Archive for category マルチアンプ

Date: 4月 11th, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その29)

技術的に判断すれば、スピーカーシステムに内蔵されているネットワークで鳴らすよりも、
ウーファーに専用アンプを用意して鳴らすバイアンプ駆動、
さらには各ユニットにそれぞれアンプを用意する、より徹底したマルチアンプ駆動のほうが、
理想に近いといえば、そういうことになる。

とにかくアンプとスピーカーユニットの途中に、コンデンサーやコイル、抵抗といったモノが介在しない。
よりストレートにアンプがスピーカーユニットを駆動できるのだから。

もちろんアンプの数がふえていくとそれだけ使い手に、より高い使いこなしの技術が要求されることになり、
それが足りなければ、ひどい音で鳴る可能性も高くなっていく。

それでもマルチアンプには、うまくいけば、ネットワークでは鳴らない領域の音が鳴ってくれる。
そんな期待を、使い手は抱く。

すべての点でマルチアンプ(もちろんうまく調整された場合)は、
ネットワークで鳴らすよりもよく鳴るのだろうか。

マルチアンプ・システムがうまく鳴ったとしても、
ネットワークで鳴らしていたときに得られていたもの(良さ)が無くなってしまうことはないのか。

何度も書いているように、この世の中にメリットだけの方式は存在しない。
マルチアンプ、ネットワーク、どちらにもメリットとデメリットがある。

そのマルチアンプのデメリット(苦手とするところ)は、
この項の(その4)で引用した五味先生の文章から読みとれる。

Date: 3月 2nd, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その28)

自由とは──、
そのことについて考えていると、別項「何を欲しているのか」で書いたホロヴィッツの言葉とつながってくる。

何を欲しているのか(その16)」に書いている。

「頭はコントロールしなければならないが、人には心が必要である。感情に自由を与えなさい」

マルチアンプをやるにあたって、その聴き手(使い手)に求められることも、これであるはずだ。

Date: 2月 21st, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その27)

仏教学者の鈴木大拙氏は、「自由」の英訳を、
辞書に載っているfreedomやlibertyではなく、self relianceとした、ときいている。

マルチアンプ化すること、
デジタル信号処理の機器を導入することによって得られる自由は、
self relianceでなければならないはずだ。

Date: 2月 21st, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その26)

パラメータが増えれば、そして多岐にわたれば音の調整の変化幅は拡大する。
それまではスピーカーシステムの内蔵ネットワークという、一種の制約によって、
──それはメーカーによる指定でもあり、主張でもある──、よほど間違った使い方でもしないかぎり、
とんでもない音を出すことは非常に難しい。

けれどその内蔵ネットワークをパスして、ただパラメータを増やしていくだけのマルチアンプでは、
いとも簡単にとんでもない音を出すことができる。

オーディオには、いわば約束事がある。
録音と再生の関係性における約束事であり、
この約束事に則った上での再生の自由度がある。

なのに、ただ自分の好きな音、という、
その約束事から外れたところでの音づくりは、ご本人にしてみれば、
自分の音だから自分の好きにして、自由にして何が悪い、ということになるののだろう。

オーディオの再生には、そういう自由が認められている──。
音量ひとつにしても、実演とはかけはなれた小音量で聴くこともできるし、ものすごい大音量で聴くことも可能だ。
音量の設定ひとつにしても、聴き手の自由が認められている。

パラメータを増やしていくということは、そういう自由を増やしていくことでもある。
考えたいのは、ここでの自由とは、いったいどういう自由であるのか、ということだ。

Date: 2月 19th, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その25)

ルールをもたない、いい歳したオトナがマルチアンプを積極的にすすめる。
マルチアンプにすれば、大幅に音が良くなる、という。

どんなスピーカーシステムであってもマルチアンプで鳴らすことこそが最良の手段でもあるかのようにいう。
いまはマルチアンプにするのも、以前ほど予算を必要としない、ともいう。
だからもっと手軽に手を出しましょう、ともいう。

さらには、いまはデジタル信号処理技術が進歩していて、
アナログ信号処理ではほぼ無理であったパラメータまでコントロールできるようになっている。
そういう機器を併用することで……、ともいう。

マルチアンプにすることで、内蔵ネットワークで鳴らしていたときには変えることが無理だったことも、
簡単に変更・調整できるようになる。
各ユニット間のクロスオーバーに関しても内蔵ネットワークでは変更はまず無理だが、
マルチアンプならばクロスオーバー周波数、遮断特性、その他のパラメータも変えようと思えば変えられる。

デジタル信号処理を行える機器を導入すれば、変更できるパラメータはもっと増える。
そうやって増えていった(増やしていった)パラメータを、そう簡単に自分のものとして調整できるのか。

ご本人は、そういったことの名人でもあるかのように思い込んでいる。
本人だけがそう思い込んでいて、本人の中だけで完結してしまっているのであれば、害はない。

だが、そういう人に限って自己顕示欲が強い。
無責任に、個人サイトやブログでマルチアンプを人にすすめる。

勝手なことを書くならば、実はこういう人こそマルチアンプに手を出すべき人ではない。

Date: 12月 21st, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その24)

10代、20代の若いオーディオマニアならば、自分のルール(制約)をもっていなくとも、
それに関しては何も言わない。

若いときには、むしろルールなど設けずに、
積極的にあれこれ試した方がいいことだってあるからだ。

菅野先生が以前よくいわれていたことに「若さはバカさ」がある。
ある程度の年齢になってみると、
「若さはバカさ」の意味が実感できるようになる。

「若さはバカさ」である。
へんに小さくまとまるよりも、「若さはバカさ」を発揮した方がいい。
そうやっていれば、自分の裡にルールが形作られてくる。

「若さはバカさ」ができる年齢とはいつまでなのだろうか。
20代でなくなったら、「若さはバカさ」といえなくなるのだろうか。

30も後半になると、「若さもバカさ」でもないだろう、
まして40すぎたら、もう若くもないし……、という気持になるかもしれない。

けれど、常に自分よりも年上のオーディオマニアは誰かしらいてくれる。
そういう人がいてくれるあいだは、その人からみれば、
30になろうと40になろうと、50をすぎても、若いということになるのだから、
「若さはバカさ」をどこかに保ったままでもいいのかもしれない、とも思う。

ただ自分よりも年上の人よりも徐々に年下の人が多くなってくる。
そのころから、若い人たちに対して「若さはバカさ」なんだから、というようになるのかもしれないし、
そういう年齢になったときに、自分だけのルールを持っていなかったら、
もう「若さはバカさ」ではすまされない──、そんな気がする。

Date: 12月 20th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その23)

ルールを持たない者は、
どんなスピーカーシステムでもマルチアンプにしてしまうのではないだろうか。

内蔵ネットワークよりもマルチアンプ。
そうすることによる音の変化は、確かに大きい。
良くなったといえるところも、いくつもある。

マルチアンプの可能性を、私は少しも否定はしない。
けれどすべてのスピーカーシステムをマルチアンプにしましょう、
マルチアンプにすれば音が良くなります、
こんなことは私は絶対にいわないし、このことには疑問もある。

マルチアンプにするにふさわしいスピーカーシステムとそうでないスピーカーシステムは、
確実にある。
それをどう見極めるか。
それは、その人次第である。

私がマルチアンプ化しないと考えているスピーカーシステムを、
積極的にマルチアンプで鳴らしたい、と考える人もいることだろう。
それはそれでいい、と思っている。

それが、その人なりのルールに従ってのことであれば、
私が口出しすることではないからだ。

だが、傍から見ていると、そうではない人がはっきりといる。
そういう人が、マルチアンプをすすめている文章を書いてたりすることがある。

Date: 12月 20th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その22)

10数年まえのこと。
ある知人が、ウェブサイトを作っていた。
ウェブサイトには、まず紙の本と違いページ数という制約がない。
当時はまだアナログ回線が主だったから、
あまり大きなサイズの画像をは表示するのに時間を要するということはあったけれど、
それすらもいずれは時間が解決することであったし、事実そうなっていった。
それに時間がかかるといっても、表示できないわけではない。

紙の本とはいくつもの点で異るところはある。
けれど紙の本での制約はあまりなかった、ということもできる。

だからこそウェブサイトをつくっていくうえでは、ルール(制約)を自分で決めておく必要がある。
私は最初にそう考えて、audio sharingをつくっていった。

知人はどうもルールは決めていなかったようだ。
彼のつくるサイトは、見るたびに混沌としていき、
お世辞にも美しいサイトとはいえなかった。

なんでもできるから自由である──、とはいえない。
それは自由ではなく、好き勝手にやっているだけでしかない。
知人は、そのことに結局気づくことはなかったようだ。

このことはウェブサイトについてだけいえることではない。
紙の本でもまったく同じことがいえる。

オーディオにおいても、そうだ。

Date: 12月 19th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その21)

いい音を得るために、なぜルール(制約)を自らつくる必要があるのか。
答は、音の美を得るため、である。

ルールを決めずに、目的のためになんでもやる。
そういう考えでやるのはいい。
私も、一度はそういうことを試してきている。

あれこれやってきた。
やってきた上で、ルールを決めてきた。

別項で書いている、太いスピーカーケーブルを部屋の真ん中を這わせることは、
私にとってはルールに反することになる。
だからやらないだけのことである。

それは私にとってのルールであり、
ほかの誰かは私のルールに従う必要はまったくない。
その人なりのルールに従えばいいだけのこと。

私は私だけのルールに従う。
従うからこそ、マルチアンプ駆動をやるスピーカーとやらないスピーカーとがあることになるわけだ。

内蔵ネットワークを通さずにマルチアンプ駆動にすることで、
音は良くなる、といえる。
もちろん調整をきちんとやれば、という条件はあるものの、
可能性としてはマルチアンプにすることで大きくなることは事実である。

そしてコントロールできるところも増える。
だからこそ、自分なりのルールをもたない者は、
マルチアンプに手を出すべきではない、といいたい。

Date: 12月 18th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その20)

アルテックの同軸型ユニットはデジタル信号処理とマルチアンプの組合せで鳴らしたいのに、
タンノイの同軸型ユニットでは、それをやらないのも、パラゴンと同じ理由である。

だからパラゴンと、これも同じように、
一度だけはデジタル信号処理とマルチアンプの組合せで鳴らしておきたい。
そのときの音をしっかりと耳に刻んだ上で、ネットワークに戻して鳴らすことをやりたい。

ただタンノイを同軸型ユニットを搭載したシステムに、
以前ロックウッドのスピーカーシステムがあった。
一度しか聴くことがなかった、このスピーカーシステムは、
同じタンノイの同軸型ユニットを使いながらも、タンノイのオリジナルシステムとは、
異る趣をもつシステムであり、
このロックウッドのシステムが存在していたからこそ、
バッキンガムやSRMシリーズがタンノイから登場したのではなかろうか。

ロックウッドのMajorを思い出すと、
こういうシステムに挑戦したくなる。
ロックウッドのシステムはエンクロージュアは独自の設計だったけれど、
ネットワークはユニットに付属してくるモノをそのまま採用していた。

もしいまMajor的なスピーカーシステムに挑戦するならば、
ネットワークにはUREIの813のネットワークの設計を採り入れたい。
そうすることでウーファーとトゥイーターの、構造からくる時間差を補整する。

それでうまくいったとしよう。
それでは、その成功したネットワークを、
タンノイの現行システム、たとえばウェストミンスター、カンタベリーのネットワークを、
それに置き換えて鳴らすかといえば、これもまたやらない。

このこともルールである。
私が勝手に決めた私だけが守るルールであるからだ。

Date: 12月 18th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その19)

仮想同軸配置といえるJBLのパラゴン。
このパラゴンを構成する三つのユニットの位置は、
通常のスピーカーシステムでは考えられないほど離れている。

ウーファーがもっとも奥に位置して、
トゥイーター、スコーカーが、ウーファーのホーンの開口部に取り付けられている。

それぞれのユニットから放射された音が、
聴き手の耳に届くまでの時間は、ばらばらといえる。

時間軸が揃っているかどうかの観点からすれば、
はなはだ時代遅れのスピーカーシステムということになる。

このことはいまさら指摘されるまでもなく、以前からいわれていたことであり、
デジタル信号処理が実用化されはじめたころから、
パラゴンの、それぞれのユニットの時間軸を補整する、という試みは、
パラゴンに関心をよせる人ならば、考えていたことであろう。

これはたしかに実験してみたい。
いったいどういう音に、パラゴンの音が変化するのか。
そうやって鳴らしたときが、パラゴンの音の真価なのか。
そういったことを自分の耳で確かめたい。

こういったことは実際にやってみないことにはなにもいえない。
頭の中で考えれば、理想的なパラゴンの鳴らし方ということになるけれど、
実際の鳴らし方として、それが理想的といえるのか、
最上といえるのか、そこまでいかなくともより良い鳴らし方となるのか。

オーディオはやってみないことにはわからないことがある。

もしパラゴンをそうやって鳴らして、ひじょうにいい結果が得られたとしよう。
それであれば、もし私がパラゴンを自分のスピーカーとして鳴らすときに、
デジタル信号処理とマルチアンプの組合せで鳴らすかといえば、
内蔵ネットワークに戻す、と思う。

一度、どこまで鳴るのかを確認しておきたい。
そのうえで、あえてネットワークに戻して、鳴らしはじめる。

なぜかといえば、私にとってパラゴンとはそうやって鳴らすスピーカーシステムであるからだ。
パラゴンを鳴らすうえでのルール(制約)を自分で決めて、
それを守って鳴らすこと。
これはオーディオにとって重要なことだと思っている。

Date: 12月 17th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その18)

アルテックの604に限らず高域用にホーン型を採用した同軸型ユニットであれば、
ウーファーのボイスコイル位置よりも、
かなり奥まったところにドライバーのボイスコイルが位置するわけで、
このふたつのボイスコイルの距離分だけの時間差が発生する。

この問題をUREIの813は、以前書いているように内蔵ネットワークで解決している。
813が登場したときは、ネットワークがどういう構成なのか皆目見当がつかなかったけれど、
あれから30年以上経っているいまでは、技術的な知識もあるし、
インターネットで813のネットワークの回路図も手に入れることができ、
こうやっていたのか、と疑問はなくなっている。

813の回路図を利用してネットワークを自作して、試行錯誤してみるのも、
オーディオマニア的には充分に楽しいことではある。
けれどデジタル信号処理のデヴァイディングネットワークを用意して、
マルチアンプ駆動した方が、手間もかからない、といえよう。

それにネットワークを自作した場合、一回でうまくいくという保証はどこにもない。
何度か試作を重ねれば、そこにかかる費用の面でも、
マルチアンプのほうが有利になることだってある。

それにデジタル信号処理のデヴァイディングネットワークを使う方が、
ネットワークでは無理な細かな時間差の補整も可能になる。

アルテックの604の、こういう使い方は実際にやられている人はすでにおられる。
では、同じ同軸型のタンノイのユニットで、同じことをやるのか、と問われれば、
これはやらない、と即答する。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その17)

タンノイをはじめとするイギリス系のスピーカーシステムに関してはマルチアンプ駆動は考えていない、
と書いておきながら、
同じタンノイのスピーカーシステムでも、Kingdom(現行製品のKingdom Royalではなく、最初のモデル)なら、
全帯域のマルチアンプ駆動は考えないものの、46cmウーファーだけは専用アンプをもってきたい。
いわゆるバイアンプ駆動を試みてみたい。

結局、マルチアンプにするのかしないのか、は、
私の場合、そのスピーカーシステムが生れた国と関係していながらも、
Kingdomのように、これは積極的にマルチアンプで鳴らしたいスピーカーシステムもある。

マルチアンプにするのかしないのか、
その分れ目はどこにあるのか、私の中にはどうもはっきりと存在している、と感じているけれど、
それを言葉にして書くとなると、意外に難しいことに気づく。

ではイギリスを始めとするヨーロッパ以外のスピーカーシステムに関してはどうかといえば、
JBLのシステムだから、といって、すべてのJNLのスピーカーをマルチアンプで鳴らそうとは思っていない。

4350、4355といった、JBL側がバイアンプ仕様としているスピーカーシステムを除いて、
バイアンプをふくめてマルチアンプで鳴らしたいのは、4343が最初にくる。

内蔵ネットワークで鳴らす4343のスタイルもいいと思っていても、
瀬川先生が書かれていたころのステレオサウンドを熱心に読んできた者には、
どうしても4343はいちどはマルチアンプ(バイアンプ)で鳴らしてみたいスピーカーなのである。

他に何があるだろうか。
自分の手で鳴らしてみたいスピーカーシステムで、しかもマルチアンプで、というスピーカーシステムが。

アルテックの604シリーズは、同軸型ユニットのメリットを最大に活かす、という意味で、
デジタル信号処理のディヴァイディングネットワークによるマルチアンプ駆動は、ぜひやってみたい。

Date: 12月 11th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その16)

私のなかでは、イギリスのスピーカーシステムを中心に、
ヨーロッパのスピーカーシステムをマルチアンプで鳴らそうという気持は、
ほとんどというより、まったくない。

仮にヴァイタヴォックスのCN191、タンノイのAutographを自分のモノとして鳴らすことになり、
これらのスピーカーから最上の音を出そうとしてマルチアンプ化するかといえば、やらない。
シーメンスのオイロダインに関してもそうだ。
オイロダインをマルチアンプで鳴らそうと考えたことはない。

だからといって、メーカーでマルチアンプ仕様としているスピーカーシステムを認めないわけではない。
メリディアンのM20はマルチアンプで、いいスピーカーだと思っている。

私はPM510を選んだが、PM510という存在がなければマルチアンプ仕様のLS5/8に惚れ込んだかもしれない。

これらの他にも聴いたことがないから、よけいにいまでも聴きたいと思っているスピーカーシステムに、
ドイツのK+Hのモニタースピーカーがある。
O92とOL10である。
どちらもマルチアンプ仕様の3ウェイ・システムだ。

もうひとつ、KEFのModel 5/1ACだ。
KEFが独自にLS5/1Aをマルチアンプ仕様にモデファイしたモデルである。
LS5/1Aの時代は管球式の専用パワーアンプ(高域補整を行っていた)がついていたが、
Model 5/1ACではトランジスターアンプになり、マルチアンプ化された。
ユニット構成に変更はない。

昔からヨーロッパ製のスピーカーシステムにはアンプ内蔵で、マルチアンプ仕様というものが存在していた。
いわゆるアクティヴ型スピーカーシステムと呼ばれる形態であり、
パワーアンプを自分の好きなモノにできないということで、
アクティヴ型を敬遠する人もいるけれど、私はそのことに特にそういう気持はない。

Date: 12月 10th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その15)

ロジャースのPM510を鳴らしていた。

PM510は30cm口径のポリプロピレン振動板のウーファーとソフトドーム型トゥイーターからなる2ウェイ。
同じユニット、エンクロージュアでバイアンプ駆動仕様のLS5/8がある。

LS5/8はQUADの405にディヴァイディングネットワークを内蔵した仕様。
LS5/8は一度聴いたことがある。
PM510との直接比較ではなかったけれど、
私はPM510の方が好きだった。

PM510に感じている音の魅力が、LS5/8では薄れている気がした。
もっともPM510をQUADの405で鳴らした音と比較すればマルチアンプ(バイアンプ)のLS5/8の良さを、
はっきりと認識できたのかもしれないが、
ネットワーク仕様のPM510を、さまざまなパワーアンプで鳴らした音を比較するかぎりは、
私にとってはPM510の方だということになる。

PM510は満点のスピーカーシステムではない。
欠点もいくつもある。
でも、その欠点の裏返しが、私にとって魅力ともなっていることはわかっていたし、
PM510をよりよく鳴らすためにマルチアンプ化することは、
私にとって必ずしも音が良くなった、とは感じない可能性があるようにも考えていた。

PM510についても、一度もマルチアンプで鳴らそうと考えたことはなかった。