Archive for category 真空管アンプ

Date: 8月 15th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その6)

ここ数年、ソーシャルメディアで目にすることが増えてきたのが、
球ころがし、である。
真空管は、比較的簡単に交換できる。
それにいくつかの真空管は、複数のブランドのモノが手に入る。

手軽に挿しかえられ、あれこれ試せる(楽しめる)。
その行為を、球ころがしという人たちが増えてきているように感じている。

本人たちは喜々として、球ころがしといっているのだろうが、
球ころがしは、土地ころがしから来ているとしか思えない。

土地を安い時に買っておいて、高くなったら売る。
その投機的行為のなかでも悪質なのを、土地ころがしという。

球ころがしなんて言っている人たちは、
土地ころがしの意味を知った上で使っているのか。
だとしたら、真空管の転売屋だといっているようなものである。

交換して音の違いを楽しんでいるだけなのであれば、
球ころがしなんて表現は使わない方がいい、と思う。

Date: 8月 13th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その2)

単段アンプは回路図を描く必要すらない。
そのくらい簡単な回路である。

だからこそ、試してみたいことがある。
アースに関係することで、少し実験的なアースの配線をやってみようと考えている。

回路がそのくらい簡単だし、部品数もほんとうに少ないから、
試してみたいと考えてきたことを実験するにはちょうどいい存在でもある。

Date: 8月 12th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その1)

別項「ラックス MQ60がやって来た」で書いているように、
50CA10の自作シングルアンプも一緒にやって来た。

電圧増幅管は6AQ8である。
まだ中は見てないのではっきりしたことはいえないが、
オーソドックスな回路構成であろう。

シングルアンプだから、MQ60よりも使用真空管は少ない。
けれど自作ということもあって、シャーシーのサイズはMQ60よりも大きい。

もっと小さく、ぎゅっとした感じにまとめなおしたい、
そんなことを入浴中におもっていた。

使われているタンゴのトランス類はそのまま流用して、
どこまで小さくできるか、とともに、どこまで回路を切り詰めていけるのか。

50CA10の単段シングルアンプに仕上げてみるのもおもしろいじゃないか。
ふとそう思いついた。

単段アンプは、1980年前後に、池田圭氏がラジオ技術に何度か発表されている。
これ以上、部品を削ることができないまでの回路構成である。

ラジオ技術では、他の筆者による単段アンプの製作記事も載った。
そのいずれも入力トランスを必要としていた。

けれど出力レベルの高いコントロールアンプがあれば、入力トランスも省ける。
この入力トランスは汎用のモノではなく、タンゴの特註品が多かったと記憶している。

入力トランスがなければ、さらにアンプのサイズを小さくできるし、
コスト面に関しても、出費が少なくて済む。
私の手元には、GASのTHAEDRAがある。

ラックスにはMQ60を無帰還アンプとしたMQ60Cがあった。
ということは50CA10単段アンプも無帰還でいける。

THAEDRAはもともと8Ω負荷で約3Wの出力を持つ。
50CA10の単段アンプの出力は、自己バイアスにするつもりだから5.5Wほどで、
THAEDRAの出力の二倍弱。
それでパワーアンプと呼べるのか、となると、むしろブースターアンプという感覚である。

手頃なシャーシーが見つかれば、すぐにも完成できそうな回路である。

Date: 8月 11th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その5)

古くからのオーディオマニアの友人と話していて、
マッキントッシュの真空管パワーアンプでどれを選ぶ、という話題になったことがある。

彼はMC275も好きだけど、MC240も捨て難い、という。
その気持はわかるけど、私は、いま買うのであればMC275、と言った。

MC275とMC240、どちらがアンプとして優れているとか、
音が好みに合うとか合わないとか、そういうことではなく、
出力管の安定供給ということで、 MC275を私は、いまならば選択する。

MC275はKT88、MC240は6L6GCである。
真空管全盛時代に製造されたKT88、6L6GCを十分なストックしているという人ならば、
MC275、MC240、好きな方を選べるけれど、
どちらの出力管に関してもまったくストックしていない人ならば、
いまならばKT88のほうが、良質なモノが入手しやすい、というのが、
私がいまならばMC275を選ぶ、という理由だ。

いま流通しているKT88のすべてが良質とはいわないけれど、
PSVANEのKT88は信用できると感じている。

いまのところPSVANEのラインナップに6L6GCはない。

Date: 8月 9th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その4)

ステレオサウンドにいたころ、あるメーカーの人に訊ねたことがある。
その人によれば、修理用の部品にも税金がかかる、とのことだった。
もちろん、それらの部品を保管する場所が必要だし、
部品を劣化させないためにも空調設備も必要になってくる。

製造したモノをいつまでも修理できるようにするのは、
そうとうにコストがかかる、ということだった。

上杉研究所は、ウエスギ・アンプに関しては、ユーザーは心配する必要がない。
素晴らしいことだけれども、これは上杉研究所の規模だから可能だった、ともいえる。

上杉先生は、真空管を十万本以上ストックされていた、と記憶している。
それだけの本数があれば、ウエスギ・アンプに関しては真空管の心配はなくなるけれど、
たとえばラックスの規模となると、そうではない。

50CA10が製造中止になるときに、ラックスは製造元のNECから十万本ほど購入している。
50CA10だけで、この本数である。

十分な数のように思った人もいるかもしれないが、
生産台数の桁が違えば、十万本のストックは底が尽きる。
実際、そうなってしまっているから、50CA10の新品の入手はまず無理である。

ちなみに50CA10を補修部品としてラックスから購入した場合、
1975年時点では、一本1,400円だった。
KT88が9,000円、6336Aが18,000円、EL34が1,200円(いずれも一本の価格)。

Date: 8月 9th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その3)

上杉研究所の広告に、
《もし、一生安心して付き合えるアンプがあるとすれば……》、
というコピーが使われていた時期がある。

1970年代の終りのころである。
広告コピー本文には、こうも書いてあった。
     *
 大げさな言い方ですが、一生安心して付き合えるアンプがあるとすれば、それはどんなものだろうか、そんなことを考えながら、あれこれ試作を繰返しているうちにごく自然に固まったのが、これらの作品です。その意味では,よくもわるくも現代の消耗品的な発想から開発されたアンプとは、全く対照的です。決して新しいとはいえないが、それだけにまた古くもならない。──そんな製品が一つぐらいあってもいいじゃないか。という声に励まされて、商品化に踏み切りました。元はといえば、私自身のために設計したものばかりです。しかし最近では、人様に愛用していただくことの喜びを憶え、正直なところその方に魅せられています。
     *
上杉先生らしい文章である。
このころのウエスギの製品はU·BROS1(コントロールアンプ)、
U·BROS2(チャンネルデヴァイダー)、U·BROS3(パワーアンプ)だった。

U·BROS3はKT88のプッシュプルなのだが、出力は50W+50Wと、やや控えめに抑えられている。
KT88のプッシュプルといえば、マッキントッシュのMC275が75W+75W、
マイケルソン&オースチンのTVA1が70W+70W、ラックスのMB88が80Wの時代だった。

上杉先生は出力よりも製品寿命、真空管(KT88)の寿命を慮っての動作決定といわれていた。
そして上杉先生は、真空管のストックを、
ほぼ一生分といえるだけ確保してのアンプの商品化である。

ウエスギ・アンプには最初から生産台数が限定のモノがあった。
これらのアンプは出力管がやや稀少だったりするために、
メインテナンスに必要な分を確保した上での生産台数の決定であった。

ウエスギ・アンプを買えば、真空管に関しては安定供給してくれる、という安心があった。
だからこその《一生安心して付き合える》なのである。

このことも上杉先生らしい、と思う。
でも、だからといって、他のアンプメーカーに同じことを求めるのはどうかとも思う。

Date: 8月 8th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その2)

パワーアンプから保護回路を取り外した音を、
ステレオサウンド時代に一度聴いたことがある。

もちろんメーカー製の、かなり高額なパワーアンプだった。
保護回路が音を悪くしている──、とは昔から言われつづけている。

だからジェームズ・ボンジョルノは頑なに保護回路をつけなかった。
そのためのリスクもとうぜんあるわけで、
最悪の場合、日本市場から徹底ということだって起りうる。

でも保護回路を外した音を聴いてしまうと、
ボンジョルノが譲らなかったのも理解できる。

売ってオシマイ、という商売のやりかたしかしないオーディオ店であれば、
音さえよければ、というアンプを、ためらいもなく売るであろう。

客も、そのアンプの音に満足していれば、それでも商売といえば商売なのだろう。
けれど、マッキントッシュのゴードン・ガウがいっていた、
「quality product, quality sales and quality customer」。
どれかひとつ欠けても、オーディオの世界はダメになってしまう──。

quality sales(クォリティ・セールス)は志をもつ販売店といいかえてもいい。
志もつオーディオ店は、満足だけでなく安心も、顧客に提供したい、と考えているはずだ。

満足と安心。
保護回路を外したアンプの音は、たしかに満足を与えてくれる。
けれど、安心はその分、というかかなり大きく損われる、ともいえる。

ボンジョルノのアンプが好きな私は、使ってきた。
The Goldも使っていた。

毎日、聴いていれば動作はそうとうに安定していた。
それでも何を思ったのか、何も考えてなかったのかとしかいいようがないが、
というよりも何も考えていなくても、そんなことはやらないのに、
その日は、なぜだかThe Goldの電源が入ったままで、
コントロールアンプの電源を落してしまった。

スピーカーを壊してしまった。
でも、これは完全な私のミスである。

The Goldの肩を持つわけではないし、
ボンジョルノの考えに100%賛同するわけではないが、
きちんと自分でアンプの調子を注意深く見ていけて、
場合によっては故障する前に劣化している部品を交換するくらいのことができれば、
ある程度の安心は、自分でなんとかできる。

とはいえそんなこと面倒だし、自分には無理、という人も少なくない。
そういう安心ではなく、手間いらずの安心。

故障しにくく、故障した際にもスピーカーを巻き添えにせず、
修理に出してもすぐに戻ってくる。
これも大事な安心であり、
このことを大事にするオーディオ店もあるわけだ。

Date: 8月 7th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その1)

ラックス MQ60がやって来る(その7)」にfacebookでコメントがあった。

そのコメントには、
保守球の在庫保有についても配慮してほしい、というメーカーへの要望だった。

ラックスのLX380は、出力管に6L6GCを使っているが、
これはどうもロシア製のようだ。

いまラックスのウェブサイトをみると、
「真空管部品の交換修理について」というPDFが公開されている。

それによると6L6GCの在庫が切れているだけでなく、
今後の入荷予定が見えていないため、出力管に起因する修理は行えない、という内容だ。

おそらくとうぶん続くであろう。

1980年代、ステレオサウンドで働いていたころ、
地方のとあるオーディオ店は、
アンプはアキュフェーズかウエスギしかすすめない、という話をきいている。

どの店なのかも聞いているが、その店がいまもそうなのかはわからないので店名はふせておく。

この店がアキュフェーズかウエスギなのかは、安心して客にすすめられるから、
というのが大きな理由である。

この二つのブランドのアンプよりも音のいいアンプはあるけれど、
まず故障しにくいこと、それから故障した際の対応である。

それにアンプが故障した際に、スピーカーを巻き添えにしない、ということもある。

これらのことが音よりも重要なのか──、と首を傾げる人もいる。

あるオーディオ評論家が、アキュフェーズのラインナップでアンプを揃えられていた。
この人は、ホーン型を中心としたマルチアンプ駆動をやっていた。

この人のところに、あるオーディオ雑誌のえらい人が訪問した。
そのえらい人は、無遠慮に「なぜ、アキュフェーズなんか使っているんですか」と言った。

このえらい人が誰なのか、もちろんそのオーディオ評論家から聞いているから知っている。
確かに、そんなこと、いいそうだな、と思いながら聞いていたわけだが、
このオーディオ評論家がアキュフェーズで揃えているのは、
スピーカーユニットのことを第一に考えて、である。

Date: 8月 2nd, 2022
Cate: 四季, 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と四季)

瀬川先生が、「コンポーネントステレオの世界 ’80」の巻頭で、
こんなことを書かれている。
     *
 秋が深まって風が肌に染みる季節になった。暖房を入れるにはまだ少し時季が早い。灯りの暖かさが恋しくなる。そんな夜はどことなく佗びしい。底冷えのする部屋で鳴るに似つかわしい音は、やはり、何となく暖かさを感じさせる音、だろう。
 そんなある夜聴いたためによけい印象深いのかもしれないが、たった昨晩聴いたばかりの、イギリスのミカエルソン&オースチンの、管球式の200ワットアンプの音が、まだわたくしの身体を暖かく包み込んでいる。
     *
今日は8月2日。真夏の真っ只中。
瀬川先生がこの文章を書かれた時よりも、ずっとずっと暑い夏をわれわれは体験している。

瀬川先生は、ステレオサウンド 52号の特集の巻頭で、こうも書かれている。
     *
せめてC240+TVA1なら、けっこう満足するかもしれない。ただ、TVA1のあの発熱の大きさは、聴いたのが真夏の暑さの中であっただけに、自家用として四季を通じてこれ一台で聴き通せるかどうか──。
     *
TVA1はKT88のプッシュプルで、出力管は四本。
M200はEL34の4パラレル・プッシュプルで、出力管はステレオで十六本。

発熱量はそうとうに違う。
M200をTVA1と同じ真夏の暑さの中だったら、どうであったろうか。

井上先生は、
季節によって聴きたい音楽、聴きたい音が変ってくることについて、よく口にされていた。
真空管アンプの音が聴きたくなるのは涼しくなってきてから、ともよく言われていた。

こんなことを思い出して書いているのは、
いまヤフオク!に、ジャディスのJA200が出品されているからだ。

今日の22時すぎに終了を迎えるが、いくらで落札されるのだろうか──、
そのことよりも、JA200を落札した人は、この暑い暑い真夏の真っ只中、
JA200で鳴らすのだろうか──、ということに関心がある。

JA200はステレオサウンド時代に聴いている。
どのくらいの落札価格が適切とか、そんなことは書かないが、
JA200の発熱量は半端ではない。

KT88の5パラレル・プッシュプルだから、両チャンネルで二十本である。
TVA1の五倍の規模であるし、厳密ではないものの、約五倍の発熱量である。

入札、応札している人たちが東京の人とはかぎらない。
もっと涼しいところに住んでいる人かもしれない。

それにしても、あの発熱量をわかったうえで、JA200を欲しがっているのだろうか。

Date: 7月 28th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その33)

この項を書いてきて、ふと思うのは、
五極管シングルアンプを初心者向きとするのは、
真空管アンプ自作のスタートは、五極管シングルということなのだろう。

このスタートは、なんとなく作りやすい、とっつきやすい、
そんな印象からくるものだろうか。

海外がどうなのかは知らないが、
日本では三極管のシングルアンプ、
それも傍熱管ではなく直熱三極管のシングルアンプが、
ある種の心情的なゴールのように昔から捉えられている。

つまり、この三極管シングルアンプを最初にゴールと設定したうえでのスタートが、
五極管シングルアンプのような気がしてならない。

Date: 5月 26th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その32)

出力管が五極管の場合、
出力トランスの二次側からNFBをかけることが常識というか、不可欠とまでいっていいだろう。

もちろん何事にも例外はあって、
私が初めて聴いた伊藤先生のアンプ、
ウェスターン・エレクトリックの349Aのプッシュプルアンプは、
出力トランスからのNFBはなし、である。

このアンプのオリジナルとなっているウェストレックスのA10も同じである。
こういう例外はあるものの、
伊藤先生の発表されるアンプでも、五極管であればNFBがかかっている。

Stereo35もNFBはかかっている。
NFBがかかっているアンプで重要なのは、
NFBループの面積(サイズ)といえる。

このことは以前に別項「サイズ考」で触れているので詳細は省くが、
出力トランスの二次側から初段管のカソードまでのライン、
初段から位相反転回路、出力段、出力トランスまでの信号経路、
この二つのラインが描く面積を無視しては、
アンプを取り囲む環境が著しくひどくなってきている現代においては、
優れたアンプを作るのは無理だといっておく。

Date: 5月 23rd, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その31)

インターネットのおかげで、Stereo35の写真も、
けっこうな数を見ることが簡単にできる。

Stereo70とStereo35。
型番だけで判断すれば、Stereo70の小型版で、
同じようなレイアウトだと思いがちだが、
意外にもけっこう違うレイアウトである。

細長いシャーシーの中央に電源トランス、
その両側に出力トランス、両端に7247とEL84(二本)が並ぶ。

重量バランスも偏りなく、意外にいい感じのレイアウトである。
ただし、これをそっくりそのままコピーしようとするならば、
電圧増幅管は7247を使うしかなくなる。

ECC83とECC82を使って、という回路では、
それぞれの球のユニットの一つを使わずに余らせることになる。

手持ちの7199を使って、SCA35の回路で作るならば、
Stereo35そのままのレイアウトもすぐに採用できる。

このへんがちょっと悩むところなのだが、
この項のタイトルは無視できない。
私が作るアンプを参考にする人はいないだろうが、
それでもこういうタイトルをつけているのだから、
再現性のあるモノにしたい、という気持はもっている。

結局はECC83とECC82を使ってのStereo35の回路で、
レイアウト的には伊藤アンプのように仕上げたい。

けれどSCA35の電源トランスを使うと、整流管を使用できない。
ダイオードになってしまう。
ならば電源トランスは市販されているモノの中から選ぶか。

そうなるとトランスの外観の統一感がなくなってしまうし、
SAC35の電源トランスの使い道がなくなってしまう。

でも、こんなことにこだわりすぎてしまうと、
いつまでたってもとりかからずに──、となってしまうから、整流管はあきらめる。

世の中には、整流管よりもダイオードだろう、という人が多い。
ダイオードを推す人たちのいうことはわかるのだが、
電源回路において電気的共振を目を向けると、
整流管の使用はデメリットばかりではない。

それに市販のシャーシーを使うのだから、伊藤アンプそっくりになるわけではない。
けれど無線と実験に載っていた6V6のシングルアンプの例もある。

このアンプの仕上がりを参考にしながら、
トランス類、真空管のレイアウトを考えている。

Date: 5月 22nd, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その30)

ダイナコのSCA35では7199という複合管が使われている。
手元にはトランスとともに、7199も取り外したものが1ペア残っている。

とはいえ1ペアだけだから、心もとない。
7199が入手可能かといえば、なかなか難しい。

伊藤先生はEL84のプッシュプルアンプにはE80CFを使われていた。
この球も7199ほどではないが、いまではポピュラーな真空管ではなくなっている。

一台作って、音が鳴ればいい、という感じであれば、
7199が1ペアあるのだから、それでいい、となるのだが、
私の感覚としては、予備用にもう1ペア用意しておきたい。

作った以上は、きちんと使い続けたいからである。
そうなると五極管、三極管の複合管の使用はあきらめるしかない。

シーメンスのEL84のプッシュプルアンプの回路は、
電圧増幅管にはECC83を使っている。
初段で増幅して二段目がP-K分割の位相反転回路である。

位相反転回路といえば、いま書店に並んでいるラジオ技術 6月号に、
位相反転回路についての短期連載が始まっている。

現在の真空管の入手状況を考慮すると、
ECC83を使うことになるのか、と思っていた。

ダイナコには、SCA35と同じEL84のプッシュプルのパワーアンプがある。
Stereo35である。
日本ではStereo70の陰にかくれてしまっている感がある。
私もStereo70の音は聴いているけれど、Stereo35は実物を見たことはない。

このStereo35、SCA35のパワーアンプを独立させたモノととらえがちだが、
電圧増幅段には7247が使われている。

7247も複合管なのだが、五極管と三極管のそれではなく、
ECC83とECC82の複合管といっていい。

7247も入手は難しいが、
これならばECC83とECC82を一本ずつ用意して、
双三極管の内部ユニットを左右チャンネルに振り分ければ済む。

Date: 5月 22nd, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その29)

私としては、初心者ならば最初に作る真空管アンプは、
プッシュプルアンプがいい、と考える。
すでに(その1)で書いていることだ。

私がオーディオに興味をもちはじめたころ(1970年代後半)、
初心者向きの真空管アンプ製作といえば、プッシュプルアンプだった。

EL84(6BQ5)、6F6、6V6などのポピュラーな出力管のプッシュプルで、
電圧増幅管には五極管と三極管をひとつにまとめた複合管、
ECC82(12AU7)、ECC83(12AX7)などの双三極管を使い、
初段で増幅したあとにP-K分割の位相反転段という構成だった。

この構成であれば片チャンネルあたり使用真空管は三本。
出力もそれほど大きくないから出力トランスも大型のモノを必要とはしないから、
アンプ全体もそれほど大きくならずに製作出来る。

電源トランスなどが大型化になれば、それだけ高価になるし、
シャーシーもよりしっかりしたものが必要になるなど、費用はかさむことになる。
それにチョークコイルも省くことができる。

それからシングル用の出力トランスのいいモノは、けっこう少ないし、
それだけ高価だったりする。

とりあえず音が鳴ってくれれば、それでいい──程度の自作であれば、
シングルアンプでもいいけれど、初めてのアンプであっても、
きちんと鳴ってくれる音を求めるのならば、
初心者ならばプッシュプルアンプのほうが好結果が期待できる。

いま手元にダイナコのSCA35から取り外した出力トランスと電源トランスがある。
これらを使って、EL84のプッシュプルアンプを作ろうと考えている。

SCA35のパワーアンプ部そのままの回路でいきたいところだが、
一つネックがある。電圧増幅段の複合管が入手しにくい。

この点が、1970年代後半とは大きく状況が変ってきている。

Date: 1月 8th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その15)

いまも管球式のプリメインアンプは、数社から出ている。
けれど、多くがアマチュアが組む管球式プリメインアンプと同じスタイルといえる。

出来がいいとか悪いとか、そういうことではなく、
メーカー製プリメインアンプらしいスタイルではない、ということだ。

数センチの高さのシャーシーをベースにして、
その上部(天板)に真空管、トランス類を配置していく。

昔ながらの自作アンプのスタイルである。
自作アンプと、つい書いてしまったが、
自作パワーアンプのスタイルである。

このスタイルを、いまではメーカーも採用することが多い。
個人的には多すぎる、と感じている。

ラックスのSQ38のように、フロントパネルをもつ管球式プリメインアンプは、
ほんとうに少なくなった。
管球式プリメインアンプはこれからも登場するだろうが、
フロントパネルをもつ管球式プリメインアンプは、もう絶滅機種かもしれない。

アマチュアが管球式プリメインアンプを作るのであれば、
このスタイルがいちばん手間がかからない。
同じスタイルを、オーディオメーカーもとるのか。

心情的に納得がいかない、といえば、そうである。
それならばプリメインアンプにすることはない、
セパレート型のほうが、よほどすっきりする。

管球式プリメインアンプであるのならば、
管球式パワーアンプに、入力セレクターとボリュウムをつけました的ではなく、
しっかりと管球式プリメインアンプであってほしいだけである。