Archive for category テーマ

Date: 1月 6th, 2025
Cate: 新製品

THORENS TD124 DD(その6)

トーレンスも、TD124のサブプラッターに歪みが発生することはわかっていたはず。
だからこそ、TD124の復刻モデルではダイレクトドライヴにしたのだろう。

トーレンスの現行の、他のモデルはベルトドライヴである。
TD124だけダイレクトドライヴなのは、
サブプラッターを廃したかったためのはず。

TD124ときくと、真っ先に思い浮かべるのは、何か。
あのスタイルという人、
ベルト・アイドラードライヴという人、
あの時代にクイックスタート・ストップを可能にしていたこと、
このことを挙げる人といるし、
現在のトーレンスのスタッフが、TD124を復刻するにあたってのこだわりも、
このクイックスタート・ストップの機能なのではないのか。

オリジナルのTD124の駆動方式やベルトドライヴでは、
サブプラッターを追加しなければ難しい。

けれどプレス加工でのサブプラッターならば、
オリジナルのTD124のそれと同じように歪みの問題を完全に払拭できない。

最近では金属削り出しのサブプラッターもあるようだが、かなり高価のモノだろう。

とにかくサブプラッターなしでのクイックスタート・ストップの実現には、
ダイレクトドライヴということになる。

Date: 1月 6th, 2025
Cate: 新製品

THORENS TD124 DD(その5)

トーレンスのTD124で、いちばん気になるのはサブプラッターの歪み(反り)である。

facebookにコメントがあったが、それもこのサブプラッターの歪みについて、であった。
コメントをされた方の周りでも、TD124を使っていた人はいたけれど、
皆、サブプラッターの歪みゆえに手放された、とのこと。

そうだろうと思う。
どんなにメインプラッターの精度が高くても、
レコードと接するサブプラッターに歪みがあれば、
レコード再生時、反っているレコードをかけているのと同じことになる。

そのことを気にしないのであればいいけど、レコードの反りによって生じる再生上の問題、
これはどうすることもできないし、音への影響はとても大きい。

私は気にしない──、といって無視できることではない。

今回、私が整備したTD124も、サブプラッターに歪みがある。私はそれほど数多くTD124の実機を見ているわけではないが、
歪みのないサブプラッターの個体とは出合っていない。

Date: 1月 6th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十二夜(JBL 4343 + Goldmund Mimesis 9.2)

今日、8日のaudio wednesdayで使うゴールドムンドのMimesis 9.2を搬入してきた。
当日だと、JBLの4343の搬入もあるし、
時間的にも重量的にも大変なことはわかっていたので、前々日搬入にした。

Mimesis 9.2を貸してくださるひとのとこらから狛江までの移動で思っていたのは、
フロントパネルにあるハンドルの冷たさだった。

しばらく鳴らしていない(電源も入れられていない)うえに、
部屋の片隅に置かれていて、この時期ということもあって、
予想していた以上に、筐体が冷え切っていた。

Mimesis 9.2のハンドルはかなりボリュウムのあるつくりだから、
一度冷えてしまうと、すぐにあたたまることはない。

移動のため持っていると、重さよりも手が冷たい方がちょっとつらかった。

4343を、この時代のゴールドムンドのアンプで鳴らした音は聴いたことがない。
ステレオサウンドにいたころは、薄型のセパレートアンプのからだった。

スイスフィジックスのアンプをベースにしていたモノで、
その音を聴いて、
スイスのエスプリ(ソニーのブランドのこと)という印象を持ったものだった。

その後、ゴールドムンドのアンプを聴いたのは、早瀬文雄さんのリスニングルームで、スピーカーはアコースティックエナジーのAE2だった。

この時はMimesis 8だった。クレルの同時期の、同価格帯のアンプも一緒に聴いている。

Mimesis 8からクレルにかえた音に二人でびっくりしていたことを思い出す。
この時は、クレルが良かった。
Mimesis 8に戻す気も起きないほど、クレルが良かった。

にも関わらず、今回はゴールドムンドで鳴らしたい、と思ったのに、
特に理由があるわけではない。

でも鳴らすまでもない、とは思わなかった。
そう思っていたら、わざわざ運んだりはしない。

とにかく聴いてみたい(鳴らしてみたい)と思ったから、
借りてきたわけだ。

どんな音で鳴るのか、想像できるところとそうでないところがある。
当日の音がどちらに振れるかは、鳴らして初めてわかる。

Date: 1月 5th, 2025
Cate: 新製品
1 msg

THORENS TD124 DD(その4)

昨年暮れは、動かなくなったトーレンスのTD124を診てほしいと頼まれたこともあって、
TD124についてあれこれ検索していた。

有益な情報は特に得られなかったけれど、
TD124は、こんなに神格化されているのか、と驚いていた。
TD124だけでなく、ガラードの301も神格化されていると感じたが、
私が見た範囲ではTD124のほうが、すごかった。

こういう場合、すごかったではなく、ひどかったとした方がいいとは思ったが、
そうすると、その「ひどかった」だけに反応して、
301よりもTD124がひどいのか──、
そんな捉え方をする人がいるので、すごかった、にしておく。

今回、整備して、確かにTD124はよく出来たプレーヤーだと改めて実感したが、
だからといって、神格化するのはどうだろうか。

あれをやってはいけない、とか、こうしなければ本来の音が得られない、とか、
それらのことを、私は神格化と捉えた。

いいかげんな整備のTD124や301を、やっぱりいいですね、と評価するのは論外だし、
きちんと整備することは大事なことだが、
神格化してしまうと、畏れおののいてしまう人も出てくる。

正当な評価とは、神格化することではない。

Date: 1月 5th, 2025
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その52)

多様性。
(その51)でも、この書き出しだ。

オーディオの多様性について、ではなく、
スピーカーの多様性について考えて、
それを文字(言葉)だけで伝えるには、どうしたらいいのだろうか。

オーディオ雑誌が、スピーカーの多様性をテーマにした記事をつくる。
さまざまな国の、さまざまな価格帯の、
さまざまな大きさの、さまざまな方式のスピーカーを勢揃いさせて──、
このやり方で、スピーカーの多様性を語り、読み手に伝えられるだろうか。

やれる、とは私は思わない。
多様性を考慮することは、バランスよく取り上げることだろうか。

そう考えるのであれば、難しいことではないけれど……。

私は、中心となるスピーカーをひとつしっかりと据えた上で、
他のスピーカーについて論じていくしかない、と考える。

結局、このことは、瀬川先生が昔からやられていたことだ。
「続コンポーネントステレオのすすめ」を読んでほしい。

JBLの4343が、まずある。
だからこそ、他のスピーカーの特徴が浮き上ってくる。

瀬川先生だから4343なのであって、
人が変われば、4343が他のスピーカーになる。

Date: 1月 4th, 2025
Cate: ディスク/ブック

アストル・ピアソラ 闘うタンゴ 完全版

斎藤充正氏の「アストル・ピアソラ 闘うタンゴ 完全版」が、
青土社から、ようやく出版される。

改訂版ではなく、完全版。待ちに待った一冊。

Date: 1月 3rd, 2025
Cate: 新製品

THORENS TD124 DD(その3)

トーレンスのTD124は、どうして「124」なのか。
おそらくだが、12インチのターンテーブルプラッターに、
4スピードだから、だろう。

TD124は、33 1/3と45回転の他に、78回転と16回転もついている。

TD124 DDは、どうだろうか。
33 1/3と45回転の2スピード。

現在のトーレンスが、
TD124という型番にこだわりたい(すがりたい)のは、
わからないわけではないが、
ならば──、と思うところがありすぎる。

Date: 1月 2nd, 2025
Cate: ディスク/ブック

Sylvia Sass sings Dramatic Arias(その1)

「清らかな女神よ」(Casta Diva, カスタ・ディーヴァ)を、
最初に聴いたのはマリア・カラスではなく、シルヴィア・シャシュだった。

あのころ、シルヴィア・シャシュは「マリア・カラスの再来」と言われていた。
デッカから二枚、アルバムが出ていた。

バックが青のアルバムと赤のアルバムだったので、
勝手にシャシュの赤盤、青盤と呼んでいた。

青盤のほうは、TIDALやQobuzで聴くことができるのに、
どうしてだか赤盤の方は、どちらにもない。

しかも赤盤の方に、「清らかな女神よ」がおさめられている。

あのころはシルヴィア・シャシュを、マリア・カラスよりもよく聴いていた。
コンサートにも行ったし、そのコンサートがNHK FMで放送されたのを、
ステレオサウンドの試聴室で、
ケンウッドのチューナーとナカミチのカセットデッキでエアチェックもした。

なのにいつしかあまり聴かなくなってしまった。

ここ、二年ほど、TIDALで、いろんな人の「清らかな女神よ」を聴いた。
聴けば聴くほど、マリア・カラスなのか、という想いは強くなくばかり。
そして、シャシュの「清らかな女神よ」を、もう一度聴きたくなった。

CDでは二枚組の廉価盤で出ていたはずだが、買いそびれた──、
というよりも、その頃はシャシュから遠ざかっていた。

聴きたいおもいはつのる一方で、
先程、ヤフオク!で、イギリス盤(もちろんLP)を落札した。

Date: 1月 2nd, 2025
Cate: 新製品

THORENS TD124 DD(その2)

オーディオ機器に関する情報を得るのに、インターネットを無視はできない。

トーレンスのTD124の復活のニュースを見た時は、
昔のメカニズムをリファインしてのモデルか、とほんのちょっとだけ期待したけど、
型番末尾のDDの二文字を見て、すぐにさとった。

TD124をダイレクトドライヴで復活させることの意味、
そんなこと、いまの時代、考えるだけ無駄なことなのか。
そんなふうに思いました。

それでもトーレンスが独自に開発したダイレクトドライヴならば、
期待は持てるかもしれない──、そう思うこともできるわけだが、
インターネットはそんな夢も見させてくれない。

輸入元のPDNのウェブサイトには、TD124のページはないが、
トーレンスのウェブサイトサイトには、もちろんある。

そこにはTD124のモーターの写真がある。
各社の製品に詳しい人ならば、すぐにわかるし、
そうでなくともGoogleで画像検索すると、わかることが出てくる。

Date: 1月 2nd, 2025
Cate: 新製品

THORENS TD124 DD(その1)

トーレンスのTD124のダイレクトドライヴ版のTD124 DDが、
海外のオーディオショウで発表されたのは、数年前だった。

日本に輸入されるのだろうか、と思いながら、日本での続報はなかった。
昨年、PDNがトーレンスを取り扱うことになった。

TD124 DDのトーレンス創立140周年記念モデル、
TD124 DD 140th Anniversaryが140台の限定で発売になる。

不思議なのは、輸入元のPDNのウェブサイトには、
今日(1月2日)の時点では何の告知もないが、
ステレオサウンド 223号の巻末、
それからステレオサウンド・オンラインでは紹介されている。

限定140台のうちの一台を、抽選でステレオサウンドを介して発売されるようだ。

なぜ? と不思議に思う人はいるだろう。
憶測なのだが、
ステレオサウンドからトーレンス創立140周年を記念しての本が出るのかもしれないし、
そのことを絡めてのことなのだろう……。

Date: 1月 1st, 2025
Cate: ディスク/ブック

愛と孤独のフォルクローレ

愛と孤独のフォルクローレ」が、世界思想社から出ているのを、
昨晩知った。

内容説明のところに、こうある。
《個人の物語を愛し、他者の音を聴かず、堂々と嘘を楽しむ…。》

オーディオも、全くそうだと思った。

Date: 12月 31st, 2024
Cate: 1年の終りに……

2024年の最後に

今年は、十数年ぶりに引越しをした。
それから27歳の時に骨折した左膝を、2月に痛めた。
かなり良くなってきたと思っていたら、9月ごろからひどくなってきて、
10月、11月は、けっこう難儀した。
まだ万全とは言えないけど、収まってきている。
後遺症とは、こういうことなのか、と思った。

12月になったら、今度は声が出なくなった。
声がひどくかすれてしまって、人と話すのが辛かった。

最近の飲食店ではタブレットで注文するところが増えてきている。
声がほとんど出ない状態だと、こういう店がありがたいと感じる。
声もようやく出るようになってきたが、それでもまだかすれている。

11月に父が九十になった。その二日後に倒れて入院。病院で年を越す。

そんなふうにばたばたしていたけれど、
今年はaudio wednesdayで音を鳴らせるようになった。
新しい人との出会いもあった。
いい一年だった。

Date: 12月 31st, 2024
Cate: 1年の終りに……

2024年をふりかえって(その17)

別項「2024年ショウ雑感(その13)」で、土方久明氏をオーディオ評論家(仕事人)と書いた。

いまもそう思っている。
それゆえに土方久明氏の書かれたものを、楽しく読んだとか、
面白かったと感じたことはなかった。

いま書店に並んでいるアナログ vol.86で、
フェーズメーションのCM1500が取り上げられている。
土方久明氏が担当だ。

CM1500のことは、信頼できる耳の持ち主から聞いていた。
かなりいい、と聞いているものの、私はCM1500の音は聴いていない。

ステレオサウンド 233号の新製品紹介記事でも取り上げられている。
こちらの担当は小野寺弘滋氏。モノクロで1ページでの紹介。
その文章は、あっさりしたものだ。

一方、アナログでの土方久明氏の文章からは、熱っぽさが伝わってくる。
おそらくだが、土方久明氏は本音で、このCM1500に惚れ込んでいるのだろう。
そのことが伝わってくる。
聴いてみたい、とも思う。

小野寺弘滋氏の文章では、そんな気持は湧いてこなかった。

ステレオサウンドと、音元出版のオーディオアクセサリーとアナログ。
どちらがどうとかは言わない。それでも時々ではあるが、
ジャーマン・フィジックスのHRS1300の記事でも同じことを感じていた。

ステレオサウンドでは山之内正氏、
オーディオアクセサリーは石原俊氏。
別項で、このことは触れているように、
山之内正氏の文章は、CM1500の小野寺弘滋氏の文章と同じだった。

あっさりしたものでしかなかった。
聴いた人が、そこでの音に何か感じるものがなかったのだろうから、
それ以上のことを、その文章に求めたところで肩すかしを喰らうだけだ。

それでもHRS1300の石原俊氏の文章、
CM1500の土方久明氏の文章が、一方にある。

ウエスギのU·BROS333OTLとともに、
今年の新製品で聴いてみたいと思ったCM1500である。

Date: 12月 30th, 2024
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNS = SESか・その23)

ソーシャルメディアを眺めていると、フォローしていない人の投稿でも、
ソーシャルメディア側のおせっかいで表示される。

オーディオのことに関しても、そんなふうにほぼ毎日、何かしらの投稿が表示される。

そんな投稿とコメントを読んでいると、この人は何も確認しないのか──、と思うことがしばしばある。

具体的にどういうコメントだったのかを挙げるのはやめておくが、
製品知識として広く知られていることですら、
そこではなかったことのように語られていて、
おかしな方向に話が進むことが少なくない。

しかもコメントしている人の誰も、そのことを指摘しない。
ならばお前がコメントしろ、と言われだろう。
しようかな、と思いつつも、もういいや、という気持もあって、
何もせずに、ここで触れているだけだ。

これも集合知である。

Date: 12月 29th, 2024
Cate: オリジナル

オリジナルとは(トーレンス TD124のこと)

昨日もトーレンスのTD124の整備で出かけていた。
前回、前々回の時には、見落としていたことを見つけた。

TD124は手前左のスピード切替レバーが、電源のON/OFFを兼ねている。
電源スイッチはレバーの真下ではなく、後方にある。
リレーのようなスイッチがあるわけだが、ここにはスプリングが使われている。

今回のTD124では、このスプリングの下を配線が二本通してある。
この配線の太さの分だけスプリングが湾曲している。

このTD124は一度も整備されていないようで、この配線の通し方も最初から、
つまり工場出荷の時点からのままと思っていい。

TD124の他の個体が、ここのところをどう処理しているのかは、私は知らないが、
どう考えてもスプリングの動きを邪魔している。

最初電源が入らなかった原因のようにも思える。
なので私はスプリングを外して、
配線の通り道を変えて、スプリングを装着。

長年湾曲したままのスプリングなので、完全には真っ直ぐな状態には戻らないが、
それでも結構良い感じにおさまった。

今回、私がやったことはオリジナルの状態をいじったとなるのか。
オリジナル至上主義の人からすれば、
工場出荷の状態を変えてしまったのだから、けしからんこと、となるのか。