マルチアンプのすすめ(その26)
パラメータが増えれば、そして多岐にわたれば音の調整の変化幅は拡大する。
それまではスピーカーシステムの内蔵ネットワークという、一種の制約によって、
──それはメーカーによる指定でもあり、主張でもある──、よほど間違った使い方でもしないかぎり、
とんでもない音を出すことは非常に難しい。
けれどその内蔵ネットワークをパスして、ただパラメータを増やしていくだけのマルチアンプでは、
いとも簡単にとんでもない音を出すことができる。
オーディオには、いわば約束事がある。
録音と再生の関係性における約束事であり、
この約束事に則った上での再生の自由度がある。
なのに、ただ自分の好きな音、という、
その約束事から外れたところでの音づくりは、ご本人にしてみれば、
自分の音だから自分の好きにして、自由にして何が悪い、ということになるののだろう。
オーディオの再生には、そういう自由が認められている──。
音量ひとつにしても、実演とはかけはなれた小音量で聴くこともできるし、ものすごい大音量で聴くことも可能だ。
音量の設定ひとつにしても、聴き手の自由が認められている。
パラメータを増やしていくということは、そういう自由を増やしていくことでもある。
考えたいのは、ここでの自由とは、いったいどういう自由であるのか、ということだ。