「基本」(スタートレック・スポックのセリフより)
2009年にJ.J.エイブラムス監督によるスタートレックが公開された。
それまでの10作制作された映画「スタートレック」の直接的続編ではなく、
いわゆるリブート版であるが、
カーク、スポックなどおなじみの人物が登場する(もちろん役者は違う)。
この2009年版スタートレックの終りの方で、
スポックがスポックに語るシーンがある。
なぜスポックがスポックに……、と思われるだろうが、
ネタバレになるので書かないでおく。
スポックがスポックにいう。
「論理を捨て正しいと感じることをしろ」と。
なるほどと感心させられるとともに、
この言葉に省略されているところがある、と思った。
スポックは地球人の母とバルカン人の父をもつ。
地球人とバルカン人のハーフである。
そしてスポックはバルカン星のアカデミーをトップの成績で卒業している。
バルカン人は感情をもたずにきわめて論理的である、という設定なのは、
スタートレックのファンならば誰しもが知っていること。
そういうスポックがスポックに言っている。
徹底的に論理を学んできたスポックに、徹底的に論理を学んできたスポックが言っているわけだ。
同じようなシーンを、日本の番組でも見ている。
NHKの連続ドラマの「あまちゃん」でも、そういうシーンがあった。
主人公の天野アキが映画の主役に選ばれる。
映画のクランクインまで、あらゆることを勉強させられる。
そしてクランクイン当日の朝、
共演者である大女優の鈴鹿ひろ美にいわれる。
「いままで勉強してきたこと、すべて忘れてしまいなさい」と。
論理を捨てろ、勉強してきたことを捨てろ、といわれたからといって、
何ひとつ学ばなくてもいい、ということではない。
徹底的に学んだうえで捨てろ、ということで、
スタートレックのスポックのセリフと「あまちゃん」の鈴鹿ひろ美のセリフは共通しているところがある。