世代とオーディオ(JBL SE408S・その6)
パラゴンのユニット変更と同時に、メトロゴンも同じユニット変更がなされている。
メトロゴンもパラゴン同様、エナジャイザーが組み込めるようになっている。
スピーカーシステムのウーファーまでも変更させてしまうエナジャイザー方式を、
JBLはその後、どう展開させていきたかったのかはわからない。
1971年にアンプの製造を中止してしまっているから、想像するしかない。
JBLのこの時代のアンプを少し整理しておく。
1963年にパワーアンプSE401が出ている。
出力35W+35Wで、ゲルマニウムトランジスターを使っている。
SE402というモデルもあるが、
これはJBLのスピーカーシステムに組み込みSE401のもうひとつの型番であるから、
SE402にはなんらかのイコライザーボードがついてくる。
SE401とSE402は組み込み型のため外装パーツはなく、
SE401に外装パーツがついたモデルがSE400である。
1964年にコントロールアンプのSG520が登場。
1965年にバート・ロカンシー考案のTサーキット採用のパワーアンプSE408SとSE400Sが出る。
出力は40W+40W。
型番末尾のSは、シリコントランジスター採用を表している。
SE400SとはSE408Sの外装パーツ付きモデルで、
SE400があったためSが付けられ、SE408にもSが付けられた、と受けとめていいだろう。
だからSE408という、Sなしのモデルは存在しない。
1965年にはプリメインアンプのSA600が登場。出力40W+40W。
1968年に出力60W+60WのSA660にモデルチェンジ。フロントパネルブラックに変更される。
1970年にSE400Sも、60W+60Wに出力アップしたSE460になる。
FM専用チューナーのST860も発売になっている。
ここでJBLのコンシューマー用アンプの歴史は、一旦閉じる。
その理由について、ステレオサウンド 38号「クラフツマンシップの粋(2)」では、
はっきりとはわからない、と述べられているが、
JBLは1969年に、ジャーヴィス社のシドニー・ハーマンに買収されている。
つまりハーマンインターナショナルの傘下になっている。
ハーマンインターナショナルにはハーマンカードンがある。
ハーマンインターナショナルは、ハーマンカードンのアンプをJBLのアンプよりも重視したようで、
ハーマンインターナショナルからJBLに、アンプをやめるように圧力がかかる。
アンプ部門は、それほど利益があがっていないことも、大きな理由になっていたようだ。
ステレオサウンド別冊「JBL 60th Anniversary」掲載の「JBLの歴史と遺産」には、
一機種売るごとに、最大50ドルの赤字が出ると推測された、とある。
俄に信じられないが、
おそらくこの赤字の金額は修理にかかる費用を含めての算出のような気がする。
私もSG520は一時期使っていたが、このアンプを自分でメインテナンスしようとしたら、
かなり面倒だな、と思ってしまうほどのつくりである。
岩崎先生が「クラフツマンシップの粋(2)」で、
SG520の修理を、輸入元の山水電気に出そうとしたら、
修理期間を一ヵ月くれ、と返事があった、と述べられている。
一ヵ月は長いが、わかる気がする。
山中先生も《自分でやってみるとよくわかりますけれど、たいへんなのですね》と言われている。