D130とアンプのこと(その39)
スタントン、ピカリングにしろ、
推奨負荷インピーダンスが100Ωとなっているものの、
内部インピーダンスの値については、どのくらいなのか調べてみると、
当時の輸入元であった三洋電機貿易の広告に、
スタントンの980LZSのスペックとして、インダクタンス:1mH、直流抵抗:3Ωと載っている。
直流抵抗=内部インピーダンスとはならないものの、
スタントン、ピカリングのローインピーダンスMM型カートリッジは、
そうとうにローインピーンダンス化されている。
つまりスタントン、ピカリングのローインピーンダンス型にはヘッドアンプのみでなく、
昇圧トランスの使用も充分考えられるし、
スタントン、ピカリングのローインピーンダンス型と同じ時代の昇圧トランスの中には、
従来のトランスのバンドパスフィルター的な特質を破るような広帯域のトランスもいくつか出ていた。
そういったトランスと組み合わせた時、
負荷インピーダンスが下ればそれだけ電流値は高くなるわけで、
電磁変換効率の面からいえばトランスに分がある、といえることになる。
こうなってくると、ローインピーンダンスのMM型カートリッジにも技術的なメリットがある、といえる。
スタントン、ピカリングのローインピーンダンス型よりも、
たしかにオルトフォンのSPUのほうがまだ電磁変換効率は高い。
けれどSPUではまず無理といえるくらい、
ピカリングとスタントンのローインピーダンス型は軽針圧を実現している。
980LZSの針圧範囲は0.5〜1.5gである。
MC型カートリッジの軽針圧の代表といえば、当時はデンオンのDL305だった。
それでも1.2g ±0.2gである。
980LZSの適性針圧が1gとして、DL305の最低針圧と同じになるが、
980LZSではさらに1gを切ることも可能である。
もっともそのためにはトーンアームの選択、入念な調整も要求されるし、
レコードを大切にする意味でも軽針圧が必ずしも優れているとは考えていないけれど、
それでもMC型とMM型の、うまい具合にいいところどりを実現している、ともいえよう。
980LZSではライズタイムも発表されている。10μsecとなっている。
ほかのカートリッジでライズタイムを発表しているものを知らないから比較しようにもできないのだが、
三洋電機貿易の広告には、通常のMC型の約2倍と書いてある。
そしてMM型ならではの針交換も簡単さも、大きな特徴である。