Date: 1月 14th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その4)

土台(低音)のレベル(大きさ)はいじらず、その上にのる音(メインスピーカー)のレベルを調整する。

これは、なにも珍しい調整方法というわけではない。
無意識であろうと意識的であろうと、スピーカーシステムのレベル調整の低音を基準にして、
多くの人は調整していっているはずだ。

ステレオサウンド 51号に掲載されている「4343研究」のなかでも、
JBLのマルゴリス氏は、4343の各ユニットのレベル調整の方法として、
まず上二つの帯域(ミッドハイの2420とトゥイーターの2405)のレベルを完全に絞り切って、
ウーファー(2231A)とミッドバス(2121)のバランスをとることからはじめている。

これが済んだら、次はミッドハイのレベルをあげていき、バランスをとる。
そしてトゥイーターのレベルを調整。
これで全体のバランスをとったあとに、さらに微調整にはいる、というものだった。

4343では──他のスピーカーシステムもそうだが──、
ウーファーのレベルは調整できない。
だからこそまずウーファーと、その上の帯域を受け持つミッドバス、
このふたつのユニットのバランスをきちんととる、ことからはじめるわけだ。
そして、ウーファーが受け持つ低音は、やはりベーシックな土台でもあるわけだから、
その土台を基準とするのが、あたりまえすぎることである。

よくスピーカーシステムのレベル調整となると、
とりあえず耳につく帯域のレベルコントロールをいじりがちだ。

2ウェイシステムだったら、レベル調整はトゥイーターのひとつのみだから、それでもいい。
でも4343のような4ウェイともなると、レベル調整は3つある。

ただやみくもに、中域が耳につくからと感じて、ミッドハイのレベルを落としていく、
そんなような調整方法をやっていては、対処療法的なレベル調整になってしまいがちだ。

もちろんバランス調整であれこれ苦労して、ノウハウをしっかり身につけているのであれば、
もちろん、どこから調整していってもいいかもしれないが、
それでも基本は低音を基準として、その上に積み上げていくことだ。

Date: 1月 14th, 2011
Cate: 「本」, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏の「本」(さらに、お願い)

瀬川先生の「」第三弾では、多くの方々の証言をいただきたいと思っています。

たとえばリスニングルームに瀬川先生を招かれた方、
瀬川先生のリスニングルームに行かれたことのある方、
オーディオ販売店などのイベントで、瀬川先生と話された方、
ごく短な断片的なことでも、瀬川先生のどの時代についてもでもかまいません、
少しでも多くのことを私自身が知り、それを伝えていきたいと考えていますので、
ぜひ、ご連絡くださいますよう、お願いいたします。

Date: 1月 13th, 2011
Cate: 岩崎千明, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その8)

対決していくための環境として、色温度の高い光を求める。

色温度の低い、温かさを感じさせる光のもとではくつろいでしまい、対決するという雰囲気ではなくなる。
でも、なにも明るい光のもとだけが対決ていく場ではない。
もうひとつ、闇がある、と思う。

闇に一条の光、──それはもちろん色の温度の高い、純度の高い光が切り込んでくる。

ここまで考えてくると、以前書いたことのある、かわさきひろこ氏の言葉を思い出す。

余剰すぎる明るさは、人を活発にするだろうけど、一方で、人に安心感を与える。

岩崎先生の言われていた「対決」が、ここにきて、すこしわかりかけてきた気がする。

Date: 1月 12th, 2011
Cate: 情景

情報・情景・情操(その5)

1971年に、ステレオサウンドの別冊として発行された「4チャンネルステレオのすべて」の巻末に、
イリノイ大学のD.H.クーパー博士による「4チャンネル・ステレオの心理的効果について」が載っている。

そこには、音場の再生方法には2通りある、と書かれている。
     *
第一には客観的、物理的な方法であり、第二には主観的、音響心理的方法である。前者の方法ではコンサートホール内にリスニングルームを想定し、指向性マイクロホンを何本か使用して録音し、それを無響室中にマイクロホンの設定位置と同じ位置にスピーカーを置いて再生する。ケムラスはこの実験に12チャンネル用いてやった結果、前面4チャンネル、後方2チャンネル以下ではその内容を保つのが困難であることを知った。
後者の方法ではマイクロホンとスピーカーの位置と本数は関係なく最適な音響心理が得られるよう工夫するものである。従ってこの方法を進めるためには、人間の聴覚を含めた感性がどういうものであるかを知る必要がある。マドセンはハスやダマスケによって研究された効果から直接音と間接音との効果を指摘した。それによれば、二つのスピーカー間において相対強度が直接音のイメージ定位を決定するが、同一強度でもハスが指摘したように、もう二つのスピーカーの一方がある時間遅延をもって鳴れば、その定位は早い音響の方向に移動する。(中略)つまり、第一のスピーカーからの音が人間の耳に定着して、第二のスピーカーからの音はラウドネスのみに依存するするということである。
     *
音場再生の2つの方法──、
客観的・物理的な方法と主観的・音響心理的な方法、とがあるということ。
この2つの方法は、レコードを音楽のドキュメンタリーとしてとらえるかどうかにも関係してくる。

Date: 1月 12th, 2011
Cate: 「本」, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏の「本」(お願い)

瀬川先生の「」の第三弾は、これまでとは違い、
未発表原稿やスケッチ、メモの公開とともに、取材も行い、記事も何人かの方にお願いし、
私自身も書く内容とします。

その取材のひとつとして、瀬川先生が、新宿西口にあったサンスイのショウルームで毎月行われていた
「チャレンジオーディオ」についての取材も考えています。

当時、このショウルームでのイベントの担当をされていた西川さんを招いて、
当時、「チャレンジオーディオ」に行かれていた方々とのやりとりを、ぜひ聞いてみたいと考えています。

私自身は、当時はまだ実家住まいでしたので、「チャレンジオーディオ」に行きたいと思っていても、
結局、一度も行けずに終ってしまいました。

ですから、私自身は、西川さんから当時のことを、引き出していくのが無理ですので、
ここで、当時、通われた方々に、ぜひお集まりいただき、お話しいただきたいと考えた次第です。

場所は四谷三丁目に確保しました。
何人の方が集まってくださるかによって、こまかいことを決めていきます。

当時「チャレンジオーディオ」に行かれていて、取材に協力してくださる方は、
私宛に、メールにてご連絡ください。

よろしくお願いいたします。

Date: 1月 11th, 2011
Cate: 情景

情報・情景・情操(その4)

レコードにおさめられている音楽は、決して不動でも不変でもない、と前に書いた。
この考えに立つなら、レコードにおける客観的事実とは、なんだろう、と思えてくる。

つまり、レコードは、音楽のドキュメンタリーなのかという疑問が湧いてくる。

このドキュメンタリーであるかどうかが、録音・再生系の伝送チャネルを増やしていくことを、
どう捉えるかに、大きく関係してくるのではないだろうか。

Date: 1月 10th, 2011
Cate: 「本」, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏の「本」(第2弾)

瀬川先生の「」の第2弾を公開しました。

前回同様、今回もEPUB形式です。
前回のものを増強したものです。
ですから、ファイル名もまったく同じです。
前回よりも、iPadでの表示では約900ページ増えています。

今回はアップロード関係上、zipで圧縮してあります。
なので解凍してください。

iPad、iPhoneで、前回の「本」をインストールされている方は、
iPad、iPhone上の「本」、それからiTunes上の「本」を削除した上で、
ダウンロードし解凍したファイルを、iTunesにドラッグして、インストールお願いします。
(FireFoxで開けないという報告がありましたので、手直ししたものを新たに公開しました。
 23時以前にダウンロードされた方は、再度ダウンロードをおすすめします。)

次回の更新・公開日はまだ決めておりませんが、
今回の「本」から、ドネーションブックにさせていただきます。

ドネーションブックですから、前回の「本」同様、無料でご覧いただけます。支払いの必要はありません。

ですが、これからの更新作業を確実に、より早く、より良いものにするためには、皆さまが必要です。
もしよろしければ、できる範囲の額のご寄付を、どうかご検討ください。

よろしくお願いいたします。

ご連絡は、私あてにメールでお願いいたします。

Date: 1月 10th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その7)

オーディオ機器のデザインについて語る時、ナグラのCDプレーヤーは話題になることも多いと思う。
それも、いいデザインのモノとして、話題にのぼることだろう。

でも、クランパーのことも、デザインのこととして語られべきこと、だと私は考えている。

あのクランパーの精度の悪さは、使い手をひじょうにイライラさせる。
いちど気にしたら、つねに頭のなかにこびりついて離れにくくなる。

このクランパーが改良されていないかぎり、ナグラのCDプレーヤーを、優れたデザインのモノとは呼べない。

Date: 1月 9th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その6)

MPAをパワーアンプにもってくるのなら、コントロールアンプもCDプレーヤーで統一しよう、
とはまったく考えていない。

コントロールアンプのPL-Lは、実は聴いたことがない。
だから、実際に聴いてみると、さすがにナグラ同士の組合せ! ということになるかもこともあるだろうけど、
ただ直感的に、MPAに、私が感じている良さを、抽き出す方向とは、すこし違う気がする。

ではCDプレーヤーは、というと、以前、数時間、じっくりと触ったことがある。
音については、不満はない。

このCDプレーヤーを選ばない理由は、別のところにある。

ナグラのCDプレーヤーはピックアップ・メカニズム全体にトレイに一体になっている。

ピックアップにはフィリップスのCD-Pro2Mを使っているとのことで、
そのことにも不満は、特にない。メカニズムが出てくるのを見ているのも楽しい。
たしかに、精度が良さそうな感じは、見ている分には伝わってくる。

ナグラの輸入元である太陽インターナショナルのサイトには、
「トレイ上のクランプはセンタリングをきっちり出すため、ナグラにより切削されたもの」とある。

このクランプとは、ピックアップ・メカニズムのセンタースピンドルのことだろう。

ナグラのCDプレーヤーには、一般的なCDプレーヤーにあるクランプ用のアームはない。
メカニズムが出てきて、そこにディスクを置いて、磁力で吸いつくクランパーをユーザーが直に置く。

このクランパーの精度が、CDプレーヤーの全体の良さを壊してしまうほど、よくない。
たまたま私がさわっていた機種だけ、のこととは思えない。
おそらくすべての共通していることなのだろうが、実際において試しにと動かしてみると、
意外なほど動くのに驚く。

これが非常に軽いクランパーであれば、ディスクに回転に伴っての影響はごくわずかなのだろうが、
実際にはそこそこの重量がある。これがなにも意識せずに安易に置いてしまったら、
場合によっては、かなり偏心した状態でディスクとともに高速回転することになる。

意識的に大きく変身させたときの音と、注意深く、できるだけ中心にもってくるようにした時では、
残念なことに、当然のことでもあるが、音は微妙とはいいがたい差を聴かせる。

しかもできるだけ中心にもってくるようにするのが、意外と面倒なのだ。
これをもし自分のモノとして手に入れた日には、ディスクをかけかえていくことが億劫になるだろう。

クランパーの、そんなわずかな偏心による音の違いなど、気にしない、という人ならばいいだろう。
でも、いちど、その差を耳にしてしまうと、なかなか、そうは言い切れなくなる。

ナグラのCDプレーヤーが、価格の廉いものであれば、目をつぶろう、とも思うかもしれない。
でも、非常に高価なモノだ。しかも精度の高さを誇っている製品でもある。

CDプレーヤーは、日に何度も直接ふれるものである。
それが、ほんのわずかなことで、使い手にストレスをあたえるつくりになっているのは、
なんとも残念なことであり、クランパーを作りかえることだけですることだから、
なんとかしてほしいと思う次第だ。

もっとも私がナグラのCDプレーヤーに触ったのは、もう2年以上前のことだから、
最近の製品では改良されている可能性もある。

Date: 1月 8th, 2011
Cate: 「介在」

オーディオの「介在」こそ(その5)

土に親しむ時期がなく育ってきた人たちなのだろうか、
いま土を、なにか汚いもの、として受けとめている人が増えつつあるという話をつい最近聞いて、
あまりにも意外なことで、驚いてしまった。

土を汚いものとして受けとめている人たちは、その土で育つ作物に対して、どう思っているのか。
野菜や果物をまったく口にしないというのだろうか。

これから先、10年後、20年後……、どのくらい先になるか見当はつかないけれど、
土にまったく触れずに育っていく人たちが出てくるのかもしれない。

土を毛嫌いする人、土に触れずにきた人、
そういう人たちがオーディオ機器の開発に携わってくることだってあるだろう。
スピーカーの開発にも携わってくるだろう、そういう人たちが──。

そういう時がくるのはまだまだ先だろうから、
それまでにも、スピーカーの技術は進歩していくだろう。

いったい、そのときスピーカーの音は、どうなっているのだろうか。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(番外・その5)

ナグラのMPAを選ぶにあたって、あえてコントロールパネルつきのMPAにしたいというのも、
この色温度に関係している。

あり(プリメイン仕様)となし(パワーアンプ仕様)を比較したことはない。
なしの方を聴いたことはない。
だから、あくまでも想像のなかでのことだが、コントロールパネルつきのほうが、
音の色温度が、もうすこし高くなるんじゃないか、と感じている。

実際には直接比較してみるしかないわけだが、
すでに製造中止になっているMPAだから、ここは直感にしたがうしかない。

プリメイン仕様のMPAならば、コントロールアンプは必要としない。
でも、なにかを選んで使いたい。

その理由はひとつが、MPAの空冷ファンの存在だ。
フロントパネルの中央に取りつけられている。
常時回転しているわけでなく、温度センサーで動作する仕様だが、
それでもいったん回りはじめると、意外に大きな動作音に驚く。

正直、ファンの音は苦手だ。
できるだけ聞こえないようにして、すこし離れたところにでも置きたい。
そのためにも、コントロールアンプを使いたい、という気持がある。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(その8・続々続補足)

あえて最初はモノーラルで調整することについて、もうすこし補足しておこう。

このとき使うプログラムソースは、編成の少ないものがいい、と思う。
そしていろいろなヴァリエーションをもたせて、枚数を用意する。

たとえば男の人の声のもの、女声のもの、それからチェロのソロ、ヴァイオリン・ソロなどなど。

モノーラルで再生するわけだから、
左右のスピーカーの中央にそれぞれ歌い手だったり、チェリストがぴたっと定位するはずだが、
現実には帯域によってずれることがある。

これをグラフィックイコライザーで調整してみると、
定位がずれているところを補整するために、その部分がどの周波数あたりなのか、
それをツマミを上下させながら探し出していくことをくり返していく。
そうやっていくうちに、たとえば男の人の声のどのあたりが、
どのへんの周波数からどこまでなのか、そういったことが、やっていくうちにつかめてくる。

音楽における中域とオーディオ帯域における中域とが、周波数的にはけっこう違うこともわかってくる。

イコライザーへの馴れ方は人それぞれだから、この方法よりもいい方法が、人によってはあるだろう。
でも、いちどグラフィックイコライザーに試してみて諦めてしまった人は、ぜひモノーラルでやることで、
もういちど挑戦してほしいと思う。

最終的にグラフィックイコライザーを採用するかしないか、よりも、
グラフィックイコライザーにとり組むことで、音の正体、というものが見えはじめてくる、と思う。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その16)

国産アンプで、磁性体を徹底的に取り除こうとしたのはソニー/エスプリのTA-E901、TA-E900があげられる。

1982年、このころの国産メーカーのオーディオ雑誌の広告は、いまとは違って、文字がびっしりあった。
それをしっかり読むことでも、オーディオの勉強になることも、けっこうあった。

ソニーのこのころの広告もそうだ。
中島平太郎氏が署名入りの文章が載ったこともあるし、
設計者自ら、広告の文章を書いているものもいくつもある。

たとえばステレオサウンド 63号に上記、ふたつのコントロールアンプの広告が載っている。
設計者の樋口正氏が書かれている。
設計者が語るESPRITの「エスプリ」、という題名がついている。

そこに、TA-E901、TA-E900からいかにして磁性体を排除していったかについての内容で、
その手法は、正直、いまでも役に立つものだと思う。

磁性体かどうかを判断するのに磁石を使う。くっつけば磁性体。くっつかなければ非磁性体。
でもなかには、これでは検知できないミクロンオーダーの鉄分があって、
そんなわずかな量の鉄分であっても、確実に音に影響を与える、とソニーの広告にはある。

そんなごくごくごわずかな量の鉄分を検知するために、0.1gのサマリウムコバルトマグネットを、
女性の髪の毛に結びつけ、磁気検出計として使った、とある。

少しでも敏感に反応するために、できるだけ細く、しなやかで長い髪の持ち主探しからはじまった、
その検出計は、わずかな鉄分が含まれているだけですーっと吸いつく、そうだ。

その検出計がある部品(抵抗)に反応した。
でもこの抵抗を分解してみても、使用材質に磁性体はない。
それでも検出計が反応するわけだから、
さらに調べていくと、塗料に磁性体が含まれていたことを発見できた、とのことだ。

これはいまでも役に立つ手法だろう。

こういう情報が得られたのにくらべると、いまの広告は、いい悪いは措いとくしても、
なにかものたりなさを感じてしまう……のは、こちらが歳をとったということだけではないはずだ。

Date: 1月 6th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その3)

ときどき耳にするのが、スーパーウーファーを加えたのはいいけれども、
スーパーウーファーの鳴りを目立たせないようにレベル調整をしていって、
どのくらいのレベルで鳴っているのか確かめたくて、スーパーウーファーだけを鳴らしてみたら、
まったく鳴っていなかった……、
スーパーウーファーの電源を落としても、まったく音は変らなかった(つまり鳴っていなかった)……という話だ。

日本人は、……というよりも、日本のオーディオマニアの中には、というべきか、
低音に対して臆病な人が、どうも少なからずいらっしゃる気がする。

低音を出すことは、知的な行為ではない、みたいにとらえられているような気もする。

野放図な低音が、それこそとめどなくドバーッと、つねに鳴りっぱなしだったら困るけれど、
低音はまず出さなければ、始まらない。最初は多少質の低い低音だとしても、まず出すこと。

よく、そんな低音だったら、出さない方が、ずっと透明感のある音になる、ということを口にするひとがある。
はたしてそうだろうか。
それは、ほんとうに透明感(瀬川先生がときおり使われる澄明感、こちらがよりぴったりだ)のある音だろうか。

とにかく調整していったら、スーパーウーファーが鳴っていなかった、そういう失敗をしないためにも、
あるところからはメインスピーカーのレベルで、全体のバランスを整えていったほうがいい。

スーパーウーファーの場合、ときには受持帯域は2オクターヴ以下ということだってある。
それでも、低音は音楽におけるベースである。そのベースの上に構築されるものとしてとらえるのであれば、
メインスピーカーのレベルを調整する、ということを、いちど試してほしい。

スーパーウーファーの追加のために、
専用のエレクトロニッククロスオーバーネットワークを用意したのであれば、そのレベル調整を使えばいいが、
たとえば私のようにSPD-SW1600的なウーファーの場合、
エレクトロニッククロスオーバーネットワークは要らない。

そのかわり、メインスピーカーのレベルを調整するとなると、
メインスピーカー用のパワーアンプには入力レベル調整(ボリュウム・コントロール)がいる。

Date: 1月 6th, 2011
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(その25・補足)

岩崎先生が「対決」ということばを使われるのと、ジャズを聴かれるのは、
絶対に引き剥すことのできない関係である。

瀬川先生が、ステレオサウンド 43号に書かれた、「故 岩崎千明氏を偲んで」で、
スイングジャーナル主催の、サンスイの新宿のショールームでおこなわれた、
菅野、岩崎、瀬川の三氏による鼎談のことについてふれられている。

「すでに闘病生活中で、そのときさえ病院から抜け出してこられたのだった」とある。

この鼎談が掲載されているのが、スイングジャーナルから出た〝モダン・ジャズ読本 ’77〟のなかの
「理想のジャズ・サウンドを追求する」である。

そこで岩崎先生は語られている。
「ぼくのように60年安保の時代にジャズを聴いた人間は、ジャズをひとつのレジスタンスの音楽として、非常に闘争的な音楽と考えるわけなんです。」

瀬川先生も語られている。
「ジャズに親しんだのはほんのわずかな時期なんです。ちょうど60年安保の頃、デザインの勉強をしていまして、あの頃はデザインを勉強する者はジャズを聴かなくちゃダメだという風潮がありましてネ。」

60年安保という時代の空気とジャズ──。