世代とオーディオ(It’s a Sony・その2)
きくところによるとIt’s a Sony展でのH型テープレコーダーの展示は、
いまはまだいいほうらしい。
It’s a Sony展が始まったばかりのころは、
巻き取り側リールにもテープがいっぱいに巻かれていたそうだ。
つまり左右ふたつのリールともテープがいっぱいに巻かれていた状態だったらしい。
これはあくまでもきいた話で確認をしたわけではない。
もしかした間違っているかもしれない。
でも仮にそんな展示をしていたとしたら、いまの展示は誰かからの指摘があって、
あるところまでは正した、ということだろう。
それでも、あの状態なのか。
こんなことをねちねちと書いているのは、ソニーが憾みがあってことではない。
今回はたまたまソニーだった、というだけのことだ。
他のオーディオメーカーが、It’s a Sony展のようなことをやったとき、
似たようなミスをやらかさないと自信をもっていえるだろうか。
十年ほど前か、あるオーディオ関係者から聞いている。
古くからのオーディオ・ブランドが、いわゆる投資会社に買収された。
海外のメーカーで、誰もが知っているブランドである。
それまでは新製品の発表や、日本でのオーディオショウの際に来日するスタッフは、
自社製品のことを、そして自社の歴史のこともきちんとわかっている人ばかりだった。
だから古いモデルの、こまかなことを質問してもきちんとした答えが返ってきたそうだ。
それが買収されてからは、来日するのは買収先から派遣されている人ばかりで、
彼らは会社の規模や業績といった、
経済誌が記事にするようなことはことこまかに説明してくれても、
こちらが訊きたいこと、つまりオーディオ詩が記事にしたいことはまったく知らないそうだ。
製品のこと、歴史のことは知らない。せいぜいが新製品についてだけだそうだ。
どこかに買収されたからといって、すべてがこうなるとは限らない。
でもそうなる可能性はある。
買収されなくとも、世代が変っていくごとに失われていく何かがあるのだろう。
今日のKK適塾の三回目で、川崎先生が「安」という漢字について話された。
だから、これを書いた。