「菅野録音の神髄」(その17)
ステレオサウンド 17号(1970年12月)に、
「ディレクター論 ロイ・デュナンを語る」がある。
菅野先生と岩崎先生の対談による記事だ。
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岩崎 「ウェイ・アウト・ウェスト」は、じつに素晴らしいレコードですね。ロリンズの最大傑作といってもいい。
菅野 シェリー・マンのドラムもよくとらえらているしね。あれはやはり、ロリンズ
のもっている音にロイ・デュナンのキャラクターがプラスされて、ああいう音になったのでしょうね。
それでね、この間、油井さんがいっていられたんだけど、日本のジャズ愛好家というのは、ほとんどロイ・デュナンとかルディ・ヴァン・ゲルダーといった人たちの耳をとおしてジャズを聴いてきたようなものだ、と。
ぼくも、そう思うんだ。やっぱりこういった人たちの感覚のふるいを通して聴いてきた。だから、じっさいにむこうのジャズ・メンが来たときに、その演奏にふれて、あれっとおもったりしてね(笑)。
岩崎 ほんとうに違うんだな。アート・ブレイキーが来たときに、どんなに凄い音なのかと思ったら、意外に爽やかな音でこんな調子じゃなかったと(笑)。圧倒されるような音を期待してたんですね。ほんとうにレコードとは違うんだと思いましたね。ぼくらはヴァン・ゲルダーのとったブレイキーの音に慣れ親しんでいたわけですよね。
菅野 ロイ・デュナンが、最初からブレイキーをとっていたら、はっきりととって、もっと実際に近かったてしょうね。
岩崎 そこが大切なことでしょう。もしブレイキーの音を、ロイ・デュナンが録音したものを聴いていたら、本物を聴いて、なるほどなと思ったに違いない。
ところが、それまではブルーノートのブレイキーの迫力ある音ばかり聴いていたでしょう。だから、すっかり面喰らってしまったわけ。前から三番目辺で聴いていたのだけれど、タッチは軽やかだし、スカッとした音ですね。
菅野 それはよかったからまだいいんだけれど、逆につまらない場合もあってね。ああ、これならレコードの方がいいやって(笑い)。
だいたいルディ・ヴァン・ゲルダーが手をかけたミュージッシャンというのは、迫力のあるミュージッシャンだと感じるものね。そして、ロイ・デュナンが手をかけたひとは、みんなハイ・センスで、クールな音をもっていると感じてしまうでしょう。不思議なことですよ。
岩崎 だから音楽をとらえるということは、大変なことなんだな。
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こまかな説明は省いていいだろう。
同じことが、ここでも語られているのだから。