妄想組合せの楽しみ(番外・その1)
正月だからというわけでもないが、
入浴中に、ふと、もしジャズ喫茶の店主だった……なんてことをあれこれ夢想していた。
だいたいクラシックが大半で、私の手もとにあるジャズのCDは、クラシックの10分の1くらいしかない。
それなのに、というか、だから、これから先絶対にあり得ないであろうシチュエーション、
ジャズ喫茶の店主について、素人丸出しで、どんなシステムを用意するかを考えていた。
あるジャズ・レコードに対してつよい思い入れを持ってシステムを組む、わけではない。
ただひたすら大音量で鳴らす、できれば岩崎先生のように対決する、そのくらいの音量で鳴らすことだけを考える。
湯につかっているあいだの50分くらい、考えていた。
とにかくスピーカーシステムを決める。
JBL、アルテック、エレクトロボイスなどは、あえて選択しない。
だからといって、ウィルソン・オーディオ、アバロン、ティールといったスピーカーでもない。
ここはあえてタンノイでいきたい。
とくに理由はない。そう思っただけである。
タンノイの何を選ぶのか。現行機種の中から、という条件ならばCanterbury 15しかない。
でもCanterbury 15の雰囲気は、私が勝手にイメージしているジャズ喫茶の場にはそぐわない。
ジャズ喫茶、大音量、このふたつの言葉から浮かんでくるタンノイは、ロックウッドた。
タンノイのユニットを採用した、スタジオモニターを製造したイギリスのロックウッドのMajorだ。
タンノイの15インチ・モニターを、ひじょうにがっしりした造りの、
特殊なバスレフ型エンクロージュアに収めたもの。
とおい昔に、一度だけ聴く機会があった。といってもごくみじかい時間であったけれど、
そのころのタンノイのスピーカー(アーデン)とは、まるっきり印象の異る、
密度の濃さはもともとタンノイが有していたものだが、全体にぴしっと引き締ったおかげで、
より密度が濃くなったように感じたのを憶えている。
とにかく、これが同じタンノイのユニットを使ったスピーカーなのか、とは聴いた誰もが思うはずだ。
だから、これにする。しかもMajor Geminiにする。