マルチアンプのすすめ(その30)
五味先生が指摘されていることと同じこと(私はそう感じている)を、
長島先生も指摘されている。
ステレオサウンド 99号の新製品紹介のページで長島先生は、ATCのSCM200について書かれている。
その中にこうある。
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例えば、3ウェイシステムの場合、ウーファー、スコーカー、トゥイーターが三位一体となって動いて欲しいのであるが、通常のLCネットワークであれば、電気的には各ユニットが接続された状態にあり、それぞれいい意味で影響しあって有機的に結合した状態をつくりだすことができる。もちろん悪影響を与えるということもある。しかし僕はそこにメリットのほうを見出していたのである。
それに対してマルチ駆動の場合、ユニット同士の関係というものは一応セパレートしているものと考えることができ、はたして各ユニットがうまくブレンドしてくれるのだろうか、という不安があるのだ。
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五味先生はタンノイの、長島先生はジェンセンの、それぞれの同軸型スピーカーを鳴らされてきた。
そのふたりがマルチアンプに対して、同じことを感じられているのは興味深い。
オーディオにやり始めたころに疑問に思っていたことがある。
スピーカーの再生周波数帯域を拡げるためにマルチウェイにするのはわかる。
2ウェイでも、3ウェイでもいいのだが、
ウーファーはほとんどがコーン型であり、
トゥイーターはコーン型もあれば、ドーム型、リボン型、ホーン型……、といろいろな方式がある。
ウーファー、トゥイーターともにコーン型であれば、振動板も紙ということがある。
けれどトゥイーターがコーン型以外の方式となると、振動板の材質はさまざまだ。
布系の振動板もあれば、プラスチック系のモノもあるし、金属を使ったモノもある。
金属にもアルミニウムもあれば、チタニウム、マグネシウム、ベリリウムなど、いくつもの材質がある。
昔から使われてきて馴染みのある紙の振動板のコーン型ウーファーと、
紙とはまったく異質の振動板を使った、それも振動板の形状も違う方式のトゥイーターが、
システムとしてまとめたときにほんとうに調和するのだろうか。
こういう疑問だった。