オーディオ機器を選ぶということ(その8)
そんな選び方をして、自分の望む音が出せるのか──。
オーディオマニアは、なにか特別ななんらかを手に入れたがっているところがあるように思う。
たとえば、自分の敷地内に専用の電柱(いわゆるマイ電柱)もそうだし、
専用のリスニングルームもそう。特註品、限定品、
それにウェスターン・エレクトリックやシーメンスの、いまでは入手の難しくなったスピーカーなど、
特別なものは、モノだけでなく、環境・条件において、いくつもある。
なにも、これらの特別なものを手に入れることを否定するのではない。
そういう特別なものを手に入れることができるのも、
ある意味(それは間接的ではあるかもしれないが)、入手した人に特別な能力があったからだろう。
ただ、その能力が、オーディオの能力とは限らない。
ときに特別ななにかを手に入れて、自分だけの特別な音をつくっていく。
20代のころ、そうだった。
EMTの927Dstも手に入れた。
そのイコライザーアンプとして、1960年代、ヨーロッパでの録音に使われていた
テレフンケンのM10の再生用アンプも手に入れた。
管球式で、堅牢なつくりのモノーラル構成。
ちなみに私が手に入れた927Dstは、後期(というより一般的に知られている)927Dstとは違い、
デッキ部分に927Dstの刻印が入っていたし、クイックスタート・ストップレバー用の穴は、最初からない。
349Aのアンプをつくろうとしていたときは、ベース部分にではなくガラス面に、
349Aと印刷されている、いわゆるトップマークタイプも集めていた。
音のいいと云われているモノの中で、さらに音が優れているモノ、そんな特別なモノを手に入れていた。