「いい音を身近に」(その22)
瀬川先生はパイオニアのExclusive M4のあとに、
SAEのMark2500に、パワーアンプを交換されている。
Mark2500は、ウォームアップに時間のかかるアンプでもあった。
電源をいれておくだけではだめで、信号をいれて鳴らしはじめて三時間ほどすると、
本領発揮といえる音を聴かせる。
Exclusive M4は、そのへんはどうだったのだろうか。
Exclusive M4を聴いたことはある。
オーディオ店で、瀬川先生が来られた時で、
アンプの電源はすでに入れられていて、そういうことを確かめることはできなかった。
Exclusive M4はステレオサウンドの試聴室で聴くことはなかった。
すでにExclusive M4aになっていた。
Exclusive M4aは、回路的にはM4と同じで、
他社製アンプがDCアンプ化される中で、ACアンプのままだった。
改良点は、使用部品の変更だけのはすだ。
Exclusive M4aがウォームアップに時間のかかるアンプという印象はない。
特別に早いという印象もないが、遅くもなかったはずだ。
Exclusive M4も同じのはずだ。
そういうExclusive M4だったから、
《どんなに多忙な日でも、家にいるかぎりほんの十数分でもこの音を聴くことが、毎日楽しくてしかたない》
と書かれたのかもしれない。
レコード芸術1976年1月号の時点で、SAEのMark2500になっていたら……。
どうだったろうか。
あまり時間がとれない。
それでも音を聴きたい。
そうまでして聴きたい音だから、いい音でなくては困る。
なのに鳴らしはじめて三時間経たなければ……、というアンプでは、どうだろうか。
ほんの十数分のために、三時間ほど鳴らしておかなければならないのだとしたら、
《どんなに多忙な日でも、家にいるかぎりほんの十数分でもこの音を聴くことが、毎日楽しくてしかたない》、
この部分はなかったかもしれない。