Date: 1月 5th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その2)

スーパーウーファーを、メインスピーカーにつけ加えたときのレベル設定に関しては、
たいていメインスピーカーのレベルは固定のまま、
スーパーウーファー側のレベルをいじることが圧倒的に多いだろう。

ある程度のバランスにするまでなら、それでもいいと思う。
とにかく大まかなレベル設定がすんだら、スーパーウーファー側のレベルはそのままで、
メインスピーカー側のレベルを変えることで、バランスを追い込む方が、私はいいと思う。

私はスーパーウーファーにSPD-SW1600を使っている。
これには入力レベルと出力レベルの両方をそれぞれ調整できる。

入力レベルには3つのLED(緑、黄、赤)があり、取扱説明書によれば、常時緑が点灯し、
フォルティッシモにおいて赤が点滅するように調整しろ、とある。
そしてSPD-SW1600の全体のレベルは出力レベルのツマミで調整する。

だから、よく聴く数枚のディスクを、ふだん聴く音量で入力レベルをまず調整し、
メインスピーカーに対してのバランスを出力レベルのツマミで調整していく。
これでかなりのところまで追い込む。

そのあとはしばらくいじることなく聴き続ける期間をとる。
それは一週間であったり、一ヵ月であったり、人によってそのへんは変ってくるだろう。

とくに大きな問題が生じなければ、そういう期間をはさんだあとで、
さらにメインスピーカーとのバランスを追い込む。
このときはSPD-SW1600の出力レベルのツマミをいじってもいいわけだし、
たぶんSPD-SW1600的な構成のウーファーを使われる人ならば、そうしてしまう。

でも、ここからはできればメインスピーカー側のレベルを変えることで、
全体のバランスの細かい調整をしていく。
そのためにはメインスピーカーを鳴らすパワーアンプに、入力レベル調整がついていた方がいい。

Date: 1月 5th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その4)

小学校の理科の時間にならったことだと記憶しているけれど、炎の色と温度について、である。

わかりきったことを書くことになるが、熱さ、暖かさを感じさせる色、つまり赤や橙色の炎よりも、
冷たさに通じる感じのある青色の炎のほうが、温度は高い。

電灯にしても、いわゆる電球色は暖かみを感じるが、螢光灯の青白い光には、冷たく寒々しいものと感じる。

けれど、これも色温度でいえば、暖かみを感じさせる橙色の光は低く、螢光灯の青白い光の色は高い。
白熱電球の一般的な色温度は2500K、螢光灯は5000Kである。

この色温度の違いは、部屋の雰囲気までを変える。
螢光灯のもとで映える色と白熱電球で映える色とは違う。
色温度が高いほど、寒色系の色合いを引き出す。

そして人は色温度が高いもとでは活動的になり、低いところではくつろぎ、落ちつきを感じる、とされている。

たとえば、熱い音、といっても、その温度には高低がある。
音温度、とでも呼ぼうか。

ナグラのMPAの音の熱さは、色温度の高い光のような気がする。
ほんとうは断言したいところが、なにせMPAを聴いた時間は、ごく短い時間だったので……。

俗にいわれる、真空管アンプの暖かい音は、色温度の低い音、ともいえる。
それは白熱電球的でもあるわけだから、くつろぎ、なごめる。
もっとも真空管アンプといっても、より色温度の高い音を聴かせるものを、かなりの数ある。
だから、あくまでも、なんとなく一般的にイメージされている真空管アンプの音について、である。

MPAの色温度の高い音は、聴き手の心を、より活動的にしてくれる、といえないだろうか。
色温度の低い音でくつろいでいては、対決はできない。

対決していくには、色温度の高い、青白い炎のMPAが、だからロックウッドには合う、と思っている。

Date: 1月 4th, 2011
Cate: 「介在」

オーディオの「介在」こそ(その4)

風土、ということばは、「風」と「土」からなっている。

風土、ということばには、そこに住むひとの慣習や文化に影響を及ぼす気候、地形、地質など、と辞書にはある。

土地によって土の性質は違う。だから、その土地ごとの特産物がある。
土の色も違えば、粘度も違う。
その土が、舗装される面積が増えることで、表面には露出しなくなりつつある。

都心でマンション住まいの方ならば、会社にいって帰ってくる間にいちども土を踏むことなく一日がおわる、
というひとは少なくないと思う。

そして都心では高層ビルが乱立している。

風も、土同様、その地域地域での独特の「風」であるはず。
それが巨大な人工物によって通り道を塞がれ、風と密接な関係にあるであろう土も舗装されつつある。
そのことによって、それぞれの国、土地に吹いていた風の性質が、
どこもかしこも似通ってきているのかもしれない。

実はこのことが、各国のスピーカーの音から、ある種の個性が稀薄になりつつある原因なのかもしれない。

Date: 1月 3rd, 2011
Cate: 情景, 言葉

情報・情景・情操(その3)

情報量を増やしていく、しかも忠実に伝達していこうとする。

そのための手段として、デジタルでは、CDの44.1kHz/16ビットよりも、
もっと高いサンプリング周波数、
18ビット、24ビット、32ビット……とハイサンプリング・ハイビットの方向がある。
SACDという方向もある。

こういった情報量の増大に対応するために、再生側のオーディオ機器では、より高いSN比、
より広いダイナミックレンジ、周波数特性など、基本特性の拡大が要求されていく。

この方向の追求に限界はないのだろうか。
少なくとも現在の2チャンネルという制約の中でやっていくのであれば、
どこかで大きな壁にぶちあたることになるかもしれない。

もうひとつ、拡大する情報量に対応する手段として昔からあるのが、伝送系を増やすことである。

モノーラルよりステレオ(2チャンネル)、2チャンネル・ステレオよりは4チャンネル・ステレオと、
伝送系の数が増えていくことで、ひとつひとつの伝送系をとおる情報量は、それまでと同じであったとしても、
システム全体としての伝達できる情報量は確実に増していく。

これから先、デジタルの記録密度がもっと高まっていく。
そうすれば、いままで以上のハイサンプリング、ハイビットで、
12チャンネル、16チャンネル再生のための情報量もなんなく聴き手のものに届けられることになるだろう。

これは音楽の聴き手にとって、理想に近づいていくことなのだろうか。

Date: 1月 3rd, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その3)

けっこう前にも書いたことだが、
こういう机上の組合せをつくっていくうえでは、以前ステレオサウンドから出ていたHi-Fi Stereo Guideが重宝する。
ページをぱらぱらめくっていくと、あっ、これだ! というモノが見つかる。

そのかわりとなるものが、いまは残念ながらない。
ステレオサウンドの冬号はグランプリとベストバイ(今回からベストバリューに変更)が特集だけど、
Hi-Fi Stereo Guideのかわりにはならない。
なぜならないのかについて書いていくと、また大きく脱線してしまうのが割愛する。

Hi-Fi Stereo Guideはない。ステレオサウンドも、ここ数年まったく購入していない。
だから、アンプ選びは記憶だけに頼るしかない。

誰もが思いつきそうなアンプは、やはり浮かぶ。それら消去していくことで、意外なモノが浮かんでくる。
あっ、これだ! と感じたのは、ナグラのMPAである。
4、5年前に製造中止になったプリメインアンプ/パワーアンプだ。

MPAならば、 ロックウッドのMajor Geminiにぴったり合うはずだ。
Majorの引締った音の表情をゆるめることなく、熱く、無我夢中で対決できる音がしそうな気がする。

MPAにはコントロールパネルを装備したプリメインアンプとしての形態と、
なしのパワーアンプとしての形態がある。

いまは中古でしか入手できないから、どちらか手に入った方、ということになるが、
それでも私は、プリメインアンプとしてのMPAにしたい。

もちろんコントロールアンプは、別途用意しても、だ。

Date: 1月 2nd, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その2)

Major Geminiは、Majorをベースに、15インチ・モニターユニットを2本並列にしたものだ。
これは実物を見たこともない。

瀬川先生がステレオサウンド 43号に書かれている。
     *
1本入りの引締って密度の高い高品位の音質に加えて、音の腰が強く充実感が増して、ことにハイパワードライブではこれがタンノイのユニットか、と驚嘆するほどの音圧で聴き手を圧倒する。
     *
スピーカーシステムは、これしかないだろう。そう思える。

タンノイユニットは縦に二発配置されている。それも、たしか斜めになっていたと記憶している。
ウーファーはダブルになり放射面積が増える。これはいいとしても、同軸型ユニットだけに、
中高域も2箇所から音が放射される。それも15インチユニットだけに、
二つの中高域ユニット間は当然離れることになる。
そのことによるデメリットがどう出るのか。

でも、きっとそんなことはどうでもいいと思わせるほどの魅力をMajor Geminiは持っているであろう。

それにいま思うと、タンノイ・オリジナルと比較して、音の硬度がロックウッドは増している感じがする。
これを活かしてくれるパワーアンプを選びたい、と思っていたら、風呂から上がる時間が長くなってしまった。

あれでもない、これでもない、ひとつずつ消去しながら、ひらめくのを待っていた。

Date: 1月 2nd, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その1)

正月だからというわけでもないが、
入浴中に、ふと、もしジャズ喫茶の店主だった……なんてことをあれこれ夢想していた。

だいたいクラシックが大半で、私の手もとにあるジャズのCDは、クラシックの10分の1くらいしかない。
それなのに、というか、だから、これから先絶対にあり得ないであろうシチュエーション、
ジャズ喫茶の店主について、素人丸出しで、どんなシステムを用意するかを考えていた。

あるジャズ・レコードに対してつよい思い入れを持ってシステムを組む、わけではない。
ただひたすら大音量で鳴らす、できれば岩崎先生のように対決する、そのくらいの音量で鳴らすことだけを考える。

湯につかっているあいだの50分くらい、考えていた。
とにかくスピーカーシステムを決める。
JBL、アルテック、エレクトロボイスなどは、あえて選択しない。
だからといって、ウィルソン・オーディオ、アバロン、ティールといったスピーカーでもない。

ここはあえてタンノイでいきたい。
とくに理由はない。そう思っただけである。
タンノイの何を選ぶのか。現行機種の中から、という条件ならばCanterbury 15しかない。
でもCanterbury 15の雰囲気は、私が勝手にイメージしているジャズ喫茶の場にはそぐわない。

ジャズ喫茶、大音量、このふたつの言葉から浮かんでくるタンノイは、ロックウッドた。
タンノイのユニットを採用した、スタジオモニターを製造したイギリスのロックウッドのMajorだ。

タンノイの15インチ・モニターを、ひじょうにがっしりした造りの、
特殊なバスレフ型エンクロージュアに収めたもの。

とおい昔に、一度だけ聴く機会があった。といってもごくみじかい時間であったけれど、
そのころのタンノイのスピーカー(アーデン)とは、まるっきり印象の異る、
密度の濃さはもともとタンノイが有していたものだが、全体にぴしっと引き締ったおかげで、
より密度が濃くなったように感じたのを憶えている。

とにかく、これが同じタンノイのユニットを使ったスピーカーなのか、とは聴いた誰もが思うはずだ。
だから、これにする。しかもMajor Geminiにする。

Date: 1月 2nd, 2011
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(その25)

岩崎先生は、何と対決されていたのだろうか。

スピーカーから鳴ってくる(向ってくる)音楽との対決、だけではなかったようにも思う。

「自分の耳が違った音(サウンド)を求めたら、さらに対決するのだ!」。
このことば、いままで出していた音と違う音を、耳が求めたら、というふうに読める。
これもそれだけではないように思う。

これは、オーディオの知識を得ることによって頭の中に出来上ってくる固定概念との対決、
という意味も含まれている。
そう確信している。

Date: 1月 1st, 2011
Cate: BBCモニター, PM510, Rogers, 瀬川冬樹

BBCモニター考(特別編)

昨年秋、また瀬川先生が書かれたメモとスケッチをいただいた。
その中に、BBCモニター、というよりもロジャースのPM510についてのメモがある。

1年前の今日も、瀬川先生のメモを公開した。
今年は、去年に比べるとずっと量は少ないが、このPM510についての「メモ」を公開する。
     *
◎どうしてもっと話題にならないのだろう、と、ふしぎに思う製品がある。最近の例でいえばPM510。
◎くいものや、その他にたとえたほうが色がつく
◎だが、これほど良いスピーカーは、JBLの♯4343みたいに、向う三軒両隣まで普及しない方が、PM510をほんとうに愛する人間には嬉しくもある。だから、このスピーカーの良さを、あんまりしられたくないという気持もある。

◎JBLの♯4345を借りて聴きはじめている。♯4343よりすごーく改良されている(その理由を長々と書く)けれど、そうしてまた2歩も3歩も完成に近づいたJBLを聴きふけってゆくにつれて、改めて、JBLでは(そしてアメリカのスピーカーでは)絶対に鳴らせない音味というものがあることを思い知らされる。
◎そこに思い至って、若さの中で改めて、Rogers PM510を、心から「欲しい」と思いはじめた。
◎いうまでもなく510の原形はLS5/8、その原形のLS5/1Aは持っている。宝ものとして大切に聴いている。それにもかかわらずPM510を「欲しい!!」と思わせるものは、一体、何か?

◎前歴が刻まれる!
     *
内容からして、なにかの原稿のためのメモであろう。
そして最後の1行の「前歴が刻まれる!」だけ、インクの色が違う。しばらくたってから書き足されている。

注意:若さの中で改めて、とあるが、「若」の字がくずしてあり、他の漢字の可能性も高いが、
ほかに読みようがなく、「若さ」とした。

Date: 1月 1st, 2011
Cate: 言葉

続・造詣

結局、造詣の深さとは、どれだけ多くのことを知っている、ではなくて、悟っていることなんだろう。

Date: 12月 31st, 2010
Cate: 「介在」

オーディオの「介在」こそ(その3)

瀬川先生が、音と風土との関係性について語られていたころからすると、
いまのスピーカーを眺めてみると、国の違いによる音の個性は薄らぎつつある。

それが技術の進歩だ、といってしまえば、まさしくそのとおりだが、
はたして技術進歩だけが、その理由だろうか、とも一方で思う。

たしかにスピーカーの分析・測定技術が進歩し、
設計・開発も、それ以前の勘に頼っていた作り方から、次の時代の作り方へと移ってきた。

理想のスピーカーとは、どこのメーカーのスピーカー・エンジニアがいうように、
ノン・カラーレイション(色づけのない)音であり、その色づけが、いわばお国柄だった、と捉えられてきた。
でも、ほんとうに、そういう色づけは、瀬川先生の言われていた音と風土の関係によるものなのか。

それはスピーカーのお国柄というよりも、ブランドの個性であって、
それとは別に国による音の違い、という個性は別に存在しているとはいえないだろうか。

瀬川先生の時代と、いまとではオーディオの世界も大きく変化している。
いまスピーカーユニットを製造しているところは、あのころからすると数は減っている。
アメリカのスピーカーメーカーでも、日本のスピーカーメーカーであろうと、
どちらも同じヨーロッパのスピーカーユニット製造メーカーのものを使っている例もある。

メーカーによっては、製造メーカーに対して、細かな注文を出しているだろうが、
それでもスピーカーシステムの中核をなすユニットが同じメーカーで作られているものを搭載していては、
スピーカーユニットを自社生産していたころからすると、個性は薄らいで当然だ。

ここで薄らぐのは、メーカーの個性なのか、それとも国による個性なのか。

Date: 12月 30th, 2010
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(その31)

切り離すこと、は、選び取ること、であり、
なにかを選ばないこと、でもある。

Date: 12月 30th, 2010
Cate: ユニバーサルウーファー, 井上卓也

ユニバーサルウーファー考(その5・補足)

井上先生は、磁気回路がアルニコ磁石かフェライト磁石なのかによる音の違いは、
磁石としての性能の違いだけが影響してくるのではなく、アルニコとフェライトの製造方法の違いから生じる、
個体としての性質の違いも音に大きく関係してくることに注意しろ、とよく口にされていた。

アルニコとフェライトでは叩いた時の音がまったく異る。
しかも磁石の占める割合は、わりと大きい。磁気回路の強力なスピーカーユニットほど、
この固有音の違いもまた大きく音に関係してくるわけだ。

そして構造体としてスピーカーユニットを捉えた時に、
質量がどのように分布しているのかも重要だと言われていた。

ウーファーは基本的にコーン型かほとんどであるため、
構造体としてはほとんど同じだが、トゥイーターとなるとホーン型、ドーム型、コーン型などなど、
いろいろな種類があり、それによって構造が大きく異ってくる。
同じホーン型でもホーンの形状の違い、ユニット全体の構造の設計の違いなどによって、
ほぼ同じ重量のホーン型トゥイーターでも、質量が集中しているものもあれば、分散しているものもある。

同じ重量であれば、集中している方が全体の強度も高くなる。

それは手にした時の感覚的な重さの違いでもある。
同じ重量のトゥイーターでも、質量が集中して小型のモノと、わりと大きく質量が分散しているモノとでは、
前者の方がずしりとした感じを受けるだろう。

そういう要素は、かならず音に関係してくる。
というよりも、どんなことでも音には関係してくる。

Date: 12月 30th, 2010
Cate: ユニバーサルウーファー, 井上卓也

ユニバーサルウーファー考(その5)

もう30年以上まえのことだが、
井上先生が、マクソニックのトゥイーター、T45EXのことを、パワートゥイーターと表現された。

T45EXは、ホーン型トゥイーターのT45の磁気回路の磁石を、励磁(フィールド)型に置き換えたもので、
ベースとなったT45は重量3.8kgなのに、T45EXは9kgと倍以上の重量になっている。

JBLの2405が2kg、エレクトロボイスのT350が3.2kg、
強力な磁気回路を背負っていたピラミッドのT1でも3.85kgだから、
T45EXの物量の投入具合が重さからも伝わってくる。

構造体として、これだけの重量差があると、たとえ磁気回路がT45と同じで永久磁石だったとしても、
出てくる音には、そうとうの違いが生じるものである。
そこにもってきて励磁型で、しかも電磁石への電圧をあげれば磁束密度は高くなる。

井上先生は、磁束密度をあげたときの音は、パワートゥイーターとしての性格をはっきりと感じる、と言われている。

パワートゥイーターという表現がふさわしいT45EXの音はどんなだったのだろうか。
井上先生の発言を拾ってみると、
トゥイーター単体の付属音、シャッとかシャラシャラといった音がまったくいっていいほど出てこない、
2トラック38cmのオープンリールデッキで生録をするときにモニター用としてつかうことのできる製品、
ということになる。
だから、
生演奏の音をマイクで拾ってそのまま録音器を通さずにスルーで聴けば、
付帯音がなくて十二分なエネルギーが出せるので、すごい魅力が引き出せるはず、と評価されている。

ただ、こういう性格の音の場合、アナログディスクの再生では、高域の伸びが不足しているように聴こえ、
高域の音の伸びがもっと欲しくなるようおもわれが、実は十分なエネルギーが再現されているため、
いわば演出された繊細さにつながる高域感は稀薄になる──、そう受けとれる。

井上先生の書かれたものをよく読んでいる人ならば、このアナログディスク再生とテープ再生の対比で、
音を表現されることを、わりと井上先生は使われることに気づかれているはず。

Date: 12月 29th, 2010
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(その14・補足)

SMEのトーンアームの特徴は、軸受け部のナイフエッジということの、そのひとつとしてあげられる。
この構造上、SMEのトーンアームの調整で重要なのは、ラテラルバランスを必ずとる、ということ。

SMEも、3012-Rになり、このラテラルバランスの機構が調整しやすくなった。
ただ、それでもラテラルバランスがきちんととれているのかどうか、
どうやって判断したらいいのか、と訊かれたことが何度かある。

広く知れ渡っていることだと思っていただけに、ちょっと意外だったが、判断方法は簡単だ。
プレーヤーの片側を持ち上げて傾けて、トーンアームのパイプが流れなければいい。
もちろんカートリッジをとりつけて、ゼロバランスをとってから、であることはいうまでもない。
それからインサイドフォースキャンセラー用のオモリも外しておくこと。
そんなに大きく傾ける必要はない。目見当で10度から15度くらいで十分だ。

こう答えて、さらに訊かれたのは、傾けられないくらい重いプレーヤーだったらどうするんですか、だった。
そのころはまだステレオサウンドにいたし、ステレオサウンドの試聴室のリファレンスのアナログプレーヤーは、
マイクロのSX8000IIにSMEの3012-R Proの組合せ。
その人は、このマイクロは傾けられないだろう、ということだった。
SX8000IIの総重量は正確には憶えていないが、ベースを含めると100kg近かった。
この重量を傾けられる人もいるだろうが、ふつうは、まあ無理だ。
なにもベースごと傾ける必要はないし、ターンテーブル本体部分ですむことだが、
それでも軽いとはいえない重さだし、
トーレンスやリンのようなフローティング型からすると大変なことに変りはない。

でもマイクロはアームベースが取り外せる。
カートリッジをつけてゼロバランスをとって、針圧は印可しない状態で、
アームベースごとはずして、これを傾ければいい。