D130とアンプのこと(その36)
ピカリングのローインピーダンスのMM型カートリッジXLZ7500Sは、
ステレオサウンドの試聴室で新製品の取材の時に聴いている。
技術的なメリットは何もないのでは? と思いつつも、
出てきた音は、ローインピーダンス化したことで得られた音なのか、
それとも各部の改良によって得られたものなのか、そのあたりははっきりしないけれども、
たしかにいままで数多く聴いてきたMM型カートリッジとはなにか違う質の良さはあったように記憶している。
でも、その記憶もここまでであって、もっと細かなことを思い出そうとしても思い出せない。
いい音だとは思って聴いていても、その音そのものの印象は強くなかった。
だからなのか確かな記憶として残っていない──、としか思えない。
スタントンにしてもピカリングにしても、ローインピーダンスのMM型カートリッジは、
いわば特殊な製品であって、ならば、ほかの一般的な仕様の製品以上に、
それならではの魅力を私は感じたい、と思うほうなので、よけいに印象が薄い。
通常のMM型カートリッジでも、印象に強く残っているカートリッジはいくつかある。
それらと比較したときに、あえてヘッドアンプやハイゲインのフォノイコライザーアンプを用意してまで、
これらローインピーダンスのMM型カートリッジを使う意味を、私は見出せなかった。
私はそんな受け取り方をしてしまったわけだが、
ピカリングもスタントンもカートリッジの老舗メーカーである。
ただ通常のMM型カートリッジとは違うためだけの製品という理由だけで、
ローインピーダンス仕様を開発したわけではないはず。
ハイゲインのフォノイコライザーアンプならば信号が通過するアンプの数は、
通常仕様のMM型カートリッジと同じとなるが、
ヘッドアンプ使用となると、アンプを1ブロック多く通ることになる。
それによるデメリットが発生してもローインピーダンス化することのメリットを、
スタントン、ピカリングの老舗カートリッジのメーカーは選択したわけである。