Date: 1月 31st, 2018
Cate: 菅野沖彦
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「菅野録音の神髄」(その9)

江崎友淑氏の話は、曲と曲とのあいだだけだったから、
トータルしてもそれほど長くはなかった。
正直もっと話を聞きたいと思うほど、興味深い内容だった。

ピアノ録音についての話があった。
これは初めて聞くことだった。

どんな人でも、アマチュアであろうとプロフェッショナルであろうと、
ピアノを録音しようとした際、マイクロフォンの正面をピアノに向ける。

マイクロフォンの高さや角度、ピアノとの距離などは人によって違ってきても、
ピアノに向けずに、という人はいないだろう。

江崎友淑氏が菅野先生とピアノ録音をやったとき、
マイクロフォンのセッティングは江崎友淑氏がやられた。
その時、菅野先生が「こういうセッティングはどうだろう」とやられたのは、
マイクロフォンの正面をピアノではなく床に向けてのセッティングだった。

ピアノ録音については、ステレオサウンド 47号「体験的に話そう──録音と再生のあいだ」で、
保柳健氏と対談をされている中でも語られている。
     *
保柳 あなたのピアノのとり方を見ていると、確かに私なんかより、ずっとピアノに接近しているのですね。いつだったか、それこそ、深町純のピアノをいろいろな形でとってもらった。全体に私より、イメージがアップなんてす。あの場合スタジオでしたから、まわりの雰囲気というのは全くないわけです。
菅野 雰囲気でしょ、あなたは。そこが違うんです。私は雰囲気ではないんです。響きのよいホールでは、スタジオよりマイクロフォンを遠くへ置きます。それは雰囲気をとるためじゃないのです。それは、そういう音をとるためなのです。良いソノリティを持った複雑な成分、間接の成分を持ったホールの場合には、雰囲気ではなくて、そのようなホールで鳴っているピアノの音を、そうした方が良い音になるから、そうする。決して雰囲気のためではない。あなたをホールへ導きますよとか、こういうホールで鳴っているんですよと伝えるために、やっているのではないのです。だからスタジオへ行くと、全然楽器の響きを助けないわけです。無駄ですからね。むしろ、楽器そのものの音をとろうと、アップになります。
     *
この対談は47号だけでなく、48号、49号の三回連載であり、濃い内容だ。
40年前、ステレオサウンドは、こういう記事をつくっていたのだ。

この対談からは、もう少しばかり引用していく。

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