アシュケナージのピアノの音(続々続・岡俊雄氏のこと)
菅野先生が、以前次のような発言をされている。
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たとえば同じクラシックのピアノ・ソロであっても、ぼくはブレンデルだとわりと小さい音で聴いても満足できるんだけれども、ポリーニだともうちょっと音量を高めたくなるわけです。
(ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’82」より)
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菅野先生の指摘されていることは、多くの人が無意識のうちにやっていることだと思う。
私も、いわれてみれば……、と思った。
岡先生はショルティとアシュケナージを高く評価されていたことは、以前書いた通りだ。
ショルティは、私の中では音量をけっこう高めにして聴きたくなる指揮者である。
ショルティのマーラーは、他の指揮者のマーラーよりも大きくしたくなるところがある。
これはすべての人に共通していえることなのか、そうでないことなのかはわからないけれど、
ショルティのマーラーをひっそりと鳴らしても……、とやはり思ってしまう。
アシュケナージは、どうなんだろうと、いま思っている。
意外に思われるかもしれないが、
岡先生はけっこうな大音量派だった。
岡先生の音を聴いたとき、その音量に驚いたことがある。
驚いたあとで、そういえば……、と思い出していた。
これも「コンポーネントステレオの世界 ’82」に載っていることだ。
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岡 ぼくは自分の部屋で、かなりレベルを上げて聴いて、ワイドレンジで豊かな感じを出したいなということでいろいろやってきて、専門的な言葉でいえば、平均レベルが90dBぐらいから上でピークが105dBから、場合によると110dBぐらいのマージンをもつ、ピアニッシモは大体50から55dBぐらいで満足できるような、その程度のシステムで聴いていた。わりと庭が広いので、春さきから秋にかけては窓をあけっぱなしにして聴いていたのです。
隣の家までかなり距離はあるんですけれども、隣の家が改造して、昔は台所があってその向こう側に居間があったのを、こんどは居間を台所の横に移しちゃったんです。それでうちでデカイ音を出すと、平均レベルで90dB以上でピークで100dBを超えたりすると、モロにいくわけですね。それぐらいでやっていたら、ある日突然電話がかかってきて、お宅の音がうるさくて困ると、クレームがきてしまった(笑い)。
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これを読んでいたことを忘れていた。
そうだそうだ、岡先生はけっこう大音量派なのだ、ということを思い出していた。
だから岡先生もショルティはかなり大きめな音で聴かれていたように思う。
アシュケナージはどうだったんだろうか。
ショルティのマーラーほど大きくはなくても、他のピアニストよりも大きめの音量だったのだろうか。