Date: 3月 7th, 2017
Cate: 老い
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老いとオーディオ(余談・その7)

グラシェラ・スサーナの「抱きしめて」を聴いたのは、中学生のころだった。
スサーナが情感をこめて「抱きしめて」と歌い出す。

この最初の「抱きしめて」を聴いて、どきりとしたことは、いまも憶えている。
とはいえ、ここでの「抱きしめて」に込められた意味を正しく理解していたとはいえない。

なにせ中学生。そんな経験はないのだから、あくまでも想像での理解にすぎなかった。
それから月日が経ち、久しぶりに聴いたスサーナの「抱きしめて」は、
自分の経験を自然とそこに重ねていて、初めて聴いたときよりも、
もっともっとどきりとした。

思い出して後悔もした。

そのスサーナの「抱きしめて」を、
マイケルソン&オースチンのTVA1は、情感たっぷりに鳴らす。

「抱きしめて」は日本語の歌であっても、歌っているグラシェラ・スサーナはアルゼンチンの人。
日本人にはない濃密さのようなものがそこにはあって、
そのことをTVA1の音は、より濃く表現してくれる。

それに対してウエスギ・アンプのU·BROS3は淡泊に鳴らす。
若いころは、そこが不満に感じた。

私は真空管アンプでプリント基板を使っているのは、基本的に認めていない。
TVA1はプリント基板を使った配線、U·BROS3はプリント基板を使わずに配線し組み立てられている。

アンプとしての信頼性の高さはU·BROS3は上といえる。
それでもスピーカーから鳴ってくる音だけで判断すれば、
グラシェラ・スサーナの「抱きしめて」だけで判断しても、
TVA1を若いころの私は、何の迷いもなく選んだ。

けれどさらに歳を重ねていき、40を越えたころからU·BROS3の表現も、TVA1の表現も、
どちらも魅力的に感じられるように変ってきたことに、
どちらの「抱きしめて」も等しく受け入れられるように変っていることに気づいたわけだ。

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