世代とオーディオ(JBL SE408S・その7)
JBLはSE401の前に、PL100という真空管のパワーアンプを試作している。
出力管にビーム管6973を使い、低域用が40W、高域用が20Wで、
シャーシー内にはエレクトリッククロスオーバーが内蔵されていた。
PL100はハーツフィールド専用アンプとして開発されたもので、
ハーツフィールドをバイアンプ駆動するためのシステムということになる。
PL100の時点でバイアンプ駆動を考えていたJBLなのだから、
SE408Sでイコライザーボードを左右チャンネル別々にしたのは、
将来的にバイアンプ駆動をも可能にするためであるのではないか。
SE408Sのシャーシー内に、デヴァイダーを内蔵する必要はない。
低域用のイコライザーボードには、ウーファーの補正カーヴ用とハイカットフィルターの部品を、
高域用のイコライザーボードには、
スコーカー、トゥイーターの補正カーヴ用(場合によっては不要かもしれない)と、
ローカットフィルターの部品を搭載・構成すればすむ。
レベルコントロールは、入力端子横にあるポテンショメーターを使えばすむ。
あとは入力信号が左右チャンネルに分配されるようにするだけだ。
実にスマートなやり方でバイアンプ駆動のエナジャイザーへと発展できる。
JBLがハーマンインターナショナルに買収された1969年には、
アーノルド・ウォルフが新社長に就任している。
いうまでもなく、この時代のJBLのアンプのデザインを手がけていたのは、
アーノルド・ウォルフ自身であり、
彼はアンプ製造ラインの中止要請と圧力に対し、全力で抵抗した、と、
ステレオサウンド別冊「JBL 60th Anniversary」には書いてある。
そうだろう、と思う。
アーノルド・ウォルフの中には、次の段階へのプランがあったはずだ。
だが、1971年に同意せざるを得なかった。