Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 3月 9th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々続バッファーアンプについての考察)

瀬川先生はLNP2のトーンコントロールを使われていた。
“EQ”スイッチのポジションは、だからINであったはずだ。

少なくともOUT 0dBポジションでは使われなかった、とみていいだろう。
となると、パッファーアンプを追加したLNP2の場合、
片チャンネルあたり四つのLD2モジュールは、NFBのかかり方が違うことになる。

JC2(ML1)の1dBステップの左右独立のレベルコントロールは、
何度か書いているようにラインアンプのNFB量を増減していて、
NFB量による音の変化を聴くことができる。
LNP2でもインプットアンプのゲインを切り替えることで、NFB量による音の違いを耳で確かめられる。

どのポジション(どのくらいのNFB量)が音がいいのかは、人によって違ってくるようで、
私はJC2を使っていたときは最大にしていたが、ここで絞る(NFB量を増やしてゲインを落す)ほうが、
いいという人もいることは知っている。

とにかくNFB量が変れば音は変化する。

LNP2に、NFB量100%のバッファーアンプを追加することで、
LD2へのNFBのかけ方のヴァリエーションが揃うことになる。
これによりLD2の表情は変化していっている。

つまりバッファーアンプを追加することで、LD2の新たな表情が加わるといえるのではないのか。

こう考えていくと、もし瀬川先生がLNP2のトーンコントロールを使われずに、
“EQ”スイッチをOUT 0dBポジションにされていたならば、
バッファーアンプを追加することで、バッファーアンプが二段重ねになってしまい、
バッファーアンプ追加による音の変化をよい方向とは認められなかった可能性も出てくる。

JC2でもフォノイコライザーアンプとラインアンプでは回路構成が違っていた。
国産、海外のコントロールアンプのほとんどが、そうであった。
その中にあってLNP2はすべてLD2というひとつのモジュールだけで構成していた。

この特殊性も、バッファーアンプ追加による音の変化と少なからず関わっている、といえる。

Date: 3月 9th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々バッファーアンプについての考察)

LNP2のアウトプットアンプはトーンコントロール機能をそなえている。
高低音域だけでなく中音域もコントロールできる3バンドのトーンコントロールであり、
このトーンコントロールもNF型のはずだ。

ということはトーンコントロールを使うことで、
この段のLD2にかかるNFB量は変化していく。

LNP2には”EQ”というスイッチがある。
3ポジションで、トーンコントロール機能のON/OFFにあたるINとOUTのポジションの他に、
OUT 0dBというポジションもある。

OUT 0dBのポジションにすれば、トーンコントロールの三つのツマミをフラットにしていても、
アウトプットアンプのゲインに違いがでる。

いいかえればOUT 0dBポジションで使えば、
アウトプットアンプがバッファーアンプということになる。

バッファーアンプとは、buffer amplifierであり、bufferとは緩衝もしくは緩衝装置ということになる。
そしてバッファーアンプのゲインは0dBであることが特徴だ。
LNP2のように他のアンプ段と同じモジュールを使う場合、
100%NFBをかけることで、ゲインを0dB(増幅度:1)にする。

Date: 3月 9th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続バッファーアンプについての考察)

LNP2のフォノイコライザーはNF型である。
つまりNFB量に周波数特性をもたせることで、RIAAカーヴを実現している。

そのため周波数によってNFB量に違いが生じることになる。
仮にLNP2のモジュール(LD2)のオープンループ(NFBをかける前)の周波数特性が20kHzよりも延びていれば、
NF型の場合、1kHzを基準とすれば20Hzでは約20dB、NFB量が少ないし、
20kHzでは約20dB、NFBが多くかかることになる。
20Hzと20kHzとでは、この場合、NFB量に約40dBの違いが生じている。

ただ実際にオープンループの周波数特性が、20kHzまでフラットだったとは、
この時代のアンプという前提に立てば考えにくい。

LD2はオープンループゲインはそこそこ高いはずである。
インプットアンプのゲインは時期によって違うが、40dBまであげることができた。
ということはNFBをかけ40dBのゲインがあるということで、
十分なNFBをかけているのであれば、LD2のオープンループゲインはもっと高くなければならない。

それを裏づけることとして、JC2(ML1)のラインアンプモジュールをLNP2に挿すと、
うまく動作しない、ときいている。
反対にLNP2のモジュールLD2をJC2(ML1)に挿しても問題は生じない、らしい。

ということはJC2のラインアンプモジュールとLNP2のLD2モジュールは、
オープンループゲインがかなり違うのではないか、ということになる。

おそらくLD2のオープンループの周波数特性は可聴帯域のあるところから下降しているはず。
そうなると、周波数によるNFB量は、上に書いたようにはいかず、
20Hzと20kHzにおけるNFB量の違いは、40dBよりも小さな値になる。

フォノイコライザーにつづくインプットアンプは、
NFB量を変えることでゲイン切換が可能になっている、いわゆるフラットアンプである。

Date: 3月 8th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(バッファーアンプについての考察)

LNP2のバッファーアンプ追加による音の変化については、もう少し書いていくが、
それとは別になぜLNP2にバッファーアンプを追加することで、音が良くなる可能性があるのかについて、書いてみたい。

オーディオの常識(それがどういうものかについてもほんとうに書くなのだろう)では、
ゲインが足りているのであれば、アンプの数は少ない方が、音の鮮度、透明感といった面では有利だし、
物理特性の面でも、どんなアンプでも無歪、無雑音ではないわけだから、
アンプの数が増えることで、音が良くなる可能性については、ないといえるし、理由もみつからない。

それでも音が良ければ(良くなれば)、オーディオの世界ではよし、とされるところもあるから、
LNP2にモジュールをもう一組追加してパッファーアンプを通すことにまったく価値・良さを見いだせない人、
瀬川先生のように音質が向上すると認める人がいても、それでいい世界である。

それでもLNP2にバッファーアンプを追加することで、音が良くなる要素はほんとうに何もないのだろうか。

LNP2はフォノイコライザー、インプットアンプ、アウトプットアンプ(トーンコントロール)を、
すべてLD2という同じモジュールで構成している。
パッファーアンプもLD2を使う。

実はこのことが音が良くなる理由につながってくるような気がする。
つまりNFBのかけ方が、すべて違ってくるからである。

Date: 3月 6th, 2014
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(ガラード301との比較・その3)

EMTの930stで聴いた松田聖子のレコードは、
それぞれの演奏者が適切な位置関係で鳴っている、という感じがあった。

松田聖子がアカペラで歌っていたら、
930stとガラードの301を中心としたプレーヤーシステムのどちらがいいのかを判断する時には、
松田聖子の熱心な聴き手ではない私でも、松田聖子の声のみにフォーカスすると思う。

けれどこの時聴いた松田聖子のレコードは、そんなアカペラのレコードではなかった。
(松田聖子にアカペラの曲があるのかも実は知らない)

当然楽器の演奏者が複数いる。
松田聖子は歌手だから、中央に位置しているし、しかも横一列の中央ではなく、
バックの演奏者、という表現がすでに示しているように、
彼らよりもすこし前に位置している。

その上で、松田聖子のバックにそれぞれの演奏者がいる。
この位置関係が、そしてそれぞれの距離関係が、930stで聴いていると、実に適切であるように聴こえる。

実際のレコーディング風景を知っているわけではないから、
930stが提示する松田聖子のレコードでの位置関係が、ほんとうに正しいものかどうかは断言はできない。
それでも930stが示す位置関係を聴いていると、そこに不自然さは感じないどころか、
くり返しになるが、適切な位置関係と感じられる。

そしてこのことと関係して、広いスタジオで歌っている感じが伝わってくる。

Date: 2月 28th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×十・モジュール構成について)

手に入れなかったという、いわば不完全燃焼からの未練もないわけではない。
でも、それよりもずっと強いのは、私にとっての、あの時代のマークレビンソンのアンプは、
すべて瀬川先生と、その文章と深く結びついているということである。

ステレオサウンド 41号の瀬川先生のLNP2、JC2に関する文章。
     *
最近の可変抵抗器に新型が採用されたLNP2やJC2では、従来の製品よりもいっそう歪みが減少し解像力が向上し、音がよりニュートラルになっていることが明らかに聴きとれ、パーツ一個といえども音質に大きな影響を及ぼすことがわかる。レベルコントロールのツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻ることで見分けがつく。
     *
ツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻る──、
このことを確認できたのは三、四年後だった。

熊本に新しくできたオーディオ店にLNP2が置いてあった。
「触らないでください」とは、どこにも書かれていなかった。
それでもこっそりとLNP2のレベルコントロールのツマミを廻してみた。

確かに瀬川先生の書かれていたとおりに、何もついてないかのように軽く廻る。
たったそれだけのことでどきどきしていた時期があった。
まだ音は聴いたことがなかった。

こんなふうにして、
瀬川先生がマークレビンソンのアンプについて書かれたことを確認していくことが始まった。

ようするに私にとって、この時代のマークレビンソンのアンプに触れ、その音を聴くことは、
記憶を喚起すること以上に、記憶そのものといえるところがある。

いわば、この時代のマークレビンソンのアンプは外部記憶なのだろう。
ゆえに未練が断ち切れない、断ち切れるはずがない。

Date: 2月 28th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×九・モジュール構成について)

なぜ、初期のマークレビンソンのアンプへの未練を断ち切れないのか。

私にとって初期のマークレビンソンのアンプとは、
コントロールアンプでいえばJC2(ML1)、LNP2、ML6のことであり、
パワーアンプはML2のことである。

ML2は故障してもまだ修理は可能である。
ただ出力段のトランジスターは他のトランジスターに置き換えられるようだが。

だがコントロールアンプとなると、アンプそのものはモジュール仕様で、
ピッチでがっちりと固められている。
そのため修理とはモジュールを交換することであり、
もうマークレビンソンではLNP2、ML1用のモジュールの製造は行っていない。

マーク・レヴィンソンは、ずっと以前モジュール構成にした理由を、
故障した際に各国の輸入ディーラーや販売店などでいいかげんな修理をされたくないから、と答えている。
モジュールにしておけば、モジュールそのものを交換すれば、ほとんどの故障は修理できる。
モジュールの交換にはハンダ付けの技術も必要としない。

モジュールが製造され続けていればレヴィンソンのいうとおりなのだが、
実際にはモジュールにしたばかりに、ほぼ修理不能状態に陥っている。

いまマークレビンソンの初期のコントロールアンプを買うことには、このリスクがつきまとう。
そういうアンプに対して、いまだ未練が断ち切れないのは、それが記憶に関係しているからである。

Date: 2月 27th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×八・モジュール構成について)

23歳だったから1986年の夏だった。
ステレオサウンドに載っていたある販売店の広告に、マークレビンソンのML6の文字があった。

本ができあがって書店に並ぶ前に、編集部には見本誌と呼ばれるものが到着する。
その見本誌で編集部のわれわれも広告を見る。

記事は自分たちでつくっているから、広告の方が気になるといえばそうだ。
特に何かをさがしているときは、販売店の広告を注意してみる。

ML6がある。
すぐさま、その販売店に電話した。
まだ売れていなかった。

欲しかった。
数日後の休みの日に、その販売店まで出かけた。
目の前にML6がある。

1986年にはML6はすでに製造中止になっていた。
シルバーパネルからブラックパネルになったML6Aが現行製品だった。

ML6がどれだけ売れていたのかはわからない。
あまり売れなかったのかもしれない。
少なくとも1986年当時には、中古でも出ることがほとんどなかった。

だから、やっと現れてくれた、とまで思った。
ローンを組んだ。このころは36回払いまでしかなかった、と記憶している。

いまのようにクレジットの審査がすぐに出てくるわけではなかった。
数日後、その販売店から連絡があった。
審査は通らなかった。

ML6は手に入れられなかった。未練だけが残った。
その未練が、まだ私の中にはあるようだ。

Date: 2月 23rd, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×七・モジュール構成について)

人によって、ティボーのところにあたるアンプの型番、
フランチェスカッティのところにあたるアンプの型番は違ってくる。

どんなアンプをどういうふうに聴いていたのか、
いつの時代に聴いていたのか、どういう出合いをしたのか、
そういった事柄によって、ある人にとってはティボーのところにあたるアンプが、
別の人にとってはフランチェスカッティのところにあたるアンプになっても不思議ではない。

それが、オーディオだと思うからだ。

私にとって、フランチェスカッティのところにあたるアンプの筆頭は、
やっぱりマークレビンソンのLNP2である。
それもオプションのバッファーアンプを追加したLNP2ということになる。

このLNP2が他のどのコントロールアンプよりも性能、音において優れている、とはいわない。
LNP2の音を醒めた目(耳)でみれば、ネガティヴな面も強く感じるところがある。

たとえば同じマークレビンソンのLNP2とML7。
どちらが優れているアンプかと問われたら、ML7と答える。
LNP2とML7との間には、はっきりとしたアンプの進歩というものが感じとれる。

ML7でも、いまでは旧いアンプとなる。
いまはもっともっと新しいアンプはいくつも登場してきている。

そういった新しい、優秀なアンプとML7を比較したら、私だって新しいアンプをとる。
けれど、LNP2と新しいアンプとなったら、新しいアンプがどのアンプかにもよるけれど、
ほとんどの場合、LNP2(バッファーアンプつき)をとる。

どうしてもLNP2をすぱっと捨てきれないところがある。

Date: 2月 17th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×六・モジュール構成について)

五味先生の「オーディオ巡礼」で読める「フランク《ヴァイオリン・ソナタ》」に、
こう書いてあったことを思い出す。
     *
 勿論、こういう聴き方は余計なことで、むしろ危険だ。第一、当時LPを聴くほどの者が、千円程度の金に困るわけがあるまい。疵が付いたから売ったか、余程金の必要に迫られたにせよ、他の何枚かと纏めて売ったにきまっている。しかし、私には千円にも事欠く男の生活が思いやられた。つまりは私自身の人生を、そこに聴いていることになる。こういう血を通わせた聴き方以外に、どんな音楽の鑑賞仕方があろうか、とその時私は思っていた。最近、復刻盤でティボーとコルトーによる同じフランクのソナタを聴き直した。LPの、フランチェスカッティとカサドジュは名演奏だと思っていたが、ティボーを聴くと、まるで格調の高さが違う。流麗さが違う。フランチェスカッティはティボーに師事したことがあり、高度の技巧と、洗練された抒情性で高く評価されてきたヴァイオリニストだが、芸格に於て、はるかにまだティボーに及ばない、カサドジュも同様だった。他人にだからどの盤を選びますかと問われれば、「そりゃティボーさ」と他所ゆきの顔で答えるだろう。しかし私自身が、二枚のどちらを本当に残すかと訊かれたら、文句なくフランチェスカッティ盤を取る。それがレコードの愛し方というものだろうと思う。忘れもしない、レコード番号=コロムビアML四一七八。——白状するが〝名曲喫茶〟のお嬢さんは美貌だった。彼女の面影はフランチェスカッティ盤に残っている。それへ私の心の傷あとが重なる。二十年前だ。二十年前の、私という無名な文学青年の人生が其処では鳴っているのである。これは、このソナタがフランク六十何歳かの作品であり、親友イザイエの結婚に際し祝いとして贈られた、などということより私にとって大切なものだ。
     *
ティボーを新しいアンプ、フランチェスカッティを旧いアンプに置き換えられるのではないだろうか。

「そりゃティボーさ」と他所ゆきの顔で答えるだろう。
──これがオーディオだと、「そりゃ新しいアンプさ」と他所ゆきの顔で答えることが、ないわけではない。
相手によっては、そういうことがある。

でもどちらを本当に残すかとなると、必ずしも新しいアンプであるとは限らない。
五味先生がフランチェスカッティ盤を取られるように、旧いアンプを取ることがある。
それがオーディオの愛し方、とまではいわないまでも、オーディオとのつき合い方というものだと思う。

こういう心情を抜きにして、オーディオを語ったところで、何のおもしろさがあるというのだろうか。

Date: 2月 17th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×五・モジュール構成について)

CD登場以前のコントロールアンプのライン入力の感度は、
CDプレーヤーを接続するにあたっては高いか高すぎることがほとんどである。

CDプレーヤーが投称するまでのライン入力といえば、
チューナー、カセットデッキなどだった。
これらの出力レベルは高いもので1Vで、たいていは1Vよりも低い。
0.5V、0.75Vあたりが多く、もっと低い値の機器も珍しくはない。

CDプレーヤーの出力レベルは2Vと定められている。
つまCD以前のラインレベルよりも二倍以上高い値である。
そのためCD以前に開発されているコントロールアンプでは、
CDプレーヤーを接続すると、ボリュウムをほかのライン入力よりも絞らざるを得なくなる。

このことと、当時のCDプレーヤーのライン出力のアンプは貧弱なものが多い、となぜかいわれていた。
そのためもあって、CDが登場してしばらくしたころのコントロールアンプの中には、
他のライン入力よりもCD入力だけ入力インピーダンスを高く設定しているもの、
それからハイカットフィルターを挿入しているものもあった。

CDが定着してからは、こういう仕様のコントロールアンプはなくなっていったが、
ライン入力に関して、つまりはラインアンプの仕様に関しては、
CD以前と以降とでは異っていることも少なくない。

それならばCD以降に開発されたコントロールアンプを使えば、
ゲイン/レベルの問題で頭を悩ませることもないけれど、
オーディオという趣味は、はいそうですか、と、以前のアンプを切り捨てることができないことも多々ある。

旧いアンプにこだわるのは、新しいアンプを買う予算がないからだろう、という人がいるけれど、
必ずしもそうではない。
新しいアンプには新しいアンプの魅力があることは百も承知だ。
それでもなお、憧れ、思い入れという要素を切り捨てられない人もいる。

Date: 2月 16th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson
1 msg

Mark Levinson JC-2(続々続々・モジュール構成について)

レベルコントロール機能をもつパワーアンプならば、何の苦労もないが、
JC2のゲインの使いにくさで質問された方のパワーアンプはマイケルソン&オースチンのTVA1で、
レベルコントロール機能はない。

TVA1の入力感度/インピーダンスは、0.75V/100kΩであり、
わずかとはいえ入力感度は高い。

JC2もTVA1にも手を加えることなく、どこかである程度の減衰量を得るには、
TVA1の入力のところでポテンショメーター、もしくは固定抵抗によるアッテネーターを設けるしかない。

パワーアンプの入力端子の直前に小さなシャシーにポテンショメーターをとりつけたモノをつくって設置する。
ポテンショメーターにどのメーカーのモノを使うかによって音は変るし、
同じ品種のポテンショメーターでも抵抗値によっても、音は変化するものだ。

一般的には10kΩのものがよく使われる。
20kΩのものでもいいし、50kΩでもいい。
JC2であれば10kΩのポテンショメーターの使用でも問題はない。

これで信号経路にボリュウムがふたつ存在することになり、それぞれのボリュウムは相互関係にあり、
S/N比に影響してくる。

JC2ではすでに書いているように、左右のレベルコントロールのポジションによって音の表情が変化する。
私は+5dBの音が気に入っていて、でもツマミが斜めになるのがいやで、
+5dBにしていてもツマミだけは上を向くようにしていた。

この部分での音の変化も考慮にいれて、ふたつのボリュウムの、最適の位置関係を見つけたい。

Date: 2月 16th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続々続・モジュール構成について)

国産アンプの場合、ボリュウムの位置が8時を示しているならば減衰量は60dBくらいある。
すべてのアンプがそうだとはいえないまでも、大半のアンプはこのくらいの減衰量になっている。

マークレビンソンのJC2のボリュウム周りの表示には減衰量のdB表示はなく、目安程度の数時があるだけ。
LNP2には減衰量がdB表示になっていて、8時の位置では、-25dBとなっている。

もう手元にJC2はないからそのへんは確認できないけれど、
LNP2と同じポテンショメーターを使っていたら、
つまりスペクトロール製を使っていたら、8時の位置はLNP2と同じ-25dBと考えられる。

そうなると国産アンプの-60dBとの差は35dB。
同じ8時の位置でもこれだけ減衰量に差があれば、JC2はゲインが高すぎる、と感じてしまう。

入力感度の高いパワーアンプや出力音圧レベルの高いスピーカーを使っていれば、
もっと絞りたいと思っても、-25dBより先はひじょうにクリティカルですぐに絞りきることになってしまう。

これに関しては日本からの指摘があったのだろうか、
ML6もLNP2も後期のモデルでは8時の位置で-40dBのポテンショメーターに変更されている。

では実際にJC2を使う場合、どう対処したらいいのか。

後期のML6、LNP2に採用された仕様のポテンショメーターが入手できれば、交換するという手がいい。
けれどよほどの幸運がなければ、入手は非常に難しい。
それにJC2に手を加えることになり、そのことに抵抗を感じる方もいるから、
別の対処法となると、パワーアンプの入力のところで絞るしかない。

Date: 2月 16th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続×五・バッファーアンプについて)

なぜ瀬川先生がバッファーアンプを追加したLNP2の音を、「音質が向上した」と評価されたのか。
それを探るには、ステレオサウンド 52号掲載の「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」を読むしかない。

ここにこうある。
     *
 レビンソンは、最初LNP2とJC2という二種類のプリアンプと、MCヘッドアンプしか発売しなかったから、せっかくのLNP2の透明な音質を生かすために、パワーアンプにはずいぶん迷った。エクスクルーシヴのM4をやや長いあいだ聴いているうちにSAEのMARK2500を聴く機会があった。このパワーアンプは、300W+300Wという大出力ながら、それ以前のアメリカの大出力アンプに共通の、弱音での音のにごりや汚れの感じられない点に好感を持ったが、それよりも、LNP2と組合わせたときに、MARK2500の、どちらかといえば手綱をゆるめた感じの低音、それゆえのふっくらした豊かな鳴り方、が、LNPの、というよりレビンソンの本質的に持っている線のやや細い、いくぶん冷たい音質をうまく補ってくれて、総合的にとても良い組合せだと感じた。MARK2500のごく初期のサンプルを知人がいち早く購入してその音の良さは知ってはいたが、決して安くはないので少々ためらっていたところ、本誌特別増刊のアンプ特集号(昭和51年/1976年)の試聴で、その当時気になっていたいくつかのアンプと比較しても、LNP+SAEの組合せに感じていた好ましい印象は全く変らなくて、少なくともわたくしにとっては最良の組合せに思えたので、MARK2500を購入。この組合せが、永らくわたくしの愛機でもあり比較のときの標準尺度ともなっていた。レビンソンからは、やがてML2Lが発表された。聴けば聴くほど、その音の透明でどこまでも見通しのよい感じの解像力の高さや、ひずみ感の全くない音の品位の高い美しさに惹きつけられた。反面、LNPと組合わせたときに、とうぜんのことながらレビンソンの体質そのものとでもいいたいような、いくぶんやせすぎの、そしてどこか少々強引なところも感じられる音を、果して自家用としたときに永く聴き込んでどうなのか、見きわめがつかないまま、購入を見送っていた。わたくし個人には、やはりSAEと組合わせたときの音の豊かな印象のほうが好ましかったからだ。
 昨年の暮に新しいリスニングルームが完成し、音を出しはじめてみると、こんどは残響を長く、部屋の音を豊かにと作ったせいか、SAEの鳴らす低音を、心もちひきしめたくなった。そこで試みにML2Lを借りてきてみると、以前よりは気にならないし、なにしろその解像力の良さはどうしても他のアンプでは及ばない。それでML2L×2も自家用のラインに加えて、ここしばらくは、組合せをときどき変えながら様子をみてきた。
      *
私のなかでは、この文章にある、パワーアンプの選択に関することが、
LNP2のバッファーアンプ追加による音の変化と密接に結びついていく。

Date: 2月 16th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続々・モジュール構成について)

JC2はほんとうにゲインが高いのだろうか。
オーバーオールで51.4dBのゲインは、同時代のアンプと比較してみて高いといえるだろうか。

ステレオサウンド別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の’76年度版の実測値を書き出してみよう。
括弧内の数字は最初の値がオーバーオールのゲイン、後の値がフォノイコライザーのゲインである。

アキュフェーズ:C200X(59.8dB、39.7dB)
デンオン:PRA1000B(41.5dB、39.4dB)
ダイヤトーン:DA-P10(54.1dB、37.2dB)
ラックス:C1010(51.8dB、35.6dB)
パイオニア:Exclusive C3(58.3dB、35.8dB)
ヤマハ:C2(51.3dB、35.2dB)
GAS:Thaedra(61.8dB、41.8dB)
マランツ:Model 3600(60.1dB、39.5dB)
マッキントッシュ:C28(63.8dB、42.5dB)

これらの値をみていくと、JC2のゲインは平均的な値であり、高くないことがわかる。
けれど、実際にJC2を使ってみると、ゲインを高く感じることがある。

コントロールアンプのゲインが適切かそれとも高い(もしくは低い)と感じるかは、
コントロールアンプのゲインだけで決るものではなく、
パワーアンプのゲイン、それにスピーカーの出力音圧レベルも関係してくる。

そしてもうひとつボリュウムの減衰量も大きく関係している。