Archive for category デザイン

Date: 10月 13th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヒンジパネルのこと・その2)

たまたま例として挙げたパイオニアのExclusive F3とヤマハのCT7000だが、
ヒンジパネルといっても、このふたつのチューナーではヒンジパネルの扱い方に違いがある。

一般的にヒンジパネルといえば、Exclusive F3のタイプということになる。
つまりフロントパネルの下部に、横幅いっぱいに設けられている。
この手のヒンジパネルは高さはあまりないのも特徴だ。
そのため閉じた状態では、オーディオに関心のない人がみれば、
そこが開いて中にツマミやボタンがあるとは思わないかもしれない。

CT7000のヒンジパネルは少し違う。
CT7000と同じヒンジパネルのオーディオ機器として、
オーレックスのコントロールアンプSY77がある。

横幅はExclusive F3タイプとは違い、短くなる。
その分高さが増していて、その配置も違ってくる。
そして閉じた状態でも、はっきりとそこにサブパネルがあることを使い手にわからせるようになっている。
誰がみても、そこが開くようになっていると思わせるデザインといえる。

中学、高校時代に、あれこれオーディオ機器のスケッチをしていたことは何度書いているとおりである。
欲しいオーディオ機器のスケッチだったり、自分で考えたオーディオ機器のスケッチだったりしたわけだが、
もちろんヒンジパネル付のコントロールアンプのスケッチも描いていた。

私が描いたヒンジパネルは、CT7000、SY77タイプだった。
理由はいくつかあって、大きな理由は薄型のコントロールアンプの場合、
Exclusive F3タイプのヒンジパネルは難しいから、ということだった。

Date: 10月 11th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヒンジパネルのこと・その1)

いつからヒンジパネルがアンプやチューナーに採用されるようになったのか。
私がオーディオに興味をもった1976年には、
すでにヒンジパネルをとりいれているオーディオ機器は珍しくはなかった。

ヒンジパネルは、ウッドケースとともに普及機と高級機との差別化のために利用されていた印象もある。

ヒンジパネルがあるアンプやチューナーでは、
ヒンジパネルを閉じていれば、フロントパネルは実にすっきりする。

私がいま所有しているオーディオ機器では、
このヒンジパネルをもつモノはパイオニアのExclusive F3だけである。
このExclusive F3はヒンジパネル内に六つの小さなツマミ(ボタン)がある。
ヒンジパネルを閉じていれば、ツマミはチューニング用のツマミだけ、というすっきりぶりである。

ヤマハの同価格帯のチューナー、CT7000もヒンジパネルをもち、
ヒンジパネルを閉じた状態ではチューニング用のツマミと電源スイッチのレバーだけである。

ヒンジパネルを閉じた時のすっきりした感じの見事さは、
Exclusive F3よりもCT7000の方が上である。

アンプでもチューナでも、ヒンジパネル内には、使用頻度の低いツマミやボタンがおさめられている。
CT7000にしても、Exclusive F3にしても頻繁に触れ動かすのはチューニング用のツマミであり、
その意味ではヒンジパネルは閉じていても、特に使用上の不都合はあまり感じない。

ただExclusive F3の電源スイッチはヒンジパネルの中にあるので、
使うたびに毎回開け閉めをする必要はある。

Date: 9月 25th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その11)

木を採り入れることで、魅力を増すオーディオ機器(というよりもデザイン)があることはわかっている。
だが安易にウッドパネルを取り付けたり、ウッドケースを用意したりするだけでは、
必ずしも魅力は増さないことに気がついていても、
結局は安易にそうしてしまっているオーディオ機器(デザイン)が多かった。

パイオニアのExclusive P3が登場したときの最初の印象は、分厚い、だった。
よくいえば、重厚となるのだが、
EMTの930stが実際のサイズよりも小さくみえるのに対して、
Exclusive P3はより以上大きく見えるところが、好きになる人もいれば、
私のように気になってくる人もいるわけだ。

とはいえ、内部構造の写真をみれば、Exclusive P3の音・性能には、
これだけの大きさと重さが必要だったことが理解できるし、
そうなると、この重厚さ(分厚さ、重々しさ)も仕方ないのかも……、と思えてくる。

それでも、それはあくまでも本体に関してはそう思えてくるのであって、
正直、Exclusive P3のダストカバーについては、重厚さを過ぎて、鈍重さを感じないわけではなかった。

P3のダストカバーが、サイドに木をあしらったデザインでなければそうは感じなかった。
P3のダストカバーはサイドをウッドパネルとしている。
そのため、ダストカバーを閉じたP3を真横から見ると、
本体のウッドキャビネット、ダストカバーのウッドパネルがひと続きとなり、
分厚い印象がより増してくることが鈍重さ、といいたくなる一歩手前まできてしまっている。

Exclusive P3が登場したときは、まだ高校生であり、
ダストカバーを閉じた状態での音まで検討してのウッドパネルの採用というところに考えが及ばなかった。

だからよけいに真横から見た時の分厚すぎる外観に、
なにか言いたくなっていた。

Date: 9月 23rd, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その10)

以前のオーディオ機器では、ウッドケースにおさまっていたり、
サイドにウッドパネルを採用することが、ひとつ格上の製品というイメージにつながっていたし、
高級感を醸し出すためにもよく使われていた手法であった。

たとえば私が高校生の時に無理して買い、愛用していたサンスイのプリメインアンプAU-D907 Limitedも、
サイドにウッドを採り入れていたし、天板の一部は木目仕上げとなっていた。

ベースとなったAU-D907はブラック仕上げの、木はどこにも使っていなかったけれど、
その限定版で、磁性体をできるだけ追放したことを強調する意味でも、
AU-D907 Limitedにはウッドのサイドパネルが採用された。

このアンプを手に入れたばかりのころは、初めてのウッドパネル採用のオーディオ機器だっただけに、
素直に嬉しく思っていた。
ウッドパネル採用のオーディオ機器を手に入れることができた、という感じだった。

けれど、それも数ヵ月も経てば、冷静にAU-D907 Limitedを眺めるようになる。
そうするとAU-D907の、あの洗練こそされていないけれど、精悍な感じのするフロントパネルに、
果してウッドのサイドパネルは似合うのだろうか、と思えてくる。

限定版であることを外観でもはっきりと表していることは、
ユーザーとしては嬉しいことではあるものの、その手法がうまくいっていないと、
その部分が、逆に気になってしまう。

どうも私はウッドケースやウッドパネルに、あまり魅力を感じないのかもしれない。
そんな私でも、QUADのコントロールアンプの33とチューナーのFM3を横一列に並べておさめることができる、
木製のスリーブは、美しいといまでも思っているし、
33とFM3、それにスリーブの組合せはいつかは欲しいし、
もっといえば、この組合せで満足できるような聴き手になれれば、
どんなにしあわせだろうか、とも思っている。

Date: 9月 22nd, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その9)

ラックスはLX38のモデルチェンジはせずに、
SQ38の型番をのちに復活させている。
そしてウッドケースも、やはり復活した。

一般的な認識として、ラックスのSQ38はウッドケースを纏っていなければならない、ということなのだろう。
それでも、私はLX38の、あえてウッドケースを脱いでいるところに好感がもてる。

LX38でウッドケースを省いたのは、おそらくはウッドケースにかかる原価が高くなったからではないのか。
SQ38と同等のウッドケースを標準装備してしまうと、価格を上げざる得ない。

事実、SQ38FD/IIは168000円だったが、LX38はウッドケースがオプション扱いにもかかわらず198000円だった。

ただラックスはウッドケースをオプションにしたわけではなかった。
フロントパネルの色調も、ウッドケースを纏わないことを意識してことのなのだろう、
やや明るい感じへと変更されている。

LX38と同時期に発表・販売されたコントロールアンプのCL36も、
フロントパネルの色調が変更され、ウッドケースがオプション扱いになっている。

SQ38FD/IIが秋もしくは晩秋のイメージだとすれば、LX38は初夏のイメージといえる。

真空管アンプということにノスタルジー的なものを強く求めるのであれば、
SQ38FD/IIの外観もウッドケースも音もぴったりとはまる。
けれど、そういうイメージの真空管アンプの音とは違う、
真空管アンプならではの音を、トランジスターアンプの音に馴れた耳に、
新鮮に響かせるためのアンプとしての外観は、LX38のほうに私は魅力を感じる。

Date: 9月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その8)

たとえばパイオニアのアナログプレーヤー、P3と同じExclusiveのパワーアンプ、M4。
このA級動作のパワーアンプにウッドケースは、なくてはならないものだと思っている。

ウッドケースがあるからこそ、Exclusive M4だと認識しているし、
Exclusive M4の、決してドライになることが、どんな些細な音に関してもない、
ややウェットながらもやさしい表情の音には、ウッドケースはよく似合うからだ。

Exclusive M4の音に通じる音を特徴とするアンプが、ラックスの管球式のプリメインアンプSQ38FD/IIだ。
このプリメインアンプもウッドケース込みのデザインとして、広く認識されている。

SQ38FD/IIはLX38へとモデルチェンジした際にウッドケースを脱ぎさった。
フロントパネルのデザインには変更はなかった。
ウッドケースがあるかないかが、外観上の、SQ38FD/IIとLX38の違いだった。

LX38は、SQ38シリーズほどの人気はなかったようだ。
その理由が、ウッドケースがついてこなかった、ことらしい。

私などは、LX38になりウッドケースがなくなったことで、
それまでの時として分厚いコートのようにも感じられることのあったウッドケースがなくなり、
すっきりとして、そのことが新鮮な印象へとつながっていくように感じた者もいれば、
ウッドケースがなくなったことを寂しく感じ、
ウッドケースのないSQ38はSQ38ではない、というおもいになったのかもしれない。

そのへんのことはラックスも判っていたからこそ、
SQ38FD/IIIではなく、LX38と型番も変更したのだろう。

Date: 9月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その7)

以前はスピーカーのエンクロージュアといえば、木が使われることがほとんどだった。
ごく一部のモデルではコンクリートが使われたりもしていたが、それは、以前では特殊なケースであり、
あくまでもスピーカー・エンクロージュアといえば木の時代が長く続いていた。

いまも主流は木といえるのだが、木以外の素材のエンクロージュアも物珍しいだけの存在ではなくなっている。
それでも木は、オーディオ機器にとって重要な素材といえる。

木はスピーカーだけに使われてきたわけではない。
アンプでもチューナーでも、アナログプレーヤーにおいても、木はつかわれることが多い。
アナログプレーヤーではキャビネットに、ときにはトーンアームにも使われた例がある。

アンプ、チューナーといった電子機器にも木は使われている。
サイドパネルに木を採用したモノ、
ウッドケースに入れて使うのを前提としたモノがある。
フロントパネルの一部に木を採用した例、ツマミに採用した例もある。

たとえばマランツのコントロールアンプ、Model 7はたいていウッドケースに収められていることが多い。
マークレビンソンのLNP2、JC2、ML6、ML7などもウッドケースに収められていることが多い。

JC2は使っていたことがあるけれど、ウッドケースを欲しいとは思わなかった。
マランツのModel 7を欲しい、と思ったことはあるけれど、ウッドケースは無しでもかまわない。

私は、あまりウッドケースがそれほど好きにはなれないところがあるようだ。

とはいえ、ウッドケース、ウッドのサイドパネルが嫌い、というわけではない。

Date: 9月 20th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その6)

パイオニアのアナログプレーヤー、Exclusive P3のダストカバーは、
強化ガラスとウッドのサイドパネルを組み合わせた、取り外して持ってみると、
かなりの重量があることがわかる。

Exclusiveシリーズのチューナー、F3のウッドケースは、
普及型のチューナー本体とほぼ同価格ということが、発売当時語られていた。
おそらくExclusive P3のダストカバーも、
普及型のアナログプレーヤーと同じくらいのコストがかかっていることだろう。

それにこれだけの重量を支えるヒンジも、おそらく独自に開発したものではないだろうか。
パイオニアはExclusiveシリーズのパワーアンプのためのメーターも、
満足できるモノがなかったため、自分たちで開発している。
そういうメーカーの、そういうシリーズなのだから、ヒンジを開発していても不思議ではない。

これだけの物量(時間を含めて)をダストカバーに投入しているのは、ハウリングマージンを稼ぐためである。
つまりExclusive P3はダストカバーを閉じた状態でのレコード演奏が、
メーカーが想定したExclusive P3の音ということになる。

私がステレオサウンドで働くようになったばかりのとき、
試聴室に常備してあったのは、Exclusive P3だった。

もうすでにダストカバーは取り外してあったように記憶している。
付いていたとしても、すぐに取り外されたはずである。

記憶の中に、ダストカバーを閉じた状態での音の記憶がないし、
取り外して補完して会ったP3のダストカバーを手にとり、その重さを実感した記憶はある。

試聴室でのレコードのかけ方は、
オーディオマニアがリスニングルームでレコードをかけるのとは、少し違う面がある。

試聴室は、いわゆる試聴を行う場所であり、
そこでのレコードのかけ方は、一面をすべてかけるということは、まずない。
どこか聴きどころを数分かけるだけで、次の試聴レコードにかけ替える
その度に、P3の重たいダストカバーをいちいち開けたり閉じたりしていては、
余分な時間が蓄積されることになる。
だからダストカバーは、取り外されることになる。

Date: 9月 14th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その5)

アナログプレーヤーにおけるダストカバーは、
スピーカーシステムにおけるサランネットのような存在といえる部分がある。

取り外しができる。
国産メーカーに関しては、アナログプレーヤーのダストカバー、スピーカーシステムのサランネットは、
開発の時点では取り外した状態で試聴が行われているとみてまちがいない。

スピーカーシステムのサランネット(そう呼ぶのがためらわれるほど立派なものもある)、
国産メーカーのほとんどは外して聴くのが前提であっても、
海外製品の中には、装着しているのが前提のモノもある。

アナログプレーヤーのダストカバーの中で、
そういうスピーカーシステムのサランネット(便宜上こう呼ばせてもらう)と同じとみていいのが、
前回、例に挙げたエンパイアの598、698、パイオニアExclusive P3のそれである。

これも私の勝手な想像なだが、
おそらくExclusive P3は、
開発段階の試聴にいても、ダストカバーが閉じられた状態の音を充分に聴き込んだうえでつくられている気がする。

サランネットを取り付けた状態の音が標準のスピーカーシステムがあるように、
ダストカバーを閉じた状態の音が標準のアナログプレーヤーだって、
数はきわめて少ないかもしれないが、あるはずだ。

そのひとつがExclusive P3であり、
ダストカバー装着時の音と外した状態の音を比較したことがないので、はっきりとはいえないものの、
エンパイアのプレーヤーも、おそらくそうであろう。

Date: 9月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その4)

こんなことを書くと、
そんなことは科学的にありえない、オカルトだ、という人がいるのはわかっている。
それでも書くのだが、オーディオ機器で、アンプにしてもCDプレーヤーにしても、
筐体を密閉もしくはそれに非常に近い状態にしたとき、往々にして音の伸びやかさがおさえられる傾向がある。

アナログプレーヤーの場合も、ダストカバーを閉じた状態の音は、同じところが存在し、
ダストカバーを外した音を聴いたあとでは、ダストカバーを閉じた状態の音を、
すくなくとも私は聴こうとは思わない。

もちろん人によって、求める音は同じところもあれば違うところもあるわけで、
ダストカバーを閉じた状態の音の傾向を、良し、とされることだってある。

もし私がそうだったとしても、ダストカバーを閉じた状態のアナログプレーヤーは、
あまり美しいとは感じない。
プレーヤーのデザインが優れていればいるほど、
ダストカバーを閉じてしまうと、ダストカバーの存在が余計なものとしてしか見えなくなってしまう。
特にプレーヤー本体の厚みに対して、ダストカバーのほうが分厚く感じてしまうと、
もう見るのも嫌になってしまう。
ピカリングのFA145がそうだ。なぜこんなにもダストカバーを厚くしてしまったのか、と思う。

B&Oのアナログプレーヤー、Beogramの一連のシリーズでも、ダストカバーは一般的な形状のアクリル製である。

ダストカバーにまで気を配ったプレーヤーも、数は少ないながらもある。
たとえばエンパイアの598や698。
パイオニアのExclusive P3があり、
少し変ったところではトランスクリプターのSkeletonがある。

Date: 9月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その3)

ダストカバーの存在、その使用状態はハウリングマージンにも関係してくるが、
やはり音への影響のほうが気になる。

ダストカバーの大半はアクリル製で、プレーヤー本体とはヒンジで結合されている。
ダストカバーを開けている状態では、ダストカバーはヒンジでのみ支えられているわけだから、
いわば片持ち状態で、あれだけの大きさ(表面積と凹み部分の容積)があれば、
スピーカーからの音圧を正面から捉えてしまうことになるのは容易に想像できる。

閉じた状態では、ダストカバーはヒンジの他に、ダストカバーにちょこんとつけられている小さなゴムで、
プレーヤーのキャビネットに接触する例が多い。
ダストカバーを閉じることで、
カートリッジやトーンアームが直接スピーカーからの音圧にさらされないメリットはある反面、
ダストカバーそのものの振動の影響が、
開けている状態ではヒンジによってのみプレーヤー本体に伝わってきていたのが、
閉じていればゴムを伝わってくることになる。
振動のモードは、閉じている状態と開けている状態とでは、かなり違ってくるはずだ。

そういう共振のシンプル化ということで考えれば、
ダストカバーを取り外した状態がいちばんすっきりとしたかたちになる。
そして、ここで考えてほしいのは、メーカーがプレーヤーを開発するときに、
メーカーの試聴室において、ダストカバーをどういう状態にして試聴しているのか、である。

でき上がってきた製品(プレーヤー)を聴くかぎり、
ほとんどがダストカバーは取り外した状態で試聴されているように思われる。

Date: 9月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その2)

わたしがいたころは、ステレオサウンドでのアナログプレーヤーの試聴において、
ダストカバーは取り外して聴くのがあたりまえのことになっていた。

ダストカバーを開いた状態とか閉じた状態ではなく、
完全にダストカバーをプレーヤー本体から分離した状態での試聴であった。

ダストカバーは、ハウリングマージンに影響してくる。
1977年に誠文堂新光社から無線と実験別冊として出た「プレーヤー・システムとその活きた使い方」に、
アナログプレーヤー、八機種のハウリング特性の測定結果が載っている。

この測定は、それぞれの機種において、
ダストカバーを開いた状態、閉じた状態、そして取り外した状態での結果が、グラフで表示されている。

プレーヤーの構造や材質によって多少細部は違う結果になっているものの、
全般的にいえるのは、ダストカバーを開いた状態よりも閉じた状態のほうが、
ピークが出にくい傾向にある、ということ。
つまりハウリングを起しにくい、ともいえる。

ただし、この測定は左右両スピーカーの中央、
つまり聴取位置に設置しての測定ゆえに、スピーカーからの音圧をほぼ正面から受けることになり、
ダストカバーの開閉の影響も、実際のリスニングルームにおいて、
ハウリングの少ない位置を探して出して設置したときよりも顕著に出ている、ともいえる。

ダストカバーを取り外した状態は、ダストカバーを閉じた状態に近い。
ただダストカバーの重量とプレーヤー本体の重量の比によって、
最低共振周波数に変化が見られるものもある。
帯域によっては、取り外した状態がよくなるプレーヤーもある。

ハウリングの測定結果においてもこういう結果が出るだけに、
実際に音を聴けば、ダストカバーの状態によって、音は多少なりとも影響を受け、
全般的にダストカバーを取り外して、しっかりとした台に、ハウリングの起きにくい場所に設置するのが、
音質的には好ましい結果が得られる。

Date: 9月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その1)

最初に使ったアナログプレーヤーはデンオンの普及型だった。
その次がマイクロの糸ドライブ、RX5000 + RY5500に、SMEの3012-R Specialの組合せ、
その次がEMT・930stのトーレンス版である101 Limited、
そしてEMTの927Dstも使った。

いま手元には二台のアナログプレーヤーがある。
927Dstと較べると、どちらもずっとコンパクトなモデルだ。

私のアナログプレーヤー遍歴の中で、
いわゆるダストカバーがついていたモデルは、最初のデンオンだけである。
それから後に使ってきたプレーヤーには、どれもダストカバーはついてなかった。

930stにはオプションでプラスチック製のダストカバーがあることが、
カタログをみればわかるものの、実物をみたことはないし、
あえて欲しいと思わせるものだはなかった。
カタログをひっぱり出して確認すればいいのだが、
たしか930-900(930st専用のインシュレーター)との併用を前提としていて、
ヒンジはないから、上からかぶせておくだけのものだった。

レコードをかけるときには取り外して、どこかにダストカバーを置くしかない。
そういうものだったから、欲しい、とは思わなかったし、
形もつくりも一般的なダストカバー的だった。

なにもダストカバーがないのを意識して選んできたわけではなくて、
たまたま選んできたモデルに、ダストカバーなしが大半だった、ということだ。

ダストカバーは、文字通りホコリよけのカバーである。

Date: 9月 1st, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(整理と省略・その4)

旧い記憶を辿っていくと、
冷水器の使い方は、幼いころ、誰か大人に、ここにコップを当てて押すんだよ、と教わっていた、と記憶している。

コップをレバーに押し当てれば、コップに冷たい水が注がれる。
必要な量がコップに注がれたらレバーからコップをはなせば、水は止る。
片手で行える。

水道の蛇口をひねってコップに(冷水ではない)水を注ぐとき、
水を無駄にしたくなければ片手でコップをもち、反対の手で蛇口をひねる。

冷たい水を飲むためのモノとして、冷水器は優れている、といえなくもない。

コップが紙製や透明の薄いプラスチック製の使い捨てが登場してから、
冷水器のレバーはボタンに変っていったものがある。
レバーに紙コップを押し当ててもコップの方が変形してしまい冷水を注げないからだ。

ボタンに変っていったことで、冷水器は冷水だけを提供するモノではなくなっていった。
冷水の他にお湯、それにお茶も一台の器械で提供可能になった。
つまり機能が増えていった。

機能が増えていったことで、昔のレバー式の冷水器のようには扱えなくなった。
すくなくとも何を飲みたいのか、
その飲みたいものをコップに注ぐには、どのボタンを押したらいいのかを視覚的に確認してから、
という動作が加わる。

Date: 8月 31st, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(整理と省略・その3)

1993年のことだと記憶している。
知人とふたりで、彼の家の近くにある中華屋さんに食事に行った。
老夫婦がふたりでやっている、ちいさな店で、特に有名な店でもなく、
地元の人のための、その店は路地を入ったところにあった。

夕食の時間帯ということもあって、満員ではなかったものの混んでいた。
老夫婦ふたりでの店だから、そういう時には、水がすぐには出てこない。
なので冷水器のところに行き、コップを取り冷水を注いだ。

私たちのすぐ後に入ってきた人も、
そんな私たちを見て、自分も、と思われたのだろう、
冷水器のところに行きコップを手にされた。

ここの冷水器は昔からあるタイプで、
コップをレバーに押し当てれば冷水が出てくる。
いわば冷水器としては、もっとも多いタイプだと思う。

ほとんどの人は使い方をあらためて考えることなく,コップをレバーに押し当てる。

けれど私たちのすぐ後に入ってきた人は、
おそらく70過ぎくらいの女性の方だった。
コップをとってみたものの、それから先、どうしたらいいのか迷われていた。

立ち上って冷水器のところに行こうとしたら、店の人が気づいた。

70も過ぎれば視力もかなり落ちてくるだろう。
そういう人にとって、冷水器のレバーは目につきやすいのだろうか、とまず思った。
そしてレバーにコップを当てる動作は、はじめて冷水器を使う人にとって、
当り前の行為となり得るのだろうか、とも思った。