Archive for category テーマ

Date: 3月 5th, 2016
Cate: よもやま

妄想フィギュア(その3)

ステレオサウンド 64号にトーレンスのリファレンスを分解、全パーツを並べた写真が載っている。
三つ折りで載っている。

この撮影のことは憶えている。
ステレオサウンドの社屋にある撮影スタジオでは、こういう撮影は無理で、
六本木スタジオで借りて行われた。

約100kgのリファレンスを車に載せて移動。
六本木スタジオ内で分解作業が始まった。
その後パーツを並べていくわけだが、
どういう並べていくか、何度か並べ直し、細かな直しをして決めていく。

ステレオサウンドで働くように約半年ほどの私は、
写真撮影の大変さを、この時知った。
ほぼ一日がかりの作業だった。

このことを思い出して書いているのは、
先日行った「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」に必要な部品を買いに秋葉原に行ったからだ。
新しくなったラジオ会館に、やっと入った。
目的の部品はすぐに購入。せっかく来たので上の階から順に見てまわりながら降りていった。

建て替える前から、こんなふうになっていたラジオ会館だったから、
特に驚きはしないものの、目に入ってくる多くのフィギュアを見ていて、
思いついたのが64号のリファレンスの写真に関することだった。

この写真をフィギュアにできないだろうか、と。
64号の写真と同じに並べて額にいれて飾るのもいいし、
その人なりの並べ方で飾るのもいい。

リファレンスの他にJBLのパラゴンもいいと思う。
パラゴンならば図面のコピーを持っているから、より正確なモノになるだろう。

Date: 3月 4th, 2016
Cate: audio wednesday

第63回audio sharing例会のお知らせ(muscle audio Boot Camp)

4月のaudio sharing例会は、6日(水曜日)です。

今回行った「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」の準備でたいへんだったのは、2441の移動である。
私のところから喫茶茶会記までの移動手段。
車を持っている人ならばなんでもないことだが、
車も免許も持っていない私には、約30kgのモノの移動は、
それが特にスピーカーであるだけにたいへんに感じていた。

「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」が終ったのは23時すぎ。
その後片付けで、喫茶茶会記を後にしたのは23時半をまわっていた。
この時間になると、持ち帰ろうという気が失せていた。
それで後日引き上げにくるということで置いて帰宅した。

今日、思った。
2397をあと一本、それからスロートアダプターの2328を持っていけば、ステレオで鳴らせる。
ということで来月のaudio sharing例会は、
今回モノーラルで鳴らしたスピーカーを左右に分けてのステレオ再生にする。

テーマは”muscle audio Boot Camp”とする。
具体的なことはまだ決めていないが、Boot Campといえる音出しにできればと考えている。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 3月 3rd, 2016
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp

明日(3月4日)は、KK塾の六回目。
一回目から毎回欠かさず行っている。明日も行く。

行くたびに、塾という言葉って、いいな、と思う。
オーディオ塾がやれないものか、とも思う。

audio sharing塾、考えなかったわけではない。
けれど、KK塾と同じ意味で「塾」とつけるのは、ためらってしまう。

塾もピンからキリまでと開き直れれば、
audio sharing塾と恥ずかしげもなく名乗れるのだが……。

昨夜「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」をやっている途中で思いついたのが、
マッスルオーディオ・ブートキャンプ(muscle audio Boot Camp)だ。

思いついただけである。具体的なことはほとんど考えていない。
でも、マッスルオーディオ・ブートキャンプならば、やれることがありそうな気がしている。

Date: 3月 3rd, 2016
Cate: audio wednesday

マッスルオーディオで聴くモノーラルCD(その1)

昨夜(3月2日)は、audio sharing例会。
テーマは「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」だった。

JBLのコンプレッションドライバー2441をダブルで鳴らしたい、というのが元になった企画だった。
ホーンはすでに書いているように、2397。
JBLのカタログではクロスオーバー周波数は800Hzとなっている。

けれど実際には、もう少し下の周波数でもたいていの場合、いける。
ステレオサウンドが1981年ごろ連載していたユニット研究では800Hzの他に、
500Hzさらには400Hzでも試聴している。

JBLのカタログをみればすぐにわかることだが、
コンシューマー用ホーンとプロフェッショナル用ホーンとでは、
同一のモデルであってもクロスオーバー周波数は、前者の方が低く表記されている。

コンシューマー(家庭)とプロフェッショナルが使う現場での音圧の違いが、
このクロスオーバー周波数の違いとなっている。

2397はプロフェッショナル用ホーン。
ならばコンシューマーユースであれば、800Hzよりも低い周波数でもいける。

昨夜は720Hzあたりでクロスさせた。
最初はもっと低い周波数を考えていた。
40万の法則があり、40万の平方根である635Hzあたりを考えていた。

デヴァイディングネットワークは最初からパッシヴ型を考えていた。
コンデンサーと抵抗だけてハイパスフィルターとローパスフィルターをつくる。

12dBのスロープ特性ならばCR型フィルターの二段構成でいける。
設計(というよりも計算)を終えて、秋葉原に必要なパーツを買いにいこうという段階で、
12dBのスロープ特性はやめよう、と決めた。

個人的に12dBのスロープ特性に、あまりいい印象はもっていない。
ならばOPアンプも使いアクティヴ型にしようかとも考えた。

結果的には、6dBスロープの、もっとも簡単なフィルターにした。
720Hzあたりのクロスオーバー周波数で、6dBのスロープ特性。
大丈夫なのか、と思われる人もいるはず。

私も大丈夫かな……、と少しは不安があった。
マッスルオーディオと名づけたぐらいだから、かなりの音量は出すつもり。
JBLのホーンのクロスオーバー周波数は12dBスロープでの値である。

6dBのスロープのフィルターを自作したことある人ならば、
ウーファーをハイカットしても、かなり上の帯域まで聴こえることを体験されている。
私ももちろん体験している。

ウーファーはいい。
6dBのフィルターを使って、大入力でもユニットが壊れることはない。
心配なのはドライバーである。
ゆるやかにしか減衰しない低域信号が入力されて、どこまで耐えられるのか。

安全策としては12dBである。
けれど6dBでやることにした。

Date: 3月 2nd, 2016
Cate: オーディスト, ジャーナリズム, 言葉

「オーディスト」という言葉に対して(その21)

Google 翻訳で audist を日本語にすると、聴覚障害者差別主義者と出る。

私はこれまでオーディスト(audist)を、聴覚障碍者を差別する人、団体、と書いてきた。
意味は同じであるからで、あえて聴覚障害者差別主義者とは書かなかった。

「聴覚障碍者を差別する人、団体」と「聴覚障害者差別主義者」とでは、
目にしたときの印象が違うからである。

意味を知っていても、Google 翻訳で聴覚障害者差別主義者と表示されると、どきっとする。

そして考えたいのは、どうしてオーディスト(audist)という言葉が出てきて、使われるようになったかだ。

Date: 3月 1st, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その22)

田中一光氏の部屋が登場していたのは、「サウンド・スペースへの招待」という連載記事の第23回だった。
「サウンド・スペースへの招待」は、私にとって最初のステレオサウンドとなった41号にも載っている。
42号、43号、44号と「サウンド・スペースへの招待」を読んできていた。

41号といっしょに買った「コンポーネントステレオの世界 ’77」の巻末にも、
「サウンド・スペースへの招待」の筆者、斉藤義氏による「サウンド・インテリアの楽しみ」というページがあった。

カラー16ページに、八つのリスニングルーム(というよりスピーカーのある部屋)が紹介されていた。
 多摩プラーザの家「ナチュラルな空間・ナチュラルな響き」
 清瀬の家「ホワイト・アブストラクト」
 玉川学園の家「くつろぎの城」
 V・ハウス「ビルト・インの手法」
 梶ヶ谷の家「ヨーロッパ的なセンス」
 矢崎さんの家「……しながらの音」
 船の家「サウンド&ヴィスタ」
 「ウィークエンド・サウンド」

「サウンド・インテリアの楽しみ」、「サウンド・スペースへの招待」は、
スピーカーは部屋に置くモノだ、ということを認識させてくれる。

そして「サウンド・インテリアの楽しみ」、「サウンド・スペースへの招待」は、
オーディオマニア訪問記に登場するリスニングルームとは、どこか違う。

その部屋への憧れが、まずあった。
このことをはっきりと感じたのは、ステレオサウンド 45号の田中一光氏の部屋だった。

Date: 3月 1st, 2016
Cate: audio wednesday

第62回audio sharing例会のお知らせ(マッスルオーディオで聴くモノーラルCD)

明日のaudio sharing例会の追加情報です。

今回の試聴機材は喫茶茶会記常設のモノを使います。
CDプレーヤーはラックスのD38u、アンプはマッキントッシュのMA2275でしたが、
ここにMytekのManhattanが加わることに。

Manhattanにはモノーラル出力モードがあり、ステレオCDもモノーラルに変換して鳴らせます。
USB入力もあります。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 2月 29th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その21)

ステレオサウンド 45号の特集(44号から続くスピーカーの総テスト)には、
気になるモデルがほぼすべて載っていた。

KEFのModel 105、スペンドールのBCII、タンノイのArden、アルテックのModel 19、ヤマハのFX1、
そしてJBLの4343。
44号と45号、比較するようなものではないのだけれど、
オーディオに興味を持って一年ちょっとの私には、45号に登場するスピーカーの方が興味深かった。

「フロアー型中心の最新スピーカーシステム」のタイトル通りだな、と思いながら読んでいた。
しかも嬉しいことに、フロアー型、ブックシェルフ型だけでなく小型スピーカーも取り上げられていた。
ヤマハのNS10M、JRのJR149、スペンドールSA1、そしてロジャースのLS3/5Aの四機種が載っていた。

何度も読み返した。
記憶するほどに読んでいた。
カバンの中に教科書とともにステレオサウンドをつねに一冊以上入れていた。
すこしでも読む時間があれば、ページをめくっていた。

ステレオサウンドは次号(46号)でもスピーカーを特集している。
モニタースピーカーについて、だ。
三号続けてのスピーカー特集をくり返し読むことで、
スピーカーとはどういうモノなのか、
どういう存在として認識すべきなのかを学ぶきっかけとなった、といえる。

試聴記を、ただ単にどれがいいのか──、
そんな読み方ではないところでのスピーカー独特の面白さを味わえた。
いまのステレオサウンドは、こういう読み方ができるだろうか、とだから思ってしまう。
もしかすると、そういう読み方を拒否しようとしているのだろうか……。

45号の特集の最後に載っていたのはLS3/5Aだった。
LS3/5Aは、42号のアンケートはがき(ベストバイコンポーネントの投票はがき)のスピーカー欄に、
キャバスのBrigantinとどちらを記入しようかと迷いに迷ったスピーカーだ。
これは別冊「コンポーネントステレオの世界 ’77」での井上先生の組合せの影響からだ。

Brigantinは44号にも45号にも載っておらずがっかりしたけれど、46号に登場している。
読み手の勝手な期待を裏切らないところがあった。

そんなLS3/5Aのページを読み終えて数ページの広告をめくる。
すると、そこにはJBLのHarknessがあらわれる。
田中一光氏のリスニングルームに見事におさめられているHarknessは、
特集よりも印象に残っている記事である。

こういう部屋で音楽を聴ける大人になりたいと、ぎりぎり14歳だった私に思わせた。

Date: 2月 29th, 2016
Cate: audio wednesday

第62回audio sharing例会のお知らせ(マッスルオーディオで聴くモノーラルCD)

3月のaudio sharing例会は、2日(水曜日)です。

昨夜、2397に2328を介して装着している2441を取り外し、
2328のかわりに2329を介して、2441を二発、一本の2397に取りつけていた。

今週の水曜日に行う「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」に備えてである。

以前、別項「趣味のオーディオとしてのカタチ(その1)」でも書いているが、
2397にはカタチとしては2441よりも2421サイズのコンプレッションドライバーの方が、サイズ的にしっくりくる。

音はともかくとして、2397に2441は大きいと感じるからだ。
にもかかわらず2397に、そんな2441をダブルで取りつけると、
オーディオが男の趣味として、オーディオ機器が存在していると、強く感じさせる。

2397+2329+2441×2は、マッスルオーディオといえるカタチをしている。
音は……、水曜日に聴ける。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 2月 28th, 2016
Cate: ステレオサウンド,

賞からの離脱(賞がもたらしたもの)

最初のベストバイの号は35号。1975年6月にでている。
二回目の43号は1977年6月。
つまりベストバイは夏号の企画だった。

49号でState of the Art賞が始まる。
1978年12月に出ている。
State of the Artは途中でComponents of the yearと名称が変更になったが、
冬号掲載の特集ということは変らなかった。

73号(1984年12月発売)で、
ベストバイとComponents of the yearが同じ号にまとめられるようになった。
Components of the yearはいまではStereo Sound Grand Prixと変ったが、
ベストバイといっしょに冬号に掲載されることは30年以上続いている。

そうなったことがステレオサウンドに与えたことのひとつに、
年度の区切りがあると、私は思っている。

一年の締括りとしてComponents of the year賞とベストバイが行われる。
そのことがいいのか悪いのかはあえて語らないが、
ベストバイ、Components of the yearが定着する以前のステレオサウンドには、
一年の締括りというものがなかった、といえる。

それが73号以降、12月発売の冬号で一年を締括る。
そして3月発売の春号から新しい一年が始まる──。

もうじき春号(198号)が発売になる。
ステレオサウンドのウェブサイトに、どういう内容なのか告知されている。

一年前の春号(194号)のときにも気になっていた。
194号の特集は「黄金の組合せ2015 ベストバイスピーカーを鳴らす最良のアンプを選りすぐる」、
198号の特集は「タイプ別徹底比較! ベストバイスピーカー 19モデルの魅力」。
どちらにもベストバイスピーカーの文字がある。

つまりは前号(冬号)の特集であるベストバイの結果を受けての企画である。
198号はまだ発売されていないから内容については触れないが、
ここで冬号が一年の締括りだったことが、崩されようとしていることを感じる。

それが意識的なのか、それともそうでないのかはなんともいえないが、
これから先も春号でベストバイスピーカーを特集にもってくるのであれば、
一年を通じてのステレオサウンドの構成に微妙な変化をもたらすはずだ。

だから、意識的なのかそうでないのかによって、
そこで生じる微妙な変化に対する編集部の対応は違ってくる、ともいえるはずだ。

それから……、この件について書きたいことはまだあるけれど、今回はこのへんにしておく。

Date: 2月 27th, 2016
Cate: 音楽性

「音楽性」とは(映画性というだろうか・その8)

映画は映画館で観ることを前提としている。
映画館のスクリーンは、テレビのサイズよりも大きい。
それもかなり大きい。
いまでこそテレビの大型化は当り前になっているが、
昔のテレビはいまよりもずっと小さなサイズで、映画館のスクリーンはずっと大きかった。

映画館は暗かった。暗い中での大きなスクリーン。
これだけでも茶の間で見るテレビと映画は違う。

さらに音が違う。
昔のテレビのスピーカーは小口径のフルレンジが一発だけだった。

このスピーカー(音)の違いは、テレビとスクリーンのサイズの違い以上の違いともいえる。

これらの違いが生み出すものを、観客は映画と認識するのだろうか。
これだったら映画にする必要を感じない、とか、テレビで充分の作品だ、といったことが言われる。

どの作品とはいわないが、映画館で観ていて、これだったらテレビでもいいかも……、と思うし、
映画館で見損ねた作品をテレビでみて、やはり映画館で観たかった、と思うことは、誰しも経験していることのはず。

いったいどういうところで、そう判断しているのか。
大作だから、ということは関係ない。
スケールの大きさもそうではない。
そうでない作品であっても、映画だ、と感じる作品は多い。
大作であっても、テレビで充分、というものも少なくないから。

結局、精度だと思う。
精度の高いものを、映画だ、と感じるし、
精度の低い、十分でないものはテレビ的と感じるのではないか。

そのことにスクリーンの大きさ、映画館という暗い場所、
テレビとは圧倒的に違う音が密接に関係している、と考えている。

Date: 2月 26th, 2016
Cate: オーディオ評論, ジャーナリズム

オーディオ評論家は読者の代表なのか(主従の契り)

ステレオサウンドについて(その20)」で書いたことを読み返して思ったのは、
瀬川先生がステレオサウンド 44号、Lo-DのHS350の試聴記の冒頭に書かれたこと、
こういうことを書く人はいなくなっている、ということだ。

私は《編集部によって削られることなく》と書いたが、
いまステレオサウンドに書いている人のほとんどは、
ステレオサウンド編集部によって削られる可能性のあることは書かない──、
といっていいだろう。

筆者が編集部の意向をくんで……、ということなのだろうか。
編集部からすれば、そういう文章を書いてくる人のほうが原稿を依頼しやすい、ということになる。

そんなことを思っていたら、
いまのステレオサウンドにおいて、編集部と筆者の関係は、どちらが主で従なのか、と考える。
昔はどうだったのだろうか、とも考える。

なぜ編集部は削るのか。
編集部が削ってしまうのは、クライアントが主であり、編集部が従であるから、といえなくもない。
そうだとしよう。
これは正しいありかたと、削る側の人たちは思っているのか……、ということも考える。

ここで忘れてはならないのは、読者の存在だ。
読者は主なのか、従なのか。

Date: 2月 25th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その20)

ステレオサウンド 44号について、ひとつ書き忘れていたことがある。
特集の「フロアー型中心の最新スピーカーシステム」のテスト機種として、
Lo-Dのブックシェルフ型のHS530が登場している。

この機種の試聴記の冒頭に瀬川先生が、こんなことを書かれている。
     *
 このメーカーの製品は、置き方(台や壁面)にこまかな注意が必要で、へたな置き方をして評価すると、このメーカーから編集部を通じてキツーイお叱りがくるので、それがコワいから、できるかぎり慎重に時間をかけてセッティングした……というのは冗談で、どのスピーカーも差別することなく、入念にセッティングを調整していることは、ほかのところをお読み下さればわかっていただけるはず。
     *
試聴記の1/3ほど、このことに割かれている。
41号から読みはじめた私には、このことがどういうことなのか、その詳細は当時はわからなかった。
なにかあったんだろうな、ということはわかっても、それ以上のことはわからない。

このころ瀬川先生は、私にとってもっとも信頼できるオーディオ評論家だった。
その瀬川先生が、あえて、こういうことを書かれている。
しかも、それが編集部によって削られることなく活字になっている。

いまのステレオサウンド編集部では絶対にありえないことだ。

Date: 2月 25th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その19)

ステレオサウンドを読みはじめて一年もすれば、次号の表紙はなんだろうな、と想像する。
このころはことごとく外れてしまっていた。

45号の表紙もKEFのModel 105だとは思わなかった。
何を予想していたのかはもう憶えていないが、
Model 105が表紙で嬉しかったのは憶えている。

いまはたいてい予想が当る。
毎号当るわけではないが、簡単に予想がつく号が、昔よりも増えてきている。

約40年前の予想といまの予想とでは違っていて当然であるが、
そればかりが表紙になる機種を当てられる理由ではないといっておきたい。

あのころは表紙の予想を含めて、ステレオサウンドを楽しんでいたし、楽しめた。

Date: 2月 25th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その18)

ステレオサウンド 45号の表紙はKEFのModel 105だった。

Model 105は44号の新製品紹介のページに登場していた。
山中先生と井上先生が評価されている。

Model 105のスタイルは、当時テクニクスがさかんに謳っていたリニアフェイズと同様だった。
マルチウェイの各ユニットの駆動中心を揃えている。

KEFがリファレンスシリーズと呼びはじめたModel 103、Model 104とは、
スタイルにおいてもサイズにおいても大きく違っている。
Model 105もリファレンスシリーズのモデルである。

44号の新製品紹介において、井上先生が語られている。
     *
井上 その一つの例をあげると、このシステムの振動板にはベクストレンという合成樹脂系のものが使われていますが、今までの合成樹脂系の振動板の音には一種の固有音めいたものがあったのですね。たとえばヴァイオリンではガット弦であるべきところがナイロン弦になったように聴こえてしまうところといった感じがつきまとっていたのですが、このシステムの場合それが感じられないといっていいと思います。これは大変な技術的進歩だといえますね。
     *
さらに井上先生は、こうもいわれている。
     *
井上 スピーカーを開発する場合、一方には「スピーカーは楽器なり」の考え方──開発・設計する側の一つの主張として感覚的なものを加えて独得な音色をつくり出す──もあるのですが、その痕跡はまったくといっていいほどこのシステムにはないですね。
     *
Model 105は、予価195000円(一本)とあった。
中学生には、これでも買えない金額だが、JBLの4343からすれば、1/3以下の価格だ。

山中先生がいわれているように《非常に理知的なスピーカー》という印象が、
外観からも、ステレオサウンドの記事からも充分伝わってきていた。

KEFのModel 105は、44号を読んで、私がいちばん注目していたスピーカーだった。
それが45号の表紙になっていた。