ユニバーサルウーファー考(その5)
もう30年以上まえのことだが、
井上先生が、マクソニックのトゥイーター、T45EXのことを、パワートゥイーターと表現された。
T45EXは、ホーン型トゥイーターのT45の磁気回路の磁石を、励磁(フィールド)型に置き換えたもので、
ベースとなったT45は重量3.8kgなのに、T45EXは9kgと倍以上の重量になっている。
JBLの2405が2kg、エレクトロボイスのT350が3.2kg、
強力な磁気回路を背負っていたピラミッドのT1でも3.85kgだから、
T45EXの物量の投入具合が重さからも伝わってくる。
構造体として、これだけの重量差があると、たとえ磁気回路がT45と同じで永久磁石だったとしても、
出てくる音には、そうとうの違いが生じるものである。
そこにもってきて励磁型で、しかも電磁石への電圧をあげれば磁束密度は高くなる。
井上先生は、磁束密度をあげたときの音は、パワートゥイーターとしての性格をはっきりと感じる、と言われている。
パワートゥイーターという表現がふさわしいT45EXの音はどんなだったのだろうか。
井上先生の発言を拾ってみると、
トゥイーター単体の付属音、シャッとかシャラシャラといった音がまったくいっていいほど出てこない、
2トラック38cmのオープンリールデッキで生録をするときにモニター用としてつかうことのできる製品、
ということになる。
だから、
生演奏の音をマイクで拾ってそのまま録音器を通さずにスルーで聴けば、
付帯音がなくて十二分なエネルギーが出せるので、すごい魅力が引き出せるはず、と評価されている。
ただ、こういう性格の音の場合、アナログディスクの再生では、高域の伸びが不足しているように聴こえ、
高域の音の伸びがもっと欲しくなるようおもわれが、実は十分なエネルギーが再現されているため、
いわば演出された繊細さにつながる高域感は稀薄になる──、そう受けとれる。
井上先生の書かれたものをよく読んでいる人ならば、このアナログディスク再生とテープ再生の対比で、
音を表現されることを、わりと井上先生は使われることに気づかれているはず。