Archive for category チューナー・デザイン

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その17)

ダイアルスケールとメーターの位置関係。
これか同じだからといって、各社のチューナーのデザインが似てくるわけではない。

ここで挙げたメーターがダイアルスケールの上にあるチューナーを見ていっても、印象はそれぞれに違う。
ソニーのST5000Fはダイアルスケールがフロントパネルの上側に配置されている。
ダイアルスケールの下、つまりフロントパネルの下側半分にチューニングノブをはじめとするツマミが並ぶ。
しかもメーターとダイアルスケールはひとまとめされている。

同じソニーのチューナーでも、その後のST4950、ST5950もメーターが上にくるが、
ダイアルスケールがフロントパネル・センターより下にきている。
それにメーターも視覚的にはっきりと独立しているので、ST5000Fとはずいぶん異る印象をもつ。

それぞれのメーカーの、それぞれの機種についてひとつひとつ書いていくと長くなってしまう。
どうしても書きたいのはひとつである。

それはオーレックスのST420とアキュフェーズのT104について、である。

ST420は1976年当時47800円のチューナー。
T104は1978年当時250000円のチューナー。

ST420は4連バリコン使用のチューナー。
T104はクォーツロック・フレケンシーシンセサイザー式のチューナー。

ST420はウッドケースなし、
T104はウッドケースつき。

ST420とT104、
このふたつのチューナーは、ダイアルスケール、チューニングノブ、メーターの配置が共通している。

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その16)

パイオニアはExclusive F3の前年(1975年)に、TX9900を出している。
TX9900もダイアルスケールの上にメーターが配置されている。

ステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEのバックナンバーをひっぱり出している。
すべての号が手元にあるわけではないが、
1976年ごろからダイアルスケールの上にメーターというチューナーが増えてきている。

トリオは1975年にKT7500でメーターを上にもってきている。
その後、トリオのチューナーはメーターが上にくるモデルが増えている。

テクニクスも1977年に発売したブラックパネルのチューナー、
ST8075、ST8080でメーターを上にしている。

サンスイも大ヒットとなったプリメインアンプのAU607、707、907とペアになるTU707(1977年)がそうだ。
オーレックスのST420も、Exclusive F3と同じ1975年に登場している。

それまで何気なく見てきていたチューナーのデザインが、ここ数年気になってきているし、気づくことがある。
だから古い資料、カタログ誌を眺めては確認している。

ダイアルスケールの上にメーターをもってきた最初メーカーはどこなのか。
HI-FI STEREO GUIDEでわかる範囲では、どうもソニーのST5000Fがそのようだ。

ST5000FはHI-FI STEREO GUIDEによれば、昭和42年10月発売となっている。
1967年──、Exclusive F3の約10年前、
すでに50年近く前から、ダイアルスケールの上にメーターを配置したチューナーが存在していたことに気づいている。

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その15)

パイオニアのチューナー、Exclusive F3の外観で特徴的なことは、
メーターが四つついていることがあげられる。

Exclusive F3登場以前、Exclusive F3と同等クラスのチューナーをみても、メーターは二つ。
電波の強さを示すシグナルメーター、同調の具合を示すチューニングメーターである。
Exclusive F3には、この二つのメーターのほかに、マルチパス検出メーターとピークレベルメーターがついている。

この四つのメーターをダイアルスケールの上部に配置している。
Exclusive F3が登場した1976年当時、
ダイアルスケールとメーターの位置関係は、
多くの機種においてダイアルスケールが上、メーターが下、
もしくはダイアルスケールとメーターを同じ高さに配置するかだった。

Exclusive F3を実際に使っていて気がついたことなのだが、
ダイアルスケールとメーターの位置関係は、メーターが上の方が使い勝手がいい。

フロントパネルを占める大きさでいえばダイアルスケールが主であるかのように感じてしまうし、
Exclusive F3以前に使ったことのあるトリオの普及機(これはメーターが上にある)、
マッキントッシュのMR71はダイアルスケールが上にある。
このときはダイアルスケールとメーターの位置関係に関心をもつことはなかった。

Exclusive F3で私は初めてメーターとダイアルスケールの位置関係について、
関心をもつようになった。トリオの普及機もメーターが上にあったけれど、
最初に使ったチューナーということもあって、そんなことには気づきもしなかった。

40年近くオーディオをやってきて、使ってきたチューナーはわずか三台。
しかもチューナーが手元にあった期間はかなり短い。そんなわけでいまごろ気づいている。

チューナーにおいてダイアルスケールよりもメーターの方が主ではないか、ということ。
バリコンを使用したアナログ式チューナーにおいては、目はメーターの方に向くからである。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その14)

シルエットとデザインについて考えていると思い出すことがある。

私が子供のころ、テレビではウルトラマンをやっていた。
ウルトラマンをやっていたころ、私の住んでいたところではNHK以外の民放局はひとつしかなかった。
そのあともう一局増えて、いまではさらにふえているけれど、
私が上京するまでは、民放は二つだけだった。

チャンネル数が、東京など大都市とくらべてずっと少なかった、そのころの地方では、
テレビ番組の数もそれに比例して少ないわけで、
ウルトラマンの放送する時間帯、
子供のいる家庭ではほとんどウルトラマンにチャンネルを合せていたことだろう。

みんなウルトラマンに夢中になっていた。私もそうだった。

ウルトラマンにのオープニングには、ウルトラマンや科学特捜隊のメカ、
それに怪獣たちがシルエットで描かれていた。

ウルトラマンに続くウルトラセブンでも同じだった。
主題歌が流れるオープニングではウルトラセブン、ウルトラ警備隊のメカ、怪獣が、
やはりシルエットで描かれていた。

シルエットが伝えてくれる、いわゆる情報量は少ない。
だがウルトラマン、ウルトラセブンでのシルエットは、
それだけで何が描かれているのか、子供にもすぐにわかるほど特徴的であった。
つまり、そのことはウルトラマン、ウルトラセブンに登場する、
ウルトラマンやウルトラセブン、車や戦闘機といったメカ、怪獣のデザインが、
シルエットだけで表現されていた、ということでもある。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その13)

パイオニアのExclusive F3は、
Exclusiveシリーズの他のモデルと同じようにヒンジパネルをもつ。
このポケットの中に電源スイッチ、ワイド/ナロウの切替え、ミューティングなどの六つのツマミが並ぶが、
ヒンジパネルを閉じた状態では、チューニング用のツマミだけが、
フロントパネルにある、ただひとつのツマミということになる。

ということはExclusive F3において、フロントパネルを占めるのは、
コントロールアンプのC3ではツマミだったけれど、
メーター、ダイアルスケールといった表示に関するものである。

Exclusive C3をシルエットで表しても、
ツマミの数、配置によって、オーディオ機器を見慣れている人であれば、
このシルエットはExclusive C3だと判断できても、
フロントパネルにツマミがひとつしかないExclusive F3を、
シルエットだけで、そうだということを言い当てられる人がどれだけいようか。

ツマミの少なさから、ほとんどの人がシルエットだけでもチューナーということはわかる。
だが、そこから先、どのメーカーの、どの機種なのか、となると、
各社のチューナーのデザインに相当な関心をもっていて、
しかもそれらを記憶していなければ言い当てることはまず無理である。

このシルエットだけでそれがどのオーディオ機器であるのか、
それがわかることは、オーディオのデザインにおいてどれだけ重要なことなのか、
それともさほど重要なことではないのか、
これについては迷っている。

Date: 10月 1st, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その12)

チューナーには、とにかくダイアルスケールがフロントパネルの大半をしめることになる。
選択した局の周波数を直接数字で表示できるようになるまでは、
ダイアルスケールが、チューナーの顔といえた。

そしてチューニング用のツマミ。
このふたつの要素は、チューナーのフロントパネルに欠かせない。

そして、このダイアルスケールには、なんらかの照明が必要になる。
そしてダイアルスケールの前面には、そのことと関係してアクリルもしくはガラスの透明パネルがつけられる。

フロントパネル自体はアミルであっても、
フロントパネルの視覚的中心となるダイアルスケールは、透明パネルと照明の組合せとなる。

私がチューナーのスケッチをまるでしなかったのも、
ここに理由があるのかもしれない。
デッサンの訓練を受けている人ならばまだしも、
中学生、高校生の素人のスケッチでは、
ダイアルスケールの質感、照明の具合などは表現できるはずがない。
ただパネル、ツマミ、メーターなど輪郭線を描いてるようなものだったから。

無意識にチューナーのスケッチは、素人には無理だとわかっていたのかもしれない。

そしてチューナーには、メーターが必要である。
最低でもシグナルメーターとチューニングメーターはいる。

パイオニアのExclusive F3では、このふたつのメーターに加え、
マルチパス検出メーターとピークレベルメーター、計四つのメーターがつく。

Date: 9月 30th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その11)

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のパイオニアの号における三井啓氏の記事中には、
Exclusive F3のデザインに関する記述もある。
     *
デザイン部にとって、デザインが最も難しく、その進行が最も難航したのは、FM専用チューナーである。等間隔、ロングスケールのダイヤルをどのように処理し、四個のメーターをどのように配置し新しさのなかにどのように高級感を表現するかが彼らの最大のテーマであった。
     *
中学生、高校生のころ、
よくオーディオ機器のスケッチ(落書きといっていいもの)をよく描いていた。
欲しいアンプやスピーカーのスケッチであったり、
自分で考えたオーディオ機器のデザインのスケッチであったりした。

コントロールアンプはよく描いた。
あまり描かなかったのはテープデッキだった。
まったく描かなかったのはチューナーだった。

アンプといっても、コントロールアンプとパワーアンプとでは、そのデザインはまったく違う。
とはいえ、私のなかでは、アンプというひとつの括りの中にあった。
けれどチューナーとなると、アンプの仲間でもないし、デッキの仲間でもない。
入力機器とはいえ、アナログプレーヤーの仲間でもない。

たとえばステレオサウンド 43号のベストバイの特集では、
スピーカーシステムのベストバイのページがあった。
そのあとに広告がはいりプリメインアンプのベストバイ、
続いてコントロールアンプ、パワーアンプのベストバイ、そしてチューナーのベストバイのページ。
このあとにまた広告がはいりテープデッキのベストバイのページという構成になっていた。

ステレオサウンドが以前出版していたHI-FI STEREO GUIDEでも、
プリメインアンプのあとにコントロールアンプ、パワーアンプ、
チューナー、レシーバー、その他のアンプという順序で掲載されていた。

これらを読んできているから、チューナーはなんとなく、電子機器ということもあって、
アンプの仲間なのか……という認識はあったけれど、チューナーのスケッチを描くことはなかった。

Date: 8月 22nd, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その10)

パイオニア、Exclusive F3の開発にそれだけの時間がかけられている──、
このことをいま知って、うんうんとひとり頷きながら納得している。

けれどチューナーにほとんど関心のなかった、若いときにこのことを知っていたら、
うーん、そうなんだ……、ぐらいの感想になっていたのは間違いない。

そして、そのことももう忘れてしまっていたことだろう。
活字による同じ情報でも、こちら(受けて)の状況で、その重要度が大きく違ってくる。

だから、いまExclusive F3がやって来て、少しずつF3について調べている、
このことは、現在(いま)でよかった、と思っているところだ。

Date: 8月 22nd, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その9)

三井啓氏の記事によれば、チューナーも、コントロールアンプ、パワーアンプとともに企画されていたことがわかる。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のパイオニア号、
204〜205ページにデザイン・スケッチが掲載されている。

コントロールアンプ、パワーアンプのスケッチとともに、
あきらかにチューナーのデザイン・スケッチがそこにはあった。

ではなぜチューナーのExclusive F3だけが約一年も遅れたのか。
その理由は、測定器の開発から始まったことにある。

三井氏の記事にはこうある。
     *
今日では広く採用されている群遅延特性測定器や、微分利得特性測定器といった精巧な測定器は、「エクスクルーシヴ」のFM専用チューナーを開発するうえで必要に迫られ、設計グループによって実現したものであった。
     *
記事には測定器の写真も載っていて、その説明文には「測定器メーカーとの共同開発による」とある。

オーディオ機器の開発の大変さは、なんとなくではあっても想像がつく。
けれど、測定器、それも新しい測定器となると、どれだけ大変なのかは、私には想像がつかない。

おそらく新しい測定器の開発と並行しながらExclusive F3の開発・設計も進められていた。
記事にも、「新しいFM専用チューナーは、昭和47年末ごろの設計の段階では」という記述がある。
昭和47年は1972年、Exclusive F3の発売は1975年。

Exclusive F3は、それだけの時間がかけられたチューナーといえる。

Date: 8月 16th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その8)

パイオニアにとってExclusiveシリーズは特別な存在であった。
TADもそうなのだろうが、私にとってはExclusiveのほうが、ずっと「特別なパイオニア」という印象が強い。

この「特別なパイオニア」であるExclusiveは、いつごろ、どうやって生れたのだろうか。
そのことについてほとんど知らないことに気づいた。
ステレオサウンドでも、Exclusiveの製品についての記事はいくつも読んできたけれど、
Exclusiveそのものについての記事を読んだ記憶がない。

この項を書き始めて、
そしてExclusive F3の私のところにやって来て、
はじめてExclusiveの成り立ちについて、知りたいと思うようになった。
かなり遅すぎるとは自分でも思っているけど、
とにかくExclusiveについての記事が載っているものはないか、と書棚を見ていたら、あった。

ステレオサウンドがシリーズ刊行していた「世界のオーディオ」のパイオニアの号である。
このパイオニアの号は、数年前にもらった本だ。
なのにそのままにしていた。

ステレオサウンドにいたころも、「世界のオーディオ」の海外ブランドの号は読んでいたし、
自分でも持っているけれど、国内メーカーの号に関しては、さらっと目を通していただけだった。

これにはきっと載っているはず、これに載っていなければ、他の本には載っていないはず、である。
パイオニアの号には、三井啓氏による「エクスクルーシヴの秘密をさぐる」が36ページにわたり載っている。

この記事でまず知りたかったのは、F3は、C3、M3、M4と同時期に開発が始まったのかどうかである。

Date: 8月 15th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(ラジオのこと・その4)

NHK-FMの女性ヴォーカル特集だった一週間を録音して、
そのあとレコードを買い、いまも聴き続けているのはケイト・ブッシュだけである。

チューナーとカセットデッキとNHK-FMの番組のおかげで、ケイト・ブッシュを聴かず嫌いのままにならずにすんだ。

それまで聴いたことのない音楽、
それまで聴いたことのない人を知るには、
レコードを買ってきて聴くか、こうやってラジオによって知るか、のどちらかだった。

買いたい(聴きたい)レコードは、新譜も次々出てくるし、
それ以前の旧譜には、もっともっと多くの買いたい(聴きたい)レコードがあった。
それらすべてのレコードを、学生に買えるわけがない。

優先順位が決ってくるし、
東京のような大都市で大型のレコード店がいくつもあれば、
その優先順位にレコードを買っていけるだろうが、
田舎の、小さなレコード店しかない環境では、
優先順位通りに買えるわけではない。

売っているレコードしか買えないのだから。
いまのようにインターネットがあり通販で簡単に購入できる時代とは大きく違っていた。

ケイト・ブッシュのレコードは、優先順位の上位だった。
ほんとうはイギリス盤で買いたかったけれど、
英語が嘆能であるわけでもなし、ケイト・ブッシュによる歌詞の意味を知りたかったから、
あとでイギリス盤を買っても、日本語訳は役に立つから、と、日本盤を買っていた。

Date: 8月 10th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(ラジオのこと・その3)

もし、このときカセットテープが余っていなくて、
気になっている女性ヴォーカルの日だけしか録音していなかったら、
ケイト・ブッシュの名前は知っていても、聴くことはもしかするとなかったかもしれない。

そう思うと、NHK-FMには感謝している。
私が録音した夕方の番組は、アルバム一枚を流していたような気がする。
曲の紹介も長くはない。

いまFM放送の番組で話す人のことをパーソナリティという。
以前はアナウンサーだった。パーソナリティと呼び方は当時はなかった。
もしかすると民放のFMではあったのかもしれないが、
私がいた熊本で受信できるのはNHK-FMだけだったから、こまかなところはわからない。

それでも、私が録音した番組の人は、パーソナリティでは決してなかった。
パーソナリティと呼ばれる役割ではなかった。

そういえば五味先生が読売新聞社から出た「いい音いい音楽」の中で、
「音楽におしゃべりが多過ぎる」を書かれている。
     *
 FMのAM化が識者により警告されて久しいが、民放はともかく、NHKまでが一向に反省の色のないのはどういうわけか。
 AM化——要するにDJ(ディスクジョッキー)的おしゃべりが多過ぎるのだ。有名人というだけで(音楽に何のかかわりもない)ボクサーや小説家を引っ張り出し、くだらんおしゃべりをさせている「日曜喫茶室」などその最たるものかと思う。
(中略)
 何にせよ、要らざる言葉が多過ぎる。もちろん、なかには有益な話をきかせてくれる人もいるが、そんなのは少ないし、ディスクジョッキーに至っては放送時間の浪費としかいいようがない。おしゃべりならAMにまかせればいい。FMは、いい音の電波なのである。もっと、いい音楽!
     *
「日曜喫茶室」は一度聴いたことがある。
おしゃべりが多かった。FMの音で聴けるAMの番組のようでもあった。

ケイト・ブッシュのファーストアルバム”THE KICK INSIDE”(天使と小悪魔)を放送してくれた、
当時のNHK-FMの番組には「要らざる言葉」はなかった。
音楽を聴かせることを主とした番組であった。

Date: 8月 10th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(ラジオのこと・その2)

FM誌が出した女性ヴォーカルのムックでの、ケイト・ブッシュの取り上げ方は、
いちばん大きかったわけではなかった。といって小さいわけでもなかったけれど、
そのムックが推していたのは、他の女性歌手数人だったように憶えている。

そんなムックを見ながら、この人はレコードは聴いてみよう、
この人の次は、この人かな、そんなことを考えながら眺めていた。
とはいえ、そうそう聴きたい(買いたい)LPが買えるほどのこづかいがあったわけではないので、
FM誌の番組欄をチェックすることになる。

そんなとき、いいタイミングでNHK-FMが、
夕方の番組で一週間、女性ヴォーカル特集をやってくれた。
そこには、ムックを見て聴きたい、と思っていた歌手の名があった。
次に聴きたいと思っていた歌手の名前もあった。

たまたまカセットテープも一週間分録音するだけの手持ちがあった。
せっかくの機会だから、それほど強く聴きたいとは思っていない、
他の歌手の日も録音することにした。
そんななかのひとりが、実はケイト・ブッシュだった。

録音はしても、聴きたい順から聴いていく。
ケイト・ブッシュの日を録音したカセットテープを聴いたのは、だから最後だった。

たしか女性アナウンサーによる番組だったはず。
ケイト・ブッシュについての説明があって、曲が流れてきた。

このとき聴いた女性ヴォーカルのなかで、いまも聴き続けているのはケイト・ブッシュだけである。

そのケイト・ブッシュを知ることができたのは、出あうことができたのは、FM放送のおかげであり、
チューナーのおかげである。
そのことを、目の前のパイオニアのチューナーが思い出させてくれた。

Date: 8月 10th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(ラジオのこと・その1)

チューナーのことをどこか軽視してきたのは、
新しい音楽、いままできいたことのない音楽とであうのは、レコード(LPやCDなどのパッケージソフト)だ、
という意識、こだわりが強かったためで、
聴きたいと思っている音楽が、聴きたいときに必ずしも流れてくるわけではない、
その意味では受動的な聴き方となってしまうラジオだから、ということがあった。

そんな私でも、いま目の前にチューナーがある。
それもパイオニアのExclusive F3という、立派なチューナーだ。
開発・発売から30年以上経過しているチューナーだから……、とは思わせない堂々としたモノだ。

優れたデザインとは必ずしもいえなくとも、このチューナーを見ていると、
ラジオ放送を聴く、ということを再考しなければならない、そんな気持にしてくれる。

それで思い出すのは、ケイト・ブッシュのことだ。

ケイト・ブッシュという、イギリスの不思議な歌手がデビューしていたのは、
当時読んでいたFM誌、それにそのFM誌が別冊で出した女性ヴォーカルのムックで知っていた。

東京で行われた歌謡音楽祭での写真を見て、
ケイト・ブッシュという歌手の音楽を聴くことはない、と実は思っていた。

その写真は、嵐が丘をパフォーマンスしながら歌うケイト・ブッシュだった。
そのケイト・ブッシュの服、マイクロフォンの位置、そういった歌とは本質的にまったく関係のないところで、
生理的な嫌悪感があり、聴くことはない、と思った。

Date: 7月 28th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その7)

これまで自分でつかってきたアンプやスピーカーの数からしたら、
チューナーの数はほんのわずかでしかない。

高校生の時のトリオの普及型、それからマッキントッシュのMR71。
このあとはずっとチューナー不在の時期が続く。
もう30年近くになる。

Exclusive F3は私にとって三台目のチューナーである。

ステレオサウンドで働いていたとはいえチューナーと接する機会は、
他のオーディオ機器とくらべると圧倒的に少なかった。
これも数えるほどしかない。
友人、知人のリスニングルームでチューナーを見かけたのも、ほとんどない。

ここでチューナーについて書いているけれど、
これから先チューナーとのつきあいが急激に変化を迎えるとは思えない。

アキュフェーズのT104とExclusive F3を並べてみたい、とおもっていても、
なんとかして実現しよう、という情熱はあまりない、というのが正直なところ。

誰かがT104を持っているのであれば、
Exclusive F3を抱えてそこまで出向き、並べて置いてみたい、
そこまではする気はあってもだ。

おそらくT104の音を聴くことはないと思っている。
これまでも聴く機会はなかった。
だからT104の音については、ステレオサウンドに載った文章から判断・推測するしかない。

49号の新製品紹介で井上先生が、
59号のベストバイの中で瀬川先生が書かれているくらいである。

井上先生は「受信チェック時の音質も今回試聴したチューナーのなかでトップランクである。」と、
瀬川先生は「最近の同社の製品に共通の美しい滑らかな音質が魅力だ。」と書かれている。

おそらくT104の音は、Exclusive F3と同系統の音なのだと思えてくる。
43号に瀬川先生がExclusive F3について書かれていることが、そのままT104にもいえるのかもしれない。
「繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音」、
だからこそ、よけいにT104が瀬川先生のチューナーのデザインに対する答でもあるし、
Exclusive F3のデザインへの要望でもあるとおもえてくるのである。