Archive for category オーディオマニア

Date: 4月 18th, 2019
Cate: オーディオマニア

平成をふり返って(その3)

スマートフォンが普及し出したのは、いまから十年も経っていないころからである。
なので平成の終りの三分の一ほどのことではあり、
スマートフォンがなかった平成のほうが長かったのは頭ではわかっていても、
平成という元号の三十年は、電話のパーソナル化の時代だったように感じる。

昭和の終りごろに登場した携帯電話は、肩から下げるタイプで、大きく重かった。
高価だったから触ったことはないが、
一度だけ駅のホームで話している人をみかけたことがある。

料金は高かったはずだ。
その人は「これから帰ります」と手短に話して通話を切っていた。
これが昭和の携帯電話だった。

昭和の時代、電話は一人一台というモノではなかった。
一家に一台というモノだった。

それがいまでは掌におさまるサイズで、
この進歩は真空管式ラジオがトランジスター式ラジオにかわり、
さらにIC化されカードサイズになっていったのをはるかに超えている。

私が通っていた小学校には、教室に真空管式のラジオがあった。
もちろん飾りではなく、いちおう動作していた。

私が通っていたころに創立百周年をむかえるくらい古くからの学校だから、
設備も、このラジオの例のように部分部分で古かった。

なにか特別な放送だったのだろう、
皆でラジオを聞こうということになったが、ほとんど使っていない古いラジオゆえに、
うまく受信できない。

誰かがラジオから出ているアース線の先端を口にくわえた。
するとそれまでノイズに音声が埋もれていたような受信状態がかなりよくなって、
音声が聞き取れるようになった。

そんなこともあった。
それがいまやスマートフォンで、そんなことをせずにノイズなく聞ける。

携帯電話とともにインターネットもパーソナル化されていった結果といえよう。
インターネットのパーソナル化で思い出すのは、
1999年の、東芝クレーマー事件と呼ばれる出来事だ。

Date: 4月 17th, 2019
Cate: オーディオマニア

平成をふり返って(その2)

西荻窪にはつねというラーメン店がある。
良く知られている店だ。

ステレオサウンドにいたころ、西荻窪に住んでいた。
会社の帰りや行きに、
オーディオ評論家のところに資料を届けたり、原稿を受けとったりするのに便利ということもあっての、
西荻窪という選択だった。

私がいたころのステレオサウンドは10時出社18時退社だった。
忙しい時期は無理だけど、残業のない時期は、18時ぴったりに会社を出れる。

そのころのはつねは19時閉店だった(いまは17時閉店)。
寄り道することなくまっすぐ西荻窪を目指せば、19時の閉店に間に合う。
それに、いまのように行列もなかった。

はつねの閉店に間に合う時期には、週二回は行っていた。
三回の時もあったほどに気に入っていた。

西荻窪を離れてからは足が遠のいた。
それに行列店になってしまったし、閉店の時間も早まった。

ここ数年、思い出して行っている。
今日も17時になんとか間に合った。
最後から二人目の客になった。

店の雰囲気は、昔とほとんど変らない。
以前は七席あったと記憶していたが、いまは六席である。

私の分が出来上るまでの待ち時間、気づいたことがある。
満席だった客、誰もスマートフォンを触っていないことに気づいた。

食べている人はもちろんだが、待っている人誰もスマートフォンを触っていない。
私は昔と同じように店主がつくるのを眺めていた。

途中で、私のあとに入ってきた本日最後の客となった人がスマートフォンを取り出すまで、
はつねの店内は昭和のようだった。

Date: 3月 31st, 2019
Cate: オーディオマニア

平成をふり返って(その1)

SNSを眺めていたら、今日(3月31日)で、平成が終る、と勘違いしている人が、
少ないながらもいるらしい、ということを知った。

あと一ヵ月で平成が終る。

三十年ちょっと続いた平成は、
私にとっては名刺を持たなかった三十年である。

ステレオサウンドで働くようになって、初めての名刺。
そのこと自体が、とても誇らしく感じられた。

ステレオサウンドは平成元年1月20日付けで辞めている。
とはいっても有給休暇が残っていたので、12月下旬で辞めていた、といっていい。

だから平成になってからステレオサウンドの名刺を使うことはなかったし、
新しい名刺を持つこともなかった。

それでも一度だけ、名刺を作ったといえば作っている。
2002年に、自宅でクラリスワークスで名刺をレイアウトして、
名刺用のプリント用紙に印刷しての名刺だ。

私自身の名刺というより、audio sharingの名刺であり、
川崎先生に渡すための名刺として、であった。

一枚のプリント用紙で、十枚の名刺ができた。
その十枚だけが、平成の時代に作った名刺のすべてであり、
使ったのは川崎先生に渡した一枚だけだった。

「仕事は?」と誰かにきかれると、
「オーディオマニア」とこたえる私だから、これでいいんだろう。

Date: 3月 24th, 2019
Cate: オーディオマニア

つきあいの長い音(その40)

つきあいの長い音は、原風景へとなっていくのか。

Date: 11月 30th, 2018
Cate: オーディオマニア

ドン・ジョヴァンニとマントヴァ侯爵(その3)

昨晩の飲み会で、「本当の恋愛」ということが話題にのぼった。
「本当の恋愛」というのは、どういうことなのか。

よく「本当の恋愛をしたことがあるのか」と問われるシーンが、
物語のなかにあったりする。
実際に、先輩からそういわれたことがある人もいる。

そう問うた人は、本当の恋愛がどういうものなのか、
きちんと説明できるのかどうか。

本当の恋愛……、
そんなことがあっただろうかと思い出すまでもなく、
なかった、とすぐに思っていた。

結局のところ、私にとって本当の恋愛とは、
オーディオよりも常に優先する恋愛なのかもしれない。
だから、本当の恋愛はなかった──、とそんなことを話していた。

Date: 9月 18th, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアと取り扱い説明書(その6)

その2)で、MA7900のUSB端子によるデジタル入力を使うには、
入力セレクターをまわしていけばいいというものではないことを書いた。
バランス入力に関しても同じある。

入力セレクターどれだけまわしても、バランス入力になるわけではない。
ここでまた取り扱い説明書が必要になる。

しかもMA7900の取り扱い説明書は印刷物を綴じているわけではない。
一枚一枚バラバラの状態である。
こうなると、さらに面倒に感じてしまう。

それでもわかりやすい取り扱い説明書ならば、ここにこんなことを書きはしない。
いまではオーディオ機器がどんどん高価になっていっている。
そんな状況では、マッキントッシュのMA7900は、さほど高価とはいえなくなっているのかもしれない。
それでも現実には、数十万円の出費を要する。

そういうオーディオ機器の取り扱い説明書が、これなのか、と少々がっかりもする。
MA7900は、その機能の割にフロントパネルのツマミが少ないのは、
その3)でも書いているように、整理と省略を意図して、のはずだ。

私はMA7900に触れるのはaudio wednesdayで、月一回だけである。
そのくらいの頻度だから、バランス入力に切替えるにしても、
取り扱い説明書が必要になるし、その取り扱い説明書のどこに書いてあるのかをまず探す。
それから取り扱い説明書を見ながら、いじるわけだ。

一回やれば、難しいことではない、のはわかる。
ければ、月一回しか触らない私には、
次に同じようなことをやろうとしたときには、また忘れたりする可能性もある。

さすがに、今回のことで、入力セレクターに関しては、忘れないだろうが、
こんな感じで触っていると、ちょっといらいらする。
いらいらしながら、これはマッキントッシュの製品なのだろうか、と悪態をつきたくなる。

以前のマッキントッシュならば、こんなことを思いはしなかったはずだ。
そういえば、そのころのマッキントッシュの取り扱い説明書は、どんなふうだったのだろうか。
いまごろになって気になっている。

Date: 7月 29th, 2018
Cate: オーディオマニア

夏の終りに(情熱とは・その4)

今日(7月29日)で、2018年のツール・ド・フランスは終る。
昨日の個人タイムトライアルが終了した時点で、総合優勝は決っている。

夏はまだまだ続くが、ツール・ド・フランスは今日で終る。
20年前のツール・ド・フランスのことは、いまも思い出す。

マルコ・パンターニが総合優勝した。
1994年のツール・ド・フランスでのパンターニの走りを知ったときから、
パンターニを応援していたものの、
1998年も前年の優勝者ヤン・ウルリッヒが勝つものだと思っていた。

けれど20年前の7月27日。
悪天候の中のレースで波瀾があり、パンターニが総合首位に立った。

レースの途中で、テレビ画面の下に、誰がトップを走っていて、
後続とのタイム差はどのくらいなのか、そういった情報が表示される。

パンターニが山岳コースでアタックをかけてどのくらい経ったのか、
そこに暫定マイヨジョーヌとしてパンターニの名前が表示された。

心の中で歓声を挙げた。
そんなことを思い出しながら、
パンターニは、山岳のしんどさから少しでも早く抜け出したがっていたことを、
ずいぶん後のインタヴュー記事で知る。

自転車で走ることは楽しい。
速く走れることも楽しい。
けれど、しんどいことから逃れられるわけではない。
登坂ではしんどさは増す。

山岳を誰よりも速く走ることは快感でもあったはず。
パンターニがどう感じていたのかは、いまとなっては確認のしようもないが、
山岳のしんどさから速く抜け出したい──、
という気持と同じ気持をまったく持っていないと言い切れるオーディオマニアはいるのか。

抜け出したい──、
そうどこかで思っているオーディオマニアも、情熱的と周りから思われているのではないか。

Date: 7月 26th, 2018
Cate: オーディオマニア

All Day I Dream About Sound

昨晩、近所を歩いていてすれ違った人のTシャツに、
All
Day
I
Dream
About
Sport
とあった。

adidasのTシャツだった。
adidasの社名の由来は違うのだから、
後付けで、別の意味をもたせたのだろうが、
オーディオマニアも、adidasだな、と思っていた。

All Day I Dream About Soundだから。

Date: 7月 5th, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアの覚悟(その9)

その6)で、
「カールじいさんの空飛ぶ家」(原題:Up)という2099年の映画のことを書いた。

同じく2009年の映画である「スタートレック」でのセリフについて、
別項『「基本」(スタートレック・スポックのセリフより)』で書いている。

いまになってリンクしていることに気づく。

Date: 7月 5th, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアの覚悟(その8)

その1)を書いたのは2014年。
ぽつぽつと書いているテーマだ。

趣味なのだからなんと大袈裟な……、大仰な……、
そう思う人が少なくないであろうことはわかっている。

それでも書いていかなければ、と思っているテーマだ。

Date: 6月 28th, 2018
Cate: オーディオマニア

ただ、ぼんやりと……選ばなかった途をおもう(その2)

五年前に(その1)を書いた。
選ばなかった途について、少し書いた。

いまおもうのは選ばなかった途ではなく、結局は選べなかった途なのかもしれない、だ。

選択肢はある。
つねにいくつかある──、
誰だってそう思っていることだろう。
だから、あの時、違う途を選んでいれば……、と後悔までいかなくとも、
ついそんなことを思う瞬間が、どんな人にだってあるのかもしれない。

選べる途もある、とは思う。
それでも選べない途もあるはず、とおもう。

Date: 4月 19th, 2018
Cate: オーディオマニア

ドン・ジョヴァンニとマントヴァ侯爵(その2)

ドン・ジョヴァンニとマントヴァ侯爵。

真にドン・ジョヴァンニといえる人を、私は知らない。
マントヴァ侯爵といえる人ならば、よく知っている。

その人は、女性との出逢いは受動的ではなく、つねに能動的でありたい、といっていた。
自分の好みにぴったりとあう人を見つけるために、その人はさまざまな努力をしていた。
その人は、自慢気にその努力について、その成果について話してくれた。

つい「成果」と書いてしまったが、
その人の口調は「成果」と思わせるものだったからでもある。

その人の好みは、こまかい。
うるさ型である。

好みがはっきりしすぎているし、
ダメなタイプも、またそうである。

その人はけっこうモテていた。
けれど、その人はけっしてドン・ジョヴァンニではなかった。

だから地獄に堕ちることはなかった。
何度目かの奥さんとシアワセに暮らしているようである。

黒田先生はステレオサウンド 47号掲載の「さらに聴きとるものとの対話を」、
ここでは「腹ぺこ」というタイトルがついている文章で、
マントヴァ侯爵の方法は、
《条件さえととのえば、そんなにむずかしいことではない》とされている。

その人をみていると、たしかにそうだな、と思う。

ドン・ジョヴァンニの方法は、
《この場合、生き方というべきだろう》とされたうえで、容易ではない、と。

ドン・ジョヴァンニは空腹でありえたのだろう、
マントヴァ侯爵は、空腹だったことはないのだろう、
その人もそうなのかもしれない。

Date: 4月 9th, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアと取り扱い説明書(その5)

MA7900には、プリ・パワー分離端子がついている。
1970年代の国産プリメインアンプによくついていた機能である。

プリメインアンプに、コントロールアンプとしての出力と、
パワーアンプとしての入力がついていて、
MA7900の場合、ふたつの端子をジャンパー線で結んでいる。

このジャンパー線を外せば、コントロールアンプとしても、
パワーアンプとしても使えるわけで、
入力セレクターがきかない状態でも、パワーアンプとしては問題ないようだから、
なんとか音を出せるんじゃないか、と考え、
CDプレーヤーの出力を、ポテンショメーターを介して、MA7900のパワーアンプ入力に接いだ。

SOURCE:OFFの状態では、パワーアンプの出力にプロテクションが働いているようで、
音は鳴らない。

それであきらめて、「電源に関する疑問(バッテリーについて・その3)」に書いているように、
CONSONO(コンソーノ)という、桐製Bluetoothスピーカーを聴くことになった次第だ。

いつもは23時30分ごろまでやっているaudio wednesdayだが、
4月4日は一時間ほど早くお開きになった。

帰宅して入浴して、そろそろ寝ようかとしていたところに、
喫茶茶会記の福地さんから連絡があった。

FACTORY RESET、工場出荷時の状態に戻せた、とあった。
福地さんは、入力セレクターのツマミを外したそうだ。
そうすれば入力セレクターのシャフトが露出する。
その状態だと押せたそうである。

ということは入力セレクターが押せなかった、ということは、
ツマミがなんらかの理由で通常よりも押し込まれていて、
押し込むだけの余裕がなかったことになるのだろうか。

ツマミは装着されている。
けれどやや浮し気味での装着らしい。

Date: 4月 9th, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアと取り扱い説明書(その4)

MA7900はトーンコントロールの下にディスプレイがある。
ここに選択したプログラムソースとボリュウムの大きさが表示される。

MA7900は電源コードが接っていると、スタンバイ状態になっている。
4月4日のaudio wednesdayで、スピーカーのセッティングが終り、結線もやった。
そこで電源を入れたら、ディスプレイに、SOURCE:OFFと出た。

通常ならば前回鳴らした際に選択したソース(CDなりPHONOなりが表示される)と、
ボリュウムの大きさが表示される。

あれっ? と思いながら入力セレクターをまわしてみる。
けれど表示は変らない。

レベルコントロールをまわすと、ボリュウムの値は変化する。
けれど入力セレクターはどんなにまわしてもSOURCE:OFFのまま。
当然は音は出ない。

しかもスタンバイ状態を示す赤色のLEDが点灯したままである。
なんらかのトラブルが起きている。

けれど、どんなトラブルが発生しているのかが、掴みにくい。
いろいろやっても改善しない。

取り扱い説明書を出してもらった。
英文のオリジナルの取り扱い説明書と、
それを日本に訳した取り扱い説明書とがあった。

そのどちらにもSOURCE:OFFについての記述がない。
しかたないのでリセットしようということになった。

取り扱い説明書にしたがって、何度もやってみても効果なし。
次に工場出荷時の状態に戻そう、ということになった。

入力セレクターとレベルコントロールのツマミを同時に長押しすることで、
工場出荷時に戻せるわけなのだが、これもできない。

レベルコントロールは押した、という感触があるなのに、
入力セレクターは押せない状態になっている。

最初にMA7900を鳴らしたときには、確かに入力セレクターも押せた。
それはCD2入力をUSB端子に設定したときに、必要な操作だったからだ。
なのに今回は、セレクターの不具合なのか、押せない。

押せない以上、工場出荷時の状態に戻せない。