Archive for category 世代

Date: 11月 4th, 2016
Cate: 世代

タンノイがふさわしい年齢

タンノイがふさわしい年齢。
そういったことを、いま考える人(世代)は、いるのだろうか。

タンノイといっても、これまでにさまざまなモデルが登場して消えていっている。
同軸型ユニットを採用していないモデルもある。

同軸型ユニットにしても、アルニコからフェライトになっているし、
フェライト採用のユニットには、
ウーファー用とトゥイーター用をひとつのマグネットで兼ねているタイプと、
独立させてふたつのマグネット採用のものとがある。

だからタンノイといっても、人によって真っ先に頭に浮ぶモデルは違ってくる。
そうなれば、タンノイにふさわしい年齢も違ってこよう。
もしくは、そんなこと、まったく感じない、ということにもなろう。

けれどタンノイといえば、Guy R. Fountain Autographという者にとっては、
タンノイがふさわしい年齢を意識するのではないだろうか。

私は、いまどうなんだろうか。

Date: 10月 28th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その14)

「JBLのすべて」巻末の「発刊によせて」には、
ブルース・スクローガンも書いている。
そこにも瀬川先生のことが、やはり出てくる。
     *
 新しく開発した製品の試聴は、つねに、ある種の興奮と期待が伴います。私は、20年間において何度も落胆したり元気づけられたりしました。いまでも、K2シリーズのブラックボックス・プロトタイプを最初に聴き、私達の期待どうりのすはらしい性能であることを知った時の喜びを思いだします。もっと溯れば、4341モニターシステムで、初めてビッグスピーカーシステム本来のパワーとリアリズムを実感したことを思いだします。この4341体験は、私をJBLの完全な信奉者にしてしまいました。’70年代末、コバルトの高騰で、アルニコからフェライトマグネットに転換しなければならなくなったときは不安でした。実際、フェライトマグネットを搭載したスピーカーは、私達にとって、一聴においてショックを与えるものだったのです。フェライトでは大きな歪みが起きていました。アルニコとフェライトの再生音の違いは明らかでした。そこで、それまでのフェライトマグネットを搭載した磁気回路の欠点をなくし、アルニコよりもさらに優れた特性ももつものとして、SFG回路を開発したのです。私達はこの新しいSFGが、アルニコより優れていると確信していましたが、まず日本で、オーディオの専門家の意見をうかがうことにしました。故・瀬川冬樹氏の自宅で、夜通しリスニング・セッションが行われました。結果は大成功でした。私達はその場にはいませんでしたが、その結果を電話で聞いた時、私達は喜びで泣き出さんばかりでした。この時が、JBLにとっての大きな転換期であると私達は感じていました。
     *
ブルース・スクローガンも4341だったのか、とまず思った。
SFG以前のフェライトマグネット搭載のユニットは、やはりダメだったのか、とも思い、
当時のJBLにとって、もし瀬川先生が「Good」ではなく、「Bad」といわれていたら、
SFG回路はどうなっていたんだろうか……、そんなことも考えてしまった。

ゲイリー・マルゴリスとブルース・スクローガンの「発刊によせて」を読み返していると、
4301を無性に鳴らしてみたくなる。
何も最新の、高額な、優秀なアンプで鳴らしたいわけではない。

あの頃に戻りたくとも、戻れはしない。
そんなことはわかっているけれど、あの頃の私に何かひとつ伝えることができるのならば、
後一年ほど待て、といいたい。

サンスイのプリメインアンプで鳴らし、プリ・パワー分離機能を使って、
サブウーファーとパワーアンプを加えるとともにバイアンプ駆動にする。
そうやってグレードアップ(ステップアップ)していくことを選択するように──、そう伝えたい。

Date: 10月 28th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その13)

JBLの4301の値下げがもう一年早かったら……、
ここで書いてきたようなシステム(組合せ)で始まり、
グレードアップをしてきたかもしれない。

でも現実はそうならなかった。
4301は当時はそこまで入手しやすい価格ではなかった。

本格的なスピーカーとして4301を自分のモノとできていれば、
その後の私のオーディオは、どうだったのだろうか、と想像してみるのは楽しいし、
4301について調べていくと、当時はわからなかったことがはっきりしてくる。

4301の開発責任者はゲイリー・マルゴリスである。
ステレオサウンド 51号から始まった4343研究に登場している。

ゲイリー・マルゴリスは1974年にJBLから勧誘され入社している。
彼が最初に取り組んだのが4301である。

ゲイリー・マルゴリスはステレオサウンドの誌面に、もう一度登場している。
53号掲載の、瀬川先生によるJBLの新ユニットの記事である。

アルニコマグネットからフェライトマグネットへの移行、それにともなう磁気回路のSFG化。
4343搭載の2231Aが2231Hに、2121が2121Hになっている。

ゲイリー・マルゴリスはこれらのユニットを瀬川先生のリスニングルームに持ち込んでいる。
ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」に、
ゲイリー・マルゴリスが、そのときのことを書いている。
     *
 ブルース・スクローガンから私が受けた特命は、プロトタイプのSFGユニットを日本のオーディオ関係者に紹介するとともに、瀬川氏が当時使用していた4343のウーファーとミッドバスをSFGのそれと交換し、その評価を聞くというものでした。瀬川氏は、日本でもっとも尊敬されていた評論家のひとりであり、彼がJBL4343を称賛してくださったことが、このスピーカーが日本のオーディオファイルに受けいれられる大きな助けとなりました。このことから、瀬川氏によるプロトタイプSFGユニットの評価は、われわれにとって決定的なことだったのです。
 当日は、夜の8時すぎからテストセッションがはじまりました。瀬川氏所有の4343のウーファーとミッドバスのユニットをSFGタイプに交換して試聴を始めましたが、最初にでてきた音は、決して満足のいくものではありませんでした。ノースリッジのJBL試聴室で聴いた音とは違い、深みもパワーもない音です。私はてっきり、スピーカーが輸送によって破損したのだと思ったほどです。しかし、パワーアンプを交換してみたところ、いままでの音が嘘のような、鮮明な音が聴こえてきたのです。どうやらパワーアンプに異常があったようでした。
 その後何時間もの間、私たちはさまざまなレコードを試聴し、その間、瀬川氏はSFGユニットの新しい音響特性を注意深く観察していました。ちょうど真夜中を過ぎようというころ、瀬川氏は私に大きな笑顔をみせ「Good」とおっしゃってくださいました。私たちはさらに何時間もレコードを聴き、新しいスピーカーの音について議論を重ねました。
 試聴が終わり、新しいSFGユニットを取り外すとき、瀬川氏はとても残念がったものです。しかしわれわれには、このSFGユニットをJBL社に持ち帰り、量産製品のスタンダードとする必要があったのです。瀬川氏には量産品が完成次第、さっそく発送することを約束して、深夜というより早朝に近い時間に氏のお宅をおいとましました。ホテルに戻ったのは明け方でした。アメリカで結果を待ちわびているブルース・スクローガンに電話で第一報をいれたときの、何ものにもかえがたい充実感を忘れることはできません。長時間にわたる真剣な試聴で非常に疲れてはいても、たいへん元気づけられました。
     *
メーカー側の人間からのリポートである。
53号の瀬川先生の記事は読んでいた。
54号では特集で4343と4343Bを直接比較されていて、それももちろん読んでいる。
暗記するほど読んでいる。

その裏側というか、あまり表に出てこない話が、14年経ってあきらかになる。
そして、こういう人(マルゴリス)が4301の音室決定をしていたことが、
実に興味深い。

瀬川先生とゲイリー・マルゴリスとの会話がどういうものであったのか、
その詳細を知りたいとも思う。

Date: 10月 10th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その12)

オンキョーのGS1について書いていてあわせて考えていたのは、
オーディオエンジニアということ。

エンジニア(engineer)は、技術者、技師と訳される。
オーディオエンジニアは、オーディオの技術者となるわけだが、
エンジニアは技術者──これは納得いくが、
エンジニアは開発者だろうか、エンジニアは実験者なのだろうか、とも思う。

どうも一緒くたに語られるところがあると感じている。
実験者も、技術をもっている。だから技術者と呼ぶことに抵抗はない。

だが私の場合、エンジニアの前にオーディオとつくと、
エンジニアの意味を考えてしまう。

特にオーディオメーカーのオーディオエンジニアとは、について考えてしまう。

Date: 10月 10th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その11)

オンキョーのGS1のデザインをされた方が誰なのかは知らないし、
その人を批判したいわけでもない。

実験機としてのGS1を製品としてまとめあげる。
それもバラック状態のGS1の音と同じか、
できればよりよい音で製品としてまとめあげることのできる人は、そうそういない。
ほとんどいない、といってもいいだろう。

バラックの外側を囲ってしまう。
それだけで音は変化するものだし、ましてGS1はスピーカーである。

結局は体裁を整える、というレベルで留まっているGS1は、
果して製品といえるモノだろうか。

勘違いしないでいただきたいのは、
GS1の音そのものを否定しているのではない。
実験機としてのGS1はユニークなスピーカーだった。
けれど製品としてのGS1の評価は、違ってくる、ということだ。

そういうGS1を、オンキョーの営業の人たちは売っていかなければならない。
たいへんなことだった、と思う。
実験機と製品の違いがまずある。
そのうえで、製品と商品の違いがある。

私は、この違いをGS1の開発者の由井啓之氏はわかっておられたのか。
由井啓之氏がfacebookでGS1について書かれているのを見ると、
そう思う時がある。

そこにはオンキョーへの不満もあったからだ。
日本での評価への不満もあった。

だか日本での評価は高いものだった。
けれど売行きは決してよいものではなかった。
でもそれは致し方ない。製品といえるモノではなかったのだから。

由井啓之氏はGS1の開発者と名乗られている。
けれど、真の意味で開発者だったのだろうか。
実験者だったのかもしれない。

GS1は30年以上前に登場したスピーカーだ。
オーディオ雑誌で取り上げられることは、ほとんどない。
その一方でSNSでは由井啓之氏自身が語られている。

このこと自体は悪いこととは思わない。
けれどあまりにも由井啓之氏の一方的な見方が過ぎるように感じる。

Date: 10月 9th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その10)

オンキョーのGS1の開発において、デザインはなされたのか、といえば、
なされていない、と言い切れる。

バラックの状態で開発が進んでいったGS1を製品化するには、
家庭におさまるモノだからバラックのままというわけにはいかない。
オンキョーの研究室内ではバラックでもかまわない。

そこは実験室だからである。
実験室で、バラックの状態でいい音が得られたとしても、それは製品にはほど遠い。
それはオンキョーもわかっていた。

製品にするためにデザインが施されている、と見えるのだが、
パッケージが施されただけ、といえる。
とってつけた外装パネルともいえよう。

だから外装(化粧)パネルの一枚である天板代りのガラス板を外すだけで、
音が良くなるし、このことからいえるのは、外装をすべてはぎ取った状態、
つまりバラック状態に戻した音こそが、GS1本来の音のはずだ。

本来ならばバラックだったGS1よりも、
いい音で鳴るためになされるのがオーディオにおけるデザインだと考える。

だが残念ながら、音を悪くしているのだから、
GS1になされたのはデザインではなく、デコレーションといえる。

Date: 8月 25th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(映画と音)

映画「シン・ゴジラ」の公開にあわせて、
Huluは7月1日から、ゴジラの映画を一作目から順次公開していった。
ゴジラの公開のあとには、ガメラの公開が始まった。

ゴジラもガメラも、最初の数作を除いて、小学生のころ、映画館で観ている。
あのころの映画は、冒頭でタイトルが大きく映し出される。

タイトルの下には、決って”Litton-Westrex”のロゴがあった。
小学生には、それが何を意味するのかはわからなかったし、知ろうともしなかった。

仮に身近な人に、あれは何? ときいたところで誰も知らなかった、と思う。

いまはもちろん知っている。
そうか、このころの映画は、冒頭で表示されていたのか、
知らず知らずのうちにWestrexの名前を見ていたか、と思うと同時に、
いつのころからか、Litton-Westrexはなくなり、代りにDolbyである。

いまやほほすべての映画といっていいだろう、
映画のエンドクレジットにはDolbyのロゴが表示される。

Date: 7月 27th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・その15)

マークレビンソンのNo.29、チェロのEncore Powerが登場した時期は、
パワーアンプのハイスピード化が音質向上につながる、といったことがよくいわれていた。

電源の平滑コンデンサーは、だから大容量よりも小容量のほうが有利だし、
音のにじみをなくすために出力トランジスターの並列接続をやめ、シングルプッシュプルにする、
アンプのプリント基板もできるだけ小さくまとめる──、といったことがいわれていた。

JBLのSE408Sを、そういう視点で一度ながめてみてほしい。
まずシングルプッシュプルである。
しかも出力トランジスターのすぐ隣にドライバー段のトランジスターがあり、
この間は、これ以上縮めようがないほど近接している。
しかもアルミダイキャストフレームがヒートシンクを兼ねているため、
いわゆる音叉的な構造体が存在しない。

増幅部のプリント基板も無駄に大きくはない。
入力段のトランジスターから出力段のトランジスターの距離も短い。
とくにNFBをかけたアンプの場合、この距離(ループの大きさ)は重要な項目となる。

平滑コンデンサーの容量も4500μFを二本並列にしているから、9000μF。
大容量とはいえない(これは、時代的なものも関係してのことではあろうが)。

しかもSE408S(に限らず同時代のJBLのアンプ)には、保護回路がない。
出力が40W+40Wという小ささも関係してのことであるが、
保護回路がないのは、音質劣化の要素がひとつないということである。

それから外装パーツがないということは、この部分におけるループの問題も発生しない。
シャーシーでアンプ全体を囲ってしまうことは、シールドの面からはメリットもあるが、
その他のデメリットもある。

六面体の筐体の場合、それぞれの面が電気的に接続されていて、
ループに対する配慮がなされていないと、デメリットの発生が大きくなる。

あらゆるところで、時代はくり返す、といわれる。
オーディオに関しても、そうであることが実に多い。
ただ前の時代、さらにその前の時代について知らない人が少なくないために、
もしくは盛大に技術内容を謳っているか謳っていないかの違いによっても、
くり返しが、新しいこととして受けとめられることが多い。

Date: 7月 26th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・その14)

同寸法の電解コンデンサーは探せば見つかる。
その場合、容量がかなり大きくなる。
これも考え方次第なのだが、
容量の大きなコンデンサーは小さな容量のものよりもスピードが遅いとする人であれば、
SE408Sに最初からついているコンデンサーと同じ容量でなくてはならない、となるし、
容量が同じで寸法も同じとなると、選択肢はかなり狭まる。

それでも探せば見つかるとは思う。耐圧は高くなってしまうけれど。
そうやって見つけだしたモノでも、色が違う。
現在市販されている、このクラスの電解コンデンサーの多くは黒か青だったりする。
SE408Sについているサンガモの薄いグレーとはずいぶん違うものになってしまう。

小さな部品であればそこまで気にすることはしないが、
平滑コンデンサーは電源トランスに次ぐ大きさの部品であり、しかも四本使われている。

SE401は電源トランスも、この部分も黒のカバーがついているし、
SE408Sも電源トランスは黒だから、黒の電解コンデンサーでもまあいいとしても、
モノによっては、外装の質感が違いすぎるものもある……。

それに何よりもイヤなのが、コンデンサーの固定方法が変ってしまうことだ。
俗に腰巻きといわれる金属製のバンドで取り付けるタイプになるのが、どうしても我慢できない。

SE408Sに使われているサンガモのコンデンサーは昔に多かった取り付け方法で、
菱形のベークライト板に取り付けた上でフレームなりシャーシーに固定する。

電源部のコンデンサーをどうするのかだけでも、少なくともこのくらいは悩む。
どれを優先するのかは人によって違ってくるから、選択も違ってくる。
時間も手間もかけたくないというメンテナンスは、巷にあふれかえっている。

にも関わらず、そういうメンテナンスを「完全メンテナンス済み」とか謳っている。
中古オーディオ店はあくまでも利益を挙げなければならないし、
商売なのだから、その程度で完全を謳う。

SE408Sはサービスマニュアルがダウンロードできる。
回路図もあるし、各部の電圧もわかっている。
しかも構造上メンテナンスは難しい部類ではないから、
私だったら自分でメインテナンスすることを選ぶ。

Date: 7月 26th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・その13)

今回久しぶりに聴く機会があったSE408Sは、eBayで入手したモノとのこと。
40年以上、50年近く製造されて経っているわけだが、
見た感じはよかった。どこも修理されたと思えるところもなく、
外観的には特に傷んでいるところはないように思える程度を維持していた。

けれど音を出すと、残留ノイズの多さとハムが気になる。
低能率のブックシェルフ型スピーカーであっても、出ているな、と感じる。

おそらく電解コンデンサーはほとんどダメになっているためだろう。
製造されて相当な期間が経っているのだから、
むしろこの状態で、これだけの音が出ることに感心してしまうのだが、
きちんとしたコンディションにするためには、電解コンデンサーはすべて交換することになる。

ここで平滑コンデンサーをどうするかだ。
サンガモのコンデンサーがここに使われているが、
もう同じコンデンサーの入手は難しいし、
仮に新品で入手できたとしても、そのコンデンサー自体もかなりの年月が経っている。

別のコンデンサーに交換することになる。
私はオリジナル至上主義者ではないから、交換を考えるわけだが、
どのコンデンサーにするのかはなかなか頭を悩ませる。

SE408Sは中古オーディオ店のウェブサイトにも、ときどき出ている。
こんなふうにメインテナンスしました、という写真とともに出ているわけだが、
そのいずれもが見た目を重視していないことに、一言いいたくなってしまう。

外装パーツつきのSE408Sならば、そういうメインテナンスでも許せるけれど、
SE408Sではそうはいかない。

電解コンデンサーも進歩しているから、同耐圧、同容量であれば、
SE408Sの時代よりも現代のコンデンサーのサイズは小さくなる。
これは結構なことなのだが、SE408Sのメインテナンスに関しては歓迎できないことになる。

心情的に同寸法のコンデンサーに置き換えたいのだ。

Date: 7月 25th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・その12)

SE401とSE408Sは共通のダイキャストフレームを採用しているため、
コンストラクションは基本的に同じである。

中央にアンプ部があり、これを挟むように片側に電源トランス、
反対側に整流ダイオード、平滑コンデンサーが配置されている。

SE401ではインターステージトランスがあるため、
平滑コンデンサーのブロックに、このトランスはまとめられている。

それ以外にも違いはある。
アンプ部のプリント基板の取り付け方が違う。

SE401ではイコライザーボードを含めて、増幅回路の基板も垂直配置になっている。
SE408Sではイコライザーボードは垂直だが、増幅回路の基板は水平配置に変更されている。

SE408Sでは電源回路は左右共通になっているが、
コンストラクション的にはデュアルモノーラルコンストラクションになっている、といえる。
ステレオアンプとして見た場合、SE401とSE408Sのこの違いはかなり重要な意味をもつ。

回路構成が変ったこともあってだが、
SE408Sはアンプとしてうまくまとめられている。
SE408Sそのものがアンプユニットといえる面をもっている。

SE408Sのコンストラクションは、ダイキャストフレームにヒートシンクを兼ねさせることを含め、
高く評価したいのだが、だからといって問題点がないわけでもない。

まず重量物の電源トランスが片持ちになっている。
このことは平滑コンデンサーに関してもいえる。

現代アンプの、よく考えられているコンストラクションを見た目には、
SE408Sの構造から来る問題点は、少なからず音に影響を与えていることは容易に想像できる。

では電源トランスが片持ちにならないように、反対側になんらかのフレームを用意するのか。
それはみっともないことになる。
解決方法は意外に簡単である。

SE408Sを水平に設置するのではなく、垂直に設置すればいいだけだ。
ダイキャストフレームがフロントではなく、ボトムになるようにする。
こうすることで電源トランスもコンデンサーも垂直配置になるし、
増幅回路の基板に関しても、水平配置では、片チャンネルの基板が下側にくるため、
左右チャンネルの条件があまり等しいとはいえなかったが、垂直設置にすれば、
増幅回路の基板も垂直になり、左右チャンネルの条件はそうとうに等しくなる。

SE408Sを垂直設置した音はまだ聴いていないが、
水平配置よりも音場の拡がりは増すはずだし、
帯域バランスもより低域がしっかりしてくるものと予想できる。

それに垂直設置したときのSE408Sは、まさにプロ用アンプモジュールそのものに見えてくる。

Date: 7月 24th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(ロゴはかわる・その3)

マークレビンソンの初期のモデルは、LNP2、JC2、JC1などである。
これらのアンプの内部はモジュールユニットが使われている。
これが当時のマークレビンソンのアンプの特徴でもあった。

マークレビンソンのロゴ上段には、三角形の記号がある。
回路図でアンプを表す記号である。
しかもNFBをかけていることを表すように、出力から入力へのフィードバックも描かれている。

細かいことをいえば、この記号は反転アンプを表しているともいえ、
LNP2やJCのモジュール内部がどうなっているのか、まったく情報がなかったあのころ、
私はもしかすると反転アンプになっているのかもしれない、と思ったこともある。

現在のマークレビンソンのロゴは下段のLevinsonが、
従来のロゴよりも横に長くなったため、この記号も横に長くなっている。

現在のマークレビンソンには、創始者のマーク・レヴィンソンはとっくにいないし、
アンプ内部も密閉モジュールは採用していない。

LNP2やJC2が現役モデルだったころ、
マークレビンソンのロゴは、アンプの記号を含めて、うまいな、と思ったことがある。
マーク・レヴィンソンが次につくった会社チェロ(Cello)のロゴよりも、うまくいっている。

そのロゴをいまも使っている。
けれど私の目には、どう見ても改悪されたとしか映らない。
中途半端な変更を加えるぐらいなら、まったく別のロゴをつくればいいのに、と思う。
その方が、いまのマークレビンソンのアンプに似合うはずだ。

Date: 7月 24th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・附録)

JBLのSG520、SE400S、SA600は当時どのくらい高価だったのか。
ステレオサウンド 3号を開いてみると、
SA600は200,100円とある。ラックスのSQ38Dsが54,500円のころである。

SG520は248,000円。マッキントッシュのC22は172,000円、マランツのModei 7Tが160,000円、
QUADの22が44,000円、ラックスのPL45が72,000円だった。

SE400Sは143,500円。マッキントッシュのMC275が274,000円、マランツのModei 15が195,000円、
QUADのIIが41,000円(一台)、ラックスのMQ36が128,000円だ。

ステレオサウンド 38号「クラフツマンシップの粋(2)」の中でもSG520の価格について出ている。
アメリカで450ドルで、日本で25万円とあり、いま(1976年)のマークレビンソンみたいなものでしょう、とも。

輸入元・山水電気の1967年の広告を見ると、
SE400Sは156,800円、SE408Sが148,500円とある。他のモデルはステレオサウンド 3号掲載の価格のまま。

1968年の広告では、SG520以外は多少高くなっている。
SA600が247,500円、SE400Sが173,000円、SE408Sが159,500円である。

ステレオサウンド 3号は580円だ。

Date: 7月 23rd, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(ロゴはかわる・その2)

マークレビンソンのロゴも、いつのまにかかわっていた。
いまのロゴにかえた理由は、わからないわけではない。
おそらくレビンソン(Levinson)のLを、目立たせたいからであろう。

1989年ごろ、リッスン・ヴュー(Listen View)というオーディオ雑誌が創刊された。
ステレオサウンドと同じで季刊誌で、途中でサウンドステージという誌名に変更された。

リッスン・ヴューのロゴは上下二段だった。
ListenのLを大きくし下段にまで及んでいた。
そのせいなのだが「L」をアルファベットではなく括弧として捉えられることがあったそうだ。
Listen Viewがisten Viewと認識される。
リッスン・ヴューではなく、イステン・ヴューと読む人が少なからずいた、と聞いている。

Listen Viewのロゴが優れたデザインであったとはいわないが、
Listen Viewときちんと読めた。これを「L」なしのisten Viewと読む人がいるとは信じられなかった。

けれどマークレビンソンのロゴが変更されて、
これも同じ理由(似た理由)なのだろう、と思うとともに、
そういう人がいるということも認識を新たにした。

マークレビンソン(mark levinson)のロゴは基本的にはすべて小文字で、
Lのみが大文字で、上下二段になっている。
つまり最初のmの左端とLがつながっている。
mとLで上下を挟まれるようなかっこうでeがある。
そのため、Lが、ここでも括弧として認識されたのだろう。
そうなるとマークレビンソン(mark levinson)がマークエビンソン(mark evinson)になってしまう。

それでLとeの位置関係が大きく変更され、
下段のLevinsonの横幅が、以前よりも長くなっている。
これに伴い、もうひとつの変更が加えられている。
上段のmarkのあとに続く記号である。

Date: 7月 22nd, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL SE408S・その11)

JBLの一連のアンプの音といえば、私にとっては、瀬川先生の文章が浮ばないことは絶対にない。
1981年のステレオサウンド別冊の巻頭「いま、いい音のアンプがほしい」に書かれていること、
そのことがそのままJBLの音と直結している、といってもいい。
     *
 昭和41年の暮に本誌第一号が創刊され、そのほんの少しあとに、前記のプリメインSA600を、サンスイの新宿ショールーム(伊勢丹の裏、いまダイナミックオーディオの店になっている)の当時の所長だった伊藤瞭介氏のご厚意で、たぶん一週間足らず、自宅に借りたのだった。そのときの驚きは、本誌第9号にも書いたが、なにしろ、聴き馴れたレコードの世界がオーバーに言えば一変して、いままで聴こえたことのなかったこまかな音のひと粒ひと粒が、くっきりと、確かにしかし繊細に、浮かび上り、しかもそれが、はじめのところにも書いたようにおそろしく鮮度の高い感じで蘇り息づいて、ぐいぐいと引込まれるような感じで私は昂奮の極に投げ込まれた。全く誇張でなしに、三日三晩というもの、仕事を放り出し、寝食も切りつめて、思いつくレコードを片端から聴き耽った。マランツ♯7にはじめて驚かされたときでも、これほど夢中にレコードを聴きはしなかったし、それからあと、すでに十五年を経たこんにちまで、およそあれほど無我の境地でレコードを続けざまに聴かせてくれたオーディオ機器は、ほかに思い浮かばない。今になってそのことに思い当ってみると、いままで気がつかなかったが、どうやら私にとって最大のオーディオ体験は、意外なことに、JBLのSA600ということになるのかもしれない。
 たしかに、永い時間をかけて、じわりと本ものに接した満足感を味わったという実感を与えてくれた製品は、ほかにもっとあるし、本ものという意味では、たとえばJBLのスピーカーは言うに及ばず、BBCのモニタースピーカーや、EMTのプレーヤーシステムなどのほうが、本格派であるだろう。そして、SA600に遭遇したのが、たまたまオーディオに火がついたまっ最中であったために、印象が強かったのかもしれないが、少なくとも、そのときまでスピーカー第一義で来た私のオーディオ体験の中で、アンプにもまたここまでスピーカーに働きかける力のあることを驚きと共に教えてくれたのが、SA600であったということになる。
     *
本誌第9号にも書いた、とある。
ステレオサウンド 9号(1968年12月発売)は創刊3周年記念号で、
特集は「現代オーディオ人群像」で、16人の読者が登場されている。
続いて「再生装置拝見」で、
瀬川冬樹、菅野沖彦、上杉佳郎、山中敬三、四氏のリスニングルームが紹介されている。

ここでも瀬川先生はJBLのアンプ(SA600)について書かれている。
一部重なるところはあるものの、こちらもぜひ読んでほしい。
     *
 JBLのアンプが大変優れたものらしいとは、外誌などで承知していたが、むろんまだ聴かない音の真価が想像できるものではない。ひょんなことから、サンスイのショールームにサンプルで置いてあったSA600を借りられることになった。
 あのときの音の驚きは決して忘れない。大げさに云えば驚天動地だった。突然、スピーカーの音が一変したのだったから。接続を終えて音が出たのは深夜だった。小さな音量なのに、聴き馴れたレコードが様相を一変して、まるで、精密にピントの合った写真を拡大鏡でなめるようにのぞいて行くみたいに、楽器のディテールが、オーケストラのパートパートが、演奏家の息づかいが、気配が、眼前に展開しはじめたのだ。いったいこれはどういうことなのだろう。いままでのアンプがどうかしていたのだろうか。我を忘れて、思いつくレコードを息つく間もなくかけかえて、耳を澄ました。
 わたくしは緊張してものを言っているのだろうか。決してそうではない。あの驚きは、どんな書き方をしたところで、とうてい言い尽くせるものではない。まる三日というもの、ほとんどスピーカーの前に坐りこんだまま、そしてそば狗奴驚きの命ずるままに、あとからあとからレコードを聴き続けた。明らかに、わたくしの中でひとつの価値感が変って行ったのだった。
     *
まだまだ書き写していきたいが、このへんにしておく。
《明らかに、わたくしの中でひとつの価値感が変って行ったのだった》
まことそうだったのだと思う。

SA600はSE408Sをベースに、コントロールアンプ機能を取り付け、プリメインアンプ化したモノ。
SA600のリアパネルは、SE408Sのダイキャストフレームがそのまま使われている。
そのため入力端子はリアパネルには取り付けられず、アンプ底部にまとめられている。

このSA600の存在があるから、私にとってのJBLのパワーアンプといえば、
SE401ではなく、SE408S(SE400S)ということになる。