Archive for category ユニバーサルウーファー

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その13)

スーパートゥイーターとスーパーウーファー、
このふたつは、ワイドレンジ再生にとって有効な手法でありながらも、
実際に取り組まれている方の意識、といおうか、自由度といおうか、
それがスーパートゥイーターとスーパーウーファーとでは捉え方に差異がある、とみえる。

たとえばタンノイのキングダムはスーパートゥイーターにドーム型ユニットを採用している。
システムの中核となる同軸型はコーン型とホーン型は複合形ゆえに、
これまでのスピーカーシステムの構成的にはスーパートゥイーターにはホーン型ユニットとなることが多いし、
それを自然なことだと受けとめられることだろう。
ホーン型でなければリボン型ユニットとなるだろう。
そこをあえてタンノイは、そのどちらでもなくドーム型をもってきたところに、
タンノイ初の4ウェイ・システムのキングダムがうまくいった要因のひとつが感じられる。

スピーカーを、自分でユニットを組み合わせて構築されている方でも、
中域にホーン型ユニットを採用し、それに惚れ込みながらも、
スーパートゥイーターに関してはリボン型ユニットという方も少ないないと思う。
なにもそれは中域がホーン型ユニットの場合にかぎらない。
ドーム型ユニットの中域の上にリボン型という人もおられるだろう。

中域・高域がホーン型ならばスーパートゥイーターもホーン型、
中域・高域がドーム型ならばスーパートゥイーターもドーム型、
このことにとらわれている方はあまりおられないと思えるし、
メーカーのスピーカーシステムをみても同じ方式のユニットで必ずしも統一しているわけではない。

つまりスーパートゥイーターの選択に関しては、自由度を感じられる。
なのにスーパーウーファーに関しては、どうだろうか。

よくいわれている、つまり昔からいわれていることがある。
コンデンサー型のスピーカーにスーパーウーファーをつけ足すのは、うまくいかない、ということがある。

スーパーウーファーについて(パラゴンに関しての余談)

仮想音源について考えると、JBLのパラゴンをマルチアンプで、
デジタル信号処理で3つのユニットの時間差を補整して鳴らすのは、果してうまくいくのだろうかと思ってしまう。

パラゴンではウーファーいちばん奥にある。しかも低音のホーンは曲っている。
もうパラゴンを聞いたのはずいぶん昔のことで、しかもまだハタチそこそこの若造だったため、
音源がどのへんにできているかなんて、という聴き方はしていなかった。

低音の仮想音源は、高音用の075の設置場所のすこし手前であたりにできるのだろうか。
低音のホーンはこのへんでカーブを描いている。

そして中音は中央の大きくカーブした反射板をめざすように設置されている。
反射板も、中音に関しては、左右チャンネルの音が交じり合っての仮想音源となっているだろう。

高音と中音の各ユニットは近くに位置している。

パラゴンの図面を眺めるたびに、いったいどこにそれぞれの音域の音像は定位するのだろうか、と考えてしまう。
考えるよりも、実際にパラゴンを聴いた方が確実な答えがでるのはわかっている。
でも、いまその機会はないから、こうやってあれこれ考えている。

私の予想では、やはり075の周辺にうまくできるような気がする。
だとすると、パラゴンを、いまの時代に鳴らすことの面白さが、いっそう輝きを増す。

Date: 2月 5th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その12)

デジタル信号処理がオーディオ機器の中に取り込まれたことで、
アナログだけの時代では困難だったことも可能になり、しかも価格的にも身近になっている。

エレクトロニッククロスオーバーネットワークに搭載された時間軸の調整がある。
これによりスピーカーの個々のユニット配置の自由度が増した、と一般には言われている。

コーン型ウーファーと大型ホーン型の中高域の組合せだと、たいていホーンの長さの分だけ、
ドライバーの位置は後ろになる。
いうまでもなくウーファーから出た音とドライバーから出た音は、聴き手の耳に到達するまでの距離が異る。
それをデジタル信号処理で補整することができるわけだから、ユニットの配置の自由度が高まる、といわれている。

けれど、この項の(その1)でも書いたように、音源には実音源と、もうひとつ、いわば仮想音源がある。
とくにホーン型、それも大型のホーンになれば、この仮想音源の問題が浮上してくる。

ホーンのどの位置に音像が定位するのか。
たとえば、もうJBLもやらなくなってしまったが、スラントプレートの音響レンズや、
多孔型の音響レンズ(いわゆる蜂の巣状のもの)がホーンの前面についていると、
音響レンズのあたり、つまりホーン開口部あたりに音像はできる。

そういうホーンがある一方でノドの奥に音像ができるものもある。

いまのデジタル信号処理では、この仮想音源の位置までは補整できない。
つまりいかにデジタル信号処理を導入しようとも、仮想音源の位置合せは使い手側に要求される。

音響レンズ付のホーンであれば、ウーファーと同一平面状にマウントされた状態で、
ほぼ仮想音源の位置は揃うことになる。
このままではホーンの長さによってはドライバーの位置がウーファーよりも後ろにくることが多いので、
ウーファーにその分だけのディレイをかければいい。
実際には厳密な距離分だけの時間差の補整ではなくて、最終的には細かな詰めは求められるけど、
デジタル信号処理のメリットがうまくいきるケースといえる。

ノドの奥に定位しがちのホーンでは、ウーファーとホーン開口部を同一平面にしたままでは、
実音源の時間差は補整できても、
仮想音源の位置の補整はできないままなので、物理的な位置合せが求められる。

つまりデジタル信号処理があっても、各ユニットの配置の自由度が増すとはいえない。

Date: 1月 19th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー, 岩崎千明

スーパーウーファーについて(その11)

スーパーウーファーの使いこなしに苦手意識をもっている人は、
実際に確かめたわけではないが、スピーカーの自作の経験のない人かもしれない、と思うことがある。

そのスピーカーの自作も、いきなり2ウェイなり3ウェイといったマルチウェイからとりかかるのではなくて、
最初はフルレンジからはじめて、トゥイーターを追加して2ウェイ、さらにウーファーを追加して3ウェイ、
こんなぐあいに段階を踏んでマルチウェイのスピーカーの自作のことだ。

たとえばカートリッジを交換する、CDプレーヤーを交換する、アンプを交換する、
交換によって生じる音の違いには、エネルギーの総体量の変化は、基本的にはないといっていいだろう。

厳密にいえばワイドレンジのカートリッジもあればナローレンジのモノもある。
アンプにしても、古い古典的な、トランスを多用した管球アンプと、最新のソリッドステートアンプとでは、
やはり周波数特性も違うし、ノイズレベルも異るから、エネルギーの総体量は、決して同じではない。

でも、フルレンジのスピーカーにトゥイーターを足したり、
メインのスピーカーシステムにスーパーウーファーを足すのに較べると、
その差は、ないとはいえないまでも少ない。

つまり上に書いたスピーカーの自作の経験のある人は、エネルギーの総体量の変化に対して、耳が馴れている。
ない人は、スーパーウーファーの使いこなしに対して、臆病になっている、そういう面がありはしないだろうか。

ここから話はズレるけれど、
フルレンジからスタートしたスピーカーに、次の段階としては、
ふつうトゥイーターを追加することが一般的ではないだろうか。

少なくとも、私はそう思っていたし、これは瀬川先生の4ウェイ構想の影響でもあるけれど、
私には、ウーファーを、まず追加する、という発想はなかった。

いま瀬川先生の「」に関連した作業で、
岩崎先生の文章を先日入力していた。

パイオニアのスコーカーPM12Fについて書かれた文章を読んで、岩崎先生らしい、と思った。
     *
これをフルレンジとしてまず使い、次なるステップでウーファーを追加し、最後に高音用を加えて3ウェイとして完成、という道を拓いてくれるのが何よりも大きな魅力だ。
     *
こういう驚きは、気持がいい。

Date: 1月 17th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その10)

メインスピーカーとのあいだの調整がうまくいったときの音は、
メインスピーカーとスーパーウーファーの息が合っている──、
そういう感じの音になる。

具体的にかけば、音楽のフォルティッシモにおいての音の伸びが、
質の良いエキスパンドをかけたように、それまでとはあきらかに違う次元で、
音のエネルギー量そのものが勢いをつけて増してくる。

だから、結局のところ調整にかけるディスクは、ふだん聴きなれているもののなかから、
比較的録音のよいもの、とくにダイナミックレンジがよく録れているものであればいい。

変に低域に耳の注意がいきがちのディスクを、あえて用意する必要はない。
くり返すが、聴きなれているディスクがいちばんいい。

スーパーウーファー側の調整のなにかが、うまいところにおさまっていないと、
なかなか、上に書いたようには鳴らない。

できれば聴きなれたディスクが数枚、
それもジャンルが違っているものがあれば、それらを鳴らしてみる。
音楽のジャンルが大きく変っても、調整がうまくいっていれば、
フォルティッシモでの音の伸びは、それこそめざましいものが聴きとれる。

録音におかしいところがなければ、ほんとうに気持よくなってくれる。

スーパーウーファーを附加することは、スピーカー全体のエネルギー量に大きな変化を加えた、ということだ。
このことを忘れなければ、スーパーウーファーの調整は、そう難しいものではないはずだ。

もっともその先に、さらに進もうというのであれば、また違う難しさが出てくるけれど、
少なくともレベル調整をやっていくうちに、
スーパーウーファーが鳴っていなかった、ということにならない。

Date: 1月 17th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その9)

これも厳密に測ってたとしても、やはり目安にしかならない。
最終的には耳で聴いて、の判断となる。

訊られるのは、結局、このところである。
耳で判断するというが、実際には、どういうプログラムソースを使い、どういうところに注意して聴けばいいのか。

スーパーウーファーの調整だから、最新録音のもので、低域のかなり低いところまで、
ときにはノイズ成分のほうが多くなりがちだが、そういうソースを使った方がいいのか、とか、
楽器編成としては、ベースのソロの優秀録音が、編成の大きなものよりも向いているのか、とか、
注意するポイントとしては、低音楽器の定位なのか、とか。

デジタルディレイの調整がうまくいくと、どういうふうになるのか。
これを、まず考えてほしい、と思っている。

最初の調整としては、まずディレイによる、おおまかな音の変化を実際に聴いてみること。
とにかくディレイをかけていない音、そして距離的にだいたい合っている値の音、
そして思いきりディレイをかけた音、最低でもこの3つのポジションの音を確認すること。

だいたいの距離であわせて、その前後で、0.1刻みで上げ下げする前に、このことをやっておくこと。
もちろん、デジタルディレイの調整経験がすでにあるのならば、省いてもいい。
でも、はじめてディレイを使った調整を行なうのであれば、細かい調整はあとまわしでいい。

クロスオーバー周波数、レベル調整、設置位置の調整、デジタルディレイの調整を、
最初は大胆にいじってみて、時間をかけてすしこずつ範囲を狭めていく。

そうやっていっても、どこが最適なのか。
それがはっきりしない、最適に調整したとしたら、どういう音になるのか、が、つかめない。
そういう話を聞くことがある。

Date: 1月 17th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その8)

サーロジックのSPD-SW1600はライン信号をA/D変換し、デジタルで信号処理をしている。
ここでディレイをかけることも可能だ。

SPD-SW1600のコントロールパネルには、D1というツマミがある。
ここには0.0から1.1までのあいだに、0.1刻みで12のポジションがある。
このツマミの単位は、m。つまりメートル、距離だ。

0.0のポジションではデジタルディレイはかからない。数値を大きくなるほどディレイ量は増えていく。

大まかな調整としては、メインスピーカーと聴取位置までの距離を3mあったとして、
SPD-SW1600と聴取位置の距離が2.7mだとしたら、30cm(0.3m)分、SPD-SW1600にディレイをかける。
ツマミの位置は、0.3に設定するわけだ。

ただし、これはあくまでもおおまかな目安でしかない。
レベル調整同様、こまかな調整が当然要求される。

あくまでもデジタルディレイは0.1刻み、つまり10cmきざみである。だからそれ以上の距離の微調整となると、
ウーファーの設置、もしくはメインスピーカーの設置を動かして、両者の相対的な位置関係を変える必要も出てくる。

まあ、でもたいていはウーファー側を動かすことが多いだろう。

そうやっていっても、距離はあくまでも目安でしかない。
この距離も、メインスピーカーのウーファーの高さと
だいたい同じ位置にSPD-SW1600のユニットがあればいいが、
場合によっては、例えばメインスピーカーが同軸型だったり、小型スピーカーでスタンドの上に設置されていると、
高さ的にもずいぶんの距離の違いが生じている。

この高さの分を含めて、どう距離をはかるか……。

Date: 1月 16th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファについて(その6・続補足)

もちろん、そんな状態であっても、メインスピーカーとスーパーウーファーのバランスはとれる。
ならばそれでいいじゃないか、という声もあるかもしれないが、
この状態では、システム全体のSN比に目を向けると、このままではまずい。

SPD-SW1600のLEDがサーロジックの指定通りに点灯するようにレベル調整することが、
SN比の点でも有利だし、つまりそうすることは、メインスピーカー側のSN比に関係してくる。

メインスピーカーを鳴らすパワーアンプのボリュウムをいっぱいにあげている状態では、
コントロールアンプからの出力レベルも低いわけだ。
これを、パワーアンプのボリュウムで、SPD-SW1600とうまくバランスがとれるまでに絞れば、
その分だけコントロールアンプの出力レベルは、同じ音量を得るにはとうぜん高くしなければならない。

SN比を改善することは、ノイズの量を減らすことだけでなく、
シグナル(信号)のレベルをあげることも重要となる。
もちろんその両方が実現できればそれにこしたことはないわけだが、
どちらか一方だけでも実現できればSN比は向上する。

それに、いまオーディオ機器のまわりには、どんなノイズがあるのかわからないほど、
きっとノイズにあふれた環境といえるだろう。
そういう外来ノイズに対しても、コントロールアンプ・パワーアンプ間の伝送レベルがあがれば、
それだけでもSN比的には有利になる。

パワーアンプにボリュウムがつくことになるデメリットは否定できない。
でも、メリットも、場合によっては生れてくる。

だから、ついている機能は、頭ごなしに否定せずに、いちどは積極的に活用してみたい。

Date: 1月 16th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その6・補足)

メインスピーカーの鳴らすパワーアンプに、入力レベル調整(ボリュウム)がほしい、と書いたけれど、
なかには、そういう余分なものはできるだけ取り払って、
すこしでも音質劣化の原因となるものはなくしてほしいのに……、と思われる方もおられるだろう。

私も、同じように考えていた時期がある。
そうとうボリュウムにいいものを使っていたとしても、この部分での音質劣化を皆無にすることはできない。
それに、いいボリュウムになるほど高価になるわけだから、そんな使わないものをつけるくらいなら、
最初から外した状態で、価格を下げてくれた方がいいし、同じ価格だとしても、ボリュウムがなければ、
その分、他のところにコストをかけることができる。どちらにしても、ボリュウムなんてないほうがいい。

たしかに、バイ(マルチ)アンプにしたり、スーパーウーファーを加えなければ、それでもいいと思う。
でも、サーロジックのSPD-SW1600を使っていて思ったのは、
やはりパワーアンプにはボリュウムがあったほうがいい、ということ。

メインスピーカーを鳴らすパワーアンプにはボリュウムがついていた。
最初、サーロジックを加えたとき、パワーアンプのボリュウムはいっぱいにあげていた。
その状態だと、SPD-SW1600の入力レベルを示す3つのLEDがほとんど点灯しない。

説明書には、緑のLEDが常時点灯するような感じとあるが、
なかなか、この緑のLEDも点灯しない。
ましてフォルティッシモでときどき赤のLEDが点滅するくらいに、とも書いてあったが、
赤のLEDなどまず点滅することはなかった。

メインスピーカー側とスーパーウーファー側との感度の違いが大きすぎたためだ。

ここでいう感度とは、スピーカーの能率だけではなく、
それを鳴らすパワーアンプのゲインを含めてのトータルの感度である。

たとえばメインスピーカーの能率がそれほど高くないものでも、パワーアンプのゲインが高ければ、
パワーアンプとスピーカーをあわせた感度は、意外と高くなる場合もある。

私のところも、この例で、メインスピーカー側の感度をサーロジックよりもやや高めのだったため、
ある程度、両者の感度をそろえる必要がある。

Date: 1月 15th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その7)

このエネルギーの総体量の変化に関しては、
スーパーウーファー側のカットオフ周波数を変化させるときにも注意したいことがらだ。

エレクトロニッククロスオーバーネットワークを用意し、
スーパーウーファー側の高域のカットだけでなく、メインスピーカーの低域をもカットする場合よりも、
私が使っているサーロジックウーファーのように、メインスピーカーはまったくいじらず、という場合には、
スーパーウーファー側のカットオフ周波数を上げていくということは、ウーファー側のレベルをそのままであれば、
エネルギーの総体量はわずかとはいえ、増える方向にいく。
反対にカットオフ周波数を下げていくのであれば、エネルギーの総体量は、こちらもわずかとはいえ減る。

変化させているパラメーターはひとつ(この場合にはカットオフ周波数)なのにもかかわらず、
実際には他のパラメーターも、わずかとはいえ変化しているということ。

だからカットオフ周波数を変化させたら、その音を聴くだけでなく、
必ずウーファー側のレベルもほんのわずか調整した音も聴いてみることだ。

とにかく、いま何をいじっている(調整している)のか、
そのことによって、何が変化するのか。
その変化にともない、変化量は少ないながらもつられて変化するものがないかどうか、
つねにこのことを忘れないようにしたい。

そしてスーパーウーファーの調整で訊かれるのが、ディレイの調整に関して、だ。

Date: 1月 15th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その6)

話をもとに戻せば、ある程度まで、メインスピーカーとスーパーウーファーのレベル調整した、
その先にある微調整では、スーパーウーファーのレベルはそのままにして、
メインスピーカー側のレベルを調整していく、ということだ。

となるとメインスピーカーを鳴らすパワーアンプに、入力レベル調整がほしくなる。
それでメインスピーカーのレベルを上下する。

このとき忘れてはならないのは、メインスピーカーのレベルを調整するということは、
システム全体のエネルギーの総体量も変化しているということ。
厳密には、メインスピーカーのレベルを固定して、スーパーウーファー側のレベルを調整する場合にも、
メインスピーカーでの調整にくらべると、その変化量はわずかとはいえるが、エネルギーの総体量は変化している。

つまり、ここでの調整は、メインスピーカーのレベルを、それまでよりもほんのちょっとあげたとしよう。
大事なのは、レベルを上げる前の音と上げた音を比較しない、ということ。
どちらがいいとか悪いとかは、
エネルギーの総体量(つまり音量)が変化しているときには、判断を誤りやすいからだ。

自分のシステムなのだ。
いついつまでに、音を仕上げなさい、と締切が決っているわけではない。
このへんの調整になると、じっくり時間をかけて、その音そのものを聴くように心がけたい。

メインスピーカーのレベルを変えたら、1週間ほど、その状態で好きなレコードを、とにかく聴くことだ。
馴れてくれば、1週間という時間も、少しずつ短くても、判断できるようになってくるはずだ。

Date: 1月 14th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その5)

ずっと以前、アルテックは、ウーファー(Woofer)のことを、Basic Speaker と呼んでいた。

もっともアルテックのスピーカーシステムは、例外的なモノはごくわずかあるものの、
すべて2ウェイと言い切ってもいい。
そしてウーファー(Basic Speaker)は、クロスオーバー周波数の低いA5で500Hz、
高い方のものでは、同軸型の604では1kHzをこえる。
最低音域から、500Hzから1kHzぐらいまで及ぶ使い方をしているため、
ベーシックスピーカーと呼ぶのも当然のことだが、
それでも単にどこまで受け持っているか、
ただそれだけのことでウーファーをベーシックスピーカーと呼んでいるわけではないだろう。

やはり音楽の土台として低音が、重い意味をもっているから、ではないだろうか。

やはりずっと前の話になってしまうが、日本では中音が大事だといわれた時期があった。
一時期流行ったドンシャリ傾向のスピーカーシステムに対する警句の意味も含まれてのことだとも思うが、
このころ、中音が音楽の土台だという発言もあったときく。

中音は、音楽の土台なのだろうか。

もしほんとうにそうだとしたら、中音を受け持つスピーカーユニットを、ベーシックスピーカーと呼ぶべきだろう。
だが、そう呼ばれたという話は、いちどもきいたことがない。

くどいようだが、音楽の土台は「低音」である。

Date: 1月 14th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その4)

土台(低音)のレベル(大きさ)はいじらず、その上にのる音(メインスピーカー)のレベルを調整する。

これは、なにも珍しい調整方法というわけではない。
無意識であろうと意識的であろうと、スピーカーシステムのレベル調整の低音を基準にして、
多くの人は調整していっているはずだ。

ステレオサウンド 51号に掲載されている「4343研究」のなかでも、
JBLのマルゴリス氏は、4343の各ユニットのレベル調整の方法として、
まず上二つの帯域(ミッドハイの2420とトゥイーターの2405)のレベルを完全に絞り切って、
ウーファー(2231A)とミッドバス(2121)のバランスをとることからはじめている。

これが済んだら、次はミッドハイのレベルをあげていき、バランスをとる。
そしてトゥイーターのレベルを調整。
これで全体のバランスをとったあとに、さらに微調整にはいる、というものだった。

4343では──他のスピーカーシステムもそうだが──、
ウーファーのレベルは調整できない。
だからこそまずウーファーと、その上の帯域を受け持つミッドバス、
このふたつのユニットのバランスをきちんととる、ことからはじめるわけだ。
そして、ウーファーが受け持つ低音は、やはりベーシックな土台でもあるわけだから、
その土台を基準とするのが、あたりまえすぎることである。

よくスピーカーシステムのレベル調整となると、
とりあえず耳につく帯域のレベルコントロールをいじりがちだ。

2ウェイシステムだったら、レベル調整はトゥイーターのひとつのみだから、それでもいい。
でも4343のような4ウェイともなると、レベル調整は3つある。

ただやみくもに、中域が耳につくからと感じて、ミッドハイのレベルを落としていく、
そんなような調整方法をやっていては、対処療法的なレベル調整になってしまいがちだ。

もちろんバランス調整であれこれ苦労して、ノウハウをしっかり身につけているのであれば、
もちろん、どこから調整していってもいいかもしれないが、
それでも基本は低音を基準として、その上に積み上げていくことだ。

Date: 1月 6th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その3)

ときどき耳にするのが、スーパーウーファーを加えたのはいいけれども、
スーパーウーファーの鳴りを目立たせないようにレベル調整をしていって、
どのくらいのレベルで鳴っているのか確かめたくて、スーパーウーファーだけを鳴らしてみたら、
まったく鳴っていなかった……、
スーパーウーファーの電源を落としても、まったく音は変らなかった(つまり鳴っていなかった)……という話だ。

日本人は、……というよりも、日本のオーディオマニアの中には、というべきか、
低音に対して臆病な人が、どうも少なからずいらっしゃる気がする。

低音を出すことは、知的な行為ではない、みたいにとらえられているような気もする。

野放図な低音が、それこそとめどなくドバーッと、つねに鳴りっぱなしだったら困るけれど、
低音はまず出さなければ、始まらない。最初は多少質の低い低音だとしても、まず出すこと。

よく、そんな低音だったら、出さない方が、ずっと透明感のある音になる、ということを口にするひとがある。
はたしてそうだろうか。
それは、ほんとうに透明感(瀬川先生がときおり使われる澄明感、こちらがよりぴったりだ)のある音だろうか。

とにかく調整していったら、スーパーウーファーが鳴っていなかった、そういう失敗をしないためにも、
あるところからはメインスピーカーのレベルで、全体のバランスを整えていったほうがいい。

スーパーウーファーの場合、ときには受持帯域は2オクターヴ以下ということだってある。
それでも、低音は音楽におけるベースである。そのベースの上に構築されるものとしてとらえるのであれば、
メインスピーカーのレベルを調整する、ということを、いちど試してほしい。

スーパーウーファーの追加のために、
専用のエレクトロニッククロスオーバーネットワークを用意したのであれば、そのレベル調整を使えばいいが、
たとえば私のようにSPD-SW1600的なウーファーの場合、
エレクトロニッククロスオーバーネットワークは要らない。

そのかわり、メインスピーカーのレベルを調整するとなると、
メインスピーカー用のパワーアンプには入力レベル調整(ボリュウム・コントロール)がいる。

Date: 1月 5th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その2)

スーパーウーファーを、メインスピーカーにつけ加えたときのレベル設定に関しては、
たいていメインスピーカーのレベルは固定のまま、
スーパーウーファー側のレベルをいじることが圧倒的に多いだろう。

ある程度のバランスにするまでなら、それでもいいと思う。
とにかく大まかなレベル設定がすんだら、スーパーウーファー側のレベルはそのままで、
メインスピーカー側のレベルを変えることで、バランスを追い込む方が、私はいいと思う。

私はスーパーウーファーにSPD-SW1600を使っている。
これには入力レベルと出力レベルの両方をそれぞれ調整できる。

入力レベルには3つのLED(緑、黄、赤)があり、取扱説明書によれば、常時緑が点灯し、
フォルティッシモにおいて赤が点滅するように調整しろ、とある。
そしてSPD-SW1600の全体のレベルは出力レベルのツマミで調整する。

だから、よく聴く数枚のディスクを、ふだん聴く音量で入力レベルをまず調整し、
メインスピーカーに対してのバランスを出力レベルのツマミで調整していく。
これでかなりのところまで追い込む。

そのあとはしばらくいじることなく聴き続ける期間をとる。
それは一週間であったり、一ヵ月であったり、人によってそのへんは変ってくるだろう。

とくに大きな問題が生じなければ、そういう期間をはさんだあとで、
さらにメインスピーカーとのバランスを追い込む。
このときはSPD-SW1600の出力レベルのツマミをいじってもいいわけだし、
たぶんSPD-SW1600的な構成のウーファーを使われる人ならば、そうしてしまう。

でも、ここからはできればメインスピーカー側のレベルを変えることで、
全体のバランスの細かい調整をしていく。
そのためにはメインスピーカーを鳴らすパワーアンプに、入力レベル調整がついていた方がいい。