Archive for category アナログディスク再生

Date: 2月 7th, 2018
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その21)

カートリッジをヘッドシェルに取り付けるネジ。
たいていはアルミ製だった。

そこにオーディオクラフトが、真鍮製のネジを出してきた。
BS5(700円)で、長さの違う七種類のネジとナット(こちらも真鍮製)をセットにしたもの。

高校生だったころ、すぐに飛びついたアクセサリーのひとつである。
とにかく価格が安かった。

それでいて、アルミ製のネジとは違う質感が、よかった。
音がまったく変らなかったとしても、
BS5のネジにしたあとでは、アルミ製のネジが急に安っぽく見えてきた。

しかも音も変る。
良心的なアクセサリーだ、と思っていたものだ。

BS5が、私にとって最初のオーディオクラフトの製品だった。
良心的なアクセサリーだとは思ったわけだから、
オーディオクラフトも良心的なメーカーたと思うようになった。

次に買ったのはAS4PLというヘッドシェルだ。
これは瀬川先生が褒められていたということも強く影響している。
これも満足したアクセサリーだった。

AS4PLにオルトフォンのMC20MKIIを取り付けていた。
その次に買ったのが、(その18)で書いているスタビライザーのSD33だ。

アナログプレーヤー関連のアクセサリーは、オーディオクラフトのモノが増えていった。
MC20MKIIを使っていたから、OF2も欲しかった。

OF2はカートリッジのボディを補強するもので、これも真鍮製だった。
価格は4,300円だった。
それほど高いわけではなかったし、買えないこともなかったけど、
AS4PLにMC20MKII、そこにOF2(自重6.2g)を足すと、計算上では26.6gとなる。

ここに取付ネジの重さも加わる。
ネジの長さもOF2の厚みのぶんだけ長くなる。
重さはわずかとはいえ増える。

当時使っていた国産の普及クラスのプレーヤーのトーンアームだと、けっこうしんどい数字だ。
それでためらっていた。
結局買わずに終ってしまった。

だからいまでも買っておけばよかったなぁ……、と思う。

Date: 1月 26th, 2018
Cate: アナログディスク再生

DAM45(DSD 11.2MHz)

DAM45について書いたのは二年前。
今日の川崎先生のブログ「最高の音響を楽しんでください」は、
このDAM45が、ユニバーサルミュージックからDSD、
それも11.2MHzで配信が始まったことを知らせてくれる内容だった。

9タイトルが発売(配信)されている。
その9タイトルの中に、グラシェラ・スサーナが含まれている。

とにかく嬉しい。
まだDSD 11.2MHzの再生環境をもっていなから、
聴くことはすぐにはできないが、それでも嬉しいことにかわりはない。

9タイトルの詳細、
配信にいたるまでの経緯などは下記のリンク先を参照のこと。

DAMオリジナル録音DSD11.2配信9タイトル一覧

Date: 11月 27th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その33)

物事にはすべて反動があって、
静止しているターンテーブルが動きはじめる時にも、反動がある。
ターンテーブルの重量が重いほどに、反動は大きくなる。

リンのLP12の加工精度が悪いと勘違いした人は、
その反動によるサスペンションの揺れのことが頭になかったのではないか。

リジッドなプレーヤーベースであれば、動きはじめの反動が目に見えることはないが、
フローティング型であれば、その反動をサスペンションが受け止めることになる。

サスペンションの調整がうまく行われていれば、
さほど揺れないし、揺れてもすぐに収束する。

けれどサスペンションの調整がひどければ、
つまりバランスがとれていない状態では、揺れは大きくなるし、
その揺れもなかなか収束しない。

フローティングベースが揺れていては、ターンテーブルの回転もブレているように見える。
フローティング型プレーヤーへの正しい理解があれば、
LP12のターンテーブルの加工精度が悪い、という勘違いはしない。

けれど、一知半解の人ならば、加工精度が悪いと判断してしまう。
この手のことは、オーディオにはけっこうあるような気がする。

やっかいなのは、一知半解の人は、自分の理解がいいかげんなことに気づいていない。
だから「LP12のターンテーブルの加工精度は悪い」と言いふらしていく。

それを耳にした(目にした)人の中には、
素直に信じる人もいるだろうし、疑問をもつ人もいるし、
バカなことをいっている、と思う人もいる。

素直に信じる人がどのくらいいるのかはわからないが、
その人たちが、また誰かに伝えたりする。
そうやって誤解が拡まることがある。

Date: 11月 14th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その32)

接点をこまめにクリーニングするということは、
クリーニングの度にケーブルを外しているわけである。
そのときに、RCAプラグがスポッと簡単に抜けてしまうとか、
スピーカー端子の締めがゆるいとか、
そういうことに気づかずに、ただクリーニングだけに気を取られていた知人は、
接点はクリーニングされていれば、それでいいんだ、と理解していたのかもしれない。

オーディオを通してであっても、
理解とは、人によってこんなにも違うのかと思うことが、少なくない。

知人は接点には気をつかっていると自負していた。
けれどクリーニングだけ、キレイにすることだけで、
しっかりと接触させるということに関しては、気が回らなかったのか、
無関心だったのか、とにかくゆるゆるの接続であった。

そういえば……、と思い出すことがある。
ある人からきかれた。

「昔のリンのLP12って、ターンテーブルの加工精度がひどかったんですか」と。
「そんなことはない」と答えたが、話をきいていくと、
きいてきた人の知人が、そんなことを言っていた、とのこと。

その人はLP12のターンテーブルが揺れながら回転していたから、
どうもそういう結論(加工精度が悪い)になったようだ。

私がLP12を見て、聴いたのは1980年になってからだった。
その数年前からLP12は輸入されていた。
そのころのLP12まで知っているわけではないが、
少なくともLP12は高い加工精度を特徴としていたフローティング型である。

LP12は加工精度が悪いといっていた人が、
自身でLP12を使っていたのか、それともどこかで見ただけなのかははっきりしないが、
おそらくフローティング型ゆえのサスペンションの調整が、
そうとうにひどかったのではないかと思われる。

Date: 9月 10th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクのクリーニング(その3)

アナログディスクそのものを完全に理解しようとするならば、
化学的知識も非常に重要になってくる。
アナログディスクそのもののケア、クリーニングに関してはそうである。

アナログディスクは化学的物質であり、
それゆえに生き物的であるともいえる。

といっても私も化学的知識に詳しいわけではない。
なので受け売りなのだが、
アナログディスクの主材料の塩化ビニール(PVC)と酢酸ビニール(PVA)の化学的な結合は、
多くの炭素鎖が結び合っている状態であり、このチェーン結合は、
再生時に針先から単位面積当りかなりの圧力と、瞬間的ではあっても100度をこえる熱を受ける。

これによりチェーン結合が短く破壊される。
この状態の穴すぐディスクは硬くなり、弾力性を失った状態である。

これを防ぐのが、安定剤である。
この安定剤と化学的な結合をしやすいのが、蒸留水とアルコールであり、
化学的な結合ということは、安定剤の破壊ということである。

乾式のクリーニングでは取りきれない汚れに対しては湿式は有効である。
湿式では蒸留水とアルコールを使うことが多く、そういうリスクがある。
そのことを知らずにクリーニングをくり返すことの、長期的な怖さは頭に入れておくべきである。

化学に詳しくない私でも、この程度のことは頭に入っているわけだから、
化学の専門家がこれらのことを踏まえてクリーニング液を作っているのであれば、
問題はないのかもしれない。

その見極めは、だから肝心であり、
そのためには化学的知識がそれなりに求められる。

Date: 5月 8th, 2017
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴとカートリッジのコンプライアンス(その3)

HI-FI STEREO GUIDEの’76-’77年度版をみると、
MC型カートリッジを出していた海外ブランドは、EMTとオルトフォンだけである。
当時日本に輸入されていた、という条件はつくけれど、
輸入されていなかったブランドで、MC型カートリッジを出していたところがあったとは思えない。

日本のブランドでは、コーラル、デンオン、ダイナベクター、フィデリティ・リサーチ、光悦、
マイクロ、サテン、スペックス、だけである。

これが長島先生の「図説・MC型カートリッジの研究」が出る1978年には、
オーディオテクニカ、アントレー、グレース、ハイレクト、ジュエルトーン、ナカミチ、
ソニー、テクニクス、ビクター、ヤマハ、フィリップスからも登場している。

「図説・MC型カートリッジの研究」以降MC型を出してきたブランドは、
アキュフェーズ、オーディオノート、エクセル、グランツ、ゴールドバグ、Lo-D、
ラックス、パイオニア、サトームセン、ソノボックス、YL音響、エラック、ゴールドリング、
リン、ミッション、トーレンスなどがあり、
それまで一機種しか出していなかったところからも、数機種登場したりしている。

MC型カートリッジのブームが来た、といえる。
ブーム前もそうなのだが、MC型カートリッジをつくり続けてきた、といえるのは、
日本のカートリッジメーカーであり、
MC型カートリッジのブームが来たのも、
海外で日本のMC型が高く評価されるようになってきたから、ときいている。
ブーム後に登場した海外ブランドのMC型も、日本製であるモノがいくつもあった。

ダイレクトドライヴを開発したのは、いうまでもなく日本のテクニクスであり、
テクニクスの成功に刺戟され、国内各社はダイレクトドライヴに移行した。

そのダイレクトドライヴの音質に疑問をいだかせるきっかけとなったMC型カートリッジを、
決して製造中止にすることなくつくり続けてきたのも日本のオーディオメーカーである。

Date: 5月 7th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクのクリーニング(その2)

インターネットがもたらしたもののひとつに、
こちらが常識だと思っていたことが、意外に知られていない、ということがある。

オーディオに関しても、広く知られている、と思っていたことが、
そうではなかった、ということを何度も体験している。

こちらは常識だっと思っているから、相手も知っているものだと思い込んでいる。
相手が知らないことが、どういうことなのか、こちらにはわからない。
だからオーディオの話をしているときに、互いに、えっ!? となることがある。

この項に関することでいえば、
アナログディスクは硬くなり、弾力性が失われる、ということがある。

私の周りだけなのかもしれないが、
私と同じくらい、それ以上のキャリアのあの人でも、
意外に、このことを知らない人がいる。

アナログディスクは、基本的には塩化ビニール(PVC)である。
約85%ほどが塩化ビニールで、それに10数%の酢酸ビニール(PVA)が主材となっている。
その他に、染料や安定剤がわずかに加えられている。

安定剤は1%程度なのだが、
この安定剤があるからこそ、アナログディスクはくり返し再生に耐え得るし、
アナログディスク(LP)が登場して以来、
各レコード会社は安定剤を研究してきていた、といえる。

この安定剤を、一般的に無害といわれる蒸留水、アルコールは破壊する。

Date: 5月 7th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクのクリーニング(その1)

別項「瀬川冬樹氏のこと(その5)」で、
瀬川先生の、カートリッジの針先とレコードのクリーニングについて書いた。

私のクリーニングも、基本的には同じである。
液体は、まず使わない。
その危険性については、瀬川先生からだけでなく、
他の方からも聞いているからである。

瀬川先生のカートリッジの針先のクリーニング方法は、
なんて乱暴な……、と思われる人がけっこういるのではないか。
瀬川先生自身は、慣れていない人には勧められない、といわれていた。

長島先生の針先クリーニングも、実は瀬川先生と基本的に同じである。
これも慣れていない人には勧められない。

クリーニングについての考えは、人によってかなり違う。
以前、液体の類は使わない、とあるところで書いたら、
けっこう攻撃的なコメントをもらったことがある。

高価なレコードクリーナーが、昔からいくつも登場しているのは、
クリーニング効果があるからだし、なぜ、それらを否定するのか、ということだった。

何も否定していたわけではなく、
あくまでも個人的に液体の類は使わない。
絶対に使わないのではなく、必要にかられれば使う。
基本的には使わない、ということであっても、理解してもらえなかった。

高価なレコードクリーナーとして、代表的な製品といえるのが、
イギリスのキースモンクスである。
1978年ごろ、MARK2が日本に入ってきた(輸入元は東志)。
価格は395,000円だった。1982年には495,000円になっていた。

MARK2は蒸留水とアルコールの混合液で洗浄、
洗浄液を吸引、その後の乾燥までを自動的に行ってくれる。

MARK2が登場したばかりのころ、究極のレコードクリーナーだ、と思っていた。

Date: 5月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴとカートリッジのコンプライアンス(その2)

昔のラジオ技術を読み返していると、ハッと気づかされることがいくつもある。
1961年7月号「ベテラン8氏にきく現用再生装置」で、
瀬川先生はガラード301のことを、
《目下のところ自家用としてベルト・ドライブの必要を感じないほど》
と書かれている。

これが1965年1月号「ステレオ再生装置の総合設計」の中では、次のように変っている。
     *
 わたくし自身は、モノ時代から長いこと、ガラードのプロフェッショナル・ターンテーブル〝301〟を愛用してきて、とくに不満を感じなかった。ところが、ハイ・コンプライアンス・カートリッジの採用にともなってSMEのライト・シェル・タイプなどに切りかえてみると、急にゴーゴーというウナリが気になりはじめて、ついにもっと優れたターンテーブルに交換する必要をせまられるほど、プレーアの問題は大きくなるいっぽうである。
 結論からいえば、ターンテーブルはベルト(あるいは糸)ドライブ以外は使いものにならない。しかし具体的にはどうするかということになると、やはり問題が多い。
     *
まだこのころはEMTの930stを使われていないし、
ダイレクトドライヴ型も登場していない。

アイドラードライヴ、ベルトドライヴ、ダイレクトドライヴ、
というふうに順をおって体験してきたわけではない世代の者にとっては、
そうか、そうなのか、と思うわけだ。

ダイレクトドライヴ型が登場したころは、
1965年当時よりも、もっとハイコンプライアンス化されている。
MC型カートリッジよりも、MM型、MI型カートリッジがかなり使われていた時代でもある。

カートリッジがますますハイコンプライアンス化(軽針圧化)していく時代に添うように、
ダイレクトドライヴ型は登場した、ともいえる。

Date: 5月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴとカートリッジのコンプライアンス(その1)

私がオーディオに興味を持ち始めた1976年は、
国産のアナログプレーヤーはほぼすべてダイレクトドライヴ型といえた。

海外製品でもアイドラードライヴは、EMTの930stと927Dst、
ガラードの401にマイクロトラックのModel 740、デュアルの1225、BSRくらい、
ベルトドライヴも少なかった。
リンのLP12、トーレンスのTD125、エンパイアの698、EMTの928、
これらの他にデュアル、シネコ、B&Oなどがあった。

ベルトドライヴを出していた海外メーカーも、
翌年、翌々年にはダイレクトドライヴに移行していた。

にも関わらず1970年代が終ろうとしていたあたりから、
ダイレクトドライヴ型プレーヤーの音質への疑問がいわれるようになってきた。
このことは別項「ダイレクトドライヴへの疑問」でも書いている。

ダイレクトドライヴ型があっというまに席捲し、
数年後には疑問がもたれたことには、
カートリッジのコンプライアンスも関係しているように思われる。

MC型カートリッジのブームが1970年代の終りにやってきた。
ステレオサウンド別冊として、
長島先生による「図説・MC型カートリッジの研究」が1978年秋に出ている。

MM型、MI型カートリッジに比べれば、
このころ新しく登場したMC型カートリッジであっても、針圧は重めである。
つまりローコンプライアンスである。

もしMC型カートリッジのブームが訪れなかったなら、
ダイレクトドライヴ型への疑問は生れなかったか、
もしくはもっと後のことになっていたかもしれない。

オーディオ入門・考(ステレオサウンド 202号)

facebookを見ていて、
そうか、ステレオサウンド、出ているんだ、ということに気づいた。

ステレオサウンドの発売日は知っている。
でも、発売日が待ち遠しいということはなくなってから、久しい。
それでも発売日ちかくになれば、今度の号の特集はなんだろう、
表紙はなんだろう、という興味からステレオサウンドのサイトを見ていた。

でも今回はそれすらもしていなかったことが、自分でも少し意外だった。
なので202号は読んでいないが、
特集は「本格ハイレゾ時代の幕開け」、第二特集が「アナログレコード再生のためのセッティング術」。

ここで書くのは第二特集のほうだ。
セッティングに術をつけてしまう感覚には「?」を感じてしまうが、
この第二特集では柳沢功力氏が「レコードプレーヤー・セッティングの基本」を書かれている。

私はまだ読んでいないのだが、facebookでは、この記事が話題になっていたし、
ページ数もけっこう割かれている、とのこと。

柳沢功力氏のことだから、破綻のない内容にはなっているはずだ。
ステレオサウンドの筆者の中には、どうにもアナログディスク再生に関して、
かなりアヤシイ人がいる。
いかにもわかっているふうに書いているつもりであっても、
読めば、その人の基本がなってないことはわかる人にははっきりとわかる。

誰とは書かないが、気づいている人は少なくない。
その人に「レコードプレーヤー・セッティングの基本」を書かせなかったのは、賢明といえる。

「レコードプレーヤー・セッティングの基本」が私が考えている内容であれば、
この記事を、203号が出た頃から、ステレオサウンドのサイトで公開すべきだと思う。

基礎的、基本的な記事はいつでも読めるようにしておくことが、
オーディオのこれからを考えているのであれば、その重要性がわかるはずだ。

何もいますぐ公開すべき、とまではいわない。
三ヵ月先、半年先でもいいから、
無料で「レコードプレーヤー・セッティングの基本」は公開することで、
オーディオ界が得られることは必ずあるはずだからだ。

Date: 2月 11th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その7)

2月1日はかなり寒い日だった。
audio wednesdayを行う喫茶茶会記のLルームは、
イベントが行われない時は使われていないから暖房も入っていない。

セッティングをやっているときに暖房を入れたわけで、
音を出しはじめるころには部屋はある程度暖まっているけれど、
カートリッジの内部まで十分に暖まっているとはいえない。

そのため針圧も、ずっと同じ値で聴いていたわけではない。
鳴らしはじめの針圧、途中で変えた針圧。
しばらく鳴らしていて、カートリッジの内部も十分に暖まったころの針圧は違ってくる。

カートリッジの針圧を、カタログにある値にぴったりと合わせて、
それ以外の針圧で聴くことはしない人がいるけれど、針圧はすぐに変えられるものであり、
己の感覚に合せて、自由に変えていくものである。

そのためには針圧によって音がどう変化するのかを把握しておく必要はある。
あるレコードにはうまく合っていた針圧でも、
音楽の傾向、録音の年代や方法が大きく違うときには針圧を変えたほうがいいこともある。

料理における塩加減のようなものである。
塩は足りなければ足せるけど、多かったら、その料理から取り除くことは無理だが、
針圧は増やすことも減らすことも簡単にできる。

喫茶茶会記のアナログプレーヤーのトーンアームはRMG309だから、
インサイドフォースキャンセラーがついていない。
たいていのトーンアームにはついている。

インサイドフォースキャンセラーも針圧同様、もっと自由に変えてみて音の変化を把握しておく。
基本は針圧と同じ値にすることだが、それが最良の結果になるわけではない。
少し増やしてみたり減らしてみたりする。

それができるのがアナログディスク再生である。

Date: 2月 6th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その6)

その3)でアナログプレーヤーを、
置き場所で左右前後に動かしてみると、音の変化ははっきりとしたものがある、と書いた。

何も特別なラックでなくとも、この音の変化は容易に聴きとれる。

こういう例もあった。
サイドボードの上にアナログプレーヤーが置かれていた。
サイドボードもしっかりとした造りではなく、
アナログプレーヤーの置き台としては望ましいとはいえなかった。
けれど、そこしか置き場所がないのであれば、その範囲で音が良くなるようにするしかない。

アナログプレーヤーの右奥の角をサイドボードの右奥の角と一致するように設置した。
サイドボードには側板があって、強度的にこの部分がしっかりしている。
そこにできるかぎりトーンアームの回転軸をもってくる。
ただこれだけで音の明瞭度は増す。

別のところでは国産の縦型ラックがあった。
システムコンポーネント用といえるラックで、特別にしっかりしたつくりでもなく、
キャスター付きのモノだった。

アナログプレーヤーを、ここでも右奥にずらす。
たったこれだけのことだ。
それまでの位置と右奥にずらしたときの音を聴いて、
オーディオに関心のなかった人が、
「クリフォード・ブラウンのフレーズがはっきりした」といってくれた。

私はトーンアームの回転軸を、
アナログプレーヤーの中心と考えている、と書いている。

これは、上記のことからもそうだといえる。
つまりアナログプレーヤーの中心とは、
完全な静止が理想であっても、現実にはそんなことは無理である。
だからできるかぎり静止状態にしておきたい個所、
他の個所よりも最優先で静止状態にしておきたいところであり、
それはトーンアームの回転軸であり、
その2)で書いているスタビライザーの少し意外な使い方も、
このアナログプレーヤーの中心と関係してくる。

少し意外な使い方に関しては、
ステレオサウンドの古い号にも書いてあるし、このブログの別項でも以前書いているし、
facebookでは写真を公開している。

Date: 2月 5th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その5)

2月1日のaudio wednesdayでは、この部分、
片持ちになっている先端(プレーヤーボードの右奥の角)に下に、ものをかませることにした。

あらかじめ、喫茶茶会記のアナログプレーヤーについて細部を見ておけばよかったのが、
それを怠ったため、当日になって三点支持だったことに気づいた。
最初からわかっていれば、手頃な角材でも用意してくるのだが、そういう用意はない。

喫茶茶会記にも使えそうな角材はなかったので、アルミケースを使うことにした。
高さが数cmほどたりないので、厚手のフェルトを二枚折り重ねて高さを、なんとか合せる。

なのでがっちりとプレーヤーボードの右奥の角を支えているわけではない。
軽く支えている程度ではあるし、アルミケースも共振体になってもいるが、
それでもはっきりとした効果が、音になって聴きとれる。

片持ち部分を片持ちにしないだけでも得られる変化であり、
よりきちんとした支えにすれば、変化はもっとはっきりしたものとなる。

同じことが十年以上前にもあった。
あるオーディオ店で、あるスピーカーが鳴らされていた。
決してうまく鳴っているといえなかった。

オーディオ店は営業時間だったが、平日ということもあってか、
客は私ら以外にはいなかった。
店のスタッフがひとり、私らが四人で、そのうちの一人がスタッフと顔なじみということもあって、
なんのすこしだけセッティングを変えることになった。

どこをいじってもよかったのだが、いちばん気になっていたところ、
エンクロージュア上部にあるトゥイーターの後部が片持ちになっているところを、
柔らかい素材を使って、軽く後部先端を支えた。

あまり強く支えてしまうと、別のテンションをがかかってしまうため、過度にやり過ぎないことである。
この効果は、やはり大きかった。

ちょうどアコースティックギターが鳴っていたのが、
エレキギター的な音に聴こえていた。
たったこれだけのことでアコースティックギターとして鳴ってくれる。

このときかかった時間も数分程度で音の変化は大きく、
多くの人の耳にもはっきりとわかるぼどである。

腕自慢をしているのではない、
片持ちが音に与える影響と、そこを対処することによる音の変化の確実さを知ってほしいだけである。

もちろん製品によっては、そういったことをわかったうえであえて片持ちにしているモノがないわけではない。
いわゆる音づくりのための片持ちがあるのは理解しているが、
そうではない片持ちの方が多いというのが現状だ。

Date: 2月 4th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その4)

アナログプレーヤーの中心は? ときかれて、どこだと答えるか。
アナログプレーヤーの中心をどう定義するかによっても違ってくるが、
ターンテーブルの中心と答える人が多いのではないだろうか。

ターンテーブルプラッターは回転しているわけだから、
そのセンターはまさしく中心といえる。

そういう考えからすれば、
今回使用したガラード401用のプレーヤーボードは、
その中心が三点支持の中、それも中心に近いところに位置している。

手前が二点、後方が一点の三点支持により形成される三角形の右側には、
片持ちの三角形が存在することになる。

しかもこの三角形はトーンアームがロングアームということもあって、
標準長のトーンアームの場合よりも面積は広いものとなる。

世の中に完全剛体の材質があれば片持ちの構造の影響も抑えられるだろうが、
現実にはそんな材質はないし、アナログプレーヤーの周りをさまざまな振動が囲っている。

一枚の板の一辺を固定して振動させれば、もっとも振幅が大きくなるところはどこだろうか。
その部分にトーンアームを取り付けるということはどういうことなのか。

私はアナログプレーヤーの中心は、
ターンテーブルの中心ではなく、トーンアームの回転軸だと捉えている。

今回の片持ちの構造だと、
私が考えるアナログプレーヤーの中心が大きく揺すられることになる。
もちろんその振動は目で捉えられるわけではないが、
振動モードを解析してみるまでもなく、片持ちの先端がどういう状態なのかは容易に想像がつく。