Archive for 4月, 2025

Date: 4月 15th, 2025
Cate: plain sounding high thinking

plain sounding, high thinking(その15)

二年前、別項「Noise Control/Noise Design(Silent Design)」で、
Silent Designという言葉を使った。

使っただけで、それについて説明したわけではないが、
Silent Designは、私にとっては大切なテーマである。

二年経って、何か書けるようになったかと言えば、まだだ。
それでも、Silent Designとは、天衣無縫な音へとつながっていると、いまは確信しているし、
天衣無縫な音よりも、天衣無縫の音とした方が、どうしてだかしっくりとくる。

Date: 4月 14th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

オーディオがオーディオでなくなるとき(その22)

五年前の(その16)で、
イェーツの“In Dreams Begin Responsibilities”を引用している。

いくつかの訳がある。
どれが、いまの自分にとってしっくりくるのか、
ずしっとしたものを感じるとか、
それは人によって違ってきて当然である。

“In Dreams Begin Responsibilities”、
これ自体に何も感じない人もいても不思議ではない。
そのくらい、人はさまざまである。

それでも、再び“In Dreams Begin Responsibilities”を引用しておきたい。

Date: 4月 13th, 2025
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャースPM510・その8)

audio wednesdayを毎月第一水曜日にやる度に思うことがある。
オーディオ業界から離れている私だってやれることを、
どうしてステレオサウンドをはじめとするオーディオ雑誌はやらないのか、だ。

機材も人もそろっているわけだから、
私がやっているよりも、ずっと多くのことができるわけだし、協力してくれるメーカーや輸入元は、ほぼすべてと言ってもいいはず。

ステレオサウンド編集部が、こういうことを定期的にやりたいと、
メーカーや輸入元に声をかければ、断るところはないと思う。
特に準備期間はなくとも、すぐに始められるはずだけ。
けれど、やらない。
もったいないな、とも思う。

こんなことを、audio wednesdayをやりながら毎回思うし、
瀬川先生だったら、どんなふうにやられただろうか、も考えてしまう。

JBLの4343を鳴らしてから思い始めたことがある。
ロジャースのPM510を鳴らしてみたい、と。

Date: 4月 12th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

耳の記憶の集積こそが……(その10)

別項で、屋上屋を架すとしか言いようのない音を出す人がいる、と書いている。

どうして、そんな音しか出せないのか。
そのことについて考えると、耳の記憶という積み木を、
彼らは積み重ねていくことができないのだろう、という結論が、
いまのところ見えてくる。

積み木を積むのに、接着剤とか釘、ボルト、ナットなどを使って、
積み木を一つずつを固定しながらやっていくのではない。
慎重に確実に積み上げていくしかない。

屋上屋を架す音しか出せない人は、ただ勢いだけで積み木を積んでいくのだろう。
基礎をしっかりした上で、ということをやらないのではないのか。

ただただ積んでいく。
それでもある程度の高さまではいける。
でも、所詮はそこまでだ。

きっと彼らには、その積み木が、耳の記憶だという認識もないのだろう。

Date: 4月 11th, 2025
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その10)

今回の電源の比較試聴は、
Sboosterのリニア電源にはアクティヴ型のノイズフィルターがあるのに対し、
スイッチング電源の方にはないわけで、
このアクティヴ型のフィルターが、どれだけ音質の寄与しているのかは確かめられなかったし、
このアクティヴ型のフィルターをスイッチング電源にも使ったら、どういう結果になるのか。

Sboosterのウェブサイトには、アクティヴ型のフィルターも購入できるようだ。
このフィルターをスイッチング電源に使えば、どれだけ音は変化するのか。

今回の比較試聴では、リニア電源の方を取るが、
スイッチング電源にもいくつかの種類があるし、
別項で触れているようにそのノイズ対策もあれこれできるし、
アクティヴ型のフィルターも、Sboosterの製品もあれば、iFi Audioにも同様の製品はある。

なので、リニア電源でなければならない──、という結論には個人的には達していない。

それでも手元には、あるパワーアンプから取り外したEIコアの電源トランスがある。
何か使えるだろうととっておいているのだが、
roon rock用の電源をこれで作ろうかな、とも思い始めている。

Date: 4月 10th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Mauriat 100(その4)

《音楽は、いつでも、思い込みだけであれこれいわれすぎる》

黒田先生が、ずっと以前に書かれていたことだ。

ポール・モーリアの音楽も、たぶんにそうだ。
私にも、そういうところが全くないと言わない。

それでも私は黒田先生のことばに、23歳のころに出合っている。
そうでなかったなら、もしくはずっと後だったりしたら──、
音楽への接し方はずいぶん、いまとは違っていたはずだ。

ここでポール・モーリアについて書いてたりはしなかっただろう。

くり返そう。
《音楽は、いつでも、思い込みだけであれこれいわれすぎる》
音楽だけではない、オーディオも、またそうである。

Date: 4月 9th, 2025
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その9)

roonのNucleus Oneには、リニア電源付きのオプションが用意されている、と、以前書いている。
昨日、ようやく、そのリニア電源付きのNucleus Oneを聴いてきた。

roonオリジナル設計のリニア電源ではなく、
ブルガリアのSboodterの電源をそのまま採用している。

Sboosterのウェブサイトには、内部の写真もある。
リニア電源本体はさほど凝ったものではないように見える。
他のリニア電源と違う点は、出力ケーブルの途中に、アクティヴ型のノイズフィルターが設けられている。

このノイズフィルターは取り外しできないので、その効果をありなしで確認はできなかった。

この電源、かなり大きい。意外に目につく形でもある。
外部電源なので、見えないところに置く場合は問題ないけれど、
常時目に入る位置には置きたくない

リニア電源付きのNucleus Oneには、一般的なスイッチング電源も付属している。
ただし、たまたま付いてきたのか、それともリニア電源付きのNucleus Oneには、
スイッチング電源も付いてくるのかは不明。

とにかく最初は、そのスイッチング電源で聴いて、
Sboosterのリニア電源に交換する。

音の変化はさほど大きくない──、であれば、
スイッチング電源のままでいいかな、と思うけれど、
少なからぬ違いは、やはりある。

Date: 4月 8th, 2025
Cate: 終のスピーカー

エラック 4PI PLUS.2のこと(その15)

スーパートゥイーターを足した場合、弦楽器ではヴァイオリン、
人の声では男声ではなく女声のディスクをかけた方が、
違いがよりはっきりするように、思いがちになるが、
実際に経験があれば、決してそうではないことを知っている。

今回かけた“John Coltrane & Johnny Hartman”のMQA-CDもそうである。

はじめ、エラックの4PI PLUS.2ありで一分ほど聴いて、結線を外した音を、同じく一分ほど聴いてもらった。
短い時間だが、違いは相当にはっきりと出る。

エラックなし、Ktêmaだけでも十分よく鳴っている。
これはこれでいい音なのだが、
ジョニー・ハートマンの歌い方を見事に再現してくれたのは、エラックありである。

歌唱方法を知りたい人、学びたい人は、絶対にエラックありを選ぶはず。
そのくらい違ってくる。

違いを聴いてもらった後は、もう一度最初から聴いてもらった。

Date: 4月 7th, 2025
Cate: 終のスピーカー

エラック 4PI PLUS.2のこと(その14)

ずっと以前からトゥイーターを変えたり足したりしたら、
低音域の鳴り方が変る、と言われてきている。

自作スピーカーでマルチウェイシステムに取り組んでいる人、
既成スピーカーシステムでもスーパートゥイーターをつけている人、
トゥイーターを交換したことのある人にとっては、常識でもある。

とはいってもそういう経験のない人もいる。
ない人の方が多いのかもしれない。

知識として、トゥイーターが変る、
高音域の鳴り方が変れば、低音域の鳴り方も変化することは知っていても、
だからといって体験しているわけではない。

実際、エラックの4PI PLUS.2を足すことで、
低音域の鳴り方は良くなる。

言い方を変えれば、低音域の鳴り方が良くならなければ、
そのトゥイーターの質が良くないのか、調整が悪いのかであるともいえる。

4月2日のaudio wednesdsyで、エラック無しの音も聴かせてほしい、とリクエストがあった。
どのMQA-CDでエラックのあるなしを聴いてもらうか、
よく考えていたわけではなく、かけたいMQA-CDをかけて、
その鳴り方をきいたうえて、このディスクにしようと、いわば直感的に決めた。

“John Coltrane & Johnny Hartman”にした。

Date: 4月 6th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Mauriat 100(その3)

イージーリスニングとかムード音楽、そんなふうにポール・モーリアの音楽は受け止められ、聴かれていた。

ポール・モーリアは、ポピュラー音楽とクラシック音楽の中間に位置すると、
自身の曲について、そう語っていたそうであるにも関わらず、
世間の受け止め方は、他の音楽よりも低き位置にあるものだったと感じる。
BGM、聞き流しのための音楽、邪魔にならない音楽──、
そんな感じだろう。

それでも一度きちんと向かい合って聴いてみれば、
そんな音楽ではないことは、ほとんどの人の耳に明らかなはず。

聴かずにいてもいいし、それじゃ一度聴いてみるか、となるのも、どちらでもいい。

聴いた方がいいとは言わないが、
ポール・モーリアの曲をかけて楽しめないシステム(音)は、
どこか未熟なところや不具合がある、と言っていいだろうぐらいに、
いまは、思っている。

そして今年はポール・モーリア生誕百年。
だからといってレコード会社が、何かやるわけでもないし、
音楽雑誌が特集を企画するわけでもない。
ひっそりと過ぎていくだけだろう。

私も、今年が生誕百年とは気づいていなかった。

今年のaudio wednesdayから、よく来られる、私よりもひと世代上の女性の方から教えてもらった。
ポール・モーリアの曲をかけたから、知ることができた。

Date: 4月 5th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –今後の予定

4月2日のaudio wednesdayの準備をしている時、
野口晴哉氏のリスニングルームのコーナーにあるヴァイタヴォックスのCN191が、
「鳴らしてみろ」と言ってきたように感じた。

スピーカーがもの言うわけではない。
私の勝手な思い込みなのはわかっていても、そんなふうに感じたのも事実。

そうなるとCN191を年内に鳴らしてみたくなる。

CN191がうまく鳴っているのを聴いたことがない。
もちろん鳴らしてみたこともない。

すんなり鳴ってくれるとは思っていないので、
鳴らすとしたら二回、もしくは三回続けて鳴らすことになろう。

それから7月は第一水曜日の2日ではなく、第二水曜日の9日になる。

Date: 4月 4th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Mauriat 100(その2)

フランコ・セルブリンのKtêmaはイタリア、
エラックの4PIPLUS.2はドイツ。
なのにポール・モーリア・オーケストラはフランスだということを、
今回初めて意識した。

それに上手い、とも思っていた。
こんなに細かい指揮をしていたのかと感心もしていた。

もうひとつ、フィリップスによる録音だからこそのポール・モーリアだな、とも思っていた。

フィリップス以前、別のレーベルで録音していたようだが、
私がポール・モーリアの名を聞いて頭に浮かべる曲は、
すべてフィリップス時代のものばかり。

もし、これらの曲が、ドイツ・グラモフォンだったり、
デッカだったりしたら、どうだっただろか──、そんなことも想像していた。

それでもヒットはしていただろうが、やはりフィリップスによる録音だったからこその要素もあると感じている。

Date: 4月 3rd, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十六夜(FRANCO SERBLIN Ktêma)

5月7日のaudio wednesdayでも、フランコ・セルブリンのKtêmaを鳴らす。
どう鳴らすかは、まだ決めていないが、なんらかの趣向を凝らすのもいいけれど、
ただただ聴いてもらうのもいいと考えている。

Date: 4月 3rd, 2025
Cate: ディスク/ブック

Mauriat 100(その1)

Paul Mauriat(ポール・モーリア)。
どんな人なのか知らなくても、どこかでポール・モーリアの曲は耳にしているはず。

先月のaudio wednesdayで、ポール・モーリアのMQA-CDをかけた。
私は持っていないけれど、メリディアンの輸入元のハイレスミュージックの鈴木さんが持ってきてくれた中にあった。

私の世代は、けっこういろんなところで、ポール・モーリアの曲は聴いている。
テレビからもよく流れていた。
それでもLPやCDを買って聴いていたわけではない。

私もきちんと聴いたのは、3月のaudio wendnesdayが初めてだった。

昨晩のaudio wednesdayでもかけた。
先月とラインナップは同じ。ケーブルも同じで、スピーカーの位置もほぼ同じ。
違うのは、昨晩はフランコ・セルブリンの上に、エラックの4PI PLUS.2をのせていたことだ。

リボン型、水平方向無指向性のスーパートゥイーターを足すことで、どんなふうに変るのか。
そのことを聴いてもらいたいので、
かける曲も先月から大きく離れることはしなかった。

ポール・モーリアも、だからかけた。
良かった、予想以上に良かった。

Date: 4月 2nd, 2025
Cate: スピーカーの述懐

スピーカーの述懐(その59)

ステレオサウンド 8号掲載の音楽評論家の向坂正久氏が「音楽評論とは何か」で書かれている。
     *
 では一体、評論の望ましい型とはどんなものか具体的にあげてみよう。私はオーディオに関して全く無知であるが、本誌の「実感的オーディオ論」を毎号愉しみにして読んでいる。製品名などで、その表現のいわんとするところの幅がわからぬこともないではないが、そこには五味康祐という一人の人間が、オーディオの世界で夢み、苦闘している姿が生きている。ひと言でいえば体臭がある。この体臭とは頭脳だけからは決してうまれない。オーディオという無限の魅惑が、その肉体を通して語られることの、紛れもない証左である。
     *
オーディオ機器についてなんらかを語るということ、
その中でも特にスピーカーについて語るということは、
まさにこういうことであるはずなのに、
オーディオ雑誌、インターネットに氾濫している中のどれだけが、そうと言えるだろうか。