Date: 7月 2nd, 2015
Cate: 老い
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老いとオーディオ(余談・その6)

ウエスギ・アンプのU·BROS3とマイケルソン&オースチンのTVA1で、
女性ヴォーカルを聴いたとする。
どちらのKT88プッシュプルアンプが、情感をこめて鳴るだろうか。

この項の(その1)で引用した上杉先生の発言のように鳴ってくれるだろうか。

私は、この対照的なふたつのKT88プッシュプルアンプを最初に聴いたときは、
TVA1の方が、より情感のこもった歌が、そこで鳴ってくれる、聴けると感じていた。

だから疑問のようなものを感じていた。

上杉先生は、ステレオサウンド 60号で、
《恐らく歌手があなたにほれているという歌を歌うとすると、それは全身ほれているような感じにならないといかんと思うんです。全身ほれるということになれば、もっと極端なことを言うと、女性自身に愛液がみなぎって歌うときがこれは絶対やと思います。そういう感じで鳴るんですよ》
といわれているのは、
おそらく自宅でマッキントッシュのXRT20をご自身のアンプ、
つまりウエスギ・アンプで鳴らされた場合の音について語られているのだから、
上杉先生にとっては、ウエスギ・アンプは、つまりはそういう音で鳴ってくれるわけだ。

だが、私にはTVA1の方がそういう音で鳴ってくれるように感じていた。
いま思うと、そのときの私は若かった。
恋愛の、男女関係のくさぐさな経験があったわけではなかった。

そんな「若い」聴き手の耳にはTVA1の方が、よりそう聴こえた面もあることに、
いまは気づいている。

そのことに気づかさせてくれたのは、
グラシェラ・スサーナの歌う「抱きしめて」だった。

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