Archive for 6月, 2010

Date: 6月 6th, 2010
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(その8)

そんな選び方をして、自分の望む音が出せるのか──。

オーディオマニアは、なにか特別ななんらかを手に入れたがっているところがあるように思う。
たとえば、自分の敷地内に専用の電柱(いわゆるマイ電柱)もそうだし、
専用のリスニングルームもそう。特註品、限定品、
それにウェスターン・エレクトリックやシーメンスの、いまでは入手の難しくなったスピーカーなど、
特別なものは、モノだけでなく、環境・条件において、いくつもある。

なにも、これらの特別なものを手に入れることを否定するのではない。
そういう特別なものを手に入れることができるのも、
ある意味(それは間接的ではあるかもしれないが)、入手した人に特別な能力があったからだろう。
ただ、その能力が、オーディオの能力とは限らない。

ときに特別ななにかを手に入れて、自分だけの特別な音をつくっていく。

20代のころ、そうだった。
EMTの927Dstも手に入れた。
そのイコライザーアンプとして、1960年代、ヨーロッパでの録音に使われていた
テレフンケンのM10の再生用アンプも手に入れた。
管球式で、堅牢なつくりのモノーラル構成。

ちなみに私が手に入れた927Dstは、後期(というより一般的に知られている)927Dstとは違い、
デッキ部分に927Dstの刻印が入っていたし、クイックスタート・ストップレバー用の穴は、最初からない。

349Aのアンプをつくろうとしていたときは、ベース部分にではなくガラス面に、
349Aと印刷されている、いわゆるトップマークタイプも集めていた。

音のいいと云われているモノの中で、さらに音が優れているモノ、そんな特別なモノを手に入れていた。

Date: 6月 6th, 2010
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(その7)

音ではなく、ボロボロのグールドの椅子とならべたときにしっくりとくるモノを選ぶというわけだ。

グールドの椅子は、たしかグールドの父親の手による製作で、プロの職人によるものでないことは知られているし、
実物をみると、そのことはすぐにわかる。

そんな椅子としっくりくるもの……というと、ボロボロの、素人の手によるスピーカーというわけではない。

たしかにグールドによって永年つかわれていた椅子はボロボロではあるが、実物を見たことのある者にとっては、
どこかにストイックな要素を感じてしまうし、それは、ただのボロボロの椅子とは、違う。

感傷的視線、感情移入から、そう見えた、とは思っていない。
はっきりと、何が違うと、まだ見えていない。
だから、グールドの椅子を、まず手に入れたいと思う(もう少し先になるけれど)。

そしてグールドの椅子とじっくり向かい合いスピーカーを決めていく。

Date: 6月 6th, 2010
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(その6)

「憧れ」は、どこかで顔を出す。

一昨日Twitterに、以前に書いた、グレン・グールドの椅子のことにふれた。

田中一光先生のハークネスの間にあったハンス・ウェグナーの椅子とは、対極的なのが、グールドの椅子だ。
このレプリカは、いまでも入手できる。

以前、この椅子について書いたときは、グールドの演奏を聴くときは、この椅子に坐りたい、とした。
いまもその気持はある。
でも、Twitterでつぶやいて、ふと思ったのは、このグールドの椅子のレプリカを、
左右のスピーカーの間に、ポツンと置きたい、ということ。

机はいらない。ボロボロの、この椅子だけを置く。
そして、この椅子に似合うスピーカーを選ぶ、ということも、あってもいい、というよりも、
そういう選択をしたい、とふと思った。

Date: 6月 6th, 2010
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(その5)

田中一光先生のハークネスは、システムナンバー001だから、ウーファーは130A、ドライバーは175DLHの組合せ。
エンクロージュアはC40。だからスピーカーシステムナンバーはD40001となる。

エンクロージュアはバックロードホーンの、高能率、いまではナローレンジ型となる。
ハークネスから、私の求めている音を抽き出すのは、そうとうに困難だとわかっていても、
Harkness は、いまでも欲しいスピーカーシステムの、数少ないひとつだ。

だからといって、状態のいいモノが目の前に合ったとして、それを購入できるお金が手もとにあったとしても、
じゃ、即購入するのかというと、そうじゃない。

私の中では、ハークネスは、田中一光先生の、あのリスニングルームと、あくまでもひとつのセットであるから。
リスニングルーム全体、とはいわない。
でも、あの机と椅子は、どうしてもひとつのセットとして、決して分離できないものだ。

スピーカーの間の机と椅子を置くことによる音への影響よりも、あのとき感じた美しさをとる。
これは、「憧れ」だ。ずっともちつづけてきた。

Date: 6月 5th, 2010
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(その4)

ステレオサウンド 45号に載っている田中一光先生のリスニングルーム。
五味先生のタンノイ・オートグラフに憧れるのは、別の意味で、一目見た瞬間から、「憧れ」となった。

スピーカーシステムは、JBLのハークネス。
木目を生し、部屋全体の色調も茶色、それにカーペットの白という暖かい雰囲気にまとめられていて、
それでいてすっきりとしていた。

ハークネスのあいだには、同じ高さになるようにつくられた木製の机。
一分の隙もなく、ぴったりと収まっている。
椅子は、ハンス・ウェグナーのモノ。これもハークネスと机、それに部屋の雰囲気によく合っている。
ちなみにソファーは、アルフレックスのDECA、テーブルはエアボーン。

しかもハークネスは、左右対称の環境にレイアウトされている。

45号は1977年12月発行。このとき、私は14歳。
正直、「田中一光? どんな人だろう……」だった。
作品についても、まったく知らなかった。
それでも、このリスニングルームを見れば、すごいデザイナーであることは、即座にわかった。
14歳の若造(小僧)にもわかるくらいの、見事なリスニングルームだった。

Date: 6月 4th, 2010
Cate: 言葉

続々続々・語り尽くすまで

前回、「決着点も、きっとある」と書いた。

決着点とするならば、到達点は到着点、終点は終着点になるのだろうか、と思いながらも、
結論は、まだ私の中でははっきりとしない。

「死」は終点であり到達点である……のか?、という返信を、川崎先生からTwitterでもらっている。

漠然とではあるが、最終目的地が終点であるならば、「死」は終点ではなく、
だからといって到達点とも違う気もする。
「死」は決着点なのか……とも思う。

いずれ、はっきりすることだろう、はっきりさせることなのだろうかも、まだはっきりとはしない。

そして、起点、基点、始点について、このとき考えなかったことを、いま不思議に思う。

Date: 6月 3rd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その36)

とはいえ、いま4343/4341を、優秀なパワーアンプで、内蔵ネットワークを通して鳴らすとして、
52μFのコンデンサーまわりの配線を変えて……、ということは無理に近い。

4344、4345のネットワークはプリント基板上に部品を配置して、
それをケースにおさめることはしていないから、手を加えることは比較的簡単なのだが、
4343のネットワーク3143は、金属ケースにコンデンサーやコイルをおさめた上でピッチで固めてあるからだ。
配線をやりかえようとしたら、このピッチをすべて取り除いて、という作業が必要になり、
そうしてしまったら、もうピッチを元に戻すことはできないからだ。

4343の場合、バイアンプ駆動も可能としているため、4341のネットワーク3141よりもスイッチは増えているし、
配線も多少複雑になっている。
バイアンプをやらずに内蔵ネットワークでの音を追求していくつもりであるなら、
いっそネットワークを作った方がいいだろう。

回路図はJBLのサイトからダウンロードできる。
それに4343に、4344、4345のネットワークをもってくるというのも、おもしろいと思っている。

3143と同じ回路でも、部品が異り、52μFのコンデンサーの扱いをどうするかにより、音はずいぶん変化する。
それにサイズ考で述べたアースの配線を行うことも可能になる。

Date: 6月 3rd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その35)

4341が登場したのは1974年。
マークレビンソンのLNP2が登場して話題になりはじめたころである。

このとき市販されていたパワーアンプは、いまのモノのようなドライブ能力の高さを持ってはいなかった。
トランジスターアンプならではのドライブ能力が実現されはじめたのは、もうすこしあとの、
たとえばスレッショルドのデビュー作の800Aや、GASの、これもデビュー作のAmpzilla、
それからSAEのMark2500あたりからであり、
さらに一段飛躍するのが、マークレビンソンのML2L、スレッショルドのSTASIS1、
SUMOのThe Power、The Goldからだろう。

そして1980年代にはいり、オールリボン型、そして低インピーダンスのスピーカー、アポジーの出現により、
より低インピーダンスでも安定した動作を保証するパワーアンプが登場してくる。

パワーアンプの能力は確実に向上している。
いま、4343でも4341でもいい、
どちらかを優れたパワーアンプで鳴らすとしたら、52μFの挿入位置も変ってくるだろう。
通常のネットワークと同じように、ミッドハイとトゥイーターへの信号は、
この52μFを通らなくてもすむ配線に変更されるだろう。それでも、システムとしてのまとまりはくずれないはずだ。

事実、1981年に登場した4345では、
4343の52μFにあたる60μF(実際は20μFのコンデンサーを3個並列接続)の取り扱いは、
通常のネットワークと同じだ。
ミッドハイ、トゥイーターへの信号は、このコンデンサーを経由していない。

52μFのコンデンサーの存在は、あくまでも1970年代なかばにおける、
4343/4341をとりまく環境での答えであったはずだ。時代が変れば、その答えも変っていく。

Date: 6月 3rd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その34)

4340のネットワーク3140に52μFのコンデンサーがないように、
4343のネットワーク3143でも、バイアンプ駆動にした場合には、52μFのコンデンサーはショートされる。

どちらもミッドバスのレベルコントロールは、そのまま生きることになる。

ウーファー駆動に専用アンプを設けることで、ウーファーのローパスフィルターのための5.4mHの、直列に入るコイルと、
72μFの、並列にハイルコンデンサーは、ウーファーへの信号系路から切り離される。
5.4mHも72μFも、それぞれコイル、コンデンサーとしては、かなり大きな値である。
これらの部品を信号が通らないこと、
それにウーファーと、それより上の帯域のアースの配線が独立することなどにより、
適切に調整されたバイアンプ駆動の音は、内蔵ネットワークで全帯域を鳴らす音に較べ、
ひとことであらわすなら、よりクリアーになる。

ウーファーの、つまり低音の透明度がぐんと増す。
そのことによって、上の帯域を、それまでのウーファーの鳴り方に合わせる必要はなくなる。
音をすこしぼけさせることで、システムとしてのまとまりを重視しなくてもいいことになる。

4343も4341もウーファーのカットオフ周波数は、300Hzと低い。
この低さが、コイルとコンデンサーに大きな値を要求しているし、そのための難しさが音にも影響している。

つまりカットオフ周波数が低い4343/4341だけに、バイアンプ駆動のメリット(ようするに音の変化)は、
より高いカットオフ周波数の4331/4333よりも大きいといえるはずだ。

4331と4333の開発担当はグレッグ・ティンバースだが、
もし3ウェイの4333をパット・エヴァリッジが担当していたとしても、
2420のローカットのためのコンデンサーを経由させて、2405を鳴らすという方法はとらないような気がする。

52μFの挿入位置は、
内蔵ネットワークで鳴らす際のシステムとしてのまとまりを重視してのことだ、と私は考えている。

Date: 6月 3rd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その33)

さらに、そう考えるようになった理由は、もうひとつある。
ステレオサウンド別冊、HIGH-TECHNIC SERIES Vol.3
「世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方」のなかにある。

巻頭座談会で、井上卓也、黒田恭一、瀬川冬樹の三氏が、JBLの4343のトゥイーターをバイアンプ駆動して、
JBLの2405、パイオニアのPT-R7、テクニクスの10TH1000、YLのD1800、マクソニックのT45EX、
ピラミッドのT1の比較試聴をやられている。

2405をバイアンプしたときの音について語っているなかで、瀬川先生の、こんな発言がある。
「4343の内蔵のネットワークを通したもので聴くとある程度音がぼやけるんですね。」
さらに「4343を全音域マルチアンプドライブしている人がいてその音も聴いているのではっきり言えるのだけれど、
内蔵ネットワークというのは、ユニットの音をずいぶん甘くしているということですね。」

井上先生は「それが、4343というシステムをつくっているということでしょう。」と語られ、
さらに「今度の実験で2405のもっている限界みたいなものがわかりましたね。」と続けられている。

それに対して瀬川先生は「内蔵ネットワークがその辺のところをうまくコントロールしていることも言えますね。」と。

バイアンプ駆動、マルチアンプ駆動すれば、内蔵ネットワークを通した時も、音の鮮度が増すから、
そんなこと当然じゃないか、という反論が聞こえてきそうだが、
この試聴に参加されている瀬川先生も、井上先生も、そんなことは百も承知のうえでの発言であることを、
はっきりしておきたい。その前提を無視して、この記事を読んでも何になる。

Date: 6月 3rd, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その32)

4343のネットワーク3143と、4343の前身4341のネットワーク3141は、
バイアンプと通常ドライブの切換えスイッチの有無だけの違いで、
回路構成、定数の違いことは、前に書いているとおりだ。

ここで注目したいのは、4343と4341のネットワークについてではなく、
4341と、そのバイアンプ専用モデルの4340のネットワークの違いについて、である。
4340のネットワーク3140には、52μFのコンデンサーはない。
52μFのコンデンサーは、ミッドバス(2121)用の低域カットのためのものだから、
エレクトロニッククロスオーバーネットワークによって、
ウーファー用と、それ以上の帯域用にと分割しているわけだから当然といえば、当然なのだが、
3140は、52μF同様、省略できる部品をじつは省略していない。
ミッドバスのレベルコントロール用のアッテネーターである。

レベルコントロールは、エレクトロニッククロスオーバーネットワーク側で行うわけだから、
ミッドバス用のレベルコントロールは必要ない。
52μFは省略して、レベルコントロールは残したまま。

4340と同じ、4ウェイ構成でバイアンプ駆動仕様の4350には、ミッドバスのレベルコントロールはない。
4340/4341、4350、それに4343は、すべて開発・設計には同じパット・エヴァリッジ。

4350には、前に書いているとおり、レベルコントロールはトゥイーター2405用がひとつだけついてる。
4350と4340/4341の開発時期は、わりと近い。

このへんのことを考え合わせていくと、52μFの挿入位置についての答えが見えてくる。

Date: 6月 2nd, 2010
Cate: 書く

毎日書くということ(フルトヴェングラーのことばについて)

この項の最初に引用したフルトヴェングラーのことば。

「音楽は、案出されたり構築されたりしたものではなく、成長したもの、
いわば直接に『自然の手』から生まれ出たものである。この点において、音楽は女性に似通っている。」

ここでフルトヴェングラーがいいたかったことを、別の面から語ったのが、柳宗理氏のことばではないだろうか。

「本当の美は生まれるもので、つくり出すものではない。 デザインは意識活動である。しかし、自然に逆らった意識活動は醜くなる。なるたけ自然の摂理に従うという意識である。この意識はデザインする行為の中で、究極のところ無意識となる。この無意識に到達したところより美が始まる。」

Date: 6月 2nd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その2・余談)

ホーンと同じく、開口部の形状だけでなく、開口部周辺の形状が重要になるのには、バスレフダクトがある。
ダクトの長さ、径は、低域再生と直接関係するために、よく検討されているものが多い。
けれど、ホーン型同様、開口部周辺の形状までに気を使ったモノとなると、
いまのところ思い浮ぶのは、ひとつしかない。

ウェストレイクの Tower-12 だけだ。

Tower-12のバスレフダクトの開口部周辺の形状を見て、
こっけいだとか、目立ちすぎといったややネガティヴな印象を持つ方もいるだろう。
フロントバッフル面から突き出したかたちで、裾広がりになっているため、
裾野まで含めた全体の径は、開口部の径の2倍以上あるだろう。
その上に配置されているウーファーの口径と、そう変らない大きさになっている。

なんて大げさなパスレフダクトだろう、と最初見た瞬間はそう思っても、すこし考えれば、
ウェストレイクがわざわざ、この形状(大きさ)にした理由は浮んでくる。

バスレフダクトからは、音量が大きければ、かなりの空気量が出てくる。それもけっこうなスピードで、である。
そのため、この部分での聴感上のSN比の劣化を抑えるために、金属製のダクトを使用したもの、ダクト内に柔軟剤を使用しさらに柔らかくしたフェルトを貼りつけたもの、
エンクロージュア内部側の開口部をダンプしたもの、などの対策が、
実際の製品を見ていくと、各社様々の工夫がわかる。

これは、いわばホーンではいえば、ホーンの形状や材質の問題であって、フロントバッフルに取りつけた際、
そのマッチングについて検討されたものがごく少数なのと同じで、
バスレフダクトにおいてもバッフルをふくめての、最適の開口部周辺の形状が求められるはずだ。
この観点から、Towet-12 のバスレフダクトの開口部の形状を捉えたい。

Date: 6月 1st, 2010
Cate: 4343, JBL

4343における52μFの存在(その31)

52μFのコンデンサーの挿入位置を、あえて通常とは違うところにしているのは、
特性やユニットの保護の意味合いではなく、上ふたつの帯域(ミッドハイの2420とトゥイーターの2405)の音を、
あえて甘くしている、というか、すこしぼけさせるためだ、と考えている。

こういう表現すると、なぜ、メーカーが、わざわざ音を悪くするのか、と疑問ももたれるだろう。
だが、スピーカーシステムとしての完成度は、
必ずしも個々のスピーカーユニットの性能をできるかぎり発揮すればいい、というものではない。

ウーファーとミッドバスはコーン型、ミッドハイとトゥイーターはホーン型。
同じホーン型でも2420と2405はダイアフラムの形状が異る。2405はリング状になっている。
ホーンの構造も、異る。
ウーファーとミッドバスのユニットも、コーン型でも、2121はコンケーブ型で、
センターキャップの形状が、通常型の2231Aとは異る。

これらのスピーカーユニットを、ストレートにそのまま鳴らし切ったとしたら、
システムとしてのまとまりは破綻とまではいかなくても、かなり難しい面が出てくるはずだ。

4343を、スピーカーシステムとして仕上げるにあたって、
多少音を甘くすることで音の鮮度感やストレートさは犠牲にしても、
トータルとしてのまとまりを重視したのではなかろうか。

このことが、4343が、素性的にはいいものをもつアンプであれば、
普及価格帯のプリメインアンプでもそこそこ鳴ってくれたことにもつながっているはずだ。

Date: 6月 1st, 2010
Cate: 「介在」

オーディオの「介在」こそ(その2)

瀬川先生は、音と風土の関係について、熱心に語られていた。

この「風土」ということばには、「風」がある。
「風」がある言葉で、音を表現することに関係している、もしくは使えそうな言葉をひろっていくと、
風景、風格、風潮、風圧、風合、風韻、風雅、風趣、風情……、といったところだろう。
風琴もある。いうまでもなくオルガンのことだ。

音には「風」の側面ももっているように、感じている。
そう考えていくと、音圧ではなく風圧、地響きではなく風を、
部屋の中に起こすことがオーディオにおける低音再生のコツ、というよりも真髄のようにも思えてくる。

音と風土ということでは、JBLの音について、
以前はよく、カリフォルニアの「空」を思わせるようだ、という表現がよく使われていた。
なぜ「空」だったのかと考えれば、写真で、そのイメージを視覚的に伝えることが容易だからではないだろうか。

だが、JBLの音は、カリフォルニアの「風」を感じさせる、というほうが、より本質的な表現にならないだろうか。
カリフォルニアの「風」を感じさせるように鳴ったとき、
JBLのスピーカーは本領発揮をしているといえるような気もする(カリフォルニアに行ったことはないけども)。

ここに、音と風土の関係性があるといえるのではないだろうか。