。
編集者はプロフェッショナルであり、編集長はさらなるプロフェッショナルのはずだ。

プロフェッショナルとしての理解が、どうにも見えてこない。