Archive for 6月, 2015

Date: 6月 13th, 2015
Cate: モニタースピーカー

モニタースピーカー論(APM8とAPM6・その4)

APM6が登場したとき、その形状に関しては、ラウンドバッフルをフロントだけでなくリアにまで採用した、
その程度の認識で捉えていた。

APM6の広告はステレオサウンド 61号に載っている。
設計者の前田敬二郎氏による解説が載っている。
当然、そこにAPM6のエンクロージュアの形状について書かれている。
     *
一般にスピーカーは無限大バッフルに取りつけるのが理想的で、現実に一部のスタジオのモニター設備ではスピーカーを壁面に埋めこんで使用しています。これは有限のエンクロージャーにスピーカーを取りつけると回折が起こり、指向特性を劣化させるからです。しかし理想的とはいっても個人用として無限大バッフルは、いかにも非現実的です。では、どんな方法があるか。解決はスーパーエッグがもたらしました。つまりスーパー楕円エンクロージャーです。
     *
この広告からわかるのは、
APM6のエンクロージュアは無限大バッフルを現実的な形とすることから生れたものということ。
APM6のエンクロージュアは楕円を縦四分割し、パーティクルボードと天然木を曲げながら積層し、
最後に天板と底板と一体化するという手法でつくられている。

おそらくAPM8のエンクロージュアよりも手間がかかっているはずだ。
このエンクロージュアとAPM6からレベルコントロールが廃されているのは、実は関連している。
でもAPM6登場の1981年、私はそのことに気づいていなかった。

白状すれば、APM8に魅力を感じていたし、
ほぼ同時期にテクニクスから発表になったSB-M1の方に強い関心をもっていた。

そのSB-M1には別称がある。MONITOR 1である。
このことからわかるようにM1のMはMonitorの頭文字である。

同時期にソニーとテクニクスから、モニターと名のつく平面振動板のスピーカーシステムが登場したわけだ。

Date: 6月 12th, 2015
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(音の純度とピュアリストアプローチ・その9)

この項の(その3)で、
ブルーノ・ワルターのデジタルリマスターのLPを買った、と書いた。

LP(アナログディスク)なのに、デジタルリマスター。
いうまでもなくワルターの録音はすべてアナログ方式によるもの。
それを一旦デジタル信号に変換して信号処理。
それをまたアナログ信号に変換する。

多くの人が、ソニーはなんてバカなことをするんだろう、と思っていたはず。
私だってそう思っていた。
そんなことをすれば音の鮮度、純度といったところは明らかに劣化する。

しなくてもいい処理を、なぜソニーはやるのか。
そんな疑問をもちながらも、当時ブラームスの交響曲第四番を、
とにかくいろんな人の指揮で聴いてみたかった私は、
ワルターの四番はもっていなかったので、
廉価盤で安いということもあって、とにかく買って聴いてみよう、と思った。

音がどうしようもなく悪かったら、
編集後記に書こう、などと思いながら、音を聴いた。

聴いてみると、悪くないどころか、むしろいい音に聴こえる。
日をあらためて聴いてみても、悪くない。

ワルターのブラームスの四番のオリジナル盤は聴いたことがないから、
それとはどの程度の音の違いがあるのかは知らないが、
とにかく国内盤、アナログ録音なのにデジタルリマスター。

私にとって、いい音がするとは思えない組合せのレコードなのに、
予想に反する音が鳴ってきた。

実は、このことも、私の中では、いま書いている「冗長と情調」に関係してくることがらである。

Date: 6月 12th, 2015
Cate: モニタースピーカー

モニタースピーカー論(APM8とAPM6・その3)

ステレオサウンド 54号、瀬川先生のAPM8の試聴記には、
《レベルコントロールには0・1dBきざみの目盛が入っているが、実際、0・5dBの変化にもピタリと反応する。調整を追い込んでゆけば0・3dB以下まで合わせこめるのではないだろうか。これほど正確に反応するということは、相当に練り上げられた結果だといえる。》
とある。

つまりAPM8には、連続可変型のレベルコントロールがついていた。
APM6には、レベルコントロールはついていない。
当時は、これが意味することがわかっていなかった。

レベルコントロールがないんだ、ぐらいにしか捉えていなかった。
このことと、APM8とAPM6のエンクロージュアの形式の違いは密接に関係している。

APM8はソニー・ブランドで出ていたSS-G9の平面振動板タイプと、外観上はそういえるところがある。
ほぼ同じ寸法のエンクロージュアに、レベルコントロールと銘板の位置もほぼ同じである。
そして特徴的であるAGボード(アコースティカル・グルーブド・ボード)の採用。

縦横溝が刻まれたフロントバッフルは、波長の短い中高域を拡散させるものである。
APM8にもAGボードは採用されている。

SS-G9はコーン型、ドーム型ゆえ、ユニットの形状は円であり、バスレフポートの開口部も円。
APM8は平面振動板であり、ユニットの形状は四角。
そのためであろうバスレフポートの開口部も四角に変更されている。

そんな違いはあっても、SS-G9とAPM9と共通するところの多いスピーカーシステムである。

ところがエスプリ・ブランドのスピーカーシステムの第二弾であるAPM6は、
エンクロージュアの設計はSS-G9、APM8とはまったく別モノといえる。

APM6のエンクロージュアは、スーパーオーバル(超楕円)といわれる形状をしている。

Date: 6月 12th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(を書きながら……)

オーディオにおける冗長性について書こう(書けるかな)と思ったのは、2008年9月。
ブログをはじめたばかりのころ、「redundancy(冗長性)」を書いている。

けれどそのまま放っておいていた
続きを書こうとは思っていたけれど、
「redundancy(冗長性)」のタイトルのままでは、先を書けなかった。

ここにきてやっと「冗長と情調」というタイトルを思いついた。
このタイトルにして、やっと続きが書けるようになったし、
書きながら、あれもそうだったのか、これもか、とこれまで、ばらばらのこととおもえていたのが、
関連していることに気づいている。

瀬川先生が求められていた音に関してもそうだ。
なぜイギリスとアメリカのふたつのスタジオモニターを鳴らされていたのか、
なぜEMTのカートリッジだったのか、
なぜLNP2にバッファー用にモジュールを追加されていたのか、
他にもまだある。

とかにくそういったことがやっとひとつにつながっていっている。

Date: 6月 12th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その6)

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」タンノイ号で、
オートグラフについて井上先生が語られていることが、ここに関係してくる。
     *
(オートグラフは)安直に使ってすぐに鳴るようなものではない。現実に今日鳴らす場合でも、JBLとかアルテックなどとは全然逆のアプローチをしています。つまりJBLとかアルテックの場合、いかに増幅段数を減らしてクリアーにひずみのないものを出していくかという方向で、不要なものはできるだけカットしてゆく方向です。ところが、今日の試聴ではLNP2のトーンコントロールを付け加えましたからね。いろいろなものをどんどん付けて、それである音に近づけていく。結局、鳴らすためにこちらが莫大な努力をしないと、このスピーカーに拒否される。これはタンノイの昔からの伝統です。これが使いづらいといわれる点ですが、しかし一つ決まったときには、ほかのものでは絶対に得られない音がする。
     *
ここで井上先生がいわれている「今日の試聴」とは、
「タンノイを生かす組合せは何か」というタイトルの記事で、
オートグラフの組合せをつくられた試聴のことを指す。

最初井上先生はオートグラフを鳴らすアンプとして、マークレビンソンのML2を選ばれている。
コントロールアンプは、管球式のプレシジョンフィデリティのC4。

ML2の出力は25W。
このため、《これはこれで普通の音量で聴く場合には一つのまとまった組合せ》と評価しながらも、
大音量再生時のアンプのクリップ感から、マッキントッシュのMC2300に替えられている。
MC2300は出力にオートフォーマーをもつ300Wの出力のパワーアンプ。

ここで音像に《グッと引締まったリアリティのある立体感》が加わり、
音場感も左右だけでなく奥行き方向へのパースペクティヴの再現がかなり見事になり、
一応の満足の得られる音となる。

そこでさらに緻密な音、格調の高さを求めてコントロールアンプを、
C4と同じ管球式の、コンラッド・ジョンソンのアンプ、
それから、これもパワーアンプ同様、方向転換ともいえるマークレビンソンのLNP2を試され、
LNP2とMC2300の組合せに決る。

これが井上先生の《LNP2のトーンコントロールを付け加えましたからね》につながっている。

Date: 6月 11th, 2015
Cate: モニタースピーカー

モニタースピーカー論(APM8とAPM6・その2)

エスプリ(ソニー)のAPM8は、
ステレオサウンド 53号の新製品紹介で初登場し、
54号の特集「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」にも登場している。

新製品紹介では井上先生、山中先生によって評価され、
54号の特集では、黒田先生、菅野先生、瀬川先生によって試聴されている。

黒田先生は、試聴記の冒頭に《このスピーカーには、完全に脱帽する》と書かれている。
試聴記の最後はこう結ばれている。
     *
いつの日かここでそのように口走ったことを後悔するのがわかっていて、これをパーフェクトだといってしまいたい誘惑に抗しきれない。すばらしいスピーカーだ。
     *
この特集の冒頭に「スピーカーテストを振り返って」という座談会が載っている。
編集部から、今回聴いた46機種のスピーカーの中で、
一台を自宅に持ち帰るとすればどれを選ぶかという質問がある。

ここでも黒田先生は《迷うことなくエスプリAPM8です」と答えられている。

菅野先生、瀬川先生の評価も高い。
ふたりとも一本100万円という価格がひっかかって、推選、特選機種とはされていない。
瀬川先生も菅野先生も価格が半値であったら10点をつけるといわれていてる。
さらに菅野先生は、
《今回のテストで、最も印象づけられたスピーカーなのです》とつけ加えられている。

瀬川先生は《あらゆる変化にこれほど正確に鋭敏に反応するスピーカーはないですね」といわれ、
試聴記にあるように《レベルコントロールの0.5dBの変化にも反応する!》、
こんなスピーカーは他にはない、とまでいわれている。

APM8がきわめて優秀なスピーカーシステムであることが伝わってくる。
そしてAPM8は、スタジオモニターとしての性能をもっているとも感じていた。

Date: 6月 11th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その5)

ロングアームのことを書いていると、SMEからSeries Vが登場した日のことを思い出す。
別項「SME Series Vのこと(その1)」でも書いている。

Series Vの音に驚いた私は、長島先生に「ロングアームのSeries Vは……」と言ってしまった。
長島先生の返事はこうだった。

「Series Vに不満があるのか」と。
「ありません」と答えた。

不満などまったくなかった。
そのくらいSeries Vに取りつけたオルトフォンSPUは、それまで聴いたことのないクォリティを発揮していた。
それは想像もしていなかったクォリティで鳴っていた。

それでもSeries Vのロングアーム版を望んでいた私には、
12インチのトーンアームこそが標準長のアームであり、
9インチの標準長のトーンアームはショートアームという感覚があったわけだ。
いまもある。

冷静にトーンアームを考えてみれば、
標準長のトーンアームのほうが有利なことが多い。

パイプが9インチと3インチ短くなれば、実効質量は軽くなるし、
同じ材質、同じ肉厚、同じ径であれば、短い方が強度、剛性の面でも有利になる。
どんな材質であれ固有音があり、その固有音はパイプ長とどう関係してくるのか、を考えてみても、
ロングアームは不利である。

けれど「耳」は、ロングアームを求める。

Date: 6月 10th, 2015
Cate: audio wednesday

第54回audio sharing例会のお知らせ

7月のaudio sharing例会は、1日(水曜日)です。

テーマはまだ決めていません。
時間はこれまでと同じ、夜7時です。

場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 6月 10th, 2015
Cate: モニタースピーカー

モニタースピーカー論(APM8とAPM6・その1)

ソニーのもうひとつのオーディオブランドであったエスプリ。
エスプリ・ブランドの最初のスピーカーシステムは、APM8だった。

1978年に登場したこのスピーカーシステムは、

当時日本のメーカーで流行ともいえた平面振動板が採用されている。
しかも当時日本で驚異的な売上げであったJBLの4343をはっきりと意識していた構成であった。
4ウェイで、外形寸法も4343とほぼ同じといえる。

だから、当時の私は、エスプリ(ソニー)によるスタジオモニターというふうに捉えていた。
けれど、エスプリからは二年後にAPM6が登場した。

こちは2ウェイ。価格はAPM8の100万円(一本)に対し、50万円と、
ユニットの数も半分ならば価格もちょうど半分となっている。

もちろんAPM6もアルミハニカムを採用した平面振動板のユニットである。
こんなふうに書いていると、APM8の弟分として開発されたのがAPM6というふうに受けとめられるかもしれない。

けれどAPM8は、型番の末尾に何もつかなかった。
APM6にはMonitorとついている。
APM6の正式型番はAPM-6 Monitorである。

APM6とAPM8の違いは、Monitorがつくのかつかないのか、
ユニットの数が二つなのか四つなのか、という違いの他に、
エンクロージュアの考え方に大きな違いがある。

Date: 6月 10th, 2015
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアとして(ブラック・ジャックを読んでいて……)

手塚治虫のブラック・ジャックに、こんなセリフがある。

《手術もせずにほうってある きず口を見るのは がまんできないんだよ》
「のろわれた手術(オペ)」より

ブラッグ・ジャックは少年チャンピオンに連載されているのを読んでいた。
だから、このセリフも連載時に読んでいる。
そのころは、まだオーディオマニアではなかった。

いまオーディオマニアとして、このブラック・ジャックをセリフに出あって、
はっとした。気づかされたことがあった。

オーディオマニアは、自分のシステムから出る音を良くしようとする。
それは好きな音楽を少しでもいい音で聴きたいがためである。

でも、それだけではないことに、ブラック・ジャックのセリフを読んで気づかされた。
《手術もせずにほうってある きず口を見るのは がまんできないんだよ》という、
ブラック・ジャックと同じ気持があることに。

Date: 6月 9th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その4)

SMEの最初の製品は、よく知られているように3012であり、
このロングアームは、これまたよく知られているようにオルトフォンのSPU-Gのためのトーンアームである。

ここで考えたいのは、なぜSMEのアイクマンはロングアームとしたのかである。
私にはアイクマンが16インチ盤を再生するために、12インチのサイズを採用したとは思えない。
一般的なLPである12インチ盤を再生するためのトーンアームとして、
そして当時アイクマンが愛用していたSPU-Gを、
オルトフォンのトーンアームよりもよりよい存在として追い求めた結果が、
あのサイズ(ロングアーム)だと思えてならない。

もちろんオルトフォンのトーンアームを意識していたのであろうから、
オルトフォンのトーンアームがロングアームだったから、
ということも考慮しなければならない要素ではある。

事実イギリスのグラモフォン誌の1959年9月号に載ったSMEの最初の広告、
ここには3012のプロトタイプの写真が、なぜだか掲載されている。

この広告は1983年のステレオサウンド別冊「THE BRITISH SOUND」に載っている。
この広告の写真からわかることは、
3012は軸受けがナイフエッジだがプロトタイプはピボット方式で、
バランスウェイトの上部に針圧印加用のスプリングがある。
つまりオルトフォンのRMG309を意識したものであることがわかる。

3012は1959年に登場している。
標準型である3009も続いて登場した。

ちなみに3012のイギリスでの当時の価格は27ポンド10ペンス、
3009は25ポンドとなっている。

うがった見方をすれば、SPU-G愛用者、それもオルトフォンのトーンアームを使っている人たちに対して、
買い替えをうながすためのロングアームした、ともいえなくもない。
けれどアイクマンは、あくまでも自分のためのトーンアームとして製作している。

そのプロトタイプが、彼のまわりにいるオーディオ業界の友人たちのあいだで好評になり、
商業生産にふみきった、といわれているのだから、
やはり3012のサイズは、アイクマンにとってSPU-Gを十全に鳴らすために必要なものであった、といえよう。

Date: 6月 9th, 2015
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(音の品位・その1)

「コンポーネントステレオの世界 ’82」をひっぱり出してきて、
巻頭鼎談「あなただけの音楽を、音を探す旅にでよう コンポーネントはそのための興味ぶかい乗物だ」を
読みなおしていた。
この鼎談は岡先生、菅野先生、黒田先生によるものだ。

この鼎談、いま読み返してみると、やっぱりあれこれ思ってしまう。
この鼎談が行われたのは1981年の秋ごろだろう。
もう30年以上が経過している。

ここで語られていたことは、その後、どうなっていったのか。
そのことを考えながら読み返すことの興味深さは、
当時読んだときには味わえなかったものが、とうぜんのことながらある。

「コンポーネントステレオの世界 ’82」をお持ちの方は、ぜひ読み返してほしい。

この鼎談の中に、音の品位について語られているところがある。
ここには瀬川先生の名前も出てくる。
     *
菅野 これは先日亡くなられた瀬川冬樹さんからきいた話ですが、あるとき、若いファンが瀬川さんに、よく先生方は、この音は品位があるからいいとか、品位が高いとかいわれるけど、その品位という意味がよくわかりません、という質問をされたそうです。ぼくもこれはいろんな意味で、たいへんおもしろい問題提起だと思う。たしかに説明しろといわれてもたいへんこまるし、ひとことで理解させるということは至難の技だと思ったけれど、強いていうとクォリティというのは、そういった意味に近いわけですね。
黒田 ぼくもそうなんです。
菅野 そうですよね。だから、決して物理特性のいいものを品位が高いとはいわない。クォリティを日本語に訳すと、品質ということになるから、これまたこまってしまう(笑い)。それで品位という言葉を使う。だから品位という言葉は、ある意味ではずるくてあいまいで、あやふやなところがある言葉だから、わからないというのはたいへん率直な質問だと思うんです。ただ、そういうものが音楽を聴く場合には大切な要素として存在しますから、あいまいであるけれども、品位という言葉を使わざるをえないわけです。
     *
音の品位。
品位は英語ではdignity、graceとなる。
この鼎談のころは、グレースというカートリッジの老舗ブランドがあった。
そんなことも思い出しながら、dignityとgraceとでは、ここでの音の品位は後者だろうな、と思いつつも、
人によっては前者のほうを思い浮べることはあろう。

音の品位といっても、人によって同じ場合もあれば違う場合もある。
これも「コンポーネントステレオの世界 ’82」で語られている。

Date: 6月 9th, 2015
Cate: 岡俊雄

アシュケナージのピアノの音(続々続・岡俊雄氏のこと)

菅野先生が、以前次のような発言をされている。
     *
たとえば同じクラシックのピアノ・ソロであっても、ぼくはブレンデルだとわりと小さい音で聴いても満足できるんだけれども、ポリーニだともうちょっと音量を高めたくなるわけです。
(ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’82」より)
     *
菅野先生の指摘されていることは、多くの人が無意識のうちにやっていることだと思う。
私も、いわれてみれば……、と思った。

岡先生はショルティとアシュケナージを高く評価されていたことは、以前書いた通りだ。
ショルティは、私の中では音量をけっこう高めにして聴きたくなる指揮者である。
ショルティのマーラーは、他の指揮者のマーラーよりも大きくしたくなるところがある。

これはすべての人に共通していえることなのか、そうでないことなのかはわからないけれど、
ショルティのマーラーをひっそりと鳴らしても……、とやはり思ってしまう。

アシュケナージは、どうなんだろうと、いま思っている。

意外に思われるかもしれないが、
岡先生はけっこうな大音量派だった。
岡先生の音を聴いたとき、その音量に驚いたことがある。

驚いたあとで、そういえば……、と思い出していた。
これも「コンポーネントステレオの世界 ’82」に載っていることだ。
     *
 ぼくは自分の部屋で、かなりレベルを上げて聴いて、ワイドレンジで豊かな感じを出したいなということでいろいろやってきて、専門的な言葉でいえば、平均レベルが90dBぐらいから上でピークが105dBから、場合によると110dBぐらいのマージンをもつ、ピアニッシモは大体50から55dBぐらいで満足できるような、その程度のシステムで聴いていた。わりと庭が広いので、春さきから秋にかけては窓をあけっぱなしにして聴いていたのです。
 隣の家までかなり距離はあるんですけれども、隣の家が改造して、昔は台所があってその向こう側に居間があったのを、こんどは居間を台所の横に移しちゃったんです。それでうちでデカイ音を出すと、平均レベルで90dB以上でピークで100dBを超えたりすると、モロにいくわけですね。それぐらいでやっていたら、ある日突然電話がかかってきて、お宅の音がうるさくて困ると、クレームがきてしまった(笑い)。
     *
これを読んでいたことを忘れていた。
そうだそうだ、岡先生はけっこう大音量派なのだ、ということを思い出していた。

だから岡先生もショルティはかなり大きめな音で聴かれていたように思う。
アシュケナージはどうだったんだろうか。
ショルティのマーラーほど大きくはなくても、他のピアニストよりも大きめの音量だったのだろうか。

Date: 6月 8th, 2015
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(思いついたこと)

コンプレッションドライバーのフェイズプラグを見ていて思いついたことがある。

この項ではカートリッジについて書いている最中だが、
今日思いついたこともカートリッジに関することである。

カートリッジの針先、ダイアモンドチップに関することである。
なぜカートリッジの針にダイアモンドを使うのか。
それはダイアモンドが地球上でもっとも硬度の高い物質だからである。

硬いということは、その表面を磨けるということである。
平滑であるためには、そのものの硬度が要求される。

針先の形状は丸針からはじまり、楕円針、ラインコンタクト針、超楕円針など登場した。
いうまでもないことだが、針先の先端が音溝の底をトレースしているわけではない。
針先の両サイドが音溝に接触しているわけで、
この部分の接触面積をできるだけ線、それも可能な限り細い線に近づけた方が、
理論的には精確なピックアップにつながっていく。

今日思いついたことは、形状に関することといえばそうなのだが、
丸針とか楕円針といった形状のことではない。
フェイズプラグを見ていて思いついたのは、
針先にスリットをいれたら、いったいどうなるのだろうか、である。

フェイズプラグには放射状、同心円状、そのどちらかにスリットをいれる。
針先のダイアモンドに、同じようにスリットをいれる。
あの小さなダイアモンドチップにスリットを入れることが可能なのか、それもわからない。

入れることが可能だとして、どういうふうに入れたらいいのかもわからない。
放射状なのか、同心円状なのか、
それにどのくらいの溝を、何本入れたらいいのか……、
スリットを入れることによるメリットがどういうことのなのかも、はっきりとはイメージできない。

けれどスリットを入れることでなんらかの変化が、トレースに起きることは確かなはず。
スリットによって、なにかが保持されるのではないか、と思っている。

Date: 6月 8th, 2015
Cate: ロマン

ダブルウーファーはロマンといえるのか(その2)

JBLの4350Aと同時代のダブルウーファー(それ以上)のスピーカーシステムは、いくつかあった。
国産スピーカーシステムては、デンオンのSC107(25cm口径二発)、
サンスイのSP-G2300(25cm口径二発)、SP-G300(30.5cm口径二発)、
テクニクスのSB9500(35cm口径四発)、
海外スピーカーシステムでは、アリソンのAlison:Two(20cm口径二発)、Alison;one(25cm口径二発)、
B&MのMonitor 5(16cm口径六発)、
BOSEの601(20cm口径二発)、
ボザークのB4000A(30cm口径二発)、B410(30cm口径四発)、
ダイナコのA50(25cm口径二発)、
エレクトロボイスのSentry iV(30cm口径二発)、
ESSのHD13(30cm口径二発)……、これら以外にもまだまだあるが、このへんにしておく。

意外にダブルウーファーのシステムはあった。
それに加え、1970年代後半はドロンコーン(パッシヴラジエーター)方式のモノも多かった。
ウーファーユニットよりも大口径のパッシヴラジエーターのモノもあれば、
同口径で見た目もウーファーと同じで、一見ダブルウーファーを思わせるモノもあった。

視覚的には同じように見えることもあるダブルウーファーとパッシヴラジエーター方式だが、
低域の拡張を図っているのは、ダブルウーファーではなくパッシヴラジエーターの方である。

意外に思われる方がいるかもしれない。
4350Aは15インチ(38cm)口径の2231Aを二発収めている。
4343は一発だけである。

二発と一発。
同じユニットを使っている限り、基本的には低域の再生帯域の下限をより低くすることはできない。
ダブルウーファーにしたからといって、同じユニットを使っている場合は、
一発では30Hzどまりだった低音の再生下限が20Hzになることはない。

もちろんエンクロージュアの容積が変り、バスレフ型ならばバスレフポートのチューニングも変えれば、
もう少し下まで延ばすことは可能だが、
同じユニットで、ウーファーに対する容積、バスレフのチューニングが同じであれば、
無響室での周波数特性的には一発も二発も変化があるわけではない。