Archive for category D130

Date: 4月 27th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その42)

インピーダンスは電磁変換効率を把握する上で重要な項目といえる。

パワーアンプが真空管から半導体へと増幅素子の変化があり、
真空管アンプ時代では考えられなかったほどの大出力が、家庭内で気楽に使えるようになった。

ハイパワーアンプの出現がスピーカーの能率を低下させる理由のひとつともいえるし、
スピーカーの周波数特性を伸ばすために能率が低下し、補うためにアンプの出力が増していった、ともいえる。

真空管アンプ、それも小出力しか得られなかった時代にはスピーカーの能率は100dBをこえるものが珍しくなった。
それが真空管アンプも出力をましていくようになり、
スピーカーの能率も以前ほど100dBをこえるものは少なくなっていった。
それでも90dB程度は、能率が低いスピーカーといわれていた。

それがステレオになり大型スピーカーシステムを家庭内にペアで置くことの難しさが発生してくるようになると、
スピーカーの小型化が望まれるようになるし、
そのころのスピーカーの常識としてはサイズが小さくなれば能率も低くなりがちである。

とにかくスピーカーの能率は低くなっていく一方で、
90dBを切るモノも珍しくなくなっていった。

そういう流れの中で、JBLから1989年、Project K2 S9500が登場した。
一部では高能率スピーカーの復活、という表現もされたスピーカーシステムである。

Date: 4月 18th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その41)

もし私が後半の試聴で聴くカートリッジ12機種に、スタントンのLZ9Sを選択していたら……。
井上先生はどういう手段で鳴らされたであろうか。

井上先生は、ステレオサウンド 75号の試聴で、
トーレンスのMCHIIにオルトフォンの昇圧トランスT2000を組み合わせ、
試聴記にもあるようにひじょうにいい結果が得られた。

いうまでもなくMCHIIのインピーダンスはオルトフォンのカートリッジよりも高い。
オルトフォンが3Ωとか5Ωの値なのに対して、EMT・TSD15をベースとするMCHIIは24Ω。

T2000はオルトフォンのカートリッジMC2000専用として開発されたトランス。
だから1次側のインピーダンス(入力インピーダンス)は、3Ωと発表されている。
ふつうに考えればMCHIIの昇圧トランスとしてはインピーダンスのマッチングがとれず、
組合せとしては、まずT2000の選択はあり得ない。

そんなことは百も承知で、井上先生はMCHIIとT2000を組み合わせられた。
実際、この時の音はよかった。

井上先生の隣で、その音を聴いていて「さすが」だとおもっていた。

そんな井上先生だから、スタントンのLZ9Sの昇圧手段としてヘッドアンプにこだわることなく、
あれこれ試された可能性は高い。
このことを、いまおもっている。

ステレオサウンド 75号は1985年。このときの私は未熟だった、といまおもう。
それに、音に対する貪欲さ・執拗さが足りなかった、とおもう。

Date: 4月 17th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その40)

いまごろ思っても仕方のないことなのだが、
スタントン、ピカリングのローインピーンダンスのMM型カートリッジを、
輸入元推奨の条件以外でも積極的に試聴条件を変えて聴いておけばよかった、と思っている。

1985年のステレオサウンド 75号のカートリッジの特集の記事で、スタントンのLZ9Sも聴いている。
この記事は井上先生単独による前半の試聴記事、
それからいくつかのカートリッジをピックアップして、
井上先生による使いこなしを含めた試聴記と読者による試聴記が載っている。

75号のこの記事に登場している読者の名前は大村さんである。
この大村さんとは、私である。
井上先生との短い対談の形で試聴記を載せているため、
フルネームを考える必要はなく、どうしようかと少し考え、
瀬川先生の本名である大村を借りたわけである。

この記事の担当者も、当然私で、
スタントンのLZ9Sもこのとき聴いている。
にも関わらず、音の印象を思い出せない。
かろうじて井上先生の試聴記を読んで、そういう音だったかも……、といった程度である。
やはり、このときも音の印象を薄く感じたのだと、いまはおもう。

このときもLZ9Sの試聴に昇圧トランスは使用していない。
試聴用アンプのアキュフェーズのC200L内蔵のヘッドアンプで試聴している。

記事の後半で、試聴した30のカートリッジから12機種の大半を選んだのも、私である。
スタントンのLZ9Sは選ばなかった。
選んでいれば、昇圧トランスとの組合せも試した可能性はある。
ローインピーンダンスのMM型カートリッジの可能性を、音として実感できていたかもしれない。

Date: 4月 16th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その39)

スタントン、ピカリングにしろ、
推奨負荷インピーダンスが100Ωとなっているものの、
内部インピーダンスの値については、どのくらいなのか調べてみると、
当時の輸入元であった三洋電機貿易の広告に、
スタントンの980LZSのスペックとして、インダクタンス:1mH、直流抵抗:3Ωと載っている。

直流抵抗=内部インピーダンスとはならないものの、
スタントン、ピカリングのローインピーダンスMM型カートリッジは、
そうとうにローインピーンダンス化されている。
つまりスタントン、ピカリングのローインピーンダンス型にはヘッドアンプのみでなく、
昇圧トランスの使用も充分考えられるし、
スタントン、ピカリングのローインピーンダンス型と同じ時代の昇圧トランスの中には、
従来のトランスのバンドパスフィルター的な特質を破るような広帯域のトランスもいくつか出ていた。

そういったトランスと組み合わせた時、
負荷インピーダンスが下ればそれだけ電流値は高くなるわけで、
電磁変換効率の面からいえばトランスに分がある、といえることになる。

こうなってくると、ローインピーンダンスのMM型カートリッジにも技術的なメリットがある、といえる。
スタントン、ピカリングのローインピーンダンス型よりも、
たしかにオルトフォンのSPUのほうがまだ電磁変換効率は高い。
けれどSPUではまず無理といえるくらい、
ピカリングとスタントンのローインピーダンス型は軽針圧を実現している。

980LZSの針圧範囲は0.5〜1.5gである。
MC型カートリッジの軽針圧の代表といえば、当時はデンオンのDL305だった。
それでも1.2g ±0.2gである。

980LZSの適性針圧が1gとして、DL305の最低針圧と同じになるが、
980LZSではさらに1gを切ることも可能である。
もっともそのためにはトーンアームの選択、入念な調整も要求されるし、
レコードを大切にする意味でも軽針圧が必ずしも優れているとは考えていないけれど、
それでもMC型とMM型の、うまい具合にいいところどりを実現している、ともいえよう。

980LZSではライズタイムも発表されている。10μsecとなっている。
ほかのカートリッジでライズタイムを発表しているものを知らないから比較しようにもできないのだが、
三洋電機貿易の広告には、通常のMC型の約2倍と書いてある。

そしてMM型ならではの針交換も簡単さも、大きな特徴である。

Date: 3月 29th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その38)

HIGH-TECHNIC SERIESにも長島先生が書かれているように、
出力電圧と負荷インピーダンスはカタログに発表されているわけだから、
それぞれのカートリッジの出力電力を計算して、
どのくらいの電磁変換効率持っているのかを、知っておくのは、
カートリッジの特性を見ていく場合、比較していく場合に必要なことでもある。

スタントン、ピカリングによるローインピーダンスのMM型カートリッジの出力電力はどのくらいになるのか。
0.3mVはシュアー V15/IIIの出力電圧の約1/10以下、
負荷インピーダンスは100Ωだから47kΩよりもずっと小さな値。
出力電圧の二乗を負荷インピーダンスで割ってみると、0.9nWとなる。
V15/IIIの約3.4倍となる。

SPUの41.66nWにはまだまだ及ばないものの、
一般的なMM型カートリッジよりも高い電磁変換効率ということになる。

ならば、これだけでも通常の47kΩ負荷のMM型カートリッジよりも、
ローインピーダンスのMM型カートリッジは技術的にも有利になるかとなると、微妙なところがある。

出力電圧ではなく出力電力の高さをいかすには、
一般的なヘッドアンプやハイゲインのフォノイコライザーでは技術的に無理といえる。

ヘッドアンプ、ハイゲインのフォノイコライザーを使っているかぎり、
優位となるのは出力電圧の高さであり、
出力電力の高さをいかすには昇圧トランスか、
入力抵抗を省いた反転型のヘッドアンプ(つまりI/V変換アンプ)ということになる。

Date: 3月 29th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その37)

ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIESの2号目は長島先生によるMC型カートリッジの研究だった。
この本の60ページに、MC型カートリッジの特性の見方という章がある。
そこではオルトフォンのSPUとMM型カートリッジの代表としてシュアーのV15/IIIとの比較がなされている。

V15/IIIの出力電圧は3.5mV、SPUは0.25mV。
これだけを比較すれば圧倒的にV15/III(つまりMM型カートリッジ)のほうが、
発電効率が高い、と受け取れる。

HIGH-TECHNIC SERIESが出たのは1978年、
このころは私もそう思っていた。
インピーダンスのことは知ってはいても、出力電圧のことしか考えていなかったし、
出力電力については考えが及ばなかった。

だから長島先生によるSPUとV15/IIIの出力電力の比較は新鮮だった。

出力電力には負荷インピーダンスが関わってくる。
SPUは1.5Ω、V15/IIIは47kΩ。
そして出力電力の求め方は出力電圧の二乗を負荷インピーダンスで割った値であり、
オルトフォンSPUの出力電力は41.66nW、V15/IIIの出力電力は0.2606nWと、
出力電圧とは逆転してSPUのほうが大きい値となり、
その差も出力電圧の比較以上に大きなものとなっている。

つまりMC型カートリッジは電磁変換効率がMM型カートリッジよりも高い、といえる。
コイルの巻枠に磁性体を採用したSPUは、空芯MC型カートリッジよりもさらに高効率となる。

長島先生は、この電磁変換効率を
「針先変位に対してどのような反応を示すかのバロメーターとなる」と書かれている。

Date: 3月 28th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その36)

ピカリングのローインピーダンスのMM型カートリッジXLZ7500Sは、
ステレオサウンドの試聴室で新製品の取材の時に聴いている。

技術的なメリットは何もないのでは? と思いつつも、
出てきた音は、ローインピーダンス化したことで得られた音なのか、
それとも各部の改良によって得られたものなのか、そのあたりははっきりしないけれども、
たしかにいままで数多く聴いてきたMM型カートリッジとはなにか違う質の良さはあったように記憶している。

でも、その記憶もここまでであって、もっと細かなことを思い出そうとしても思い出せない。
いい音だとは思って聴いていても、その音そのものの印象は強くなかった。
だからなのか確かな記憶として残っていない──、としか思えない。

スタントンにしてもピカリングにしても、ローインピーダンスのMM型カートリッジは、
いわば特殊な製品であって、ならば、ほかの一般的な仕様の製品以上に、
それならではの魅力を私は感じたい、と思うほうなので、よけいに印象が薄い。

通常のMM型カートリッジでも、印象に強く残っているカートリッジはいくつかある。
それらと比較したときに、あえてヘッドアンプやハイゲインのフォノイコライザーアンプを用意してまで、
これらローインピーダンスのMM型カートリッジを使う意味を、私は見出せなかった。

私はそんな受け取り方をしてしまったわけだが、
ピカリングもスタントンもカートリッジの老舗メーカーである。
ただ通常のMM型カートリッジとは違うためだけの製品という理由だけで、
ローインピーダンス仕様を開発したわけではないはず。

ハイゲインのフォノイコライザーアンプならば信号が通過するアンプの数は、
通常仕様のMM型カートリッジと同じとなるが、
ヘッドアンプ使用となると、アンプを1ブロック多く通ることになる。
それによるデメリットが発生してもローインピーダンス化することのメリットを、
スタントン、ピカリングの老舗カートリッジのメーカーは選択したわけである。

Date: 3月 7th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×八・音量のこと)

岩崎先生にとってビリー・ホリディの”Lady Day”が、特別な一枚であったことは、
「オーディオ彷徨」おさめられている「仄かに輝く思い出の一瞬──我が内なるレディ・ディに捧ぐ」、
それに「私とJBLの物語」を読めばわかる。
     *
その時には、本当にビリー・ホリディを知っていてよかったと心底思ったそして、D130でなくてもよいけれどそれはJBLでなければならなかった。
     *
このとき岩崎先生は、D130で”Lady Day”を聴かれている。
「JBLによって、ビリー・ホリディは、私の、ただ一枚のレコードとなり得た」、
その”Lady Day”を聴かれた音量は、ひっそりとしたものだったではないか、
そういう音量でも聴かれたのではないか、とおもうことがある。

Date: 2月 18th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×七・音量のこと)

アメリカでは1941年にテレビ放送が始っている。
アメリカでのテレビの価格がどの程度だったのか知りはしないけれど、
やはりこの時代のモノとしては非常に高価だったであろうと思う。

テレビはその後急速に普及していくけれど、この時代、
各家庭に一台あったとは思えない。
それにテレビ放送の内容も、いまとはずいぶん違っていたであろう。
24時間放送ということもなかったはず。

ランシングが生きていた1949年までは、テレビはアメリカでもそういうモノだったとしたら、
家庭の静けさは、テレビがひとり一台といっていいぐらい普及している時代とではずいぶん違ってくる。

それから日本では多くのところでBGMが流れていることが多い。
1940年代のアメリカでは、どうだったのだろうか。
LPも登場していない、テープ録音器もまだない時代では、
長時間を音楽を流しっ放しにしておくのは面倒なことである。
街中でBGMが流れていることはなかったのではなかろうか。

こんなことを考えていると、ランシングが生きていたころには、
いまの時代のような騒々しさはなかったようにおもえてくる。

すくなくともスピーカーから出てくる音による騒々しさはなかったはず。

そういう時代において、SPを音源として音楽を聴くときに、
音量が大きかったとは想像しにくい。
D130であっても、意外にも控え目な音量で音楽を鳴らしていたのではないか──、
そうおもえてならない。

Date: 2月 17th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×六・音量のこと)

アクースティック蓄音器といっても、卓上型のさほど大きくないものから、
クレデンザのような大型のものまである。
アクースティック蓄音器の音量は、蓄音器そのもの大きさとほぼ比例関係にある。

アクースティック蓄音器はあまり音量が大きいものではない、というイメージを漠然ともっている人は、
クレデンザを聴けば、音量の意外なほどの大きさに驚かれるかもしれない。

とはいっても電気蓄音器になり現在のように数100Wの出力が安定して容易に得られるようになり、
ボリュウムのツマミを時計回りにまわせば、
アクースティック蓄音器しか聴いたことのない人は心底驚くほどの音量を実現している。

アクースティック蓄音器には音量調整がないわけだから、
仮にもっと大きな音量が可能だとしても、家庭で音楽を聴くにふさわしい音量としている、とも考えられる。

蓄音器で鳴らすのはSP。
SPは、現在のハイビットのプログラムソースと比較すれば、ずっとダイナミックレンジは狭い。
16ビットのCDと比較しても、アナログディスクのLPと比較しても狭い。

音量の設定は人それぞれではあるが、
それでも聴きたいディスク(プログラムソース)に記録されているもっとも小さな音が聴こえるようには、
最低でも音量を設定する。

その最低音量から上は、聴く音楽によっても、聴く部屋の条件、聴く(鳴らす)人の好みによっても、
その日の気分によっても変ってこようが、
すくなくとももっとも小さな音は聴きとれるようにはしよう。

そうすればダイナミックレンジが広いほど、最大音量も必然的に大きくなってくる。
SPではダイナミックレンジもそう広くないから、最低音量をハイビットのソースやCDと同じにしても、
最大音量は控え目な音量となる。

Date: 2月 15th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×五・音量のこと)

ランシングは1902年生れ。
ランシングと同世代ののアメリカの人たちが、家庭で音楽を聴くときはなんだったのだろうか。

アメリカでは1920年にAM放送が始まっている。
これ以前となるとアクースティック蓄音器ということになる。
ディスクはいうまでもなくSPである。
アクースティック蓄音器は、アンプ、スピーカーを搭載して、いわゆる電蓄になる。
ここでもまだディスクはSPである。

1939年、アメリカでFM放送が開始される。
1948年、コロムビアが長時間レコード,つまりLPを発表する。

1949年まで生きていたランシングにとって、
家庭で音楽を聴くための手段としてあったのは、上に挙げたものということになる。

D130はLP以前に登場したスピーカーユニットである。
D130で家庭で音楽を聴くということは、
SPだったり、ラジオ(AMとFM)ということになり、
この流れの中で音楽を聴き、音量を聴き手は設定していた、といえよう。

となるとアクースティック蓄音器での音量というのが、
1902年ごろに生れたアメリカの、家庭で音楽を聴いてきた人にとっての、ひとつの基準となっている。
そう考えることはできないだろうか。

Date: 2月 6th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続々続々・音量のこと)

伊藤アンプで鳴らすJBLのハイエフィシェンシー・スピーカーの鳴り方は、
4343に代表されるスタジオモニター系のスピーカーを
ハイパワーのトランジスターアンプで鳴らしたときの鳴り方とは、
同じ音量で鳴らしたとしてもそれは当然のこととはいえ、まったく違う。
周波数レンジの広さが違うとか、指向特性の違いとか、そういった違いではない、
もっとスピーカーにとって本質的なことが、そこにはある。
きっとある、と私は感じている。

ハイパワーアンプだから大音量で聴くとは限らない。
ひっそりと鳴らすことだってある。
D130ほどの能率があれば、最大音圧レベルでJBLのスタジオモニターをハイパワーアンプで鳴らすのと、
差はない、といえる。
D130、2200にはスピーカーユニット側に、スタジオモニターではアンプ側にそれぞれ余裕があるからだ。

ひっそりとした音量で鳴らされるJBLのスタジオモニターと、
伊藤アンプで鳴らされた高能率のJBLとのあいだに存在する「差」とは、
いったいなんなのだろうか。

考えてもしかたのないことかもしれない。
それが、スピーカーの違いといってしまえば、そうなのではあるのはわかっていても、
やはり考えてしまう。

そんなふうに考えてしまうのは、ここにランシングがD130を、
どんな音量で鳴らしていたかの手がかりがあると感じているからなのかもしれない。

それに時代が違う。

Date: 2月 2nd, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続々続・音量のこと)

マッキントッシュのMC2300は出力にオートフォーマーをしょっている。
一種のバンドパスフィルターでもあるわけだから、
一般的な、出力トランスやオートフォーマーを持たないパワーアンプと比較すれば、
MC2300の周波数特性も多少は狭いといえても充分な周波数特性は確保しているし、
349Aアンプは可聴帯域で、低域も高域も下降し始めているのだから、
このアンプと比較すればずっと広帯域のパワーアンプ、しかも出力も300Wとひじょうに大きい。

8Wと300Wの出力の差は、そのままアンプの規模の違いにもなっている。
349Aはモノーラル構成、MC2300はステレオ仕様という違いもあるのだが、
重量、容積ともにMC2300は物量投入のパワーアンプであり、
349Aのアンプはかわいらしい感じすらする小型のアンプだ。

しかも349Aのアンプは、ウェストレックスのA10の回路そのままだから、
出力トランスの2次側からのNFBはかかっていない。
出力段の349AもNFBループには含まれていない。

そういうアンプが、それまでのイメージをくつがえす音を鳴らしてくれた。
その音は、まさに井上先生がいわれている
「比較的に小音量で鳴らすときにはハイファイというよりは、ディスクならではの蓄音器的なノスタルジックな響き」
なのだった。

8Wはパワーアンプの出力としては小さな数字ではあるものの、
D130系のユニットにとっては、音量の制約は気にすることのない必要十分な出力なのだが、
349Aのプッシュプルアンプで鳴らすJBLのユニットは、
むしろ大音量で鳴らされるよりも小音量で鳴らされることを望んでいるかのような鳴り方に、
私の耳には聴こえた。

Date: 2月 2nd, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続々・音量のこと)

Nさんが、MC2300から次にどういうパワーアンプへとうつられたかについては別項にてすこしふれている。
記憶されている方もおられるだろうが、もういちど書いておく。

Nさんはあるところでウェスターン・エレクトリックの350Bのプッシュプルアンプを聴いて、
それ以来、ウェストレックスのA10の回路をベースとしたアンプづくりへと、大きくシフトした。

そのNさんのところで、350Bと同じくウェスターン・エレクトリックの349Aのプッシュプルアンプを聴いた。
伊藤先生が無線と実験に発表されたアンプそのものである。
出力は8W、回路構成はウェストレックスのA10そのまま、使用真空管に違いがだけだ。

このとき鳴ってきた音は、いまでもはっきりと憶えている。
スピーカーは変っていない。2220に2440の2ウェイ。
MC2300で鳴らしていたときには、しっとりとした音は、
このウーファーとドライバーの組合せからは出てこないんだなぁ、と短絡的にも思いたくなるほど、
私が求めている音、好む音とはベクトルが違っていた。

それが、なんともいい音で鳴ってくれる。
これならば、クラシックも聴ける、というよりも、この音が欲しい、とすら思えるほどの変りようだった。

音量は控え目だった。
良質の蓄音器を思わせる音だった。
低域も高域もそれほどのびていない。
はっきりいえばナローレンジの音なのに、
MC2300で鳴らしたときよりもナローであることを意識させない。

無線と実験に載っている349Aのプッシュプルアンプの周波数特性はそれほどよくない。
このアンプもまたナローだった。

Date: 2月 2nd, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続・音量のこと)

たとえばQUADのESL。
ピーター・ウォーカーがESLを開発した1950年代、
どのくらいの音量で音楽を聴いていたのかは容易に想像がつく。

当時のQUADのパワーアンプはKT66のプッシュプル構成のII。
出力は15W。しかもESLだから、スピーカーは低能率。
おのずと最大音量と制限されるわけだが、
おそらくピーター・ウォーカーは、それで音量が不足とは思っていなかったはず。

控え目な音量で、音楽を聴くのであれば、ESLとIIと組合せでも音量的な不満は生じない。

D130となると、そこが違ってくる。
だから、ランシングがどのくらいの音量で音楽を聴いていたのかは、
ランシングとともに音楽を聴いたことのある人に訊く以外に、正確なことはわからない。

ただ確たる根拠もなくおもうのは、意外にもそれほど音量は大きくなかったかもしれない、ということ。

私がステレオサウンドにはいったころ、Nさんというジャズの熱心な聴き手の先輩がいた。
彼はJBLの2220を、ステレオサウンド 51号の記事で製作したエンクロージュアにいれ、
中高域は2440と2397ホーンによる2ウェイというシステムだった。
最初のころ、パワーアンプはマッキントッシュのMC2300。

Nさんの住むマンションには何度も何度も行った。
音を聴かせてもらった。